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さとうきび栽培診断調査事業について(沖縄県伊平屋島、久米島)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


事業団から
[2002年3月]


 昨年12月に開始されたさとうきび栽培診断調査事業については、先に鹿児島県 (沖永良部島、与論島、奄美大島) において実施されたところです。沖縄県においては平成14年1月17日から24日にかけて伊平屋島、与那国島、北大東島、南大東島、久米島において実施されました。同事業についての全体の報告は追って同誌で詳しく紹介しますが、今回は伊平屋島、久米島において実施された概要を紹介します。

企画情報部


I 伊平屋島調査の概要
II 久米島調査の概要


I 伊平屋島調査の概要

調査日 平成14年1月17日(木)〜18日(金)
参加者 九州沖縄農業研究センター杉本明さとうきび育種研究室長、沖縄県農林水産部営農推進課河野伸二専門技術員、沖縄県農業試験場宮城克浩さとうきび育種研究室長、同名護支場高江州賢文畑作研究室長、宮城孝氏、宮里和則氏、沖縄県農林水産部北部農業改良普及センター伊藝光明作物・畜産普及課長、金城信雄氏、仲村将風氏、同センター伊平屋駐在川之上昭彦氏、伊平屋村役場新垣晃弘氏、(社)沖縄県糖業振興協会志良堂勝啓次長、東慶良氏、ほか現地生産者、事業団

(1) ほ場調査
 調査はほ場での実測が1班5名体制で2班に分かれて実施し、生産者からの聞き取り調査は別に班を設けて効率的に行われた。
 調査内容は生育の計測調査として、仮茎長、茎径、生葉数、枯葉・節数、ブリックス (中・下) 等を計測、記録を行った。さらに生産者からは、品種、作型、肥培管理、中耕・培土、防除状況等の聞き取りを行った。今回の調査は、選定ほ場のうち一部のほ場のみの調査となったが、引き続き関係機関の協力を得て行っていくこととした。

(2) 現地検討会の開催 (JA 伊平屋村会議室)
 ほ場調査実施後に開催された検討会には調査実施者の他、伊平屋村役場や JA 伊平屋村の地元関係者、さとうきび生産者を含め約20名が参加し、沖縄県農業試験場名護支場高江州賢文室長を座長として調査実施者や地元さとうきび生産者等の間において意見交換がなされた。

〔伊平屋島さとうきび生産の概況〕
 伊平屋島の農家戸数は近年減少傾向にあったものの、平成6年以降は50〜60戸で推移し歯止めがかかっている。近年は、農家の経営規模は収穫面積が1ha以下の農家が急増し、平成12年度で1ha以下が61%、1〜2haが34%、2ha以上が6%となっている。収穫面積はここ数年80〜90haで推移しているものの、ハーベスタ導入 (全量ハーベスタ収穫) に伴うほ場踏圧による地力の低下や収穫ロスなどの影響から単収が低くなっている。夏植えが80%、株出しが20%程度で夏植え中心となっている。栽培品種は F177 が主流であるが、最近は Ni9号が増加傾向にある。

〔意見交換〕
 ほ場及び聞きとり調査実施者から調査の概略について報告があった。ほ場の計測調査では倒伏茎や欠株、立枯れ (枯死茎) 状態のさとうきびが多く見られ、これが低収量の一因と推測されるとの報告がなされた。倒伏茎や枯死茎の原因に関して生産者側からは (1) 土壌が保水力に乏しく、夏は15日間雨が降らなければ葉が枯れる、(2) 表土が浅くて培土が十分できない、(台風で倒伏し枯死茎となる) (3) ハーベスタオペレータからのハーベスタ操作性能を高めるため培土を低くする旨の要望に応える形で、培土を低くしており、これが倒伏等の原因の1つと考えられるなど、土壌や栽培管理に関する意見が出された。また、F172 は収量が良く面積を増やしたいが刺が多く管理作業が難しいので面積増加にはつながらない等の意見が出された。
 杉本室長をはじめ調査実施者からは、収量が低いのは欠株や枯死茎が多いこと等が原因ではないかと推測される。この原因が土壌にあるのか、肥培管理にあるのか、品種に起因するものか、今後分析して明らかにしたい。側枝苗を活用するなど、補植をいかに有効に行うかが重要であるが、補植きびの生育が悪い場合もあり、補植の他に欠株をなくす方法はないか検討していきたい。高培土できない場合は品種や他の肥培管理の観点から、倒伏防止等の対策を検討したい。今後目指す作付体系を示してほしい。夏植え・株出し体系か、春植え・株出し体系か、作型によって品種や肥培管理のあり方も異なってくる。また、伊平屋島で作付けを行っていない優良品種があるので、試験的に植え付けてほしい。また、その生育調査を行ってみたい。今回調査が行えなかったほ場は、県農業試験場名護支場、県北部農業改良普及センター、同伊平屋駐在を中心に引き続き調査を実施し、なるべく早い時期に調査結果やアドバイスをとりまとめ提示したい等のコメントがあった。


