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ソルビトール調製品流通実態調査結果

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


事業団から
[2000年6月]
企画情報部


1.調査概要
2.海外の生産状況
3.日本への輸入状況
4.ソルビトール調製品のユーザー
5.ソルビトール調製品の需要見込み
6.ソルビトール調製品価格と砂糖価格の関係
7.ソルビトール調製品への評価
8.砂糖への需要回帰度合

1.調査概要

(1) 調査品目 ソルビトール調製品

関税番号 2106.90-289 その他調製食料品
(砂糖を加えたもの)
(ショ糖含有率が全重量の50%以上85%未満のもの)
   関税 基本税率30%・協定税率29.9%

(2) 調査方法及び内容
A 世界の生産動向調査(事業団調査)
 タイ及び韓国の現地調査を実施し、併せて業界等から聞き取り調査を実施
B 日本の輸入動向調査(事業団調査)
 1990〜1999年の10年間の輸入通関数量を「日本貿易月表」をもとに調査
C 流通実態調査(事業団調査)
 ソルビトール調製品の輸入業者(13社)、卸業者(25社)を対象とし、輸入業者については事業団職員が個別面接調査、卸業者については調査票に記入を依頼し、後日補足調査を実施
D 需要実態調査(事業団委託調査)
 ソルビトール調製品を使用している用途別ユーザー企業(21社)を対象に、(株)富士経済に委託(同社調査員による個別面接調査)
(3) 今回の調査結果把握数量
C 流通実態調査  82,891トン
D 需要実態調査  11,525トン

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2.海外の生産状況

 ソルビトール調製品(砂糖83%、ソルビトール17%)は、タイ、韓国、シンガポールの3ヵ国で製造されている(表1)。

表1 ソルビトール調製品の推定生産量

生 産 国 出 資 者 製造会社 生 産 量
タ  イ U(株) U(株)の子会社 53,700トン/年
韓  国

第一製糖
大韓製糖
三 養 社
18,000トン/年
14,000トン/年
8,000トン/年
小  計 40,000トン/年
シンガポール SIS (製糖メーカー)
ウェスタン・ブレンディング (アメリカ)
アジアンブレンド 4,800トン/年
合  計 (10暦年の通関数量に対する割合) 98,500トン/年
(78%)
10暦年の 「その他調製品」 の通関数量 125,597トン/年
「事業団推定」



〔タ イ〕
 U株式会社の子会社である現地法人が製造しており、タイからの通関数量の全量(平成10年:5万4,000トン)が同社製造のソルビトール調製品であると言われている。
 日本での販売ルートは、商社は経由せずに直接親会社に納入している。
 U(株)の販売先は、各卸業者(商社、食品添加物問屋、砂糖の特約店等)であり、直接ユーザーに販売している割合は低い。

〔韓 国〕
 韓国の精製糖メーカーである3社(第一製糖、大韓製糖、三養社)がソルビトール調製品を製造している。3社の生産数量は、合計で約4万トンと推定される。近年、U(株)との販売競争が激化しており、ソルビトール調製品の生産量は減少傾向となっている。
 日本での販売ルートは、砂糖の代理店(大手商社)、特約店及び異業種ブローカー等多数存在しているが、商社及び異業種ブローカー等は撤退した社もあり寡占化が進んでいる。

〔シンガポール〕
 シンガポール唯一の製糖メーカーであるSIS社とアメリカのブレンド会社であるウェスタン・ブレンディング社が出資したアジアンブレンド社がソルビトール調製品を製造している。ただし、タイや韓国に比べコスト的には高く、日本への輸入は為替動向に左右される状況である。

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3.日本への輸入状況

(1) 輸入数量及び輸入先
 ソルビトール調製品単独の関税分類はなく図1の分類に属する。
 その他調製品の輸入数量は、近年大幅に伸びていたが、1998年には前年に比べほぼ横ばいの12万6,000トンとなっている(図1)。
 主な輸入先は、韓国(5万9,000トン)、タイ(5万4,000トン)であり、2ヵ国で約9割を占めている(図2)。

図1 その他調整品(2106.90-289)の輸入動向
その他調整品(2106.90-289)の輸入動向

図2 韓国及びタイからの輸入動向
韓国及びタイからの輸入動向

(2) CIF価格
 1998年でタイ59.62円/kg、韓国67.87円/kg、シンガポール76.18円/kg、全体67.20円/kgとタイが最も低い。
 当初、タイの価格が韓国を上回っていたが、タイバーツの下落等により、1998年10月以降その傾向が逆転した。

