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地域だより[2004年9月]

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

地域だより
[2004年9月]

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札幌事務所


第2回てん菜研究会の開催
〜特別講演「てん菜直播栽培技術の改善」〜

 平成16年7月28日(水)、(独)農業技術研究機構北海道農業研究センターにおいて、日本てん菜研究会の主催により、第2回てん菜研究会が道内の農業試験場、大学、てん菜製造事業者約130名の参加の下、開催された。この研究会は、日本におけるてん菜およびてん菜糖に関する全ての分野の研究・成果情報の提供・交換ならびに諸外国における研究情報の収集などにより、研究の推進および新技術の実用普及化の推進を通して、てん菜産業及び農業の発展に資することを目的としている。
 同研究会は、午前と午後の部の2部構成で、病理、育種、栽培など各分野にわたりてん菜の研究者からそれぞれ発表がなされた後、参加者からの質疑応答があった。
稲野一郎氏写真
講演中の稲野一郎氏
 午後の部の研究発表前に、平成12年度からてん菜直播栽培技術の改善に取り組んでいる北海道立十勝農業試験場生産研究部栽培システム科研究主査稲野一郎氏が「てん菜直播栽培技術の改善〜これまでの成果と今後の展開〜」と題した特別講演を行ったので、その概要を紹介する。

はじめに
 てん菜直播栽培技術が普及しない主な要因として、生育初期段階における出芽率の低下や、移植てん菜と比較して根部が長くなるため掘り残し損失が発生しやすく、収穫精度が劣ることなどが挙げられ、栽培技術の改善が強く求められている。そこで、今回は平成14年度にとりまとめた出芽率の向上や収穫精度の技術向上およびヨーロッパで一般的に行われている40cmから50cmの狭畦栽培の栽培方法などについて紹介する。

出芽率の向上
 出芽率の向上については、播種前の適切な砕土と鎮圧輪の強化が重要である。今回の研究では、一般的に普及している傾斜播種板方式の播種機を用いて出芽率の向上を図った。その結果、播種前の砕土状態を20mm未満の土塊径割合の90%以上にすることにより、安定した収量が得られるとされている出芽率85%以上を確保できることが明らかになった。しかし、粘質系沖積土では砕土状態が良くても、出芽率が劣ることがあり、この改善が今後の課題とされている。
 また、播種機後部には幅230mmの鎮圧輪が取り付けられているが、鎮圧力を高める方法として、幅の狭い鎮圧輪(幅115mm)と鎮圧輪の上部に錘を10kg載せた結果、かなり安定的な出芽率を得ることができ、さらに、土壌別に鎮圧輪が出芽率に及ぼす影響を調査した結果、火山性土や粘質系沖積土に効果があることが明らかになった。

収穫精度の向上
 ビートハーベスタの掘取り刃と作業速度の関係を調査するため、直播ほ場において国産収穫機の掘り取りブレード3種(標準刃、石礫地用、粘質地・石礫地用)を用いた結果、作業速度は、標準刃が1.9m/s、石礫地用は1.7m/s、粘質地・石礫地用は1.5m/sを超えると掘り残し損失が増える傾向にあることが明らかになった。

狭畦栽培法
 直播狭畦栽培では、畦幅が慣行の60〜66cmよりも45cmで行うと、二倍体品種(注1)では10,000本/10a、三倍体品種(注2)で9,000/10aとなり、二倍体品種の方が増収効果が高かった。また、防除通路(無播種畦)を設けても、補償作用により隣接する畦のてん菜が大きくなるため、収量はほとんど変わらないことも明らかになった。

現在の取り組みについて
 低地土(砕土しにくい土)対策として、砕土前に鎮圧を施すことによる砕土性の改善、毛管水の上昇を促す研究、収穫作業の効率化を図るため輸入自走式4畦収穫機(6畦を改造)の実用化を目指している。また、湿害対策として、高畦播種の研究、風害対策として、カバークロップ(注3)、不耕起栽培などが挙げられる。

不耕起栽培法について
 EUにおいててん菜の主要生産国であるドイツでは、生産コストの削減、作業時間短縮、エロージョン対策(注4)などの理由により、不耕起栽培の面積が拡大している。北海道の冷涼、湿潤な気候では、不耕起栽培を行うと従来の栽培法よりも湿害を被りやすいことから不耕起栽培を北海道に導入することは相当のリスクを伴うことになるとみられる。しかし、不耕起栽培に見合う土壌条件の選択や排水対策の徹底を図るなどの措置を講ずれば北海道にも適応できる栽培方法であると考えられる。

