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地域だより[2004年6月]

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

地域だより
[2004年6月]

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東京事務所


「『食と農』の博物館」がオープン
〜 東京農業大学(世田谷区) 〜

 平成16年4月6日(火)、東京農業大学は、「『食と農』の博物館」をオープンした。これは、昨今の偽装表示や鳥インフルエンザの集団感染、BSE(牛海綿状脳症)問題など「食の安全」への信頼が揺らぐ中、食と農業の問題に多面的にスポットをあて、同博物館を情報発信の拠点とするとともに、貴重な動植物や歴史的文献などの所蔵資料や、大学の歴史や学内での研究開発例などを広く一般に紹介している。
 緑あふれる世田谷のなかでも、ひときわ木々が美しい東京農業大学世田谷キャンパスでは、日々16,000人の学生が、熱心に研究に取り組んでいる。その範囲は、「食料・健康・環境・資源エネルギー」の4つのキーワードを中心に、自然科学の幅広い分野をカバーしている。
 全国の大学で唯一、酒や醤油などの醸造を専攻する学科を持つ同大学には、すでに「醸造博物館」と「農業資料室」があり、一般公開しているが、キャンパス内にあるため、大学関係者以外にはなじみが薄く、利用者が学生等に限られていた。
 また、学生や大学院生らの研究開発が商品化につながったケースがあるものの、学外でPRする場がないのも課題となっていた。
 そこで、同キャンパス近くにある「進化生物学研究所」(同区上用賀2丁目)の老朽化による建替に伴い、研究所の1、2階部分に、新博物館を建設することとなった。
 館内には、昔の農具や創立113年を迎えた同大の歴史、食品産業の現状を紹介するパネル、醸造博物館が所蔵している日本の酒器二百点以上が常設展示されている。
 企画展の第一弾として、平成16年7月11日(日)まで「食と健康展」が開催されている。この展示では、北海道網走市と神奈川県厚木市、世田谷の3つのキャンパスで開発を進めている農畜産物や肉、乳製品を展示・紹介しているほか、卒業生らが勤める食品メーカーなど24社・団体が健康に配慮した食品や飲料をPRしている。
 砂糖類関連企業としては、東洋精糖株式会社が多機能な天然の水溶性フラボノイド製品である「α Gヘスペリジン(みかんやレモンなどの柑橘類に含まれているポリフェノールの一種で、ビタミンPと呼ばれている)・α Gルチン(ソバに含まれているポリフェノールの一種)」を出展している。
 また、食品新素材の紹介コーナーでは、別記砂糖類関連企業の製品がパンフレットによって紹介されている。
 同大学では、「食の安全・安心は21世紀の大きなテーマである、博物館を足場に食と農業・畜産業などへの信頼を取り戻す情報発信の場として、市民・地域に開かれた気さくなふだん着の博物館を目指したい」としている。
(開館時間午前10時〜午後5時。月曜休館。入場無料。)

(別記)
食品新素材の紹介コーナー
精製糖及び異性化糖メーカー 紹介パンフレット
塩水港精糖株式会社 オリゴのおかげ
新三井製糖株式会社 パラチニット
日新製糖株式会社 カップオリゴ
日本食品化工株式会社 ゲントース、セルエース
サンエイ糖化株式会社 マルチメイト、クリアシラップ

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名古屋事務所


中部砂糖特約店協同組合で学習会を開催

 平成16年4月20日(火)、名古屋市のホテルキャッスルプラザにおいて、中部砂糖特約店協同組合の総会に先立ち学習会が開催され、組合員27社中18社の代表者が参加した。学習会では東海農政局からは「WTO・FTAをめぐる状況」と題して、WTOとFTAのそれぞれの役割や、日本の現在の交渉状況や日本のスタンス等について講演が行われた。
 また、当機構名古屋事務所からは砂糖・甘味資源作物をめぐる情勢及び機構が行っている情報業務の紹介を行い、参加者の理解を求めた。以下それぞれの講演の概要を紹介する。

