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新たな砂糖制度について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

事業団から
[2000年11月]
総  務  部

I. はじめに

 わが国においては、昭和38年に粗糖の輸入が自由化され、その後、国内糖価は国際糖価の影響を直接受けて激しい高騰低落を繰り返すなど、甘味資源作物(てん菜、さとうきび)の生産や国民の食生活に大きな影響が生じた。
 このため、昭和40年に、国内の甘味資源作物及びそれらから生産される国内産糖の維持を目的とした「砂糖の価格安定等に関する法律」(糖安法)が制定され、同法に基づく糖価安定制度(輸入に係る砂糖の価格調整と国内産糖の価格支持の仕組み等)の下において、国内糖価の安定と国内産糖に係る関連産業の健全な発展、ひいては国民食生活の安定が図られてきたところである。
 ところで、てん菜は寒冷な北海道において、また、さとうきびは台風と干ばつの常襲地帯である沖縄県及び鹿児島県南西諸島において、地域農業を支える上での基幹的な作物となっており、国内産糖製造事業者とともに地域経済の維持・発展に大きな役割を果たしている。また、これらを原料とする砂糖は、食品産業における基礎的な素材であり、国民の食生活に欠くことのできない食料である。
 さらに、現在、わが国の砂糖消費量(約230万トン(平成10年度))のうち国内生産量は約3分の1にすぎず、3分の2は海外からの安価な砂糖に依存しているが、自給率の向上を図ることが重要な政策課題となっている。
 このため、今後も、甘味資源作物・砂糖の重要性にかんがみ、引き続き適切な砂糖制度の下で、甘味資源作物の生産の維持・拡大、国内糖価の安定、砂糖の国内自給率の向上等を図っていくことが必要である。

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II. 制度改正の必要性と見直しの方向

1 近年、 従来の糖価安定制度については、
(1) 消費者の低甘味嗜好や砂糖に対する誤解、内外価格差に伴う各種加糖調製品の輸入増等により砂糖需要が減少し、国内産糖の価格支持財源を負担する輸入糖が減少していること、
(2) 従来の糖価安定制度が国際糖価の著しい高騰低落の繰返しを前提としている中、国際糖価は低位安定で推移し、消費者・ユーザーからは内外価格差の縮小に対する要請が高まっていること等から、その円滑な運用が困難となってきた。
2 こうした状況を踏まえ、平成11年9月30日に農林水産省において決定され た「新たな砂糖・甘味資源作物政策大綱」においては、以下の方向で砂糖制度を見直すことが必要とされた。
(1) 国内糖価(砂糖卸売価格)の引下げによる砂糖需要の維持・増大を図ること。
(2) 消費者・ユーザーに合理的な価格で安定的に砂糖を供給すること。
(3) 輸入糖と国内産糖の適切な価格調整を行うとともに、市場原理の円滑な活用を図りつつ、甘味資源作物生産者の経営安定及び砂糖製造事業の健全な発展を図ること。
3 このため、上記大綱に即して砂糖制度の見直しが行われ、砂糖の価格の引下げにより砂糖の需要の拡大を図るとともに、市場原理の円滑な活用を図りつつ、甘味資源作物生産者の経営安定及び砂糖製造事業の健全な発達を図ることを目的とした「砂糖の価格安定等に関する法律及び農畜産業振興事業団法の一部を改正する法律」(平成12年法律第107号)が本年6月2日に制定・公布された。
 これにより、法律の題名が「砂糖の価格調整に関する法律」(糖価調整法)と改称されるとともに、農畜産業振興事業団(以下「事業団」という。)の業務を含め、各分野における改正が行われ、本年10月1日から施行されたところである。

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III. 新制度の内容と事業団の業務

1 甘味資源作物、 国内産糖
(1) 最低生産者価格制度
最低生産者価格制度の維持

 甘味資源作物と国内産糖の生産を維持し、国民に砂糖を合理的な価格で安定的に供給していくため、国内産糖製造事業者が最低生産者価格以上の価格で買い入れた甘味資源作物から製造された国内産糖を砂糖制度の対象とする最低生産者価格制度は維持されている。これにより、引き続き甘味資源作物生産者の所得の確保は図られ、生産者は安心してその生産活動に従事できることとなる。
算定方式の見直し
 最低生産者価格は、甘味資源作物の再生産を確保することを旨として農林水産大臣により定められるが、従来は、農業パリティ指数(農家が農業経営及び家計に関して購入する物財・サービスの価格指数)を基準として算定されていたところである。
 しかしながら、この算定方式では、国内産糖の需給状況や甘味資源作物の生産動向が的確に生産者に伝わらないことから、今回、甘味資源作物の生産費その他の生産条件、砂糖の需給事情及び物価その他の経済事情を参酌して定める方式に改められた。具体的な算出方法は、以下のとおりである。
 当年産価格
 =前年産価格×(国内産糖価格の変動率×0.5+生産コスト等の変動率×0.5)
告示期日の見直し
 従来、毎年秋に当年産の甘味資源作物についての最低生産者価格が決定、告示されてきたが、生産者の合理的な経営判断や営農計画の策定が可能となるよう、毎年秋(11月30日まで)に翌年産の甘味資源作物についての最低生産者価格が決定、告示されることとなった。
 なお、新制度への移行期である本年は、平成12、13年産の2ヵ年分の価格が10月6日に決定されたところである。(てん菜17,040円/kg、さとうきび20,370円/kg)