 今後、てん菜の生産現場では、農家数の減少による農家経営の大規模化および農家の高齢化問題や国産糖製造経費の削減が求められるなど、大変厳しい情勢にある。この状況下にてん菜を継続的かつ安定生産していくためには、直播栽培を導入することが重要であると考えられることから、てん菜およびてん菜糖に関する研究成果の実用化ならびに糖業関係者による農家への直播栽培の普及に期待したい。

(注1) 二倍体品種
 本来の染色体数をもつ品種
(注2) 三倍体品種
 染色体数を倍化した4倍体系統を親と交配した品種で、染色体数の多い品種の種は大きい
(注3) カバークロップ
 被覆植物:作物を作らない期間に土壌保全を目的に作付けされるイネ科やマメ科の植物で、クリーニングクロップとも呼ばれている。
(注4) エロージョン対策
 土壌流出対策
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東京事務所


砂糖の特質と健康性について
〜日本菓子教育センター研修会〜

 平成16年7月29日(木)、中野サンプラザにおいて「日本菓子教育センター第3回研修会」が開催された。これは、同センターが全国の製菓学校の指導者を対象に毎年開催しているものである。
 その中で全国和菓子協会専務理事の藪光生氏が原材料入門として「砂糖の特質と健康性について」と題し、製菓原料としての砂糖の重要性、砂糖と健康の関係について講演されたので、その概要を紹介する。

製菓原料としての砂糖の特質
 まず、砂糖の種類、原料と製法について解説し、上白糖は砂糖の結晶に転化糖液を振りかけてしっとりとした感触をだしているもので我が国独特のものであることや、和三盆と呼ばれる伝統的な製法で作られる独特の風味を持つものがあり、和菓子の原料として珍重されていることなどを紹介した。砂糖は精製度が高いものほど純白で透明感があり、限りなく100%に近い糖度になることや糖種によって味や風味が異なり、製造メーカーによっても味が多少違うこと、結晶度の大きいものほど雑味が少ないことなどを詳しく説明された。
 次に砂糖の特性として浸透圧、水分活性と保水性、褐変反応について、その代表例として餡を挙げた。餡は小豆の中の餡粒子に砂糖を加え、加熱してできるが、その際浸透圧によって餡粒子に砂糖が入っていくことにより糖蜜によって包み込まれるためでん粉が流失しない現象を紹介し、さらに砂糖が水分を抱え込んで離さない性質(保水性)はでん粉の老化を防ぐとともに水分活性も抑えるため腐敗を防止することから、この特性を活かして砂糖を菓子に使うことにより日持ちがしていつまでもしっとりとしたお菓子を食べることができることを力説した。
 藪氏は「和菓子は砂糖の持つこうした特性がなければ成り立たないとも言える。砂糖の持つ力を上手に利用すれば、美味しい菓子作りができることを生徒達に教えていただきたい」と訴えた。
 砂糖の消費についても触れ、日本では近年砂糖の消費が減っていると言われるが、異性化糖や加糖調製品を含めた甘味量全体ではそれほど減っていないことを強調された。また、戦前・戦後を通して砂糖の消費量を見た場合、戦後、砂糖が大量に消費された時期が続いたのは、戦争中に砂糖を食べることができなかった時代の反動であるとも言え、現在の消費量はむしろ落ち着いた水準ではないかとの見解を示された。

砂糖と健康の関わりについて
 砂糖と健康の関わりについては、トロント大学医学部のG・H・アンダーソン教授の「砂糖の摂取と健康」と題した論文を紹介するとともに、糖尿病、肥満との関係、脳との関係などについて説明された。
 砂糖は純粋な炭水化物で、摂取された炭水化物は体内で最後にブドウ糖となって体に取り込まれる。これは砂糖以外の米、麺類といった炭水化物であれば全て同じであり、砂糖だから他の炭水化物と異なるわけではない。グラニュー糖100gのカロリーは387kcalであり、同量の米やスパゲテイと大差がなく、肥満や糖尿病などの生活習慣病の原因を単純に砂糖の摂取と決めつけるような砂糖悪玉説は誤りであると指摘した。脳との関係について言えばブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源であるとともに、精神の安定に欠かせない神経伝達物質であるセロトニンの合成とも深く関わっている。セロトニンは肉などに含まれるアミノ酸のトリプトファンから作られるが、このトリプトファンを脳内へしっかりと送り込むためにはブドウ糖の働きがなくてはならないと述べた。
 また、新甘味料、特に糖アルコールについては、砂糖に比べて (1) 甘味度が低いこと、(2) カロリーが低いこと、(3) う蝕性が低いことなどの特徴があるが、菓子作りにおいて砂糖にとって代わるものではなく、添加物として砂糖の持つ保水性などの特性をより活かすために使うのが有効ではないかとの見解を示した。
 藪氏は最後に、「残念なことに甘いものは太るなどと言われ、砂糖は大きな誤解を受けているが、砂糖も他の炭水化物も体にとっては同じエネルギー源であり、砂糖を摂ったからといって何ら問題はないということをこの機会にしっかり認識していただきたい」と述べ、講演を終えられた。
 なお、砂糖を正しく理解するための参考として機構作成の砂糖に関するパンフレット(栄養指導に活きる砂糖の正しい知識など)を配布した。
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横浜事務所