WTO・FTAをめぐる状況
 WTOは、どの国にも同じルールを構築し、多国間の貿易体制を作ることを目的とした交渉であり、FTAは協定を締結した国のみを対象とし、関税の撤廃など通商上の障壁を除去して自由な取引活動の実現をめざすものである。WTO交渉は農業分野のみならずサービス(法律、運輸、通信等)、非農産品分野の関税引き下げ、ルール(アンチダンピング、補助金等)等についても包括的に議論し、農業、サービスなどすべて揃った段階で協定を締結するものである。WTO加盟148ヵ国中、100ヵ国以上が発展途上国のため、これらの国の主張が大きな力となっている。日本を含め米国やEUはあくまでもWTOを基本に考えており、FTAはWTOを補完するものとして位置づけている。
 2003年9月に行われたカンクンでの閣僚会議が合意に至らなかった原因は、先進国と発展途上国の対立や先進国の中での輸入国と輸出国の対立などである。先進国では輸出国である米国やEUは、関税の削減や上限の設定を主張しており、輸入国の日本、スイス、韓国などはこれらに反対し、柔軟性のある引き下げ方式を主張している。途上国では輸入国、輸出国が結束して、先進国に対し国内支持の削減、輸出補助金の撤廃を要求する一方、関税引き下げ等は途上国の特別扱いを要求している。
 現在、FTA締結国の数は急速に増加し、その内容も関税の撤廃だけでなく、サービス貿易、投資の自由化、人材育成等を含む包括的なものに移行してきている。農産物については、関税撤廃品目から除外される品目といった柔軟性を持った扱いがなされている。米国と豪州は2004年1月にFTAに合意したところであるが、砂糖は例外品目となった。
 先般、日本とメキシコは大筋合意をしたところであり、現在、韓国、タイ、マレーシア、フィリピンと交渉を行っており、今年から来年に向けて本格化する。特にタイとの交渉では、タイがコメ、鶏肉、砂糖、でんぷんをはじめとする農林水産物の関税撤廃等の必要性を主張しているため、難しい交渉となるだろう。
 農産物の平均関税をみると、日本は12%であり決して高くない。EUは20%、インドは124%である。日本はウルグアイラウンド後、農業改革を進めてきており、価格支持制度を抜本的に見直してきた。その結果、日本の国内支持の関税の削減率は非常に高く、この分野においては先行している。
 WTO・FTA交渉に対する日本の基本的な考えは、農業は、(1) 大気の浄化、洪水調整、水資源かん養、土砂崩壊防止、といった側面を持つとともに (2) レクリエーションの場の提供や、(3) 緑豊かな景観の提供、(4) 地域社会の維持といった側面もある。また、日本は食料自給率が低く、純食料輸入国である立場から、貿易だけでなく食料安全保障の観点も配慮すべきである。しかし、日本の農業には高コストといった構造上の問題があるため、農業の改革を推進している。最終的には、多様な農業の共存が可能となるような貿易ルールを目指すのが、わが国のスタンスである。
 農林水産省としては、関税の大幅な削減により、これまでの農林水産業の改革の努力が無駄にならないように配慮した上で交渉に臨むつもりである。

砂糖・甘味資源作物をめぐる状況
 砂糖の総需要量は近年230万トン前後で推移している。近年、消費者の低甘味嗜好や砂糖に対する誤解、加糖調製品の輸入増を背景とし、減少傾向にあったものの、平成14砂糖年度については、やや需要の回復がみられ、前年比0.8%の増加となった。そのうち国内産糖は80万トン前後を維持し、輸入糖は140万トン台となっており、国内自給率は30%強となっている。国内自給をまかなっている国内産糖の原料は、北海道のてん菜は輪作体系に組み込まれ、鹿児島県南西諸島及び沖縄県のさとうきびは台風や干ばつに強いことから、ともに地域経済の重要な作物として位置づけられている。
 用途別では業務用が85%、家庭用が15%となっており、業務用のうち菓子類が最も多く25%である。わが国の1人あたりの消費量は、年間19.1kg(2002年)と先進諸外国と比べるとかなり少ない。砂糖は肥満や糖尿病の原因という誤解が広まっているが、ご飯と同じ糖質であり、食生活にバランスよくとり入れることが重要である。
 東海(愛知、岐阜、三重、静岡)・北陸(福井、石川、富山)地域の砂糖及び液糖の販売量については、中部地域の代理店が、平成5〜14年度における砂糖(精糖・ビート糖)の販売量を比較、説明した。北陸地域では平均して全体の約56.5%、東海地域が同71.6%であり、北陸地域でのシェアが中部地域以外の地域から比較的多く販売されていることや液糖のシェアは、北陸地域では平成10〜11年度は100%であったが、平成12年度は61%となっており、最近の東海地域では、約60%台を維持している。
 当機構では、月刊誌の発行、ビデオ・パンフレットの提供など、糖業関係者だけではなく、一般消費者に対して様々な情報の提供を行っている。また、消費者に提供されている砂糖関連情報の把握とともに、砂糖についての認識を把握するための地域情報モニターの設置等を行っており、今後当事務所においても、さらなる情報の収集・提供に努めていきたいと考えている。
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福岡事務所