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(2) 国内産糖に対する助成
国内産糖交付金の交付方式への転換

 従来、国内産糖に対する助成は、農林水産大臣が決定する買入価格・売戻価格での事業団売買を通じて行われてきた。しかし、この方式では、
a. 企業努力の如何にかかわらず同一価格で買い上げられるため、国内産糖製造事業者の主体的なコスト削減に向けてのインセンティブが働き難いこと、
b. 行政価格としての売戻価格を基準として国内産糖の価格水準が一律的に形成され、需給状況が反映されないこと
といった問題があったことから、今回、事業団による売買方式から、市価による価格形成を前提として、農林水産大臣が砂糖年度ごとに決定する単価での国内産糖交付金を事業団が国内産糖製造事業者に交付する方式に改められた。(国内産糖製造事業者の手取り=市価+国内産糖交付金)
国内産糖交付金の算定方式等
 国内産糖製造事業者ごとの交付金の額は、以下により算出される。
 国内産糖交付金の額
 =国内産糖交付金の単価×国内産糖の数量
(ア) 国内産糖交付金の単価は、てん菜糖、甘しゃ糖ごとに、原料買入価格や国内産糖集荷製造経費、国内産糖の価格等を基準として、毎年度、農林水産大臣が決定するが、具体的には、以下により算出される。
 国内産糖交付金の単価
 =現行事業団買入価格×(原料買入価格の変動率+国内産糖集荷製造経費の変動率)−前砂糖年度の国内産糖の価格
(イ) 国内産糖の数量は、毎月の上・下期ごとに国内産糖製造事業者が製造した国内産糖の数量である。
(ウ) 国内産糖交付金の単価は、砂糖年度ごとに、てん菜糖にあっては10月31日まで、甘しゃ糖にあっては11月30日までに告示される。
 なお、新制度への移行期である本年は、平成12年度の国内産糖交付金単価が10月6日に決定されたところである。(てん菜糖87,923円/トン、甘しゃ糖(鹿児島産) 211,135円/トン、(沖縄産) 212,585円/トン)
事業団による入札の実施
 砂糖の需給状況や品質を適切に反映した、透明かつ適正な価格形成に資するため、国内産原料糖(てん菜原料糖、甘しゃ糖)について、事業団を実施主体とする入札の仕組みが導入された。入札は、てん菜糖企業又は甘しゃ糖企業が売り手、精製糖企業が買い手として参加するもので (なお、売り手、買い手ともに事業団への登録が必要)、交付金の単価を算出する際に用いられる国内産糖価格(市価)を把握する一手段として位置付けられている。したがって、その落札価格は、国内産糖価格(市価)のデータに反映されることとなる。
 入札は、てん菜原料糖については年4回(10月、1月、4月、7月)、甘しゃ糖については年2回(10月、1月)を予定しており、上場数量は、各々その砂糖年度の供給見込量の1割以上を目標としている。
 なお、平成12砂糖年度の第1回入札は、平成12年10月12日(木)に実施した。(入札結果については、本誌「事業団の動き」参照)
事業団による交付金交付の手続き
 事業団は、上記の交付金の交付業務を以下の手続きにより行うこととしている。
(ア) 交付対象となる国内産糖製造事業者は、甘味資源特別措置法(昭和39年法律41号)に基づき、甘味資源作物の生産を計画的に振興することが特に必要な地域として農林水産大臣が指定した「てん菜又はさとうきびの生産振興地域」において生産された甘味資源作物を原料として国内産糖を製造する者(地域内国内産糖製造事業者)である。
(イ) 事業団理事長は、交付金の交付の円滑な実施に必要があると認める場合には、国内産糖製造事業者にその砂糖の製造見込数量を基礎とした四半期別の交付金交付申請計画数量を明らかにした交付申請計画書の提出を求め、その申請計画数量を基礎として、かつ、農林水産省の承認を得て、国内産糖製造事業者ごとの四半期別の交付金交付計画数量を定めるとともに、当該計画数量をその国内産糖製造事業者に通知する。
(ウ) 交付金の交付を受けようとする国内産糖製造事業者は、申請に係る国内産糖の蔵置場所を業務区域とする事業団の事務所に交付申請書を提出する。なお、交付金の交付申請数量は、(イ) の四半期別の交付金交付計画数量の定めがある場合には、当該計画数量の範囲内でなければならない。
 また、国内産糖製造事業者は、申請に当たって、
(1) 当該申請に係る国内産糖を最低生産者価格を下回らない価格でその生産者から買い入れたものを原料として製造されたものであること、
(2) 申請に係る国内産糖が既に交付金の交付がされたものでないこと
を証する書面を添付しなければならない。
(エ) 事業団は、交付金の交付申請があった場合、当該申請に係る国内産糖について、その数量、種類、規格を事業団の指定する者に検査させるとともに、その生産年を確認する。
(オ) 事業団は、(エ)の検査・確認に基づき交付金の交付決定をし、申請者に交付金を交付する。なお、交付金の財源は、輸入糖の輸入申告者から徴収した調整金、異性化糖製造事業者から徴収した調整金及び国からの交付金である。
 なお、11月上期分の国内産糖交付金は、11月下期中に交付される予定である。