横浜市鶴見福祉保健センターが「食の安全・安心を考える」シンポジウムを開催
〜食品の信頼回復への取り組み〜

 平成16年7月21日(水)、横浜市鶴見区の鶴見公会堂において、「食の安全・安心を考える」シンポジウムが開催された。これは、横浜市が策定した「平成16年度横浜市食品衛生監視指導計画」に基づき、市内各区の福祉保健センターの主催により開催されているものである。同シンポジウムは基調講演とパネルディスカッションで構成され、基調講演は(財)日本冷凍食品検査協会顧問の森田邦雄氏(前厚生労働省東京検疫所長)を迎えて行われ、パネルディスカッションには行政代表として横浜市衛生局食品衛生課長、消費者代表として鶴見区食生活等改善推進員会会長、鶴見区消費生活推進員区代表、食品業界代表として鶴見区食品衛生協会会長、製菓業界代表の計5名がパネリストとして参加し、討論を通じて行政の施策や食品産業界の取り組みについて紹介し、参加者への理解を求めた。
 ここでは、基調講演「食品の安全性と消費者」の概要を紹介する。

消費者が食品に求めるもの
 現代の消費者が食品に求めるものとは、まず美味しさ、次に健康、そして価格だと考えられる。これに安全・衛生、安心を伴うことにより食品に対する信頼が初めて生まれると考えている。
 今回のテーマである“安全・衛生”と“安心”の違いを一言で表すならば、前者は科学に基づくもの、後者は心理的なものと言える。科学に基づき安全・衛生を証明し、それを消費者に納得してもらい安心感を得てもらうことにより、信頼に結びついていくと考えている。

消費者の食の安全性に関する意識調査
 消費者の食の安全性に関する意識調査について、大手新聞社および東京都などが最近行った意識調査の結果を紹介しながら進められた。最近、食の安全性について不安を感じているかについては、「大いに感じている・多少は感じている」と回答した人は約80%であった。これは他の同様の調査でも同じような割合であり、具体的にはBSE、鳥インフルエンザなどの問題について不安を感じていると回答する消費者が多かった。
 また国の食品行政を全体として信頼しているかについては、「大いに信頼している・多少は信頼している」と回答した人は約50%であり、他の同様の調査結果に比べると若干高い。これは、日米BSE問題で全頭検査を含む日本と同等の措置を米国に求めている日本政府の姿勢に同調する消費者が少なくないことによるのではないかと考えられる。
 食品の安全性を高めるためにどのような対策が必要か(複数回答)については、安全性に対する生産者やメーカーによる意識の向上(57%)、生産や加工から販売までの情報公開の促進(51%)、食の安全に関する法律違反への罰則強化(51%)、安全性に対するスーパーなど販売店による意識の向上(48%)、行政による監視や検査体制の充実(45%)などが高い割合となっている。
 BSE問題発生以降、食に関する意識・行動が変わったか(複数回答)については、食の安全に関する情報について注意するようになった(96%)、安全性が問題になった食材や食品を避けるようになった(77%)、輸入食材・食品は生産国を確認するようになった(85%)、自宅で料理したものを食べるようになった(61%)などが高い割合となっている。一般的に消費者は国産品に対する安心感、輸入品に対する不安感を感じていると考えられる。
 食材や食品購入について心がけていること(複数回答)については、消費期限や賞味期限に余裕があること(75%)、信頼できる生産地・生産者・製造者であること(70%)、食品添加物が少ないこと(61%)、信頼できる販売店であること(58%)が高い割合となっている。この中で、“信頼できる販売店”というのは非常に重要な項目で、消費者に対し実質的に食品の情報提供を行っているととらえることができることから、消費者の安心感を高めるために、どのようにしたら信頼を得る販売店になれるかについて考えることが重要であると指摘した。
 また、消費者が食品に対し危険を感じるものをまとめてみると、食品添加物、残留農薬、残留動物用医薬品、環境汚染物質(ダイオキシン、水銀など)、輸入食品、遺伝子組換え食品、アレルギーを起こす物質、カルシウム・鉄分の不足、肥満などを助長する栄養素、食中毒菌等の病原微生物、寄生虫などであることを紹介した。

