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地域だより[2004年8月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2004年8月]

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札幌事務所


道南地区においてライムスプレッダ実演会が行われる

 砂糖の原料作物であるてん菜は、北海道で毎年約390万トン(過去5年間平均)生産され、これを原料とするてん菜糖は約66万トン(同)製造されているが、その過程において、約20万トンのライムケーキが発生する。大量に発生するライムケーキは、その多くが産業廃棄物として埋立処分されてきており、その費用の増嵩が問題となっている。
 当機構では、平成13年度から「てん菜糖省エネ・環境対策推進事業」における環境対策の一環として、てん菜糖製造事業者がてん菜糖を製造する際に生ずるライムケーキの減量化、再資源化に資する設備の整備、畑作地や牧草地の土壌改良材(土壌のpH調整材)への再利用の取組みを行なっているところである。
 平成16年7月6日(火)、北海道糖業滑ヌ内の北海道虻田郡真狩村の農家の牧草地において、北海道糖業鰍ェ機械メーカーと共同開発したライムケーキを散布するための専用機であるライムスプレッダの実演会が行われた。同機の特徴は、(1) 5段階の散布量調整が可能であること (2) 同機に装備されている装置により、土塊の細砕が可能であること (3) 同機が均一かつ広幅なライムケーキの散布を可能とする性能を有していること等である。
 実演では、3トンのライムケーキを積み込んだライムスプレッダが高低のあるほ場にもかかわらず、ほぼ均等に散布している様子を参加者たちは熱心に見学していた。
 当日作業が行なわれた牧草地の土壌中のpH値は約4.0であったが、牧草の生育に適した土壌中のpH値は5.5とされている。てん菜を含むほとんどの農作物の土壌には適正なpH値があり、そのpH値は5.8以上が適正値とされていることから、土壌酸性化を改善するために、ライムスプレッダの均一かつ幅広な散布により石灰成分が補給され、pH値の矯正とともに畑地や草地の健全な育成・促進が期待できる。
 今回散布実演に協力していただいた農家の方は、今年から牧草地においてライムケーキを散布する場所と散布しない場所との生育状況を比較した上で、本格的な導入を検討したいとのことであった。
 北海道糖業(株)の担当者は、同糖業管内の各地区において農家の方々の協力を得てこのような実演会を夏と秋に開催し、農家の方々に散布機への認識を深めてもらうための活動を展開していく予定で、ライムケーキの還元増を目指しているとのことである。当機構としても、ライムスプレッダの有効利用を期待するものである。
作業の説明写真
作業の説明
散布作業写真
ライムスプレッダによる散布作業
(注)
ライムケーキ
 てん菜から抽出された糖液の中には、砂糖成分以外に有機物や色素等が含まれていることから、糖液から砂糖の結晶を効率よく抽出するために、あらかじめ糖液中のこれら不純物を除去しておく必要がある。製造工程において、石灰石を焼成した粉末と炭酸ガスを投入し、不純物を吸着させる方法によって抽出し、さらに脱水したものがライムケーキと呼ばれているものであり、その主成分は炭酸カルシウムである。
pH(ペーハー)
 土壌の酸性度を示す単位で、数値が小さくなればなるほど酸性度が強くなる。






平成16年度てん菜輸入品種検定試験等現地調査の開催

現地調査写真
 平成16年7月8日(木)〜9日(金)、 社団法人北海道てん菜協会の主催により、てん菜輸入品種検定試験等現地調査が、道立十勝農業試験場、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター(以上芽室町)、日本甜菜製糖(株) (帯広市)、北海道糖業(株) (本別町)、道立北見農業試験場(訓子府町)及びホクレン農業協同組合連合会(女満別町)の各試験ほ場において行政、研究機関、てん菜糖業者等の参加のもと実施された。
 今回の検定試験における供試品種は、予備試験で選抜された北海系統の国内3品種(北海88号、北海90号、北海91号)及びてん菜糖業者が輸入した9品種(H133R、H134、H135、HT22、HT25、HT26、KWS1R13、KWS4S65、KWS3R53)と比較対象10品種となっている。
 優良品種として認定されるためには、様々な試験を経て、優れた試験結果が求められる。北海道農業研究センターが様々な遺伝子を組み合わせた有望な国内新品種(年間約30種類)を供試するとともに、北海道の気候・土壌への適性を勘案し、有望な輸入品種(同約50種類)を供試、選定する「予備試験」、農業試験場において予備試験で選定された有望品種を従来の優良品種と比較するために3年以上の期間にわたり行う「生産力検定試験」、そう根病などの病気への耐性や湿害への適応性といった栽培特性等を2年以上の期間にわたって行う「特性検定試験」等がある。
 現地調査後の検討会では、各試験場におけるいずれの品種も例年になく生育過程が順調であるものの、収穫段階まで各品種を注視していく必要があるとの認識で一致した。
 各種試験を経た品種については、北海道農業試験会議において収量、糖分、品質その他の特性等が総合的に検討された後、優良品種候補が選定され、さらに北海道農作物優良品種認定委員会において、てん菜優良品種と認定されることとなっている。
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横浜事務所


