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地域だより[2000年12月]

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

地域だより
[2000年12月]
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札幌事務所


平成12年産てん菜の受入糖分の見通し

12年産のてん菜の収穫は、10月中旬から始まり11月中旬には大半が終了したが、今年も8月の猛暑に引き続き登熟期の9月に入ってからも気温は下がらず、特に最低気温は平年を大きく上回った。また、9月は、雨も例年になく多かったことから登熟が進まず、さらにこの雨のため褐斑病の適期防除が遅れたこと等が重なり、外見的にはビートの状態は良いものの、糖分の乗りは極めて良くない状況となっている。
 社団法人北海道てん菜協会の取りまとめによると、全道の受入累積糖分は11月20日現在で15.66%となっており、最終的にはもう少し上昇すると思われるが、糖分取引開始以降最も悪かった6年産と同等かこれをやや上回る程度と予測されている。

女満別町のてん菜ほ場
てん菜ほ場の収穫・集荷風景 てん菜ほ場の収穫・集荷風景
女満別町のてん菜ほ場と収穫・集荷風景

てん菜受入糖分の推移
(単位:%)
  月.日
砂糖年度
10/20 10/25 10/30 11/05 11/10 11/15 11/20 11/25 11/30 12/05 12/10 12/15
6年産   15.08 15.23 15.36 15.48 15.58 15.60 15.61 15.62 15.62 15.62 15.62
7年産 16.74 16.89 17.00 17.10 17.19 17.26 17.29 17.30 17.31 17.31 17.32 17.32
8年産 16.91 17.01 17.19 17.37 17.47 17.53 17.54 17.54 17.54 17.54 17.54 17.55
9年産 16.64 17.09 17.33 17.45 17.56 17.58 17.59 17.60 17.60 17.60 17.60 17.60
10年産 15.56 15.96 16.14 16.29 16.41 16.51 16.56 16.57 16.59 16.59 16.60 16.61
11年産 15.88 16.16 16.27 16.37 16.46 16.52 16.53 16.54 16.55 16.55 16.55 16.56
12年産 14.86 15.21 15.37 15.51 15.60 15.65 15.66
資料:(社)北海道てん菜協会

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東京事務所


秋の味覚「栗づくし」展の開催

 第57回虎屋文庫資料展が10月1日(日)から31日(火)まで、東京赤坂虎屋ギャラリーにおいて開催された。今回は栗と日本人との関わりについて展示されていた。
<栗と日本人>
 栗と日本人との関わりは縄文時代までさかのぼるが、同時代は栗をはじめとする木の実は非常に重要な食品であった。縄文人の食生活の中で、木の実(栗、胡桃、栃、団栗、しいの実他)の利用はかなりの割合を占めていた。遺跡から出土する木の実の数を見ると、遺跡によっては、住民の摂取カロリーの90%にも及んでいたという説もある。木の実はそのまま食べるだけではなく、乾燥させたり穴に埋めるなどして大量に貯蔵されていた。すりつぶしてクッキー状の加工食を作るなど工夫を凝らして食されていたことがうかがえるという。  また、青森県三内円山遺跡から出土した巨大建造物には栗の木が多く使われていたことが判明している。
<暮らしの中の栗>
 栗は秋の味覚として、まだ砂糖がなかったころには貴重な甘味源として、古くから親しまれてきた一方、儀式等の供え物や行事食、また、茶の湯の菓子など様々な用途に使われていた。
・神饌(しんせん)
 神に供える食物を神饌という。神饌や行事の供え物には、今も栗が使われている。特に勝栗は「勝」の字や音が好まれ縁起の良い品とされている。干した栗を臼で搗き、殻と渋皮を取り去ったもので、そのままの生栗でも勝栗と称して使うこともある。
 一方、勝負事でも縁起を担ぐため勝栗は欠かせなかった。現在でも相撲の土俵祭りでは勝栗、昆布、米、などを盛った皿を埋める。
・茶の湯
 16から17世紀の茶の湯では、栗、柿といった木の実や果物が「菓子」として用いられた。凝った加工はしておらず、生栗、焼栗、打栗の他、珍しい例として、水栗、栗粉餅などがある。水栗とは水に漬けた生の栗のことである。(体を清浄にする意味を持つという。)
・年中行事
 *正 月
 鏡餅や蓬莱飾りなどの正月の供え物には熨斗や干柿、昆布などとともに勝栗を添える習慣がある。お節料理の栗きんとんを使うのは「金」を連想させ、「やりくり」「くりあわせ」が上手などのごろあわせ。
 *重陽の節句(ちょうようのせっく)
 重陽の節句は旧暦9月9日で、「陽の数」の極みである九が2つ重なって重陽の名がある。長寿を願って菊に綿をのせその露を含ませ体を拭う「着綿きせわた」を行うなど「菊の節句」として知られているが、庶民は栗飯や栗蒸を食べたり、栗を贈る習慣があった。
 *栗名月(くりめいげつ)
 旧暦8月15日の仲秋の名月に対して、9月13日は後の月などという。十五夜には団子、里芋を供えるので「芋名月」の名が、十三夜は栗や豆を供えるため、「栗名月」、「豆名月」とも呼ぶ。
<江戸時代の栗料理>
 江戸時代の料理書には、現在よりはるかに変化に富んだ栗の調理法が見られる。白和えや胡麻和えにする、千切りにして付け合わせにする、すりおろして蒸す、といった他に次のような例がある。
・花 栗(はなぐり)
 栗を花、鳥、木の葉などの形に切った細工物で、料理の飾りとして使う。現在の日本料理にもこの技術は一部伝承されている。
・栗田楽(くりでんがく)
 栗を焼いて味噌を塗る。
・栗黒和(くりくろあえ)
 栗の胡麻和え
<その他>
 以上のほか、木の実、栗菓子の郷、世界の栗菓子などが紹介されていた。
 現在、私達の食からは、旬とか季節感といった感覚は失われつつあるが、栗は栗菓子など秋の味覚として、私達を楽しませてくれている。

