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WTOおよびFTA交渉の現状と今後について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2003年12月]

(講師:農林水産省大臣官房 総括審議官(国際)  
調査情報部

はじめに
WTO農業交渉について
  1 モントリオール非公式閣僚会合   2 米・EU共同ペーパー
3 G21提案(途上国提案)   4 カンクン閣僚会議文書案
5 カンクン閣僚会合    
FTA交渉について
  1 メキシコ  2 韓国  3 ASEAN
質疑応答
参考資料


はじめに

約130人が集まり改革フォーラムが開催された
 独立行政法人農畜産業振興機構は、運営および業務を適正に執行するため、社会経済情勢の変化等の内外情勢を理解し、職員の資質向上を図るため、改革フォーラム(有識者による講演会、有識者との意見交換会等)を開催している。
 今回は、平成15年10月28日に、農林水産省の村上総括審議官を招き、農政の最大の緊急かつ重要な課題であり、また、機構の役職員にとっても最大の関心事である「WTOおよびFTA交渉の現状と今後について」をテーマとした改革フォーラムを開催した。その講演の内容を紹介する。
 なお、当日の参加者は、テーマの重要性に鑑み、機構の役職員のみならず広く関係団体にも参加を呼びかけた結果、約130人が参集した(注:資料については抜粋したものを掲載)。
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WTO農業交渉について

村上総括審議官 ご紹介いただきました、農林水産省の村上でございます。きょうはこのような機会を設けていただきましてありがとうございます。率直に現状をお話しして、皆様方のご意見を承りたいと思います。
 2000年3月から農業交渉は始まっております。これはウルグアイ・ラウンドの合意を踏まえて、いわゆるビルトイン・アジェンダということで、交渉を継続するということが既に決まっていたものです。
 その年の12月に、閣議了解を経て日本提案を提出しております。
WTO農業交渉の経緯
2000年3月
12月
WTO農業交渉開始
WTO農業交渉日本提案を提出
2001年11月
第4回WTO閣僚会議(ドーハ)で
 新ラウンド立上げ
2002年5月
7月
9月
11月
米国が新農業法を成立
米国が新提案を提出
ケアンズ諸国が新提案を提出
我が国がモダリティ提案を提出
2003年1月
2月

3月
3/31
6月

7月
8月
9/10・14
EUのモダリティ提案を提出
農業交渉議長よりモダリティ1次案の提示
非公式閣僚会合(東京)
農業交渉議長よりモダリティ1次案改訂版の提示
農業モダリティ確立ならず
非公式閣僚会合(エジプト)
EUが CAP改革に合意
非公式閣僚会合(カナダ)
米国・EUが共同ペーパーを提出
第5回WTO閣僚会議(メキシコ)
2005年
1/1以降

農業交渉の終結(全分野包括一括受諾)
 2001年11月にドーハで、現在のラウンド、ドーハ開発アジェンダと言っておりますが、これが立ち上がって、農業交渉もサービスと一緒に、全体の包括交渉の一環として位置づけられたわけです。ラウンドの中の一環として交渉が本格化したわけですが、各国が、その以前から包括提案というのを出してきておりましたけれども、米国が2001年7月に新しい提案を出しております。米国は、従来から提案を出していたわけですが、7月の提案で具体的な数字を入れたモダリティ案を提案しました。
 その背景として、5月に新しい農業法ができました。この内容については、ご案内のとおり、不足払い制度を実質復活するということで、ウルグアイ・ラウンドの合意の方向性から若干反対向きの、国内の保護水準を高める内容になっていたということで、かなり、各国から批判がございました。それを受けて、米国としては、交渉のリーダーシップを維持する、あるいは回復するという趣旨で、新しい提案を出してきたということがございます。
 それまでは、具体的な数字の議論はしていなかったわけですが、米国が具体的数字を出してきたということで、ケアンズ諸国が、翌年の1月にはEUが出すというようなことで、各国がモダリティ案という形で提案を出してきたわけです。
 我が国は、11月に具体的なモダリティ案を提出しました。
 2003年3月にモダリティを確立するということがスケジュールとして決まっており、その前の2月、3月に、農業交渉グループの議長、香港代表のハービンソンが出したモダリティ案がテーブルに乗っていたわけですが、これに対して、我々輸入国は、輸入国サイドに対する負担が過重なものになっているということで、議論のベースにはできないという主張をしました。一方、米国、ケアンズ諸国は、議長提案は依然として不十分であり、野心が低いと主張しました。
 そういうことで、基本的な構図としては、輸出国と輸入国の大きなスタンスの違いがありまして、モダリティの確立ができなかったということです。
 2003年3月以降、技術的な会合を進めてきておりましたが、物事が大きく動いた1つのきっかけは、EUが、6月下旬の農相理事会でCAP(共通農業政策)改革の方向について合意したことです。これにより、交渉の主要プレイヤーの1つであるEUの交渉における柔軟性の限度というのがある程度わかってきました。
 このCAP改革を受けて、7月にカナダのモントリオールで非公式閣僚会合がございました。この前後から米国とEUが話をするということを表にしながら、両者で調整をし、8月13日に、米・EUの共同ペーパーが出されました。これをジュネーブで議論しまして、一般理事会の議長が閣僚宣言案を出して、カンクンの閣僚会合に持ち込みました。
 この流れを具体的なペーパーに沿って見ていきたいと思います。