II 久米島調査の概要

 調査日 平成14年1月23日(水)
参加者 九州沖縄農業研究センター杉本明さとうきび育種研究室長、沖縄県糖業農産課仲眞和枝氏、沖縄県農業試験場宮城克浩さとうきび育種研究室長、沖縄県農林水産部南部農業改良普及センター上原藤盛作物・畜産普及課長、同センター安藤緑樹技師、同センター具志川村駐在上地暢氏、同センター仲里村駐在嘉数耕哉氏、仲里村役場金城睦原氏、金元政幸氏、(社)沖縄県糖業振興協会志良堂勝啓次長、同金城律子氏、JA 久米島与那辰夫氏、佐九田勇一氏、久米島製糖兜ス田清信常務取締役、宮里太郎氏、柴岡俊夫氏、ほか現地生産者、事業団

(1) ほ場調査
 調査は1班8名体制で2班に分かれて実施し、生産者からの聞き取り調査は別に班を設けて効率的に行われた。調査は8ほ場を選定して実施した。
 調査内容は伊平屋島と同じ。

(2) 現地検討会の開催 (具志川村改善センター)
 生産者を含め約80名ほどが出席して行われ、南部農業改良普及センター上原作物・畜産普及課長を座長として、久米島製糖兜ス田常務からの久米島におけるさとうきび生育状況の概況説明に続き、ほ場及び聞きとり調査実施者や地元さとうきび生産者等の間において意見交換がなされた。

〔久米島さとうきび生産の概要〕
 久米島のさとうきび農家戸数は1,113戸で全世帯数の30.7%を占め、作付面積は1,443haで全農地面積の81.4%を占める。またさとうきびは農業粗生産額の約70%を占めている。台風による塩害が平成8、10、12、13年に異常に多発し、大幅な単収、品質低下が続いている。しかし、そのような中でも10a当たり7〜8トン収穫している生産者もある等、自然災害の影響だけが減産、品質低下の要因と言えるのかどうかは検討する必要がある。大量に肥料を使用しながら収量が増えない生産者がいることやさとうきび用以外の肥料を使用している生産者がいること等から栽培方法にも問題がないか検証する必要性が示された。また、F177の作付け割合を50%程度に低下させ、早期高糖度品種への転換や株出の本数確保の必要性があるのではないかとの現状と今後の課題が説明された。

〔意見交換〕
 生産者側からは、(1) 具志川村は雨が多いため、茎長が3mを超えると根が張っていない場合は倒伏する、(2) 干ばつの場合は石灰岩土壌の場合成長が悪くなる、(3) 2〜3回ハーベスタを使用すると耕土が堅くなるなどの問題点等がを紹介された一方、安山岩土壌で鶏糞200kgを毎年施肥した場合、8回の株出、7〜8トンの収穫があったとの事例紹介があった。また、センコル (除草剤) の動力噴霧器を使用の合のさとうきびへの影響や、除草剤2〜3回散布の場合の有機物施用への地力への影響等について質問があった。
 杉本室長からは、他の島の生育状況を説明した後、久米島の生育状況について概括的な説明が行われた。(1) 生育初期から旺盛期にかけての台風被害は主に茎の折損で、収量に影響し、夏植えに比べ春植えと株出しで被害が大きい。また、生育後期の台風被害は潮風害による生葉の枯死で、糖度上昇を遅らせる原因となる、(2) 鶏糞施用で効果があったという例は、鶏糞や堆肥等、有機物の投入による地力改善は、費用や労力はかかるが、株出し回数や収量が大幅に伸びることで、むしろ利益が大きなることを示している、(3) 茎が伸びず、毎年収量が低いほ場では、有機物施用や深耕によってほ場を改善するとともに、欠株をなくし、分けつを促進して茎の本数で収量を高めることを考えることも必要。防風林がなく倒伏しやすいようなほ場で収量と糖度を両立させる場合も、茎の長さではなく、茎の数で収量を確保することが有効、(4) 台風・干ばつの発生しやすいほ場で安定的に多収を得るには、梅雨入り前 (5月頃) までにはほ場が葉で覆われて地面が見えないくらいに生育を進めておく必要がある。春植えや株出しでは、芽出し (発芽や萌芽) を促進して生育を夏植えに少しでも近づけるようにすることが大切、等のアドバイスがあった。
 その他、同じ現象の問題でも原因が異なりその対応策が異なること、生産者と共通の問題点として理解を持ちたいなどのコメントがあった。
 その他県農業試験場、普及センターからは、除草処理剤や化成肥料の効果的な施用方法、適期かん水の必要性が示された。



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