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地域だより[2006年12月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2006年12月]

●福岡事務所 ●福岡事務所 ●那覇事務所 

福岡事務所


平成18年度第1回砂糖に関する地域情報交換会の開催について

 平成18年10月2日(月)、当機構福岡事務所は福岡第一ビル内三鷹ホールにおいて、第1回砂糖に関する地域情報交換会を開催した。
 同交換会は、行政機関、国内産糖製造事業者、精製糖製造事業者、異性化糖製造事業者、砂糖流通業者、ユーザー、一般消費者などが一堂に会し相互に意見交換を行うことによって、各地域における砂糖やその原料作物、砂糖制度などについて相互に理解を深めてもらうとともに、今後の業務や生活に活かすことを目的に平成12年度から毎年開催されているものである。
 当事務所はさとうきびの生産及びそれを原料とした国内産糖を製造する地域を管内とする特性があることから、当日は、国内産糖を原料として精製糖を製造する者(5社11名)、異性化糖製造事業者(1社1名)、国内産糖製造事業者(6社7名)、国内産糖指定倉庫(4社5名)、砂糖代理店(4社4名)、砂糖特約店(8社12名)及び国内産糖検査機関(2名)、合わせて28社1機関、42名を参集範囲として行われた。
 まず、農林水産省生産局特産振興課加工第2班北川課長補佐より、「砂糖をめぐる事情」と題して、新制度及びWTO農業交渉を中心に講演が行われ、次いで、当機構調査情報部加藤部長より「砂糖をめぐる国際情勢」と題して、諸外国のエタノール事情を中心に講演が行われた。両氏の講演内容は次のとおりである。

T 「砂糖をめぐる事情」 
1.砂糖及び甘味資源作物政策をめぐる現状と課題
砂糖の一人当たり消費量は減少傾向で推移し、需要量が低迷する中、国内産糖生産量は70〜80万トンで推移してきたが、ここ数年のてん菜の豊作等により、平成16砂糖年度では90万トンを超え、この結果、輸入糖は140万トンを下回る状況となっている。また、国内産糖の内外価格差はてん菜糖で約2.6倍、甘しゃ糖で約8.4倍となっており、内外価格差の縮小と国民負担の軽減を図るため、原料生産段階と砂糖製造段階において、コスト低減を図ることが必要となっている。
 そして、さとうきびの生産構造は、農家戸数の減少、高齢化の進行、零細規模の農家が大宗を占めること等、極めて脆弱な状況であり、収穫面積、単収、糖度、生産量ともに低迷している。さとうきびの粗収益の約8割が国等からの補助によるもので、生産コストの低減を図ることが課題となっている。
 また、甘しゃ糖ついては、製造段階においてコスト低減が図られてきたところであるが、さらなるコスト低減に向けて、操業度の確保やさとうきびの品質向上による歩留りの向上等を検討することが必要とされているところである。
 精製糖については、現在14社13工場体制となっており、再編・合理化を推進してきているものの、内外価格差があり、WTO等国際環境が厳しくなる状況を踏まえ、更なる合理化による精製コストの低減を図ることが必要とされている。
 さらに、糖価調整制度について、調整金収支に700億円余りの赤字が発生しており、一方、砂糖生産振興資金は17年度末残高が約500億円となる見込みであり、調整金の累積差損の現状を踏まえて、今後の扱いを検討していく必要がある。

2.砂糖及びでん粉に関する新たな政策の展開方向
 新制度の具体化に向けた法案が先の通常国会で成立したところである。その具体的な内容について、生産者に対する政策支援は、最低生産者価格が廃止されることにより、原料作物の取引価格を生産者と製造事業者との事前の取り決めに基づき製品の販売価格を分配する方式により形成し、生産者には取引価格と生産費の差に着目した支援を実施する。また、製造事業者に対する政策支援は、最大限の合理化が行われることを前提に支援を実施することとしている。
 この政策支援は改正糖価調整法に基づき農畜産業振興機構が実施し、てん菜については、国が品目横断的経営安定対策として実施することとしている。
 また、調整金収支の均衡による安定的な制度運営を図るため、関係者の自主的な取組みを基本としつつ、国内生産量が適正な規模を超える場合、原料作物の生産者及び製造事業者に対する政策支援に上限設定を行うこととなっている。