食品衛生に係る危機管理
 食品衛生に係る事故などを起こした場合、危機管理上の以下の重要項目について説明があった。
(1)危機の判断
 まず、事故などが起きた場合には経営者に正しい情報を早く知らせ、そして経営者は危機を過小に評価しないことである。
(2)冷静な対応
 消費者をはじめ行政、マスコミに対してはどのように説明するのか、また企業として販売店や流通に対してはどのように説明するのかを全体像を把握しながら客観的に説明することが肝心である。説明対象者によって説明が異なると不信を買うことにつながるので冷静な対応を心がけるべきである。
(3)被害の拡大防止
 消費者の安全性を確保する観点から、被害の拡大防止対策を行い、被害を最小限に抑えることにより、消費者を危険から守ることを最重要課題としなければならない。
(4)早期公表の判断
 被害拡大防止のためには、正確な情報を早期に公表することである。マスコミを拡大防止に協力してもらう関係にするという考え方で臨むべきである。
(5)原因究明
 原因究明については、ある工場内の特定のセクションだけが問題と考えるのではなく、会社全体で原因究明を図るなどの措置を講じなければ再発防止策とは呼べない。

リスクアナリシス(リスク分析)について
 リスクを軽減し、回避するなど安全を確保するための方法論としてリスクアナリシスという手法が導入されている。これはリスクアセスメント(リスク評価)、リスクマネージメント(リスク管理)、リスクコミュニケーションという要素から構成され、生活を豊かで安全なものにしていくための取り組みである。
 このうちリスクコミュニケーションについては、信頼される情報の発信源、わかりやすい説明、そして全ての人に理解してもらう努力(理解してもらってはじめてコミュニケーションが成立)が重要である。
リスクアナリシスの構成要素
リスクアセスメント
(リスク評価)
人の健康被害を起こす物質(ハザード)が、健康被害を起こす確率やその程度(どのくらいの分量でどういう症状かなど)、どこでどのように汚染されるのかなどの性質や特徴を科学的な知見に基づき評価すること
リスクマネージメント
(リスク管理)
リスクアセスメントにより評価されたデータに基づき、生産から流通までの各段階でどこで対策を行うべきかなどを判断し実行すること
リスクコミュニケーション 生産者および消費者に限らず行政担当者、マスコミ、研究者などすべての人々が、リスクアセスメント及びリスクマネージメントに関係する情報を等しく共有し意見を述べ、理解に努めること

パネルディスカッションにおける質疑応答
 基調講演終了後、森田氏がコーディネーターとなり質疑応答などの意見交換が交わされた。

・質問: 食品安全情報を横浜市のホームページで見ようとすると知りたい情報がなかなか見つからないことがあるが、どのような改善が図られているのか。
 回答: 横浜市では昨年11月に消費者代表も交えた食品安全懇話会というものを立ち上げており、これらの意見を踏まえながら年末くらいまでにはホームページの内容を充実させたいと考えている。
・質問: 食品の期限表示は具体的にどのように決めているのか。
 回答: 期限に関しては原材料の耐久テスト結果や発売する季節などを勘案して決定しているが、商品の品質特性によるところが大きい。
・質問: 最近、日持ちの良い食品が多くなってきたと感じているがその原因は何か。
 回答: 日持ちがすることについては、主に包装技術の向上などによるものもあるが、製造工程管理や流通管理の向上による結果であり、食品添加物だけに頼ることが少なくなってきていることも一因ではないか。
 最後に、横浜市鶴見区福祉保健センター生活衛生課長が「横浜市鶴見区としてはリスクコミュニケーションに関するシンポジウムは今回が初めての開催であるが、今後とも、区民の方々から質問や提言を積極的に発信していただき、行政に反映させていきたい」と結んだ。
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名古屋事務所


