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オーストラリア「OUTLOOK 2003」による世界の砂糖需給見通し

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


事業団から
[2003年5月]


 オーストラリアは、わが国の粗糖輸入量の約4割を占める主要な輸入先国でありますが、オーストラリア農業資源経済局(ABARE)は、毎年、春に、各種農産物等の生産見通しについて検討する「OUTLOOK」会議を開催しています。今年は3月4〜5日に開催され、この中で砂糖については、「世界の砂糖需給と市場の動向」、「ブラジル、中国等主要国の動向」「オーストラリアの動向」等について発表されたので、その概要を紹介します。
なお、イラク情勢については、開戦前の時点での見通しでありますのでご了承下さい。

農産流通部

1.世界の砂糖需給と市場の動向
2.砂糖市場に影響を及ぼす要因
3.オーストラリアの生産見通し

1.世界の砂糖需給と市場の動向

1) 世界の砂糖需給
 世界の生産量については、03/04年度は、EU等の増産により前年から10万トン増の1億4,030万トンとなり、その後も漸次増加し、07/08年度には、02/03年度比850万トン増の1億4,860万トンに達すると見通している。
 また、消費量については、03/04年度は、発展途上国等における増加により前年から130万トン増の1億3,790万トンとなり、生産量と同様、その後も漸次増加し、07/08年度には、02/03年度比1,150万トン増の1億4,810万トンに達すると見通している。
 この結果、在庫率は、消費量の増加が生産量の増加を上回っていることを反映して、03/04年度をピークにその後は漸次低下傾向で推移すると見通している。
 砂糖の需要は、先進国においては収入の増減に左右されないが、発展途上国においては砂糖需要と収入との間に強い相関関係がある。世界の消費量が増加するためには、発展途上国、特に極東アジアでの経済の発展が重要である。
世界の需給見通し(01/02〜07/08年度)

2)03/04年度の市場価格
 市場価格は、02/03年度に12%上昇すると見られていたが、世界の指標価格(NY、NO.11)は、2003年2月中旬には予想を上回る9セント台を示現している。03/04年度については、8セント程度にまで下落すると見られている。
 近年、砂糖の生産量が消費量を上回っていることから、砂糖の在庫量は増加しており、03/04年度についても、在庫率は前年度比1.2ポイント増の50.8%に達すると見られている。この在庫率の上昇が、価格の下落要因となっている。
 ロシアの輸入先国であるタイやキューバでの需給がタイトになっていることやブラジルでのエタノール政策は、砂糖の市場価格が2002年9月から上昇している要因となっている。
 オーストラリアにおいては、干ばつがさとうきびの成長に悪影響を及ぼしていたが、2003年2月上旬にクイーンズランド州沿岸部にもたらされた降雨は、2003年半ばから収穫が開始されるさとうきびにとっては恵みの雨となっている。

3)今後の市場価格
 砂糖の市場価格の変動は、今後も継続すると見られている。イラク戦争が不確定な要因となり、砂糖の市場価格は不安定になっている。石油供給の混乱や石油価格の高騰が予想されており、特に、発展途上国の経済に大きな影響を及ぼすため、世界の砂糖消費の成長にも悪影響をもたらすと思われる。
 また、主要生産国における天候も、これまでと同様に、砂糖の市場価格に影響を及ぼすと思われる。
 さらに、生産国や消費国における砂糖とバイオマスエネルギーに対する政策も、砂糖の価格に大きな影響を及ぼす可能性がある。特に、ブラジルで2003年1月末及び2月初めに公表された政策は、砂糖の価格変動をもたらした最も明確な要因となった。
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2.砂糖市場に影響を及ぼす要因

1) ブラジルの砂糖とエタノールの政策
 03/04年度のブラジルのさとうきび収穫量は、前年度比、約4%増と見られている。同国は世界の砂糖市場において重要な位置にあり、世界の市場価格に大きな影響を与え得る。このことは、最近、ブラジルがエタノール政策の変更を発表したことに対する市場の反応を見ても明らかである。2002年にエタノールの在庫が不足したことから、ブラジル政府はエタノールを増産する対策を講じたが、この対策には、エタノールの燃料への混合率を一時的に減少させることと、製糖工場の合意により砂糖の輸出量に上限を設けることが含まれている。
 世界の砂糖市場にとって、この対策による衝撃は大きく、粗糖先物(2003年3月限)の価格は、1月下旬に7.75セントから8.70セントへと敏感に反応した。この対策が市場に伝わった一週間後には、さらに9セント弱まで上昇している。砂糖の市場価格の安定にとって、ブラジル政府でのエタノールの需給対策が重荷となっている。
 ブラジル政府は、エタノールの供給不足を、エタノール市場の市場原理に任せるのではなく、砂糖の生産からエタノールの生産に切り替えることで解消することを選択した。このことは、エタノール価格の上昇によりエタノールの生産が促進されるのではなく、政府による規制や製糖工場との合意によりエタノールの生産を管理することを意味している。実際、エタノールの生産者は、低いエタノール価格で生産を増加させることに合意している。