栗づくし展 栗づくし展

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清水出張所


「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が静岡で開催

 10月13日(金)、静岡市の“ホテルセンチュリー静岡”において糖業協会、精糖工業会、砂糖を科学する会の共催(後援:農林水産省、農畜産業振興事業団等)による「砂糖シンポジウム〜砂糖は笑顔のエネルギー〜」が開催された。
 主催者によると、参加者は主婦やOLが大半を占めて、定員200名募集のところ886名もの応募者があり抽選となるほどであった。
 前回9月に名古屋市で開催されたシンポジウムでは「毎日の生活に欠かせないお砂糖のパワー」がテーマであったが、今回の静岡では、「毎日の生活に欠かせない砂糖について考える」を内容とした講演であつた。
 当日は、2人の講師により講演が行われた。
 第1部では、浜松医科大学教授高田明和氏が「砂糖(甘味)は脳を活性化する」をテーマに、最近健康に対する考えかたは痩せているほうがいいと誤解している人が少なくないようであるが、実は痩せすぎのほうが短命で、特に60歳を過ぎるとメリットがなく、どちらかというと小太りの方が長生きであるという話で始まった。
 私達の中には、砂糖だけを肥満の原因と誤解している人がいるが、何でも摂り過ぎれば肥満になるのはあたりまえであり、砂糖に含まれるブドウ糖が脳の唯一のエネルギー源であるので、ブドウ糖は注意力、集中力、記憶力を高め、不足すると脳の働きが弱くなるのである。
 また、脳内神経伝達物質のセロトニンはアミノ酸で、肉に含まれるトリプトファンから作られ、気分や食欲に大きな影響を及ぼす物質である。うつ状態は脳内にセロトニンが足りなくなった状態であるが、セロトニンを運び込むのに欠かせないのがブドウ糖である。
 よって、甘いものを食べるとほっとしたりするのは、甘いものが精神を安定させ、元気を引き出してくれるわけで、砂糖を上手にとって脳の栄養失調にならないように心がけましようなどとの興味深い内容の講演であった。
 第2部では、アジア料理研究家酒井美代子氏が「タイの食文化」をテーマに、タイの風景や料理のスライドを使用して異国文化を紹介された。
 タイ料理の第一人者でもある酒井氏は、「私たちは何かを見本にする場合、得てして欧米ばかり見てしまいがちですが、アジアに目を向けて頂きたい」と“ほほ笑みの国”タイの魅力を主に食生活の面から話をされた。タイ料理の味を支えているのは砂糖の甘さ、唐辛子の辛さ、ライムなどの酸っぱさだそうである。
 タイでは家庭や王宮でも食卓には、唐辛子の粉末と酢漬け、ナンプラー、砂糖の4点セツトが置いてあり、ラーメンやチャーハンにも砂糖をかけて食べるそうで、砂糖を上手に摂ることを考えさせられる話であった。