みんなで考えたい氏@東海の食と農
〜東海農政局「移動消費者の部屋」で砂糖のコーナーを出展〜

 東海農政局では、平成16年7月20日(火)〜22日(木)の3日間、金山総合駅連絡通路橋において「食・大好き 花プラザ〜みんなで考えたい氏@東海の食と農」と題した「移動消費者の部屋」を開設した。当機構名古屋事務所も消費者に対して正しい砂糖ならびに甘味資源作物の知識を普及するために移動消費者の部屋に参加した。
 同農政局庁舎内の「消費者の部屋」では、特別展示として約1ヵ月ごとにテーマを設けて開催しており、一般消費者を対象に農林水産行政などの情報を公開・提供するとともに食品産業との交流を深めてもらうために、展示のほかにも一般消費者からの相談、問い合わせに応えているところであるが、さらに多くの消費者への理解を深めてもらうために、庁舎外において「移動消費者の部屋」を開設しており、今年で3回目の開催となった。
移動消費者の部屋の様子
移動消費者の部屋の様子
 今年の移動消費者の部屋は、農業全般に対する理解を深めるとともに、「食の安心・安全」における農林水産省及び東海農政局の取り組みや東海地方で作られる農産物の紹介などが行われた。会場には農と食を紹介したパネルの展示や栄養士による簡単でバランスのとれたレシピの紹介などのコーナーが設けられ、好評を博していた。
 当機構からは一般消費者に対し、(1) 北海道ではてん菜、鹿児島県南西諸島および沖縄県ではさとうきびを原料として砂糖が生産されていること (2) 愛知県には精製糖メーカーが2社あり、消費者に安全で安定的な砂糖の供給を行っていること (3) 東海地域における砂糖の消費が全国の約2割を占めていることなどを紹介した。
 また、一般消費者からは「砂糖はどのようにして作られるのか」、「砂糖の種類の違いについて教えて欲しい」などの質問が寄せられ、当機構が作成したパネル、パンフレット、てん菜およびさとうきびの模型を使って説明を行った。
 このほかには、独立行政法人農林水産消費技術センターが清涼飲料水に含まれる果糖、ブドウ糖、ショ糖などの含有量を確かめる実験を行っていた。
 第3回目を迎えた「移動消費者の部屋」においても、一般消費者には砂糖に対する誤解が依然として多いことがわかった。このため、当事務所としても砂糖の誤解を払拭するために、砂糖ならびに甘味資源作物の正しい知識の普及をさらに行う必要性を感じるとともに、今後も地道な活動を展開していきたいと考えている。
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大阪事務所


「食品に関するリスクコミュニケーション」の意見交換会が大阪市で開催

 平成16年7月27日(火)、「食品に関するリスクコミュニケーション」〜農薬のリスクアナリシス(リスク分析)に関する意見交換会〜が内閣府食品安全委員会、厚生労働省、農林水産省近畿農政局、独立行政法人農林水産消費技術センター神戸センターの主催により、大阪市城東区のクレオ大阪東において開催され、一般消費者をはじめとする210名が参加した。
 山川雅典近畿農政局長による開会の挨拶の後、徳島大学総合科学部教授で内閣府食品安全委員会リスクコミュニケーション専門調査会座長を務める関澤純氏による「食品のリスクアナリシス−農薬を例として−」と題した基調講演が行われた。
関澤氏写真
講演中の関澤氏
 関澤氏は、食の安全に関心が強く寄せられている背景として、輸入食材および加工食品の増加や遺伝子組換えなどの新技術の導入により、消費者には生産現場や流通過程が見えにくく理解が十分されていないことや、情報の氾濫により、一般消費者へ適切な情報を提供できる仕組みが十分確立されていないことなどを指摘した。また、食品安全の新しい考え方を「食品には本来さまざまな成分が混在しているため、絶対的に安全とは言えないが、安全性は有害影響の起きる可能性(リスク)により判断できるものである」とした上で、生産現場から食卓まで(From Farm To Fork)の安全性を判断する手段として、「科学的な安全性評価(リスク評価)、安全管理(リスク管理)及びリスクコミュニケーション」の3つの要素を挙げ、これらが一体となって「リスクアナリシス(リスク分析)」として機能することを目指すとともに、その重要性を説明した。
 講演後に行われたパネリストによる意見交換会では、座長である関澤氏から「消費者からの情報をどのように伝えていくのか」との問題提起に対し、姫田尚農林水産省消費・安全局消費者情報官が「行政では、消費者からもたらされた食の安全に関する情報に対して適切に対応できるよう検討しているところであり、またこの問題については、企業内部のコンプライアンスが大事であると考えている」との発言があった。
 鳥インフルエンザの発生もあり、関西地区では消費者の食の安全に対する感心が高まりをみせている中で、今回のような意見交換会が実施されたことは非常に有意義であると感じるとともに行政および関係者によるリスクアナリシスへの取り組みが一般消費者に幅広く普及することを期待したい。
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神戸事務所