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1 モントリオール非公式閣僚会合
 7月28日から30日、モントリオールで25カ国ほど集まりまして議論をいたしました。この非公式閣僚会合は、WTOの正式な意思決定機関ではなくて、主要国あるいは各グループを代表する国が集まって、非公式に今後のWTOの方向についての意見交換や各国の意見調整を行う場です。このモントリオールの非公式閣僚会合の重要性は、合意されたCAP改革がどういう意味を持つかという議論が具体的にできたということが1つございます。
 EUの状況を踏まえて、米国とEUの間で調整して、特に市場アクセスについて何らかのたたき台をつくりたい。これは従来からスイス・フォーミュラとウルグアイ・ラウンド方式で大きく対立してきて、その妥協点が全く見つけ出せなかったという状況がありました。そういう状況の中で、米国、EUが何かそれらの中間点を探ることはできないかということで、共同作業をしてみたいということを申し出まして、これに対して、基本的には各国とも異論を挟まなかったということです。米国とEUが話をしないことには物事は進まない。両者で全部決めてもらうのも困るけれども、それは必要悪として是認せざるを得ないというのが各国の考え方であったと思います。このようにモントリオール非公式閣僚会合では、8月の中旬に向けて、米・EUで共同作業をするという方向性が出てきたということです。
 市場アクセスの妥協点については、ブレンド方式といいまして、スイス・フォーミュラとウルグアイ・ラウンド方式の、何らかの組み合わせというようなアイデアが、非公式ながら言及されていたということです。
  それから、本会合の裏では、我々も米国、EUからそれぞれの考え方について説明を受け、意見を述べたりしていたわけですけれども、その段階では、両者間には、関税の削減方式については非常に大きな違いがまだありました。
 モントリオール会合の後、米国とEUが作業を続けていきまして、8月13日、米・EUが共同ペーパーを出しております。モントリオールの会合でも、あるいはその前の会合から、共通の加盟国の基本的な考え方としましては、モダリティの詳細なものをつくるのはカンクンまでの時間等を考えると難しいということで、フレームワークを作ろうということになっておりました。フレームワークのたたき台についての米・EUの考えをまとめるということで米・EUが作業してきたわけです。
 したがいまして、ハービンソン議長が出したモダリティに関する議長案と比べますと非常に簡略化された内容になっております。
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2 米・EU共同ペーパー
 米・EUで合意した関税削減のフォーミュラとしては、ブレンド方式とし、関税を3つのグループに分けて、最もセンシティブな品目のグループについては、ウルグアイ・ラウンド方式を適用し、市場アクセスの拡大は、関税の削減や関税割当の組み合わせにより実施するということで、この特徴は、関税割当の措置が加わっているという点です。
 2つ目のグループは、係数が未定ですが、スイス・フォーミュラを、3番目のグループについては無税とするということで、この3つのグループに分かれているわけです。
講師の農林水産省大臣官房
村上総括審議官
 ほかの分野もそうですが、削減率やそれぞれのグループに分ける割合などの数字についてはすべて括弧書きになっておりまして、これは、全体の枠組みに合意した後にさらに交渉して決めるという考え方です。
 我が国としては、市場アクセスの拡大において、関税割当の組み合わせが入っているということが大きい問題でした。
 それから、これは最も大きな問題ですが、一定の上限関税を設けて、全ての関税をそこまで引き下げることを基本として、それができない品目については、二国間によるリクエスト・オファーにより、効果的な追加的な市場アクセスを確保するということで、関税をある一定の水準まで下げるか、関税割当を拡大することが求められるわけです。この方式は、先進国、途上国共通のフォーミュラとして提示されていたわけです。途上国に対する特別措置については、「より低い関税削減率」と「長期の実施期間」ということ以外は、具体的な中身は提示されていないという状況でした。