「食品の表示について」講演会を開催

 平成16年6月29日(火)、当事務所は、独立行政法人農林水産消費技術センター横浜センターの協力を得て、横浜市の同センター消費者研修室において「食品の表示について」と題した講演会を開催した。これは、当事務所の地域情報モニターから同テーマについて概要を学びたいとの要望があったため、当事務所が企画したものである。
 同横浜センターではJAS制度、食生活指針、食品の安全性などのテーマで講師派遣を行っているが、今回はこれを活用したものであり、講師は同センター消費者情報課の江口香織氏が担当した。江口氏は、「近年、輸入食品や新食品の多様化に伴い食品の味や鮮度、健康や安全性に対する消費者の関心が高まってきている中、同センターへは多くの食品に対し統一的で、わかりやすい品質に関する表示を行ってほしいとの消費者の要望もあり、頻繁に講演等を行っているところである。今日は食品表示制度について初めて聴く方にも理解しやすいようにすすめていきたい。」と挨拶があった。
 以下、講演の概要を紹介する。
(なお、講演会は江口氏が用意した資料を使ってすすめられたが、砂糖の表示については、砂糖類情報2003年5月号から5回にわたって連載された「お砂糖豆知識」を資料として提供した。)

JAS制度の概要
 JASとはJapanese Agricultural Standardの頭文字をとったもので、日本農林規格の通称である。現在では制度全体を表す言葉として使われており、個々の物資についての日本農林規格は「JAS規格」と呼ばれている。JAS制度というのは昭和25年に農林物資規格法としてスタートし、昭和45年には品質表示基準制度を加えて現在の形となり、その後も社会情勢等をかんがみ改正され、食品等の品質改善や消費者の商品選択の一助として役割を果たしてきたところである。
 JAS規格は、品位・成分・性能等の品質に関する基準及び生産の方法に関する基準の2種類のタイプの規格がある。またJASマークには表のように4種類あり、通常タイプのJAS、特定JAS、有機JAS、生産情報公表JASがあるが、表示するか否かは製造者等に委ねられており、マークが貼付されていなくても流通の制限は特にない。ただし、JASマークのついている商品は行政の品質保証があるものと言える。

さまざまな食品表示の具体例
 ここでは、紙パックコーヒーの食品表示を例に、さまざまな種類の表示についての説明を行った。
 まず、「栄養成分表示」であるが、これは厚生労働省が管轄する健康増進法に基づく表示となっている。このルールとして容器包装を開かなくても見えるように表示すること、また表示項目は誤差の許容範囲内でエネルギー(kcal)、たんぱく質(g)、脂質(g)、炭水化物(g)、ナトリウム(mg)の順に表示することが必須となっている。さらに“カルシウムたっぷり”などの強調表示を行う場合には、カルシウムの含有量についても表示義務がある。ただし、すべての食品について栄養成分表示の義務はない。
 次に「リサイクルマーク」であるが、これは経済産業省の管轄する容器包装リサイクル法に基づく表示となっている。古紙を分別しゴミとして出すだけではリサイクルと言えず再生品を利用してはじめてリサイクルと言えるという考え方に基づき、消費者に古紙再生利用を求めている。
 さらに農林水産省が管轄するJAS法及び加工食品品質表示基準に基づく「一括表示」であるが、名称・原材料名・内容量・賞味期限・保存方法・製造者等の氏名又は名称及び住所を定められた大きさの文字で表示することとなっている。このうち内容量については、経済産業省が管轄する計量法に基づく表示になっている。
 最後に商品のバーコードであるが、これは我が国では通称「JANコード」と呼ばれ、商品の在庫管理や受注発注システム等で利用され、商工会議所で新規登録や更新手続が行われている。
 これら全表示について虚偽又は誤りがあった場合には景品表示法に基づき公正取引委員会が取り締まることとなっている。
表 JASマーク一覧
(通常の)JAS 特定JAS 有機JAS 生産情報公表JAS
品位、成分、性能等の品質についてのJAS規格(一般JAS規格)を満たす食品や林産物などに付されます。 特別な生産や製造方法、特色のある原材料(生産の方法)についてのJAS規格(特定JAS規格)を満たす食品に付されます。 有機JAS規格を満たす農産物などに付されます。このJASマークを付してある食品には「有機○○」などと表示できます。 生産情報公表JAS規格に定められた方法により給餌情報や動物用医薬品の投与情報が公表されている牛肉に付されます。
出典:農林水産省HP「食品表示とJAS規格」