一流パティシエの指導でケーキ作り
〜コープこうべ子供向け体験教室〜

 生活協同組合コープこうべでは、組合員向けに様々な生活文化講座を開講しているが、夏休み期間中には子供たちにさまざまな体験をしてもらおうと、子供向けの特別講座が実施されている。この子供向け講座のひとつとして、平成16年7月27日(火)にケーキ作り体験教室がコープこうべ生活文化センター(神戸市東灘区)で行われた。
高杉氏写真
実技指導する高杉氏
 講師には神戸市内の洋菓子店「御影 高杉」のチーフパティシエとして活躍されている高杉良和氏を迎えた。同氏は数々の洋菓子コンクールで多数の入賞歴がある人気パティシエで、その高い技術が認められ業界内の技術研修会などで講師を務めるなど各方面で後進の指導に当たっている。講座を企画したコープこうべ生活文化センターによると、子供たちが一流の技術を持つ同氏に直接指導を受けてもらうことによって、ケーキ作りの楽しさを体験してもらいながら、その高い職業意識にふれてもらうことを講座のねらいに置いたという。
 講座当日は小学校5年生から中学1年生までの生徒約20名が参加し、チョコレート、無塩バター、卵黄、卵白、グラニュー糖、薄力粉、モンキーバナナ等を材料としたショコラ・ケーキを作った。
 講座は、まず講師が材料の混ぜ方、ケーキ型への生地の入れ方などの実演をしながら説明され、その後子供たちが実際に作るという形で進められた。ケーキ作りの説明の途中で講師はチョコレートの融点など専門的知識も織り込みながら、ケーキ作りの手順をとてもわかりやすく説明され、子供たちも熱心に聞き入っていた。実際に作ってみると、簡単そうに見えた材料の混ぜ方がうまくいかない子供もいたが、それぞれケーキ作りを楽しんでいる様子であった。
完成写真
完成したショコラ・ケーキ
 デコレーション用のショコラガナッシュ(チョコレートと生クリームなどを混ぜて作ったクリーム)を準備し、講師が用意したソルベ・フルーツ(シャーベットのフルーツ添え)を賞味しながらケーキ本体がオーブンで焼き上がるのを待った後、仕上げにデコレーションを施してケーキを完成させた。子供たちは自分で作ったケーキを大事そうに箱に詰めて持ち帰った。
 講座終了後、高杉氏に話をうかがったところ「実習では本物のフランス菓子づくりを実感してもらいたいと思い、プロが大人向けに作るケーキと全く同じ配合、手順を紹介しました。子供たちには出来上がりの良し悪しにあまりこだわらず、とにかくケーキ作りを楽しんでもらいたいですね。」とのことであった。
 参加した子供たちは、「自分のケーキが目に見える形で出来上がるのが楽しかった」「家でも今日覚えたケーキ作りに挑戦したい」などと感想を述べ、ケーキ作り講座を通じて本格的なフランス菓子に親しむ楽しい体験となったようであった。
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福岡事務所