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2 輸入糖
 国内糖価と国際糖価との内外価格差が存在している下で、国内産糖の振興を図るため、輸入糖と国内産糖の価格調整制度は引き続き維持されている。しかし、国内糖価について、砂糖の需給事情や品質等を反映させるため、今回、以下のような改正がなされた。
安定上下限価格制度の廃止
 従来、国際糖価が著しく高騰低落を繰り返すことを前提とした上で、砂糖の価格(国内糖価)を適正な水準に安定させることを目的として、安定上下限価格が設定されていた。しかし、近年、国際的な砂糖需給の緩和(在庫率5割)等により国際糖価は低位安定傾向で推移し、著しい高騰低落を繰り返すという事態は想定し難くなっている。また、安定下限価格が国内糖価の引下げの制約となっている面もある。
 こうした情勢の変化を踏まえ、今回、安定上下限価格制度により砂糖の価格の安定を図ることは廃止された。なお、国際糖価が著しく高騰した場合には、後述の砂糖生産振興資金を活用した価格低減対策を事業団が講ずることとしている。
事業団の買入れ・売渡し業務の改正
(ア) 事業団は、輸入糖と国内産糖の価格調整を図るため、従来、
(1) 平均輸入価格が国内産糖の合理化目標価格を下回る場合には、輸入申告者から輸入糖を買い入れ、国内産糖価格と等しくなる価格で (=売買差額を徴収して) 直ちに売り戻す業務(義務売買)、
(2) 平均輸入価格が安定上限価格を上回る場合には、輸入申告者の希望に応じ、輸入糖を買い入れ、国内産糖価格と等しくなる価格で (=売買差額を支払って) 直ちに売り戻す業務(任意売買)
を行ってきた。
 しかし、今回、安定上下限価格制度が廃止されたことに伴い、事業団の輸入糖の売買業務のうち任意売買は廃止され、今後は義務売買のみを行うこととなった。
(イ) なお、従来、義務売買において、平均輸入価格が安定下限価格を下回った場合には、その下回った部分に相当する売買差額は糖価安定資金 (任意売買における売買差額への充当財源) として、また、売戻価格と安定下限価格との差に相当する売買差額は調整金 (国内産糖の売買差額への充当財源) として積み立てられてきたが、安定下限価格の廃止により、今後は売買差額全てが調整金として積み立てられ、国内産糖交付金への充当財源とされることとなった。
平均輸入価格の適用期間の見直し
 上述のとおり、国際糖価が低位安定傾向で推移している状況を踏まえ、輸入糖から徴収する売買差額の算定に当たって用いられる平均輸入価格の適用期間は、半月単位から四半期単位に改められた。
 なお、平均輸入価格については、従来どおり、適用期間の初日10日前から90日間のニューヨーク粗糖現物価格の平均としている。
売戻価格の加算額
(ア) 輸入糖について、通常以上の数量の輸入が砂糖の市価や国内産糖の売戻価格に及ぼす影響を緩和するため、輸入申告者の輸入数量が農林水産大臣が四半期ごとに当該者及び事業団に通知した数量を上回る場合には、その上回る数量に係る事業団の売戻価格は、従来どおり、通常の売戻価格に農林水産大臣が定める額 (二次調整金。12砂糖年度は24,550円/トン)を加えて得た額とすることとされた。
(イ) また、上記の通知した数量の合計が農林水産大臣が四半期ごとに定める数量に満たない場合には、その満たない数量に係る通常の売戻価格に加える額は、(ア) の農林水産大臣が定める額(12砂糖年度24,550円/トン)を超えない範囲内において農林水産大臣が別に定める額(二次調整金を減額した額)とすることとされた。
事業団による入札の実施
 輸入糖の価格に関する情報を収集し、上記 (イ) の農林水産大臣が別に定める額の決定の参考とし得るよう、輸入糖について、事業団を実施主体とする入札制度が導入された。入札に参加しうる者は事業団に登録された精製糖企業等で、入札は、年4回(10月、1月、4月、7月)を予定している。
 なお、平成12砂糖年度の第1回入札は、平成12年10月20日(金)に実施した。(入札結果については、本誌「事業団の動き」参照)

