[2001年12月]
去る、10月26日(金) 札幌にて行われた当団主催の砂糖と食文化セミナーの講演概要とアンケート集計結果について紹介します。
2人の講師が講演され1人目の北海道大学の葛西隆則氏は、機能性食品について、2人目のクッキングキャスター星澤幸子氏は、北海道の食材、特に砂糖の上手な使い方について講演されました。また、参加者に当セミナーに関するアンケートを実施し、それによると有益であったという意見が多数寄せられました。セミナーを通して砂糖に対する正しい認識が高まったようです。
1. 開催概要
10月26日(金)、札幌市中央区の 「かでる2.7」 において、当団主催による 「砂糖と食文化セミナー2001」 を開催した (後援:農林水産省、北海道、札幌市)。当日の札幌は天気にも恵まれ、452名の参加者が集まり盛況のうちに終了した。
セミナーでは砂糖の製造方法、性質、役割などを分かりやすく解説した、事業団制作ビデオ 「不思議な魅力〜砂糖〜」 を上映した後、北海道大学教授葛西隆則氏が 「機能性食品〜食うものと食われるものと世にありて〜」、クッキングキャスター星澤幸子氏が 「北の大地の恵み〜砂糖へのこだわり〜」 と題して講演が行われた。
2. 講演内容
葛西教授は機能性食品には (1) 健康維持の1次機能 (栄養特性) (2) 食品を楽しむものである2次機能 (嗜好性) (3) 身体の神経伝達やホルモンのバランスなどを調整する3次機能 (生体調節機能特性) の3つの機能があることを紹介し、中でも健康維持のための1次機能は、生体調節機能が正常作用することによって初めてみたされるものであることから、3次機能は1次機能に含まれるのではないかとの考えを示した。
また、生体調節機能である3次機能を有している食品には抗酸化作用等、生活習慣病の予防などに対する効果のある物質を有しているが、それは渋味、苦味など不快な味を有していることから、おいしく食べようとする2次機能としばしば相容れない場合がある。しかし、人間は知性によって不快な味を克服し、2次機能と3次機能の矛盾を克服しながら食べるという大変な作業を行っている。すなわち機能性食品とは、科学的に説明される特性を有する食品であり、それを食べると言うことは優れて知性的な作業であると述べた。
また、2次機能を有した食品の呈する甘味については栄養とエネルギーが得られる快適な味として認識されたものであることから、人間は積極的に摂取しようとするものであり、代表的なものは砂糖であると述べた。砂糖は、「肥満、糖尿病の原因」 「砂糖は酸性食品である」 などの俗説は、科学的に全く根拠のない誤解であると訴えるとともに、人間の使用するエネルギーの約20%は脳で消費され、その脳のエネルギーはブドウ糖のみであることから、ブドウ糖を有する砂糖は脳のエネルギー補給に効果的であることを訴えて締めくくった。
星澤氏は、北海道の夕方のワイド番組、札幌テレビ 「どさんこワイド212」 でおなじみのクッキングキャスターあり、北海道の食へのこだわりについて講演された。
星澤氏は富良野の農家の生まれで、小さいころは家でもビートを栽培していたという。当時、冬の寒い日に行う農作業はとてもつらく、どうして農家に生まれたのだろうと悩んでいたが、今から思うと苦労して作ったビートを材料として作った食事などのおかげで、10年間テレビに出演し、料理を紹介し続けられる体力が養われたとして、今では大変感謝していると述べた。
また、北海道は食料自給率が高いところであり、しかも、農産物が低温で生産されるため農薬、化学肥料が少なくてすむ。北の大地でとれたもので作られた日本食を食べていれば、人間の体は健康に保たれると持論を述べ、北の大地で生産されたビートから作られた砂糖、その他野菜、肉などの農畜産物をもっと食べて健康になりましょうと訴えた。また、日本の料理は昔から砂糖がよく使われるので、日本人は砂糖を上手に使っていると述べるとともに当団作成のパンフレット 「砂糖は安心な自然食品」 を紹介しながら、砂糖は運動中のエネルギー補給として効果的であることや、脳のエネルギー源であることを述べ、また、朝食の重要性を訴えていた。
3. アンケート集計結果
参加者全員に対して当セミナーに関するアンケートを実施し、430名から回答を得た。以下その結果を報告する。
【アンケート集計結果】
(1) 性別及び年齢
性別では男性30.4%、女性69.6%で、年齢は40歳以上が90%以上を占めていた。 |
年 齢 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
構成比 |
全体に対する割合 |
男 性 |
女 性 |
10歳代
20歳代
30歳代
40歳代
50歳代
60歳代以上
|
0
6
15
21
31
57
|
0
15
13
32
85
152
|
0
21
28
53
116
209
|
0.0%
4.9%
6.6%
12.4%
27.2%
48.9%
|
0.0%
1.4%
3.5%
4.9%
7.3%
13.3%
|
0.0%
3.5%
3.0%
7.5%
19.9%
35.6%
|
合 計 |
130 |
297 |
427 |
100.0% |
30.4% |
69.6% |
構成比 |
30.4% |
69.6% |
100.0% |
― |
― |
― |
|
(注) 集計不能3名分、以下同じ |
(2) 職業
主婦が圧倒的に多く全体の55%を占めた。次いで、会社員となった。 |
職業等 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
構成比 |
全体に対する割合 |
男 性 |
女 性 |
会社員
主婦
学生
その他
無回答
|
71
0
0
59
|
24
235
1
30
7
|
95
235
1
89
7
|
22.2%
55.0%
0.2%
20.8%
1.6%
|
16.6%
0.0%
0.0%
13.8%
0.0%
|
5.6%
55.0%
0.2%
7.0%
1.6%
|
合 計 |
130 |
297 |
427 |
100.0% |
30.4% |
69.6% |
構成比 |
30.4% |
69.6% |
100.0% |
― |
― |
― |
|
(3) ビデオをご覧になって、お砂糖のイメージが変わりましたか?