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名古屋事務所


東海農政局による消費者の部屋
 〜「甘味」を正しく理解していますか?〜

 平成12年10月26日から11月17日まで、名古屋市にある東海農政局では「天然から作られた甘味、砂糖と異性化糖の紹介」をテーマに、甘味を正しく理解してもらうため、現物展示とサンプル製品の配布を行った。
 東海農政局と当事業団の共催は今年で4回目を迎えた。砂糖・異性化糖製品、原料作物の実物、製品の種類・製造方法を図解したパネル等の展示を行ったほか、砂糖と異性化糖製品の身近な用途を実感してもらうため、砂糖と異性化糖製品を利用したサンプル製品の配布を業界団体及び砂糖・異性化糖製造事業者の協力により行った。
 昨年までの催しと比べ、今年度からは当事業団の制作によるパネルやパンフレットが充実するとともに、配布されたサンプル製品などバラエティに富んでいて、より一層インパクトの強いものとなった。
 砂糖と異性化糖をはじめとする異性化糖製品の共同展示は、一般消費者にとって一見特異な組み合わせであるようだが、会場に展示されている実物の原料作物、パネル、パンフレットから甘味の果たす多彩な役割を改めて認識しているようで、来場者は大きな関心を示していた。

砂糖と異性化糖の現物展示 砂糖と異性化糖の現物展示

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岡山出張所


ふるさとの味「桃っ子ピクルス」〜津山市の特産品について〜

 岡山県は瀬戸内海に面した温暖な気候に恵まれていることから果物王国として知られ、中でも白桃は代表的な特産品である。この白桃自身、ギフト商品として全国的に有名であるが、この白桃を加工したゼリー、菓子などが作られ、最近では若者向けに清水白桃という品種を使ったニアウオーターが売り出されており、これらの加工品には、すべて砂糖が使用されている。
 同県津山市の特産品として注目を集めている清水白桃の幼果の加工品であるカレー味の桃のピクルスは、地元主婦グループ「むつみ会」が(会員30余名)が生産し管内農協で販売しているものであり、その加工は、昭和59年に建設された津山市佐良山農業研修施設の調理室を利用して行われている。
 このピクルスは、昭和63年からは農業改良普及センターの協力を得て完成され、季節的には6月下旬の袋かけ前に行う摘果でつみとられた清水白桃の幼果をカレー味で甘酢漬けしたものである。
 農業研修施設の近くには、約10戸の清水白桃を生産する農家があり、そこから毎年150〜200kgの幼果が「むつみ会」に提供され、メンバーにより加工される。まず、幼果実のわらかい毛をとるため洗濯機でやさしく洗い、1ヵ月間塩漬けにし、一旦ざるにあけ、調味液に漬け、さらに1ヵ月間塩抜きを行う。その後、本格的な味付けをするため再度1ヵ月間、調味液に漬けて「桃っ子ピクルス」が完成する。
 調味液には、商品(ピクルス) 50kgに対し30kgの上白糖が用いられ、人工調味料は一切用いず「自然の味」を作り出すとともに、砂糖の防腐効果を最大限利用している。
 この「桃っ子ピクルス」は、当初「むつみ会」が2年間県の助成を受け、さらに、平成元年から2年にかけて試作、完成し、平成3年から本格的に販売され、津山市のイベント、行事等で販売されたり、ホテルのレストランではサンドイッチの中に挟んで利用され、消費者の評判も高いとのこと。現在、8月と12月の贈答時期に津山市の農協販売課が地域特産品の詰め合わせの中に桃っ子ピクルスを入れて販売し、北海道、阪神地方及び九州方面にも宅配されて、津山近郊から離れた人が「ふるさとの味」を求めて注文される場合が多いという。
 津山の味を全国のより多くの方に楽しんでいただき、これによりさらに砂糖の消費拡大につながることを祈念したい。