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4.ソルビトール調製品のユーザー

 ソルビトール調製品を使用しているユーザーは、当初は、水産練製品製造業者であったが、最近では、パン類(蒸しケーキ、食パン、菓子パン等)、菓子類(グミ、ゼリー、羊羹、カステラ、甘納豆等)、調味料類、漬物、佃煮・煮豆、水産練製品(すり身、イカの薫製)等多岐の分野で使用されており、1つの甘味料製品として認知されつつある。
 また、ソルビトール調製品を使用する最大の目的はコストダウンであり、調製品を使用する商品は、価格訴求の要望が強く安定した販売規模を維持できる商品に使用しているとしたユーザーが多い。

〔パン類〕
 主要パンメーカーでは、ソルビトール調製品を使用するのは普通のこととなっているが、基幹製品のパンの原材料に使用しているメーカーは1社のみであった。
 保湿効果などの機能を必要とする和・洋菓子での使用が目立つ。
 調製品が使用できる製品分野はほぼ固定化しており、新分野での需要は考えにくい。

〔菓子類〕
 ソルビトール調製品は低価格帯で、原料素材へのこだわりがなく、照り出し、デンプンの老化防止、タンパク質の変性防止の機能活用を目的とした商品に使用されている。
 調製品の使用分野はすでに固定化されており、新分野への広がりは考えにくい。
 調製品と砂糖の価格が現状のままなら、調製品の使用量は横ばいだが、価格差が縮まれば、砂糖へのシフトの可能性は大きい。

〔調味料類〕
 全体的にソルビトール調製品を使用するユーザーは多くない分野と言え、その理由としては、生協・量販店等への影響や、作業性の悪さ、異性化糖等の使用等があげられる。
 量販店内加工用惣菜向けの調味料の場合、ソルビトール表示を消費者が直接目にすることがないこともあって、使用されるケースがあると思われる。

〔漬 物〕
 ソルビトール単体や異性化糖等のより安価な液糖を使用するユーザーが多く、ソルビトール調製品のユーザーは少ない分野と言えそうである。
 ソルビトール調製品のユーザーにおいても、漬物用原料に占める糖類のウェイトの低さから、1ユーザー当たりの使用量は少ない。
 調製品のコストメリットは、原料青果物価格の乱高下に備え、バッファー機能を果たすべく、資金としてプールされている。

〔佃煮・煮豆〕
 取引先(特に生協)との関係やより安価な糖類との品質や作業性とのバランス等からソルビトール調製品を使用していないユーザーもみられるが、全体的には調製品を使用しているユーザーが多い分野と言えそうである。
 調製品を使用できる商品には全て調製品を使用しているケースがみられ、1ユーザー当たりの使用量は大きい分野と言えよう。

〔水産練製品類〕
 練製品としてはすり身に対する使用が一般的で、今やその大半が砂糖からソルビトール調製品に置き換わっている。元々ソルビトール単体が使用されていたことからソルビトール調製品の導入に抵抗がなく、価格メリットのみで採用されたと言える。
 珍味としては塩辛、松前漬け、さきいか、いかの薫製等に使用されており、導入は練製品ほど一般的ではない。

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5.ソルビトール調製品の需要見込み

 今後3〜4年、現在の環境が続いた場合のソルビトール調製品の需要見通しについて、ユーザー企業の多くは「調製品を使用できる製品分野はほぼ固定化しており、新分野での需要は考えにくい。」としており、現状のまま推移するとしたところが多かった。
 しかし、中小メーカーのユーザー企業が多いという特徴を持つソルビトール調製品の性格上、使用ユーザー企業の増加により全体の数量の微増傾向は今後も続くとみられる。

表2 ソルビトール調製品の今後の需要見込み

(単位:社)
  輸入業者 卸 業 者 ユーザー企業
増加する 6 4 2
現  状 4 17 15
減少する 1 3 3

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6.ソルビトール調製品価格と砂糖価格の関係

(1) ソルビトール調製品価格(表3)
 輸入業者の仕入価格は90〜95円、販売価格は95〜105円とするところが多い。卸業者の仕入価格は90〜95円、販売価格は95〜100円とするところが多い。ユーザー企業の仕入価格は95〜100円が多く、次いで105〜110円とするところが多い。

表3 ソルビトール調製品の価格

(単位:社)
  輸入業者 卸業者 ユーザー企業
仕入価格 販売価格 仕入価格 販売価格 仕入価格
115円以上
110〜115円
105〜110円
100〜105円
95〜100円
90〜95円
85〜90円
80〜85円
75〜80円
0
0
1
1
0
5
2
3
1
0
2
0
4
4
1
0
0
0
0
1
0
5
5
9
4
0
0
2
4
3
4
9
3
0
0
0
3
3
5
3
6
1
0
0
0
(調査年月:1999年3月)