3.WTO農業交渉をめぐる情勢
 WTOとは、GATTを拡大発展させる形で設立され、その目的及び機能は、貿易がルールに基づいて円滑に行われるための支援、政府間の貿易紛争の解決、貿易交渉の開催である。
 WTO農業交渉は、平成16年7月に各国共通ルールの大枠としての枠組みが合意され、平成17年12月に本年4月までに各国共通ルールであるモダリティの確立及び7月末までに各国が譲許表案を提出することで合意されたが、平成18年7月現在に至っても、モダリティの合意がなされず、交渉が中断されているところである。
 この原因は、アメリカが農業の大幅な市場開放を要求する一方で、自らの農業補助金削減で柔軟性を示さなかったこと等により各国の意見の隔たりが縮まらなかったことから、交渉が一時中断となった。
 我が国はWTO農業交渉において、多様な農業の共存を基本理念に、守るところは守り、譲るところは譲る、攻めるところは攻めるという姿勢で、国内農業の構造改革を強力に進めながら、戦略的かつ前向きに対応しているところである。

U 砂糖をめぐる国際情勢
1.砂糖の国際情勢
 最近の砂糖国際相場は、昨年から上昇基調にあったが、最近は下落傾向にある。その背景として、ブラジルのさとうきび生産が順調であるとの見通しやブラジルのさとうきびに係るエタノール分配率の疑念等が考えられる。2006年の砂糖生産量は、ブラジルやインド、中国、タイで増産、アメリカも回復見込みであるが、砂糖消費量の伸びは鈍くなっている。

2.エタノールの国際情勢
 生産シェアーはアメリカ36%、ブラジル36%となっており、この2カ国で70%以上を占めている。また、輸出シェアーはブラジルが77%、アメリカが10%となっており、この2カ国で90%近くのシェアーを占めている。
エタノールの原料作物は、さとうきび、とうもろこし、小麦などがあるが、砂糖、異性化糖、飼料、小麦粉等の中間生産物と競合し、しかも、WFP(世界食糧援助物資)からの食糧援助とも競合しており、エネルギー用作物栽培は発展途上国の農村地域に利益をもたらすという意見がある一方、上述の競合により、穀物価格の高騰や食糧安全保障の危機をもたらすとの意見もある。

3.ブラジルの砂糖事情
 栽培面積は、中南部が80%、北東部が20%となっている。また、大規模製造事業者はサンパウロに約60%集積している。近年、砂糖やエタノール需要の増加や良好な天候により、さとうきびの収穫面積、生産量が増大している。
品種開発もエネルギー用や早熟高糖性等の育種目標別に行われており、品種改良により、収穫期間が4〜6ヶ月から9〜11ヶ月に延長され、工場の稼働率向上に貢献した事例もみられる。

4.ブラジルのエタノール事情
 税制面での優遇措置や無水エタノールのガソリン混合率規制等の政策の実施により、国内需要は増加している。さらに、アメリカ向けの輸出も、原油高やガソリン添加剤使用禁止等を背景に増加中である。
 また、工場における生産構造を見ると、砂糖・エタノール両方生産している工場が78%、エタノールのみ生産している工場が15%、砂糖のみ生産している工場が7%となっており、エタノールの生産体制の充実振りが伺え、日本と比較すると非常に大規模な工場で操業している。
 市中では、ガソリンスタンドでエタノール混合ガソリンが販売されており、価格はエタノールの方が安く販売されている状況にある。さらに、新車の販売割合でもフレックス車(エタノール混合ガソリン対応車)が約80%を占めるに至っており、ブラジル国内の普及振りが伺える。

5.アメリカの砂糖事情 
 砂糖政策については、2007年農業法改正において、全米砂糖連盟を中心に現行の財政負担を伴わない政策の継続を希望する意見が多数を占めるが、実需者は直接支払制への移行などを希望している状況にある。
 近年、アメリカでは砂糖の消費量が上昇しており、その要因として、低炭水化物ダイエット法の衰退や自然志向の高まりといったことが背景にあると考えられているが、関係団体による、主要都市での集中宣伝や消費者への段階教育、24〜5歳の女性を対象にした口コミ宣伝、砂糖に関する不適切な表示の是正要請といった活動によるところも大きな要因である。