さとうきび株出管理機が普及段階へ

作業風景
株出管理機を使用した作業風景
(徳之島にて)
 鹿児島県南西諸島の平成15/16年期における甘しゃ糖の生産は、度重なる大型台風と奄美地域では長期間の干ばつの影響を強く受けたことにより、単収が低下し、原料(分蜜糖向け)であるさとうきびの生産量が55万3千トンにとどまり、鹿児島県産甘しゃ糖製造実績(日本甘蔗糖工業会調べ)による産糖量は、6万8千トンとなり、2年連続で7万トン割れの厳しい結果となった。しかしながら、明るい材料がないわけではない。
 平成13年度に各島別に策定した「新さとうきび・糖業再活性化計画」に基づき、関係機関・団体・生産者等が一体となって、春植・株出栽培面積の拡大等の取組みを積極的に推進した結果、さとうきびの収穫面積は、平成10年以降、小幅ではあるものの増加傾向にある。
 さらに、この傾向を確かなものにするため、平成16年度からは「さとうきび・糖業安定生産促進緊急対策事業」が2ヵ年の期間で新たに創設され、さとうきびの生産性・品質の向上、安定生産、並びに甘しゃ糖企業のコスト低減を図ることとされている。鹿児島県では、目的の実現に向けて農地の流動化、経営規模の拡大、農作業受託組織の育成を通じた担い手の育成、地域の実情に即した機械化一貫体系の確立、優良品種の普及などを総合的に推進し、さとうきび産業の維持発展を図ることとしている。
 今月号は、各島において同事業による導入の実施・検討がなされている「さとうきび株出管理機」を紹介する。
さとうきび株出管理機
さとうきび株出管理機
作業後のほ場
作業後のほ場(写真右側)
 この管理機は、昨年度、鹿児島県農業試験場徳之島支場と農業機械メーカーが共同で開発したものであり、収穫後に、一つの機械で株揃、根切排土、施肥、除草剤散布の4つの作業を一工程で実施する作業機である。同機開発の背景は、前述のように、各種施策の推進により収穫面積は増加傾向にあるものの、生産量は不安定であり、特にここ1、2年は、大幅に低下している。これは、株出栽培の減少と株出管理の遅れ等による単収の低下が大きな要因となっており、増収のためには収穫直後の株出管理作業が大変重要であると考えられている。しかし、さとうきび栽培農家の高齢化や収穫作業等との労力が競合し、同作業の適期実施が困難なことから、省力化が図られる株出管理機の開発・普及が急務となっていた。
 開発された管理機の実用化により期待される効果について、社団法人鹿児島県糖業振興協会及び同農試徳之島支場では、以下のとおり見込んでいる。
1 株出栽培の「早期管理」が可能となる。
  (1)  株出管理作業と収穫作業など他の農作業との労力競合を回避できる。
(2)  作業能率が1時間程度/10aと向上し、農繁期の収穫直後でも株出管理作業が可能となる。
(3)  株揃、根切排土のほかに施肥、雑草防除も一工程で可能となる。
2 萌芽しやすい条件を整え萌芽率が高まる(平均25%増加)。
  (1)  収穫直後の株揃、根切排土により、萌芽率が高まる。
(2)  株周辺環境の萌芽条件を整えることにより、萌芽率が向上する。
(3)  ハリガネムシが多発するほ場でも萌芽しやすい環境を与えるので、萌芽が高まる可能性が大きい。
(4)  株揃により株上がりが防止できる。
NiF8(農林8号)については俗に言われる「株上がり」が問題であるが、株揃により解消される。
3 萌芽後の早期の生育促進
  基肥を株出管理時に施すことにより、生育が早まる。
4 雑草問題の克服
  (1)  株揃により畦内雑草が排除される。
(2)  除草剤散布により長期間、畦内雑草の発生抑制が可能となる。
5 ハカマ(前作残さ)の処理
  根切排土のディスクカルチにより、ハカマは土で被覆され腐熟が進む。
これまでの試験成果 : 単収8%向上(注)
品質(蔗汁糖度)0.2度向上
(注)当該データは、試験区が8t/10aレベルの高単収ほ場であった。沖永良部島、与論島の低単収地域であれば、その効果はさらに高まると見込まれる。
 一方で、同管理機を利用した栽培管理技術の確立についても鋭意取り組んでおり、同管理機と栽培管理技術(前作収穫時期別の株出管理法や除草剤の使用法)をセットにして、機械化体系による株出管理技術を総合的に組み立てた上で、各島の農業改良普及センターや現地生産対策本部・糖業振興会と連携し、実証成果と併せて、農作業受託組織等の担い手を中心に、同管理機の普及促進を図ることとしている。
 近年、同県南西諸島における株出栽培をめぐる環境については、品種面においては、株出萌芽性に優れ、株出栽培で多収が期待され、台風、干ばつなどに対する障害抵抗性が高いなどの長所を持つ、Ni17(農林17号)が農水省において品種登録され、奄美地域を中心に普及が図られている。さらに、今回紹介した「さとうきび株出管理機」が、営農集団等の農作業受託組織を中心に導入され、現行の収穫作業の受託に加え、株出管理作業も同時に受託するような形態にシステム化されれば、さとうきび収穫面積の安定的な確保とさとうきび栽培の省力・低コスト化、並びに単収向上に大きく貢献できるものと考えられる。
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平成15/16年期(第28回)沖縄県さとうきび競作会表彰式

