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地域だより[2007年8月]

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最終更新日:2010年3月6日

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地域だより
[2007年8月]


那覇事務所


那覇市で当機構主催の講演会を開催


 平成19年6月18日(月)、那覇市内において当機構那覇事務所主催で「急成長するタイのバイオエタノール産業と砂糖産業について」と題して講演会を開催したので、その模様を紹介する。
 本年1月下旬に当機構の調査情報部が実施したタイの現地調査を基に、アジアで唯一輸出を目標として急成長するタイのバイオエタノール産業とさとうきびやタピオカなどの原料生産の現状、政府による厳格な管理下にある砂糖産業および政策の運用実態等について、糖業関係者、行政関係者をはじめ、地元メディア(QAB琉球朝日放送、琉球新報等)関係者など約60人の参加をいただいた講演会は、バイオエタノール事情についての関心の高さを伺わせるもので、講演の模様は、地元テレビ局(QAB)でも地域のニュースとして取り上げられた。
 なお、今回の講演の内容については、砂糖類情報(2007年5〜7月号「機構から」)に詳細に掲載されているので、参照されたい。

〔講演内容〕
「急成長するタイのバイオエタノール産業と砂糖産業について」
講演者:当機構調査情報部長 加藤信夫
講演会場:財団法人沖縄県青年会館 2階会議室
①政府による厳格な管理下にある砂糖産業及び政策の運用実態
②アジアで唯一輸出を目標として急成長するバイオエタノール産業の
最新事情
③増収を目指すさとうきびの生産事情

 講演では当機構加藤調査情報部長から、タイのエタノール生産量は2.4億リットルで、ブラジルの約167億リットル、中国の約10億リットルには遠く及ばないが、バンコクなどの大消費地と産地との距離も短いので、インフラ整備のコスト負担が少なく生産能力から推計すると輸出可能と見込まれること。今後、糖みつ主体では不足する可能性もあり、タピオカとさとうきびの絞り汁の利用予測が増えることなどによりタイの砂糖の供給力に影響が出ることもあり得ることや、エタノール産業の拡大・発展やFTAの影響により、砂糖の厳格な販売・価格管理を柱とした現行制度の改正が検討されていること。タイの輸出向けの粗糖生産が高品質なものへと関心が高まっており、日本向けの特別なスペックの生産を中止する工場も出ていることに留意する必要があることなどを紹介した。


講演を行う当機構加藤調査情報部長
熱心に聞き入る講演会場の様子


 今回の講演内容について、講演会での質問やアンケートを集計したところ、バイオエタノール事情等への関心が高いことに起因して、次のような意見が出された。

  • タイのさとうきび、タピオカの利用状況等の農業を取り巻く事情について、現場の状況がリアルに分かる説明で大変参考になった。
  • エタノールの原材料として、さとうきびやとうもろこしは知っていたが、タピオカも原材料になり得ることを初めて知った。
  • タイが国策として砂糖産業を支援しており、エタノールについても糖蜜およびタピオカからの生産を目指していることが分かって参考になった。
  • 糖みつの廃液処理は日本では問題視されているが、海外での認識はどうか知りたい。
  • タイのエタノール政策はよく分かったが、日本での取り組みについて知りたい。
  • タピオカ以外のエタノール原料作物と生産国の状況について知りたい。
  • エタノール生産における醗酵の技術的な進展の道筋について知りたい。
  • 各国の工場、生産者による環境対策(廃ガス、肥料、農薬等)について知りたい。
 など、さまざまな質問や意見等が多く出されたことから、引き続きこれらの動向を注視していきたいと考えている。


熱心に質問をする参加者


  現在、沖縄県下では新たな資源として期待されているさとうきびの糖蜜からの国産バイオエタノール生産の実証試験を伊江島と宮古島で実施しており、糖蜜の需要確保、高付加価値利用等の観点から、国によるバイオエタノールの製造などへの支援が行われている。国産資源としてのさとうきび、離島経済を支えているさとうきびの有効利用という観点からもバイオエタノールへの関心が高まりを見せている。
 今回の講演会を通じて、タイの砂糖産業やアジアで唯一輸出を目標として急成長するバイオエタノール産業の最新事情を知ることによって、輸入粗糖の約40%を同国に依存しているわが国へ与える影響や、バイオエタノール需要拡大による砂糖供給への問題などの認識が深まったのではないか。(中司)


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