6.アメリカのエタノール事情
 主なエタノール支援策は、ガソリンスタンドに対する混合ガソリンの売上税の減免措置や代替燃料インフラへの税額控除、小規模エタノール生産者への税額控除や工場建設費補助、ユーザーに対するエタノール混合ガソリンへの連邦物品税の免除やクリーン燃料減免措置等がある。最近ではガソリンにエタノール混合を義務付けている州が増加している。
 バイオエタノールの原料は90%がとうもろこしであり、生産されるとうもろこしの13%を占めている。また、飼料用とうもろこしとの競合による影響は少ないようである。
 流通については、フレックス車が、ブラジルより早く2002年から販売され、現在約500万台普及しており、新車販売台数約50%が同車となっている。

7.ハワイ州のエタノール事情
 ガソリン価格が最高値であることや環境保全意識の高さを背景に、自州で生産した方が低コストであること、粗糖生産はカリフォルニア州まで輸送・精製しなければならないこと等の事情から、エタノール生産に州独自の生産振興策を策定した。

8.ミネソタ州のエタノール事情
 生産農家は、とうもろこしの低価格からエタノール生産に優位性を見出し、エタノール工場建設の先行投資を行った。また、投資の際は、コンサルティング会社が入り適切なサポート受け、さらに州政府による支援・技術的助言もあり、エタノール生産が活況を帯びるようになった。
 州政府によるエタノール支援策は、E10(エタノール混合比率10%ガソリン)の義務付け、工場に対する補助金等が行われている。

9.EUの砂糖事情
 2006年7月から9年間かけて制度改革を行っている。その内容は、価格・生産割当数量の削減を柱として、具体的には、白糖支持価格の36%削減、ビート最低生産者価格の40%削減、生産割当数量や割当外生産の大幅な縮小、製糖企業から集められた再構築資金を基にした工場撤退支援等である。
 この改革の影響で、EU内の砂糖生産量は700万トン減(白糖ベース)、輸出量も500万トン減、4割以上の工場の閉鎖等が見込まれており、砂糖輸出国から輸入国へ転落する見込みである。

10.まとめ
 バイオエタノールの世界需要は、今後も増大するため輸入か自国生産かの選択を迫られること、また、潜在的輸出力がある国はブラジル1カ国であり、内需重視であるうえに、石油と比較して各インフラが脆弱であるのでブラジルの動向に注目が集まるところである。
 また、国際砂糖市場において、ブラジルの支配力が強まることや、エタノール需要の影響等で市場の不安定性が増し、砂糖相場が複雑化するのではないかと推測される。一方、EUが砂糖制度改革により、世界第2位の砂糖輸入国に転落することから、その輸入量500万トンの手当てに注視する必要がある。

 その後の意見交換では、「エタノールのコスト分岐点はどれくらいなのか」、「WTO農業交渉において、日本の重要品目に砂糖が入るのか」、「輸入される加糖調製品について、調整金を徴収する方法はないのか」などの質問や意見があり、また、新制度に向けて各社とも準備しなければならないことが多々あることから、このような話し合いの場をまた設けて欲しいとの要望も出された。(杉山)