JAS法に基づく加工食品の表示について
 加工食品の表示は、名称・原材料名(使用した数量の多い順に記載)・内容量・賞味期限・保存方法・製造者等の氏名又は名称及び住所を一括で表示することとなっている。ここで、食品の期限表示について見ると、賞味期限とは比較的傷みにくい食品(品質が比較的緩やかに変化する食品:しょうゆ、ロースハムなど)に対して表示されるものであり、この期限を過ぎたからといって必ずしもすぐに食べられなくなるわけではない。これに対し、傷みやすい食品(品質が急速に劣化する食品:惣菜、コンビニ弁当など)には消費期限を表示することになっており、この期限を過ぎたら食べないほうがよいという目安となっている。
 賞味期限とほぼ同じ意味の食品衛生法に基づく品質保持期限という用語については、賞味期限に統一することとなり、定義についても統一されたが、経過措置として平成17年3月31日までに製造、加工又は輸入される食品については品質保持期限という表示も認められており、しばらくの間は両方の表示があるものと思われる。
 また、期限表示は品質の劣化が極めて少ない食品については、省略できると定められており、でん粉、チューインガム、冷菓、砂糖、食塩などが該当する。

JAS法等に基づく遺伝子組換え食品の表示について
 遺伝子組換えに関する表示は、“遺伝子組換えである”旨の義務表示をした食品は消費者の需要がなく、スーパー等で目にする豆腐などは“遺伝子組換え大豆は使用していません”などと表示されているが、この表示は任意表示である。消費者は遺伝子組換え作物に対してあまり良いイメージを持っていない人が多いと思われるが、最近では生産者に栽培しやすい遺伝子組換え農作物だけでなく、糖尿病に効果があるなど医薬品分野において消費者にとって有益と考えられる研究も行われている。
 また、遺伝子組換え原材料を使用していても、組換えられたDNAやこれによって生じたたんぱく質が最新の技術によっても検出できないものについては、表示義務の必要がないと定められており、しょう油、大豆油(大豆)、水あめ、液糖、コーンフレークなどが該当する。ただし、これらの品目は毎年見直しが行われており、今後、技術の発達に伴い義務表示品目も増えていくものと考えられる。

JAS法に基づく有機農産物・有機農産物加工食品の表示及びトレーサビリティについて
 有機農産物とは、化学的に合成された肥料及び農薬の使用をさけることを基本として、採種又は植付け前2年以上の間、堆肥等による土づくりを行ったほ場において生産された農作物であり、有機農産物加工食品は、水と食塩を除いた残りの原材料が有機農産物・有機農産物加工食品であって原材料に占める割合が95%以上の食品である。
 これらは農林水産大臣が認可した登録認定機関により、有機JAS規格を満たすものとして認定され、生産者等は有機JASマークを付すことや「有機○○」、「オーガニック」との表示ができる。また、遺伝子組換え種子の使用も禁じられているため、どうしても遺伝子組換え食品を摂りたくないという方は、有機JASマークの付された食品を選ぶことにより、この問題を解消することができる。
講演会の模様
食品表示講演会の模様
 また、最近「トレーサビリティ」という言葉をよく耳にするが、トレーサビリティとは日本語では追跡可能性と訳され、この制度の導入により「生産現場から流通過程を経て消費者の口に入るまで」のルートを正確にたどることができる。これらは農林水産大臣が認可した登録認定機関により、生産情報公表JAS規格を満たすものとして認定され、生産者等は生産情報公表JASマークを付すことができる。現在のところは、国民の関心が高く個体管理体制が整備されている牛肉について制定されている。また、豚肉についても規格が制定され、本年7月25日から施行されることとなっている。