2) 中国の砂糖の生産と消費
 中国の03/04年度の生産量は、前年から60万トン増加すると見込まれている。砂糖の生産量は、全体としては南部でのさとうきびの増産により増加しているが、ビート糖を生産している北部の一部の地域では、他作物への転換が行われたことにより減産となっている。中国の生産量と消費量はおおよそ釣り合っており、共に増加傾向で均衡を保っている。砂糖の消費増加は、サッカリン市場での規制によるものである。
 また、中国政府は、国内の砂糖価格が下落した場合には、砂糖の備蓄を積み増しすることにより価格の安定を図っている。

3) インドの砂糖とエタノールの生産
 現在、インドは膨大な白糖の在庫を抱えている。白糖の品質は、ほとんどがロンドンの白糖市場には適合しない水準である。政府による輸出支援策により、02/03年度の砂糖の輸出量は150万トン以上に増加すると見込まれているが、それでも膨大な在庫が残ると見られる。
 また、インドは、2003年1月から自動車の燃料にエタノールを混合する計画を開始しており、やがては、さとうきびからエタノールも生産されることになると思われる。この計画は、まず9つの州と4つの共同体において開始され、混合率は5%とされているが、将来的には、国全体に広め、ディーゼルへの混合も含めて、混合率を10%にまで高めることが検討されている。

4) EUとロシアの砂糖の生産
 EUにおけるビートの生産量は、洪水や豪雨の被害を受けた過去2年間から回復し、200万トン以上増加すると見込まれている。
 ロシアでは、関税及び輸入割当政策によって、生産と消費の較差を縮小しようとの取り組みが行われていることから、ビート生産量は着実に増加すると思われる。このことは、同国は今後数年間においては最大の粗糖輸入国であるが、輸入量は次第に減少することを意味している。

5) アメリカ合衆国の砂糖政策
 アメリカ合衆国の砂糖政策の目的は、国内価格の安定を図り、国内供給を管理することであり、国内の砂糖の価格はローンレート以上の水準になっている。同国では、ローンレート制度に加えて、WTOやNAFTAで義務付けられた砂糖の最低輸入数量について関税割当を適用している。これらの政策が、砂糖価格を高く維持しており、貿易を制限する障害として残っている間は、世界の市場を停滞させる要因となり続けると思われる。
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3.オーストラリアの生産見通し

 03/04年産のさとうきびは、成長初期の干ばつにより生育が妨げられているが、2003年2月上旬にクイーンズランド州沿岸にもたらされた降雨が救いとなり、現在は回復傾向にある。Mackay-Proserpine地域は、干ばつの被害が最も大きく、この地域でのさとうきびの減産が、03/04年度におけるオーストラリア全体の減産の主な要因となっている。
 02/03年度におけるクイーンズランド州のCCS(さとうきびに含まれる砂糖の割合)は14.3%であり、03/04年度は13.7%と予想されている。03/04年度のさとうきび生産量は、02/03年度から約150万トン減の3,630万トンと予想されており、天候と病害の影響を受けた2000/01年度に比べると、かなりの増産となっている。オーストラリア全体での03/04年度の砂糖の生産額は、14億9,900万豪ドルになると見通されている(米ドル換算レート:1豪ドル=0.585USドル、粗糖価格:8セント/ポンドとした場合)。
 オーストラリアの砂糖産業にとって、変動しやすい世界市場での競争力の維持と市場の変化への対応が長期的な課題となっている。Hildebrand調査と州政府や産業界による報告は、経済的効率性の改善と長期的な成長性の改善による構造改革が必要であると指摘している。さまざまな改革によるリスクも予想されるものの、砂糖の価格が下降傾向にある中で、生産性と効率性を確保できなかったことはオーストラリアにとって不利に働いている。
 今後、オーストラリアの砂糖産業においては、競争力を維持するためにさまざまな改革が行われるであろう。さとうきびの生産、糖度、製糖作業の効率性等、生産行程全体を通した改革により、砂糖の生産は着々と増加することが期待される。病虫害の管理は、より高い生産を達成するためには極めて重要である。栽培面積が拡大するとの見通しもあるが、環境問題や潅漑用水の問題により抑制されると思われる。目標としては、07/08年度までに砂糖生産量は590万トンに達することが計画されている。
オーストラリアの生産見通し(01/02〜07/08年度)
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