表彰式の模様
表彰式の模様
 平成16年4月28日(水)那覇市内において、さとうきび糖業関係者多数出席のもと、平成15/16年期沖縄県さとうきび競作会表彰式が行われた。
 さとうきび競作会は、「さとうきびの日」(毎年4月の第4日曜日)関連行事の一環として(社)沖縄県糖業振興協会の主催で毎年行われており、昭和51/52年期から数えて28回目である。
 競作会の審査は、県内各地区(沖縄本島北部、中部、南部、宮古、八重山)ごとに市町村、JA、製糖工場等担当部署からの推薦を受けて、各地区のさとうきび生産対策協議会が中心となり予備審査を行った後、各地域の優秀な出品物の全刈り審査が行われる。その後、各地区の審査調査資料に基づいて、春植、夏植、株出の各作型1位及び多量生産1位について審議、決定される。
 平成15/16年期のさとうきびの生育状況は、夏場の生育旺盛期に干ばつの影響があったが、全体的には平年並みの生育状況であった。宮古島では7月の降雨量が例年より少なく、干ばつの影響が見られたとともに、9月の台風14号(最大瞬間風速74.1m、24時間の暴風雨)により、島全体が甚大な被害を受けた。特に電柱が軒並み倒れる状況で、さとうきびへの被害も懸念されたが、その後の大雨等により天候に恵まれ、大幅な回復がみられた。
 ここで、表彰された方々の中から、春植、夏植、株出の各作型部門、多量生産部門で上位に入賞した3名と生産法人をそれぞれ紹介する。このうち夏植え部門1位の神谷清浩氏は沖縄県1位となり、農林水産大臣賞の栄誉に輝き、沖縄県2位の友利恵治氏は農林水産省生産局長賞を受賞した。