砂糖の表示について
 砂糖の表示は、JAS法では平成12年のJAS法改正以降、加工食品品質表示基準によって表示基準が定められ義務表示となった。また一括表示すべき事項もすでに記述したとおりであるが、原材料名の表示は、原材料が1種類の場合には省略できることとなっており、かつ、賞味期限についても品質の劣化が極めて少ない食品として省略が可能となっている。また、食品衛生法に基づく表示についても、JAS法とほぼ同様であるが、三温糖、中双糖などカラメルを添加する場合には、着色料(カラメル)などと表示義務が生じ、JAS法においても原材料が1種類でなくなるため“原料糖、着色料(カラメル)”などと表示義務が生じる。

参加者からの感想等
 講演会終了後に参加者から意見、感想をうかがったところ、「大変有意義な講演会と感じるとともに商品に関する身近な話が聞けて良かった」「JASマークは今まで見過ごしていたが、今後は商品を選ぶときの参考としたい」「遺伝子組換え食品表示について漠然とした疑問を持っていたが理解できて良かった」などの感想が寄せられた。
 当事務所としては、今後も消費者にとって有益な講演会等の機会を積極的に提供していきたいと考えている。
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「好きです! 奄美農業」を大島農業改良普及センターが発刊

 鹿児島県の大島農業改良普及センター(高田真澄所長)は、管内の農業関係機関・団体、農業者等に今後の営農指導や農作業に役立ててもらうため、平成15年度の普及活動成果を取りまとめた「好きです!奄美農業(普及のあゆみ)」を発刊した。同誌は、(1) 普及活動事例、(2) 実証ほ・展示ほの成績、(3) 情報誌・新聞でみる普及活動、(4) 普及センターだより、(5) 職員紹介の5章で構成されている。
 同センターは、同県南西諸島の奄美大島本島(加計呂麻島等の離島3島を含む)及び喜界島の1市4町3村からなる広域を管轄し、奄美の農業・農村を担う農業者の自立的発展を基本に、土地・気象条件を活かした農業の振興と地域の活性化を目指している。このため、同センターは関係機関・団体と連携を図りながら、農業の専門技術者15名のスタッフが効果的かつ効率的な普及指導活動を計画的に展開している。
「好きです! 奄美農業」
 発刊にあたり、高田所長は、「平成15年度は、喜界島の地下ダムが完工するなど農業生産における条件の整備が進み、経営感覚に優れた経営体や新規就農者が増え、農村女性組織“奄美うなりまーじん会”の設立や女性起業グループが結成されるなど新たな動きがありました。一方、奄美地域において避けては通れない台風・干ばつ等の気象災害や柑橘の重要病害であるカンキツグリーニング病が喜界町で確認されるなど多くの課題に直面した一年でもありました。こうした中、当センターでは、“かごしま農業・農村ビジョン21(注)”に基づき、基幹作物であるさとうきび、地域性を活かしたタンカン、スモモなどの果樹、野菜・花き、肉用牛などの生産安定や安心・安全な食料の供給、また、認定農業者への経営・技術相談、青年農業者や新規就農者への支援、地産地消に基づく食育の推進、農村女性の能力発揮の場づくりなど農業者の経営安定と向上に努めたところです。これら活動の成果の一部を取りまとめましたので、ご活用いただければ幸いです」としている。
 さとうきび生産関係の記述については、近年、農家の高齢化や他作物との労力競合に対応するため、営農集団を中心に計画的なハーベスタ等の導入が推進され、機械化が進展している。これらの営農集団が、自主的かつ安定的な運営を行えるよう各種研修会等を通じて支援をしている。具体的には、経営相談会による経営状況の把握や運営方法についての助言指導、パソコンを活用した簿記記帳の巡回指導、製糖開始前にハーベスタのオペレーターを対象としたハーベスタの点検方法や安全な取扱いについての講習会を開催したことなどが紹介されている。
 また、同センターでは、農業・農村を魅力あるものにしていくために、女性農業者の経済的自立と地域活性化を目指し、地産地消を基本とした健康で豊かな食生活の普及の定着を進めると同時に、女性起業グループ並びに女性農業者の育成支援を図ることを重要な課題のひとつとして位置づけている。このため、同グループが年間を通して、地域特産品作りに必要な原材料の確保支援や家庭や学校での食育の場において地域産食材を活用した郷土の味が活かされるようになったことなどが紹介されている。  同センターをはじめとする地域の関係機関・団体の一体となった取組が実を結び、農業従事者の高齢化に伴う労働力不足、過疎化の進行、台風・干ばつ等の厳しい気象条件下での生産における困難な課題を農業者とともに克服されることを期待したい。