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3 砂糖生産振興資金
(1) 砂糖生産振興資金の設置
 事業団は、従来、輸入糖の平均輸入価格が安定下限価格を下回った場合、その差額分は糖価安定資金として積み立て、平均輸入価格が安定上限価格を上回った場合には、糖価安定資金をその差額分に充当することにより糖価の安定を図ってきたところである。
 また、糖価安定資金の運用益により、a. 砂糖・甘味資源作物の生産、流通等に関する情報の収集・提供、b. 砂糖の生産・流通の合理化や甘味資源作物の生産振興を図る事業に対する助成を行ってきた。
 しかし、国際糖価が低位安定傾向で推移し、安定下限価格を下回る差額分の積み立ても安定上限価格を上回る差額分の充当も頻度が少なくなっていること等から、糖価安定資金については、国内糖価の引下げによる砂糖需要の維持・増大を図るために活用されることとされ、名称も砂糖生産振興資金と改められた。
(2) 砂糖生産振興資金の活用
(ア) 事業団は、砂糖生産振興資金を財源として、
a. 国内糖価の引下げ(輸入糖調整金の時限的引下げ、精製糖企業・国内産糖製造事業者の再編・合理化対策、砂糖の生産・流通の合理化や甘味資源作物の生産振興対策)、
b. 輸入糖価格高騰時の価格低減対策、
c. 砂糖・甘味資源作物の生産、流通等に関する情報の収集・提供
 等を実施することとなった。
(イ) このうち、国内糖価(砂糖卸売価格)の引下げに関しては、砂糖の価格競争力の強化と需要の維持・増大に向けて、甘味資源作物生産者、国内産糖製造事業者、精製糖企業等の関係者の協力により、国内糖価を当面20円/kg、中長期的には30円/kg引き下げることを目指すこととされた。
 このため、今年4月から既に粗糖関税(10円/kg)が撤廃(卸売価格で△7円程度の効果)されているところであるが、今後は、砂糖生産振興資金を活用して、
a. 輸入糖調整金について、3年間(平成12年10月〜15年9月。以下「特定期間」という。) 調整金単価(粗糖)の10円/kg引下げ、
b. 精製糖企業・国内産糖製造事業者の再編・合理化(省力化設備の整備、工場廃棄、雇用者対策)に要する経費の助成、
c. 砂糖・甘味資源作物の生産、流通の合理化、砂糖の需要増進、砂糖の製造事業又は甘味資源作物に係る農業の経営又は技術の指導に関する事業に対する助成(補助、出資)
 を行うこととしている。
(ウ) なお、特定期間においては、輸入糖調整金の時限的引下げにより輸入糖の売戻価格が低下し、それに伴って異性化糖の売戻価格が低下し、異性化糖調整金は引き下げられることとなるため、その低下分については砂糖生産振興資金を充当することとしている。また、同様に、国内産糖交付金も増額が必要となるが、その増額分にも砂糖生産振興資金を充当することとしている。
(エ) また、砂糖・甘味資源作物の生産、流通等に関する情報の収集・提供は、従来どおり、砂糖生産振興資金の運用益の範囲内において実施することとされている。

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4 国内産ぶどう糖
 国内産ぶどう糖(国内産いもでん粉のみを原料としたぶどう糖)の売買業務については、その対象となる国内産ぶどう糖の製造が皆無となっていること等から、廃止された。

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IV. 終わりに

 昨年7月に制定された食料・農業・農村基本法において、今後の農産物の価格政策について、農産物の価格が需給事情及び品質評価を適切に反映して形成されるような政策、すなわち市場原理を重視した価格政策を展開することとされている。
 今回の制度改正は、そうした農政の新たな展開方向に即して行われたものであり、事業団は、施策の実施機関として新たな業務を適切に実施し、制度改正の趣旨の発現に努めて参る決意である。


図 新旧砂糖制度下の価格決定メカニズム

(旧) 糖価安定制度のメカニズムの概要図
  ↓
(新) 新制度におけるメカニズムの概要図

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