<表彰農家の紹介>
沖縄県1位・夏植部門第1位
神谷 清浩 氏 (沖縄本島 東風平町)
 【農林水産大臣賞受賞】
(1) 栽培品種 NiF8(農林8号)
(2) 糖度 15.3%
(3) 10a当たり甘しゃ糖収量 3,161kg
(4) 10a当たり収量 20,658kg
 神谷氏は、会社勤めをしながらのさとうきび作10年を迎えている。栽培面積は89aで、さとうきびのみを両親と3人で栽培している。耕起砕土及び培土は機械を利用し、収穫は手刈りで行っている。夏植には、緑肥を利用している。干ばつ時には灌水を実施するとともに病害虫駆除も徹底して行っている。今後は、現状の面積を維持しながら、さらなる品質向上に努めていきたいとのことである。
沖縄県2位・春植部門第1位
友利 恵治 氏 (宮古島 下地町)
 【農林水産省生産局長賞受賞】
(1) 栽培品種 Ni15(農林15号)
(2) 糖度 16.8%
(3) 10a当たり甘しゃ糖収量 2,976kg
(4) 10a当たり収量 12,535kg
 友利氏は、長年建設業を経営する傍ら、さとうきび作を行ってきたが、数年前に息子に建設業を譲り、さとうきび生産に専念するようになった。友利氏のさとうきび生産に対する取り組みは地域の模範であり、平成12/13年期の競作会において夏植部門で県第1位の実績を持つ、農業経営年数約43年の優良農家である。
 個人でスプリンクラーの設置やユンボーによる深耕をするほか、牛堆肥の投入や緑肥等による土づくり、除草、病害虫防除等を徹底して行っている。
 今期の収穫面積100aのうち40aは、自家採取側枝苗栽培による収穫である。
 経営面積はこれまで100aであったが、長年貸していた100aを今年引き取ることになり、今後はその土地を含めて、春植・株出・夏植の3作型で、高品質で多収量のさとうきび生産を目指すとしている。
株出部門第1位
新垣 徳栄 氏 (沖縄本島 中城村)
(1) 栽培品種 NiTn10(農林10号)
(2) 糖度 14.1%
(3) 10a当たり甘しゃ糖収量 2,132kg
(4) 10a当たり収量 12,594kg
 新垣氏は塗装業の仕事と兼業してさとうきび作りに励んでおり、農業経営年数は50年である。栽培管理は主に夫婦2人で行い、所有している耕耘機、搬出機で肥培管理を日ごろ行っている。また、夏場の干ばつ時期には水揚ポンプを利用した灌水作業を行っている。収穫作業は夫婦のほかに子供、孫の家族も手伝っている。今後は、現在の面積を維持しながら、ほ場に合う奨励品種を積極的に導入し、品質、単収向上に励んでいきたいとしている。
多量生産部門第1位
農業生産法人(有)あらかきファーム(久米島町)
 さとうきび生産量663,805kg
 (有)あらかきファームは、久米島町儀間地区を中心に、借地利用や収穫の受託作業や、ハーベスターにより同地区の15%(1,200t)の収穫を行っている。同生産法人の構成員は4人で、同地区の高齢化により離農した畑を借地にするなど地域のさとうきび栽培面積の維持に努めている。また、近隣農家の農作業の受託にも積極的で、さとうきび栽培の機械化推進にも貢献している。作付面積は自作地4.9ha、借地16.6ha、合計21.5haの大規模農地での生産を行っている。
表彰式の模様