桃っ子ピクルス(真空パック)
真空パックされた桃っ子ピクルス
桃っ子ピクルス
真空パックを開けた桃っ子ピクルス
“スライスしてお酒のおつまみに最適”

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平成12年度(第39回)農林水産祭天皇杯の受賞について

 今回で39回目を迎える農林水産祭天皇杯を「蚕糸・地域特産」部門で、鹿児島県大島郡喜界町坂嶺のさとうきび農家岩下雅一郎氏(47歳)が受賞した。
 同氏は一度京都の民間企業に就職したが、その後、農業が好きで「一生土に生きよう」と一念発起し、農業を行ったことのない京都出身の妻を説得し、昭和56年から故郷の喜界島にさとうきび農家の後継者としてUターンした。
 就農当初は、家族4人(本人、妻、父、母)で、約6ha(うち自作地約2ha)の経営規模であったが、毎年借地を主体として作付面積を拡大してきた。平成3年には、経営耕地面積は約13ha(うち自作地約4ha)になったが、次第に父母の高齢化によって栽培管理の作業の労働負担が大きくなってきた。そのため、「省力でゆとりのあるさとうきび経営」を目標に、手作業が大半を占める重労働であるさとうきび作りの中で、調苗、株出管理、定植、収穫作業の一貫した機械化による省力化と緩効性肥料の導入による施肥作業の省力化及び肥効率向上や単収低下を招く雑草防除対策として、雑草発生前の早めの化学的防除と耕種的防除(畑を耕して草を取る)を併用し、農薬散布の低減などによる環境に配慮した栽培技術を確立し、一方、パソコンによる簿記記帳によるデータ経営管理や農業改良普及センターの協力も得ながら同氏の妻と二人三脚による経営安定化の努力を行い、年々着実に経営の規模を拡大し経営面積19ha、収穫面積13ha、さらに収穫作業の受託面積21haの大規模経営を実現した。なお、将来は長男が後継者として就農予定となっている。
 このことは、生産条件が厳しい南西諸島にもかかわらず、さとうきび専作経営が、発展できる優れた事例として高く評価されたことが今回の受賞につながり、今後もさとうきび栽培の地域モデル的な経営体として持続的に発展していくことが期待される。
 また、同県同郡知名町のさとうきびを基幹作物に葉たばこ、ばれいしょ、切り花等を組み合わせた複合経営が営まれる農村である「正名字」(奄美群島の1つである沖永良部島の南西部に位置する知名町の集落単位の自治会組織である。代表 田中富行氏)も同時に農林水産祭天皇杯の「むらづくり」部門で選ばれている。

平成11年産さとうきび生産費(鹿児島)について

 九州農政局鹿児島統計情報事務所が10月3日に鹿児島県における平成11年産のさとうきび生産費及び収益性を下の表のとおり発表した。11年産さとうきびの10a当たりの生産費(副産物価額算入差引)は15万3,692円で、前年に比べ1.1%増加、これに支払利子、支払地代を加えた支払利子・地代算入生産費は16万521円で、前年に比べ1.0%増加、さらに、自己資本利子、自作地地代を加えた資本利子・地代全額算入生産費(全算入生産費)は17万3,041円で、前年に比べ1.0%増加しており、いずれも生産費の合計額は前年産を上回っている。また、生産費(費用合計)は物財費と労働費に区分される。物財費は前年に比べ3.4%増加しており、労働費はさとうきびの収穫量の減少に伴い収穫作業が減ったことにより0.4%減少している。
 一方、11年産のさとうきびの10a当たり収量は、登熟期の小雨により糖度が上昇したものの、前年産が大豊作であったため11年度産は対前年に比べると14.6%減少した。そのため、11年度産の10a当たり収益性は、粗収益で11.1%、所得で23.7%と大幅に減少した。