講演を行う当機構加藤部長
講演を行う農水省北川課長補佐
   
講演を熱心に聞入る出席者
質疑応答の様子


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「種子島さとうきび生産者大会」の開催について

 平成18年10月10日(月)、鹿児島県中種子町種子島こりーなにおいて、さとうきび作りをめぐる状況が厳しい中、一層の生産振興に資するため、熊毛地区糖業振興会および種子島地区さとうきび振興会連絡協議会の共催による「種子島さとうきび生産者大会」が開催され、当日は、島内のさとうきび生産農家を中心に約700名が参加した。
 開会にあたり熊毛地区糖業振興会会長(中種子町長)の川下三業氏から、「種子島農業の振興はさとうきびなくしてありえない。島の経済との結びつきは非常に強い。平成17年、18年は台風の被害もなく、さとうきびは順調に生育しているところであり、国もさとうきび増産プロジェクト会議を立ち上げており、我々もそれに沿って品質向上や新品種導入、栽培管理をしっかり行い、生産面積も2,500ヘクタールを確保していく覚悟である。さとうきび生産農家の経営安定と生活の向上を目指して、頑張って取組んでいただきたい」と激励のあいさつがあった。
 続いて、鹿児島県農業協同組合中央会前田英文農政部長から、さとうきびをめぐる情勢報告と題して、新制度における、交付手続きに先立っての対象要件審査申請手続き、対象農家の要件や特例期間以降の対象要件、手取額、支払期間などについての説明があり、また、増産に向けて「新制度に向けて、さとうきびの増産が一番のポイントであり、他の産地も種子島に注目している。目指せ種子島と言われるようにがんばって欲しい」と述べられた。
 そして、熊毛地区糖業振興会事務局長谷川信幸氏から、種子島のさとうきび増産目標について、平成27年までに収穫面積2,500ha、単収7,280kg、生産量182,000tを数値目標として設定し、目標達成の取組みとして、担い手農家への農地集約・経営規模拡大、受託作業と自作ほ場の適期管理作業などの増収・品質向上対策とが両立可能なシステムの確立、新たな受託組織の育成、機械化一貫体系のより一層の推進、土壌・土層改良の実施による収量・品質の回復、新品種(KY96−189)の導入、生分解性マルチの普及と株出管理作業の徹底などを計画していると説明が行われた。
 次に、研修として講演が行われ、まず、鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室福井清美室長から、「さとうきび増産に向けた栽培技術」と題して、種子島は生育初期の気温が低いことから、初期成育こそが収量の全てであり、マルチまでセットした株出管理、収穫後1ヶ月以内の早期株出管理、春植における早植の実施などの増産に向けたさとうきび栽培技術対策の説明が行われた。
 福井室長に続いて、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターさとうきび育種ユニット長松岡誠上席研究員から、「さとうきび増産に向けた新品種について」と題して、さとうきび新品種農林22号(旧名:KY96−189)について、「生育初期から茎伸長が良く早期高糖性で12月収穫が可能、かつ、12月収穫でも可製糖量が多く、発芽、萌芽、分げつ性に優れており、農林8号の糖度が低い地域や株出し収量が不安定な地域での利用が有効である。また、熊毛地域でのさとうきび増産に向けて、農林8号の収量が上がらない地域では農林18号、農林8号の糖度が低く、12月に早期収穫を希望する地域は農林22号など、品種を組み合わせて利用することが重要である」と説明が行われた。
 研修講演の後、各市町のさとうきび増産に向けた優良農家の事例発表が行われた。まず、初めに、西之表市上妻香氏から、「西之表市深川集落営農の組織化に向けて」と題して、深川集落営農推進委員会の構成や、同委員会設立までの経過、また、同委員会の構成部門の一つである受託作業部会の概要や新制度に向けての受託作業内容の変更などについて発表が行われた。最後に集落営農の組織化に対する考え方として、「生産農家全員が品目別経営安定対策を安心して受けられる受託組織を育成すること、受託作業可能な大型機械は、原則として受託作業部会に登録し、受託作業を進め、農業機械の過剰投資を抑制することが重要である」と述べた。
 次に、中種子町の生産農家である鎌田恵氏から「さとうきび単収10tを目指して」と題して、営農概要、収穫作業に追われたため株出管理作業を早期実施できなかったことによる単収減と品質低下等のこれまでの問題点、新たに設立した「きりしまさとうきび生産組合」の概要と専属オペレーター雇用による株出管理作業の早期・適期実施による単収・品質向上などの同組合設立による効果について発表が行われた。そして、「今後の目標は、基本技術の励行を徹底し、単収・品質の向上を目指し、最初のステップとして、経営面積の拡大を図ることが重要である」と述べた。
 続いて、南種子町の生産農家である河脇秀二郎氏から、「西部管理組合の活動について」と題して、西部管理組合の概要、小型ハーベスターを利用したさとうきび収穫作業及び株出管理機を利用した管理作業の受託等の活動内容、広域での機械の有効利用の推進や収穫受託作業と肥培管理の適期管理の励行による収量アップ等の同組合設立による効果の発表が行われた。
 最後に、小脇輝人トップス(ハーベスター生産組合員の後継者組織)会長による、大会スローガン(別表参照)の唱和および採択が行われた後、中種子町きび甘藷振興会西田勉会長の発声による「がんばろう!」三唱で当大会は締めくくられた。
 この大会が、生産者、糖業、行政が一体となって協力し、さとうきびの収穫面積、生産量の増大、品質向上、地域経済の発展につながることを期待したい。(杉山)