平成15/16年期の甘しゃ糖製造が終了

 沖縄県における15/16年期の甘しゃ分みつ糖の製造は、大東糖業株式会社の平成15年12月12日を皮切りに、久米島製糖株式会社の平成16年1月26日をもって9社11工場で開始され、石垣島製糖株式会社の平成16年4月19日の製造終了により全工場の製糖が終了した。
 今期の製糖は、平成15年9月の台風14号による宮古島地域の甚大な被害や南大東島等での干ばつによるさとうきびの生育被害が心配されたが、宮古島地域では、さとうきび以外の作物は台風被害によってその大半が収穫不能となったが、さとうきびについては主に台風後の降雨により、塩害を免れたことから、めざましい回復を見せた。
 日本分蜜糖工業会調べによると、原料処理量は77万7,205トンと前年実績を約5万6,700トン、産糖量は、9万1,903トンと前年実績を約4,300トンそれぞれ上回ったものの、歩留は11.82%と前年をやや下回る結果となった。
 今期のおもな出来事は、翔南製糖株式会社管内では、農作業の人手不足を補うため、JAおきなわ南部地区営農センターが中心となり、さとうきび収穫作業請負グループが本格的に発足し、高齢者農家、病弱な人を優先して収穫作業を手伝うとともに、多収生産者の収穫の一役を担い、全25グループ(1グループ3〜4名)が約5,000トンの原料を収穫した。
 また、大東糖業株式会社管内では、南大東村のさとうきび生産振興対策協議会が取り組んでいる交信かく乱によるハリガネムシ防除が、全国の環境保全型農業推進コンクールで大賞を県内の団体ではじめて受賞した。この防除により株出の萌芽の改善及び株出の拡大につながり、ひいては収穫面積も増加した。
 今期は厳しい気象条件にさらされながらも、糖業関係者及びさとうきび作農家の方々の尽力により原料処理量及び産糖量は前年実績を上回る結果となった。このような関係者の懸命な取り組みが来年産にも生かされ、さとうきびの増産が図られることを願いたい。
 最後に、今期の製造実績を各社ごとにとりまとめるとともに、今期の生産または製造状況についてのコメントをとりまとめたので紹介する。
平成15/16年期沖縄県産甘しゃ分みつ糖製造実績
会社名 製造開始日
終了日
製糖
日数
原料処理量
(t)
産糖量
(t)
歩 留
(%)
各社からのコメント
球陽製糖 1月19日
4月 1日
74 115,984 14,151 12.20 原料処理量は当初見込みより減少したが、操業期間中少雨傾向であったことや工場内設備の改善によって非常に高い生産効率を達成したため、歩留が大幅に向上した。
翔南製糖 1月15日
4月 9日
86 138,369 16,120 11.65 無脱葉収穫原料を前年より多く処理することができた。また、100トン以上の多量生産農家が82戸と着実に伸びている。
JAおきなわ
伊江
1月17日
3月14日
58 9,033 980 10.85 今期は株出の比率が高いことから、単収が低いと予想していたものの、予想以上の生産量、甘蔗糖度となり、原料処理量・歩留ともに向上した。なお、今期製糖を最後に製糖工場を閉鎖。
JAおきなわ
伊是名
1月10日
3月18日
69 19,530 2,423 12.41 気象条件に恵まれたため、原料処理量、買入甘蔗糖度が向上し、産糖量ともに当初見込み以上となった。
久米島製糖 1月26日
4月 7日
73 56,846 6,269 11.03 長期にわたる干ばつと台風の被害により、当初見込みより原料処理量が減少した。
大東糖業 12月12日
3月11日
91 63,555 6,612 10.4  生育期間中の少雨傾向等による水不足によりさとうきびの生育は阻害され、害虫(メイチュウ)の発生を誘発した。
北大東製糖 1月19日
3月15日
57 15,411 1,726 11.20 昨年10〜11月の降雨と平均気温が高めに推移したため、春植及び若齢の株出の伸びが良くなり原料処理量が当初見込みより増加したが、歩留は低下した。
沖縄製糖 1月21日
3月25日
65 115,012 14,099 12.26 台風14号により宮古島のさとうきびはすべて倒伏したが、収量・品質ともに予想より被害が少なく、歩留も好成績を収める事ができた。
宮古製糖
(城辺)
1月21日
3月21日
61 87,565 10,748 12.27 生育初期から旺盛期の干ばつや台風14号により甚大な被害を受け、枯死茎や側芽の多発、害虫(ドウガネ属)の被害を受けた。
宮古製糖
(伊良部)
12月28日
4月19日
114 57,782 6,896 11.93 生育旺盛期の干ばつや台風14号による被害が発生したものの、品質面では、病虫害に強い晩熟品種F172の糖度が最も高かった。
石垣島製糖 12月25日
4月20日
118 98,118 11,879 12.11 昨年7月の干ばつ及び野ねずみによる被害がみられ、原料処理量は、当初見込みを下回ったものの、気象条件及び高糖品種(農林8号)の割合の増加、工場内設備の改善により生産効率が向上したため、歩留は向上した。また、春植の増殖に伴い、株出萌芽も良好で収穫面積の確保につながった。
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