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さとうきび栽培診断調査事業の開始について

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最終更新日:2010年3月6日

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事業団から
[2002年1月]


 平成13年12月11日から13日にかけて、鹿児島県沖永良部島及び与論島において、さとうきび栽培圃場の実測調査と地元さとうきび生産者、試験研究関係者、普及・行政関係者、糖業関係者等による現地検討会が開催されました。これは、平成13年10月、鹿児島市において開催された第1回さとうきび・甘しゃ糖関係検討会における議論を踏まえて開始された、さとうきび栽培診断調査シリーズの第1回目にあたるものです。
企画情報部


経 緯
第1回の概要     ア 沖永良部島     イ 与論島
今後のスケジュール


経 緯

農林水産省、鹿児島・沖縄両県関係者、関係学識経験者、試験研究者等の参集を得て開催された 「第1回さとうきび・甘しゃ糖関係検討会」 (本誌12月号参照) においては、(1) さとうきび新品種の開発見通しとそれを踏まえた今後の振興方向に時間が割かれたが、それと共に、(2) 低単収・低品質圃場等においては、品種や圃場のハード面を現状のままとした場合であっても、営農の改善によってかなりの単収・品質の向上が図られるはずであり、そのための具体的指導を行う必要があるとの意見が出された。
 これを受けて開始されたのが、この 「さとうきび栽培診断調査事業」 であり、主要なさとうきび生産地域 (島別、地域別) ごとに、九州沖縄農業研究センター杉本さとうきび育種研究室長を中心として現地調査を行い、地元関係者との意見交換を通じて現地の疑問点の解消を図るとともに、低単収・低品質圃場等を改善するための具体的な改善目標を提案することを通じて、さとうきび生産の振興に寄与することを目的としている。


第1回の概要

調査日 平成13年12月11日(火)〜13日(水)
調査地 鹿児島県沖永良部島、与論島
参加者 九州沖縄農業研究センター杉本さとうきび育種研究室長、鹿児島県経営技術課原田専技、同農産課田中参事、同県農試徳之島支場末川主任研究員、沖永良部普及センター早崎所長、大島支庁元山主査、日甘工内田課長、当事業団 (以上両地域共通)
 和泊町大福経済課長、知名町小川経済課長、沖永良部対策本部平田事務局長、南栄糖業本部本部長、両町の生産者13名他、計37名 (以上沖永良部島)
 与論町池田産業課長、同町農協林部長、南島開発池田所長、同町生産者5名他、計25名

ア 沖永良部島
(1)  5圃場の実測 (別紙野帳様式参照)
 和泊町の高単収圃場と低単収圃場、知名町の高品質圃場、低単収圃場と高単収圃場について、野帳に基づいてサンプル畦3メートル内にあるさとうきびの本数、茎ごとの健否、茎長、茎の太さ、葉数、根元部及び中間部の糖度等を実測。併せて畦幅、植溝深さ、培土高、土壌の種類、品種名、種苗の種類及び調達方法、防風林の有無、植付年月日、肥培管理の実施状況、前作の状況、投入したい技術、必要だが実施できない管理、開発して欲しい技術、欲しい品種名、経営規模、労力構成等を、生産者の聞き取りを含めて把握。
(2)  現地検討会の開催 (和泊町役場会議室)
 和泊町、知名町の関係者を含む35名が出席し、原田専技の司会により、現行栽培指針に対する意見交換等が行われた。生産者サイドからは、機械化と畦幅の関係、ハリガネムシ被害の軽減から見たと溝の深さ、前作とさとうきび生育との関係、除草剤の効果がでない低温期の除草対策等について質問があった。
 杉本室長から、沖永良部島では花や野菜との輪作を前提とした作付けが行われているが、調査圃場は欠株の発生・雑草の繁茂が多く、茎が短く節間が詰まっているのが特徴であり、植え付け (収穫・株出し処理) 前後の初期管理に問題があることを示唆してる。低単収圃場は基本的には2つのタイプに分けて考えることができ、単収向上対策も異なると考えられる。3トン程度の極端な低収から5トン程度の単収の範囲では本数の影響が大きく、5トン程度の低収からを7トン程度の範囲では1茎重の影響が大きいという成績も知られている。前者では即効性のある基肥を根の近くに与え、分けつを促すこと等の処理が有効であるとのコメントがあった。

イ 与論島
(1)  4圃場の実測 (低単収・低品質圃場、低単収・高品位圃場、高単収・高品質圃場、高単収・低品質圃場)
 調査項目は沖永良部島に同じ
(2) 現地検討会の開催 (与論町役場会議室)
 25名が参加し、原田専技の司会により、沖永良部島と同様に進められた。生産者サイドからは、畦幅と収量の関係、植付時期、堆肥の入手が難かしいこと、土壌診断の実施圃場が少ないこと、耕畜連携と品種の関係 (NiF 8は良い品種だが、青葉が少なくなる傾向があり畜産農家が梢頭部をカットしてくれなくなる)、等の質問や意見があった。
 最後に、杉本室長から、与論島は春植えで株出しを続ける作型が基本となっており、単収、糖度においては南西諸島の平均的な成績の範囲に入ると思われる。調査圃場は茎が乱倒伏していることが第1の特徴である。欠株発生・雑草の繁茂は沖永良部の調査圃場より少ない。収穫作業との関係で春植えの植付が遅く、そのことが春植えの品質停滞につながり、結果として株出し萌芽を支えていることを示唆している。いわば春植えを犠牲にして株出しの芽出しを良くする傾向が見られる。長期多回株出しを考慮するとこれも一つの考え方だが、春植の遅れと植え付け (収穫・株出し) 前後、及び生育初期 (春先の株出し) の管理がされていないのが問題であろう。春先に何か一つ、新たに投入できる作業・技術があるか否か、まず考えて欲しい。乱倒伏の原因は、株上がりや品種特性そのものに起因する根系の特性と肥培管理とのズレにもあると考えられるので、分げつ系発生位置の深い品種を栽培することが有効であると考えられるとして、主要品種の特性と栽培上の留意点等が説明された。


今後のスケジュール

 今回をスタートとして、この1月には鹿児島県奄美大島本島、沖縄県伊平屋島、久米島、南北大東島の調査が行われる予定であり、今・来年度にわたって、主要な栽培地域をカバーしたいと考えている。

さとうきびの現地診断圃場調査野帳



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