平成11年産の生産費及び収益性

(単位 金額:円、増減率:%)
区分 10a当たり 1,000kg当たり
実数 対前年増減率 実数 対前年増減率


物財費 59,258 3.4 8,552 21.1
労働費 95,142 △0.4 13,730 16.6
費用合計 154,390 1.0 22,282 18.3
生産費(副産物価額差引) 153,692 1.1 22,181 18.4
支払利子・地代算入生産費 160,521 1.0 23,166 18.3
資本利子・地代全額算入生産費 173,041 1.0 24,973 18.3


粗収益 147,997 △11.1
所得 70,534 △23.7
注(1)この調査は、販売農家で10a以上作付けし販売した農家の数値。
 (2)平成11年産とは、11年秋から12年春にかけて収穫されたもの。
 (3)「△」は減少したもの。「−」は事実のないもの。

種子島西之表市におけるさときび農家と畜産農家との連携

 鉄砲伝来の地として知られる種子島は、鹿児島県下で3番目、全国でも5番目に大きな島である。比較的平坦な地形と広い耕地面積を利用したさとうきび栽培と畜産が農業の柱となっており、両者の間では広く連携が行われていることが特徴となっている。最近同島北部に位置する西之表市でその実状に触れる機会があったので紹介する。
 西之表市の平成11年度農業総生産額は約66億900万円、うち、さとうきびは約9億7,100万円(約15%)、乳用牛は約9億9,300万円(約15%)、肉用牛は約10億4,600万円(約16%) であり、総作付面積3,510haのうち、さとうきびの作付面積は691ha(約20%)、飼料作物の作付面積は885ha(約25%)となっている。
 市農林水産課等によれば、西之表市における連携パターンは3つあり、その1つはケーントップ(さとうきびの梢頭部)と堆肥を無償で交換し合っているものである。
 ケーントップは、12月から4月までの製糖期間中、さとうきびを収穫する前処理として刈り取られ、束ねてほ場に置かれる。交換相手の畜産農家はさとうきび農家から連絡を受けてそれを自宅に運搬し、牛の飼料として利用する。この交換は相対で行われており、西之表市の場合、さとうきび農家1,128戸の半数以上、酪農家65戸の約8割、肉用牛農家約384戸の約3割が行っている。
 種子島酪農協によれば、ケーントップを与えることにより牛乳の風味が増すという。また、種子島特有の冬場における北西の季節風により、ケーントップに塩分が付着することによって、ミネラル分を豊富に含む特徴も併せ持っているようだ。
 次のパターンは、さとうきび農家に提供されるバガスと堆肥を無償で交換するというものである。島の製糖工場(新光糖業)によれば、発生するバガスの多くは工場内の燃料として使用され、約15%(5〜6千トン)程度が農家に還元される。このバガスは牛の敷料として歓迎されており、希望が多いため、西之表市農業管理センター(市と農協が設立し、農作業受委託や肉牛ヘルパー派遣、水稲、野菜の育苗、市営牧場の管理等を行う組織で、近々社団法人化される予定)が仲介している。同センターの11年度における供給実績は1,922トン、農家売り渡し価格は4トントラック積みで1万円であった。
 さらにもう1つのパターンは、製糖工場の副産物である糖蜜を畜産農家が飼料に添加して利用しているものである。このケースは10年から始まった新しいものであり、種子島酪農協が製糖工場から糖蜜を一括して購入し、畜産農家へ配分している。
 希釈した糖蜜を飼料に添加することにより、牛の食欲が増すとともに牛乳の風味が向上し、脂肪分も増加するという。ケーントップは冬場だけなので、それ以外の季節用として、とりわけ一般的に牛の食欲が落ちる夏期において重宝されている。現在の供給量は年間150トン(発生する糖蜜全体の約3%)、畜産農家渡し価格はトン当たり4,000円で、畜産農家の約3分の1が利用しているとのことであった。
 このような連携が行われている背景として、現地の関係者は次のように述べている。
(1) 種子島はさとうきび栽培の北限であり、南西諸島の中でも甘蔗糖度が低く、製糖歩留りを少しでも上げるため、事前にケーントップを人力により刈り取って収穫することが慣行となっていること。
(2) ここ数年の傾向として、機械収穫が進み、さとうきびの作付けを拡大する農家が増加しており、それらの農家ではケーントップの処理先が必要になっていること。
(3) 10年ほど前から畜産農家の規模拡大が進み、粗飼料や敷料を外部に依存するケースが増えていること。