ビデオを見て砂糖のイメージが変わった人が多く、74.5%にもなった。イメージが変わらなかった人は、以前から知っていたと答えた人が多かった。 |
区 分 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
構成比 |
全体に対する割合 |
男 性 |
女 性 |
変わった
変わらない
無回答
|
87
41
2
|
231
61
5
|
318
102
7
|
74.5%
23.9%
1.6%
|
20.4%
9.6%
0.5%
|
54.1%
14.3%
1.2%
|
合 計 |
130 |
297 |
427 |
― |
― |
― |
|
(4) どの様に変わりましたか?(複数回答)
ほぼ同じ程度の回答があったが、「砂糖は安心して食べられると思うようになった」 がやや多くなっていた。その他は記述式のため記入は少なかったが、「砂糖の効用」、「砂糖の誤解の解消」、「新たな認識」 が回答されていた。 |
区 分 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
(1) お砂糖の原料であるさとうきびとてん菜は日本の農業に必要であると思うようになった
|
51 |
135 |
186 |
(2) お砂糖は安心して食べられると思うようになった
|
56 |
173 |
229 |
(3) お砂糖には料理やお菓子にとって大切な役割があることが分かった
|
32 |
146 |
178 |
(4) その他
|
ア) 砂糖の効用が分かった
防腐効果、脳の栄養、脂肪を燃やす
イ) 砂糖の誤解がとけた
漂白、肥満、酸性食品
ウ) 新たに認識した
食用以外の用途、国内産糖の供給実態、
さとうきび・てん菜について
|
5
3
3
|
2
1
2
|
7
4
5
|
|
(5) 講演をお聞きになって、お砂糖のイメージが変わりましたか?
ビデオを見て砂糖のイメージが変わった人より、講演を聞いて変わった人の方が多く、80.6%になった |
区 分 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
構成比 |
全体に対する割合 |
男 性 |
女 性 |
変わった
変わらない
無回答
|
103
24
3
|
241
42
14
|
344
66
17
|
80.6%
15.5%
4.0%
|
24.1%
5.6%
0.7%
|
56.4%
9.8%
3.3%
|
合 計 |
130 |
297 |
427 |
― |
― |
― |
|
(6) どの様に変わりましたか?(複数回答)
「お砂糖は身体にとって大切な働きをしていることが分かった」 の回答が多く、砂糖の働きが認識されたことを示した。 |
区 分 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
(1) お砂糖は安心して食べられると思うようになった
|
48 |
151 |
199 |
(2) お砂糖は身体にとって大切な働きをしていることが分かった
|
91 |
205 |
296 |
(3) お砂糖は料理やお菓子、食生活に欠かせないことが分かった
|
36 |
128 |
164 |
(4) その他
|
ア) 砂糖の効用が分かった
防腐効果、脳の栄養、脂肪を燃やす
イ) 砂糖の誤解がとけた
漂白、肥満、酸性食品
ウ) 新たに認識した
食用以外の用途、国内産糖の供給実態、
さとうきび・てん菜について
|
0
1
0
|
3
3
2
|
3
4
2
|
|
(7) ご意見がありましたらお聞かせ下さい
セミナー全体について意見を伺ったところ131名の回答者から136件の回答が寄せられた。意見は感想が多く、なかでも 「面白かった」、「良い企画だ」 との感想が多く、次いで 「砂糖の重要性」、「砂糖と脳の関係」 などが分かったといった意見があった。ただし、なかには 「難しかった」 という意見もあった。
また、「OHP が見づらかった」、「質問時間を取って欲しい」、「時間を短くして欲しい」 など、今後の参考になる希望や改善点が寄せられた。 |
意見・感想等 |
男 性 |
女 性 |
合 計 |
感 想 |
面白かった、楽しかった、勉強になった
良い企画だ、今後も開催して欲しい
砂糖の重要性が分かった、安全性が分かった
砂糖と脳の関系がよく分かった
砂糖を美味しく食べたい
風説に惑わされないようにしたい
国産糖の量が少ないのに驚いた
難しかった
|
13
10
8
1
1
3
0
3
|
43
11
13
4
1
0
1
9
|
56
21
21
5
2
3
1
12
|
希望意見 |
道外の講師の話を聞きたい
体重、運動量、と摂取の目安を聞きたかった
糖分控えめの砂糖を知りたい
|
0
1
1
|
2
1
0
|
2
2
1
|
改善意見 |
OHP 見づらかった
ビデオの画面が暗かった
時間を短くして欲しい
質問時間を取って欲しい
|
0
0
0
0
|
1
1
1
1
|
1
1
1
1
|
その他 |
6 |
0 |
6 |
|
(8) まとめ
今回のアンケートは、セミナーにどんな客層が来て、セミナーを聞いて砂糖に対する認識にどの様な変化があったかを調べる内容のものであった。
セミナー参加者は60歳以上が約半数を占め、高齢者の食に対する関心の高さが感じられるが、開催日の設定が平日の昼間ということで、勤務時間や、学校の時間などにより、若い年代層の参加が少なかったことも60歳以上の年代が多くなった一因といえよう。
様々な意見が寄せられたが、前向きなご意見が多く、また砂糖に対する認識が深まったことを示すご意見も多数あった。
今回のセミナーによって砂糖に対する良いイメージに変わったとする人が多数おり、消費者に砂糖に対する正しい知識の普及に成果を出すことができたのではないかと考えられる。
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