南三島さとうきび生産者組織が「第1回南風 (はえ) きび会」を開催

 平成16年7月15日(木)〜16日(金)の2日間、鹿児島県の沖永良部島において徳之島、沖永良部島および与論島のさとうきび生産者組織の参加の下、南三島さとうきび生産者組織研修・交流会「第1回南風きび会」(沖永良部農業改良普及センター、沖糖会主催)が開催された。
「南風きび会」は、各島のさとうきび生産において指導的な役割を担う徳之島の「徳之島さとうきびジャンプ会」(市来昇会長)、沖永良部島の「沖糖会」(外山光政会長)、与論島の「愛糖会」(永井弘会長)の3組織の愛称である。同会は、組織間で定期的に交流する機会を持つことにより、情報を共有しながら規模拡大を目指し、農家の抱える課題の解決策や栽培技術の向上などについての意見交換を行い、さとうきびの生産振興に資することを目的としたものである。同会発足のきっかけは、平成15年11月に徳之島で南三島の大規模さとうきび生産農家が参加して開催された「うぎづくりキバラディ講座(「うぎ」はさとうきび、「キバラディ」は頑張ろうという意の方言)」(徳之島農業改良普及センター主催)で、「引き続き、三島の農家が定期的に交流する機会を設けて欲しい」と参加者から要望を受けて徳之島農業改良普及センターおよび沖永良部農業改良普及センターが中心となり関係機関・団体と連携して発足させたものである。
 初日は和泊町内において室内研修会が開催され、林川修二鹿児島県農業試験場大島支場病害虫研究室主任研究員が「さとうきび害虫の生態と防除」、田代一美鹿児島県農政部経営技術課専門技術員が「雑草対策と土づくり」と題してそれぞれ講演された。また、3名のさとうきび生産農家が経営状況などについて事例発表を行ったほか、各生産者組織の会長からそれぞれの組織の活動状況について報告があった。2日目は、屋外での現地検討会が行われ、さとうきび株出管理機(株揃、根切排土、施肥、除草剤散布の4つの作業を一工程で実施する作業機)による沖糖会会員の実証ほ場などの見学を行った。
室内研修会写真
室内研修会の様子
現地検討会写真
現地検討会の様子
 初日の室内研修会で林川主任研究員は、さとうきびの害虫の中でも被害が大きいとされるカンショシンクイハマキ、イネヨトウ、ハリガネムシ、カンシャワタアブラムシ、カンシャコガネナガカメムシの5重要害虫について、虫毎の発生生態と防除方法について写真・データなどを活用しながらわかりやすく説明を行った。依然として、ハリガネムシの食害による株出不萌芽の被害が発生していることから、性フェロモントラップにより雄成虫を大量誘殺し、生息密度を低下させながら、薬剤を上手に活用して防除していく必要があるとした。
 次に、田代専門技術員は、適期植付け・適期管理作業によってさとうきびの生育を促進させることが基本であるが、一方で雑草も生育旺盛になることも念頭に置く必要があることと適切な雑草対策が実施できる経営規模の見極めが重要であると指摘した。また、土づくりは、深耕作業、排水対策などを総合的に実施することにより、さとうきびの生産環境を改善し土壌の生産性を向上させることが基本であるとした。
 今後とも三島の生産者組織による交流のさらなる活性化により栽培技術の一層のレベルアップを図るとともに各組織が地域の模範となり、同県のさとうきび生産・甘しゃ糖業の発展の一翼を担うことを期待したい。
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宮崎出張所


宮崎県産の野菜を使ったお菓子が作られる
〜「日向 (ひむか) の恵みをありがとう」の紹介〜

 宮崎県延岡市の菓子店・虎屋において、にんじん、かぼちゃ、ごぼう、ピーマン、大根、紫芋の6種類の県産野菜を使った新しい焼き菓子「日向の恵みをありがとう」が開発された。これは、昨年県内の製麺会社が粉末野菜を麺に練りこんだ商品を開発したことからヒントを得て、この粉末野菜を使って健康的で新しいお菓子を開発するとともに、粉末野菜を使ったお菓子の普及を通じて県内野菜の消費拡大につながることをねらいとしたものであり、昨年12月に宮崎県物産振興センターからお菓子の開発依頼が同店を含む県内の菓子店にあったことがきっかけである。
 同店が開発に協力することになってからは、同センターから6種類の野菜の粉末のサンプルが送られ、そのうちのいずれかの野菜で新商品を試作して欲しいとの要望が寄せられたが、同店はそれぞれの野菜の持ち味を活かしたお菓子を考案すべく、6種類全ての試作に取り組んだ。同店社長の上田耕市氏は「約3ヶ月の試行錯誤の末、材料に粉末アーモンドを程好く加えることにより、しっとりした美味しいお菓子になった」と開発までの苦労を語ってくれた。
サンプル写真
粉末野菜のサンプル
お菓子写真
新しくつくられたお菓子
 お菓子の材料は、粉末野菜、砂糖、粉末アーモンド、卵白、小麦粉といたってシンプルである。粉末野菜は野菜を天日干した後、遠赤外線で乾燥させて粉末状(生野菜1kgに対し乾燥状態で約50〜60g)にしたものであり、全材料に対して野菜の粉末は、約3分の1以上を占めている。お菓子の大きさは、ひと口サイズと食べやすく、口の中に入れるとふんわりしっとりとした食感とそれぞれの野菜の風味が口の中いっぱいにひろがってくる。パッケージデザインは上田氏の中学時代からの友人で、宮崎市在住の彫刻家奥村羊一氏が担当し、子供達とウサギ、猫がそれぞれの野菜を抱えながらにっこりと微笑んだ表情で一列に並んでおり、ほのぼのとした印象を与えてくれる。また、一見パッケージは全て同じ絵柄に見えるが、一包装に2種類のお菓子が入っており、中身と同じ野菜を持った子供や動物を一歩手前に出すことで、どの野菜の味のお菓子が入っているかわかるように工夫されている。
 上田氏は、「宮崎県の方言で『よだきい・のさん』(注1)という言葉があるが、その反対語に宮崎県の旧称である『日向(ひむか)』(注2)という言葉をお菓子のネーミングに使うことにより、新しいお菓子の中身、デザイン全てに込められた“ひむか”の前向きなメッセージを感じていただきたい。今後は、お菓子の大きさをひと口サイズのものから、もう少し食べ応えのある大きさに変えたり、デザインをした奥村氏のパッケージでお菓子の詰め合わせセットの開発などに取り組んでいきたい」と抱負を述べていた。