(注) かごしま農業・農村ビジョン21とは、平成13年3月に、鹿児島県が国際化・情報化の進展や農村の過疎・高齢化、担い手不足の進行など、農業・農村を取り巻く環境の変化に対応し、「21世紀新かごしま総合計画」の農業分野の実践方策として、農業・農村の展開方向と施策の基本方向を明らかにしたものである。
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JAおきなわ南部地区営農センターの取組み
〜手刈りによるさとうきび収穫請負作業について〜

 15/16年期の製糖期において、翔南製糖(株)(津波次郎社長)管内のJAおきなわ南部地区営農センターではさとうきび収穫にあたり、「さとうきび収穫作業請負グループ」を発足させた。
 従来、同営農センターでは、生産性の向上や生産農家の高齢化、人手不足等に対応するため、ハーベスタによる収穫支援に重点を置いた推進活動に取り組んできたが、土地基盤整備地区以外のほ場では作業効率が低いためハーベスタによる収穫が難しく、生産農家自身が手刈りによる収穫を行なっている状況にある。
 このため、平成12年度から同営農センター地区管内の農家が原料を搬入している翔南製糖(株)(津波次郎社長)では集中脱葉装置を設置し、全茎無脱葉収穫(梢頭部のみを処理し、脱葉を行なわない人力収穫方式)による収穫作業の軽減を図ってきているものの、農家の間では予想以上に全茎無脱葉収穫が普及していないのが現状である。このため同営農センターは沖縄さとうきび振興組合、翔南製糖梶A南部地区さとうきび生産振興対策協議会との連携を図りながら、全茎無脱葉収穫の普及を目的とする全茎無脱葉収穫受委託事業の一環として、収穫請負グループを発足させたものである。
 さとうきび収穫請負作業者の募集については、同営農センターが新聞広告を利用し募集を行い、収穫請負作業班を編成して、高齢者農家や病弱な人を優先して、人手不足に悩む農家へ派遣を行なった。実際には1月上旬に本島中南部から50名の応募があり、35名(うち女性は4名)が採用され、請負作業班は1班1〜4名の合計16班で編成された。同営農センターさとうきび対策室の仲里源勇室長によると「ほとんどの人たちが初対面であることやさとうきびの収穫経験の有無を考慮するなど班の編成には苦労した」とのことである。
 受託にあたっては、担当者が事前にほ場を確認し、請負可能かを判断しているものの、収穫作業を開始してから、雑草が非常に多いほ場や単収が極端に低く作業効率の悪いほ場があったため、作業員からクレームが生じるなどの問題が一部あったことは残念なことであるが、収穫作業を委託した大半の農家からは大変喜ばれた。また、農家からは「今後このような農作業支援活動が確立されることとなれば、来期からは栽培面積をさらに拡大し、生産性を高めたい」との声が多く聞かれ、農家の高齢化、人手不足はもちろんのこと、他作物との競合によりさとうきびの収穫時間が確保できない等といった問題の解消にもつながるものと考えられる。
 平成16年1月12日から4月8日までの収穫期間中に請負作業者に委託した農家数は南部地域営農センター管内約2500戸のうち約100戸、収穫量は約2000トンであった。また、同管内では前年よりも多くの無脱葉原料の収穫という目標を達成し、100トン以上の多量生産農家が82戸と前年を上回る結果となった。
 来期に向けての課題として仲里室長は、受委託事業運営にあたり専任の対策班の設置を挙げ、さらに早い時期から取組みを強化し、収穫作業を実施することにより効果的な支援対策が可能となるのではないかと抱負を述べている。
 来年度以降のJAおきなわ南部地区営農センター及びさとうきび収穫作業請負者たちの活躍により、同地区の収穫作業が円滑に行われ、収穫量・産糖量の増大につながることを期待したい。
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