連携パターン図

 次に、同市農林水産課遠藤氏の案内で、このような連携を実際に行っている酪農家とさとうきび生産者を訪ねたので、その状況を紹介する。
 上西地区にある松元牧場の松元啓恭氏(52歳)は、妻と子息の3人で土地4ha(うち借地1.6ha)を活用して粗飼料を生産し、経産牛を52頭・育成牛16頭を飼養している。11年度の総販売乳量は394トン、乳脂肪率は3.71%である。
 バガスを敷料とし、ケーントップを与えることで、他にはない“おいしい牛乳”を生産することを目標としており、ケーントップ、バガスとももっと欲しいとのことであった。
 また、糖蜜の利用も開始しており、訪問時(11月8日)も乾草に糖蜜を添加して与えていた。
 一方、きび農家4戸で組織している「住吉南部地区きび生産組合」は、さとうきび収穫機の共同利用を目的として7年に設立され、作付面積を設立当初の6.1haから今では17haに拡大している。4戸ともケーントップを松元牧場に提供し、同牧場と他の畜産農家からのものを合わせて10a当たり3トン程度の堆肥を得ている。同生産組合の平均単収は程度の差はあれ、南種子町、中種子町を含む種子島全体の平均を上回る10トン以上とのことであった。また、組合員によっては、バガスの交換も行っていた。
 視察したほ場では、さとうきびが極めて順調に生育しており、今年の収穫の実りの豊かさをうかがわせた。組合員は皆まだ若く、これからもさとうきびの栽培面積を増やしたいと考えており、そのためにも堆肥はもっと欲しいとのことであった。

酪農家とさとうきび生産者の連携
酪農家とさとうきび生産者の連携 酪農家とさとうきび生産者の連携

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平成12年産沖縄県産さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量について

 沖縄県農林水産部が平成12年10月1日現在における平成12年産沖縄県産さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量を取りまとめたので、その一部を紹介する。
 今回の見込みによると、12年産さとうきびは、3月から4月にかけて全県的に平年に比較して降雨が多く、日照不足となったことから、伸長期の生育が抑制されて推移した。また、8月上旬(台風8号)、8月下旬(台風12号)、9月中旬(台風14号)と相次ぐ台風の影響で、葉片裂傷や倒伏、梢頭部折損等の被害があり、南北大東島や本島北部地域、宮古地域は他の地域に比較して台風の影響を大きく受ける結果となった。
 このため、10月1日現在における第2回見込みは、収穫面積は前年実績を上回るものの、さとうきび及び甘しゃ糖生産見込み数量がともに第1回見込み(8月1日現在)、前年実績及び過去5年実績(平成7年産から11年産)の平均値を下回る形で予想されている(表参照)。
 一方、10月以降の生育状況は、多くの糖業関係者の見方によれば、相次いだ台風通過後の気象条件が良好に推移していることから、台風の被害から回復に向かっているものとみられているが、10月下旬の台風19号の影響で久米島に塩害の被害が発生し、この地域のさとうきびの糖分の低下が懸念されている。
 今後は天候に恵まれて、さとうきびの収量や糖分の順調な回復が期待されているところである。

さとうきび及び甘しゃ分みつ糖生産見込数量等

  収穫面積
(ヘクタール)
生産量
(トン)
うち分みつ糖
生産量(トン) 歩留り(%) 産糖量(トン)
第2回見込み(A) 13,504 902,169 840,553 11.08 93,100
第1回見込み(B) 13,516 924,484 865,045 11.66 100,853
前年実績(C) 13,486 958,206 893,863 11.78 105,255
増減 A−B △12 △22,315 △24,492 △0.58 △7,753
A−C 18 △56,037 △53,310 △0.70 △12,155
A−D △524 △18,649 △24,774 △0.58 △7,948
比率 A/B 99.9 97.6 97.1 95.0 92.3
A/C 100.1 94.2 94.0 94.1 88.5
A/D 96.3 98.0 97.1 95.0 92.1

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