(別表)
大会スローガン
一 さとうきび増産プロジェクト目標面積2,500ヘクタール以上を確保しよう。

二 新品種の計画的な導入と、土壌改良の実施、株出し管理作業の徹底などにより、収量と品質の向上に努め、経営の安定を図ろう。

三 糖業は、種子島をささえる産業です。生産者と関係機関が力を合わせ、これからの糖業の振興に取り組もう。

さとうきび増産目標を説明する
熊毛地区糖業振興会事務局長谷川信幸氏
開会挨拶を行う熊毛地区糖業振興会
川下三業会長
   
講演を行う九州沖縄農業研究センター
松岡誠上席研究員
講演を行う農業開発総合センター熊毛支場
福井清美室長
   
事例発表を行う河脇秀二郎氏
情勢報告を行う
鹿児島県農業協同組合中央会前田部長
   
大会スローガンを唱和する
トップス小脇輝人会長
熱心に聞入る出席者

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那覇事務所


第33回サトウキビ試験成績発表会が開催される

 平成18年9月15日(金)、那覇市内において、「第33回サトウキビ試験成績発表会」(主催:沖縄県蔗作研究協会)が開催された。沖縄県内外のさとうきびに関する研究者や関係者が一堂に会し、研究事例の発表としての一般発表と「さとうきびの増産に向けた課題と取り組み」をテーマにしたシンポジウムの2部で構成された発表会となっており、活発な討議が行われた。
 開会に先立ち、沖縄県蔗作研究協会村山盛一会長(琉球大学教授)より、「平成19年産から実施される新たなさとうきび政策や今後のバイオマスへの利用といったことから、さとうきびを取り巻く環境条件が大きく変化している。さとうきび作は今後ますます重要になり、試験研究の方向性においても大きく影響する」とのあいさつがあった。(写真1)
沖縄蔗作研究協会村山会長
会場の様子

1. 一般発表
(1) 台風や干ばつの影響による低収、低糖度の問題や収穫時期の他作物との労働競合を回避し、さとうきび作の生産性向上効果が期待される早期高糖系統「RK-95-1」、「KN91-49」を活用した夏植え型秋収穫栽培の検討報告。
(2) 伊江島や宮古島で行われているさとうきびのバイオマス利用に関する報告。
(3) ハリガネムシの防除として、誘因物質と殺虫剤を組み合わせた新しいタイプの農薬「ベイト剤」の紹介。
(4) 南大東島で実施されたハリガネムシに対する交信かく乱による防除実績など、16の研究事例報告があった。

一般発表

2. シンポジウム
「さとうきびの増産に向けた課題と取り組み」をテーマに、さとうきびの増産に向けた取り組み事例などが発表され、討議が行われた。
 最初に「さとうきび増産のための技術問題とその実施」と題したJAおきなわ島袋さとうきび生産振興アドバイザーによる基調報告が行われ、「早期植付と株出における早期肥培管理が重要であり、それらの作業を実践するための水整備や植付機械、管理作業機械の整備が緊急の課題である」との提言がなされた。
 続いて、沖縄県農業研究センター新里良章主任研究員による小型ハーベスタを用いた株出管理技術の紹介、南部農業改良普及センター島川主任技師による久米島さとうきび振興協議会において生産者が主体的に参加した地域生産振興の取り組み実態、翔南製糖(株)大庭農務課長による優良種苗設置事業の取り組み成果、JAおきなわ伊是名支店名嘉支店長による伊是名村さとうきび生産組合の立ち上げの紹介が行われた。
   最後に総合討議として、それまでの発表に対する質問、栽培技術などを生産者に周知するための課題、関係者が組織的に機械化の推進に取り組むことの重要性、収益性の高い株出栽培が今後の増産に向けて重要であることなどの討議が行われた。(写真4)

シンポジウム

  今回の発表会で紹介された事例、課題、提言などが出席した関係者の共通認識となり、今後のさとうきびの増産に向けた取り組みに生かされることを期待したい。(緒方)

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