(2) 砂糖の価格(表4)
 輸入業者の仕入価格は120〜130円、販売価格は125〜140円とするところが多い。卸業者の仕入価格は120〜130円、販売価格は130〜140円とするところが多い。ユーザー企業の仕入価格は125〜135円とするところが多い。

表4 砂糖の価格

(単位:社)
  輸入業者 卸業者 ユーザー企業
仕入価格 販売価格 仕入価格 販売価格 仕入価格
150円以上
145〜150円
140〜145円
135〜140円
130〜135円
125〜130円
120〜125円
0
0
0
0
0
7
2
0
0
0
4
2
3
0
0
1
0
1
1
15
5
2
3
2
4
8
3
1
0
0
1
2
8
7
3
(調査年月:1999年3月)

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7.ソルビトール調製品への評価

(1) 輸入・卸業者
 品質面は以前は異物の混入や固結があったが、最近は品質が改善されクレームもほとんど無いとしている。使用面は、ソルビトール調製品では対応できない分野がある、荷姿に制約がある、生協などがソルビトール表示を嫌うため使用しないといった意見もある。

(2) ユーザー
 品質面は一部ユーザーには製品の仕上がりが悪い、溶解しにくいという指摘があるが、総じて不安は持っていない。以前は韓国産に異物の混入があったが、最近は改善されており、供給面の不安も無いとしている。また、味覚上の問題もほとんどなく、ソルビトール表示については、消費者からの苦情がないことから、ほとんどのユーザーが問題視していない。

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8.砂糖への需要回帰度合

(1) 砂糖とソルビトール調製品が同価格となった場合の砂糖への回帰度合(表5)
 ソルビトールの保湿性を高める、甘味を抑える、照り出し、デンプンの老化防止、タンパク質の変成防止、水分活性の低下などの機能を必要として、ソルビトール調製品を使用しているケースは少なくない。そのような場合は、ソルビトールを安価に入手する目的からもソルビトール調製品を使用しているので、ソルビトールの価格動向もソルビトール調製品を使用するか、しないかの判断材料となる。そのため、国内の砂糖価格が低下しただけでは、砂糖に戻りきれない。

表5 砂糖への回帰度合(砂糖とソルビトール調製品が同価格となった場合)

  パン類 菓子類 瓶詰め
缶 詰
ジャム等
調味料 漬 物 水産練り
製 品
その他
輸入業者 88% 78% 76% 88% 86% 79% 100%
卸 業 者 77% 74% 71% 66% 64% 42% 49%
「事業団調査」
注)上記の算出方法は、「全て回帰(100%)」を10ポイント、「80%以上」を8ポイント、「50%以上80%未満」を6.5ポイント、「20%以上50%未満」を3.5ポイント、「20%未満」を2ポイント及び「戻らない(0%)」を0ポイントとし、それぞれの回答数を乗じ用途別の回答数合計で割り、平均値を算出した。

(2) ソルビトール調製品使用ユーザー企業の砂糖への需要回帰動向(表6)
 ソルビトール調製品の場合は、事業規模が小さいユーザー(メーカー)が多いという特性があるが、商社もしくは砂糖の特約店、食品添加物問屋、一般製菓材料問屋などの仕入先で為替相場の変動部分が吸収されるケースが多いので、為替相場変動による価格変動については、ソルビトール調製品の使用を継続するか、中止するかの判断における最重要点とはなっていない。ユーザー(メーカー)の考え方の違いで、現状のソルビトール調製品使用の価格面での満足度合いには差があるが、一般にはソルビトール調製品を使用することによるコストメリットが10円以下であると、ソルビトール調製品から砂糖に戻る可能性は高まる。

表6 ユーザー企業の砂糖への需要回帰動向

用途分類 取 扱 量 砂糖との価格差
0円以内 5円以内 10円以内 15円以内
パ ン 類
菓 子 類
調 味 料 類
漬   物
水産練製品
佃   煮
4社
7社
2社
2社
3社
3社
4,220 t
3,301 t
253 t
60 t
2,072 t
1,620 t
100%
91%
99%
50%
68%
100%
 
59%
 
50%
58%
99%
 
16%
 
50%
48%
 
 
15%
合計(回帰度) 21社 11,525 t 91%
16社
42%
10社
13%
5社
4%
1社
「事業団委託調査」

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