(注1)面倒臭いの意味
(注2)日に向かうの意味
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沖縄県玉城村で作られるさとうきび酢への取り組み

 沖縄県玉城村は、沖縄本島南部の東側に位置しており、沖縄県内でも歴史の古い村で、豊かな自然と風光明媚な景色に恵まれている。同村における過去5年間のさとうきびの平均面積、単収及び生産量はそれぞれ、180ha、6,401kg、11,504tであり、本島南部11市町村のうち4番目に大きい規模となっている。また、同村農業出荷額におけるさとうきびは野菜に次いで2番目となっており、村の地域経済を支えている重要な農作物のひとつとして位置付けられている。
 平成15年玉城村において、玉城村の農家でつくられたさとうきびを原料とした「さとうきび酢」が開発された。開発された背景には、沖縄県玉城村の商工会が沖縄県の基幹作物であるさとうきびを砂糖の原料としてだけではなく、新たな魅力を引き出すために、原材料としての活用法を開発することにより、同村さとうきびの生産量の増大に資することを目指したことが挙げられる。開発の契機となったのは、平成10年6月に同商工会の役員研修において、かつての黒砂糖の製造方法(馬に引かせたサーターグルマ(砂糖車)の歯車と歯車の間にさとうきびを挟んで搾汁を抽出したものを平鍋で濃縮させる方法)を学んだことである。この時に使われる平鍋の洗浄水が甘かったことから、これを素焼の甕に入れて発酵させることにより自家製酢を作っていたという話を足がかりに、平成11年から商工会の事業としてさとうきびから酢を製造する方法の開発に取り組むこととなり、平成15年に商品化が実現した。
 さとうきび酢は、さとうきびの搾汁に泡盛を加えて(泡盛のアルコール分は発酵の段階ですべて酢酸に変化する)1ヶ月半ほど酢酸菌を発酵させた後、5〜6ヶ月間熟成させて作られている。(通常食酢の多くは製造工程において工業用アルコールを加えられている。)原料となるさとうきびがそのまま使われるので、マグネシウムやカリウムといったミネラル成分を豊富に含んでおり、高血圧の原因とも言われるナトリウムが少なく、活性酸素の働きを抑えるポリフェノールを多く含んでいる。その効能としては、疲労回復、動脈硬化予防、高血圧予防が期待できるとされている。さとうきび酢は、ほかの飲料用醸造酢に比べてほんのり甘くやわらかな風味があるため飲みやすいことや、酢が昨今の健康ブームにより飲料として浸透していることから、健康飲料として使われているが、調味料としても活用できる。さとうきび酢の色には赤色と黄色の2種類があり、使われているさとうきびの品種によって異なる。赤色は農林10号、黄色はオガサワラという品種から作られている。また、このさとうきび酢は平成15年11月に開催された「第27回沖縄の産業まつり」において優秀県産品として県知事賞を受賞し、全国各地の物産展においても好評を得ている。
充填作業写真
さとうきび酢の充填作業
さとうきび酢写真
赤色と黄色のさとうきび酢
 玉城村商工会の事務局長の照屋盛豊氏によると、今後、さとうきび酢の販売拡大を目指したいとする一方、さとうきびそのものについては、「将来さとうきびの歴史資料館や体験ほ場、発酵食品館、ふれあい広場などを設置した「さとうきび文化村」の設立を目指しており、さとうきびを県内外問わず幅広く普及、認識してもらうとともに、コミュニケーション空間として位置付けることにより、人の輪を広げていきたい」とさとうきびにかける想いを語ってくれた。
 これからも玉城村で生産されるさとうきび酢が沖縄県の人々だけでなく、日本全国の人々の健康を支える役割を果たしていくとともに、さとうきび酢の原料となる玉城村のさとうきび生産量の増大を期待したい。
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