 それから国内支持です。国内支持については、「より多くの貿易歪曲的国内支持を使用する国については、より大きな削減努力を行う」ということになっており、これについては、国内支持水準が米国の3〜4倍あるEUが妥協したと考えています。「黄の政策について、ある一定の幅の範囲で削減する」との約束は、AMS(助成合計量)の水準の高い国は、高い削減率が課されるとの意味合いが含まれています。
 それから、従来の「青」の政策に替わるものとして、「新しい青」の政策の要件を規定しています。これについては、従来の「青」の政策と比べると生産制限の要件が外れているということで、この意味においては要件が緩和されております。
 そのかわりということかわかりませんが、農業総生産額の5%を超えないとする要件が付加されています。
 また、「許容されるAMS、新しい青の政策及びデミニミスの合計は2004年の水準より大幅に制限する」という規定は、精神規定的なもので、全体としては、支持水準を上げませんという意思表示だと思います。それから、デミニミスを削減するということです。
 この、「新しい青」の政策を導入したということと、農業総生産額の5%までこれを許容したということは、途上国などからの反発の要因になったわけです。
 輸出規律、特に輸出補助金ですが、途上国の関心品目については一定の年限で撤廃し、残りの品目については、予算及び数量を削減することになっております。
 輸出国家貿易については、輸出独占の廃止、特別な金融上の特権等の禁止等となっていますが、ケアンズの中でも小麦ボードを持つカナダ、乳製品の輸出国家貿易企業を有する豪州とNZなどがこれに反発しました。
 もう1つ、その後の展開に大きい要因となりましたのがS&D(途上国のための特別かつ異なる待遇)の規定ですが、米・EU共同ペーパーは、S&Dについてはあまり詳しく規定していないにもかかわらず、特に、ブラジルなどの純食料輸出国については、一般のS&Dとは違った形にしますという規定が入っております。これはラテンアメリカ諸国、ケアンズ、特にブラジルないしアルゼンチンを念頭においた規定で、中でもブラジルは、特に自分の国を狙い撃ちにされたということを感じて、その後のG21、22の形成の動きにつながっていきました。
 それから、輸出補助金の規定については、ドーハの宣言の中で「段階的な撤廃」という文言が入っておりますけれども、このドーハの宣言に照らして、米・EUペーパーは輸出補助金は一部の品目については撤廃するということになっていて、輸出補助金全体が完全に撤廃されるということが明確になっていないということが、途上国、特にラテンアメリカ諸国、ケアンズ等を中心に強い反発を招きました。
 この米・EU共同ペーパーは、8月13日にジュネーブで各国に提示されました。これに対して、いま申しましたような点を中心に、非常に強い反発が各国から出されました。特に、米・EUの共同ペーパーは、国内支持については米国やEUの既存のプログラムを温存する形になっているということ、輸出補助金については、「撤廃」ということが必ずしも明確になっていない(途上国の関心品目に対して撤廃するという形になっておりますが、その範囲も、量的な大きさということからも明確になっていない)ことから、これに対する反発が非常に強かったわけです。
 それから、S&Dのところで、ブラジルなどを念頭に置いた、途上国の差別化をする規定が入っていたということでも、強い反発を生んだ原因となりました。
 他方で、米・EU自らの国内支持プログラムを守るということが明瞭な中で、市場アクセスについては、先進国、途上ともに非常に厳しい内容のものが提示されているということがあったわけです。
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3 G21提案(途上国提案)
 最初は16または17カ国の途上国であったわけですが、カンクンに入りますと21カ国、最終的には22カ国になり、インドとブラジルが中心になって、途上国を集めて共同提案をつくっております。この共同提案は、いま申し上げた米・EUの提案に対する強い反発の中で生まれてきたものです。したがって、米・EU提案とかなり裏表になる内容になっております。
 国内支持を見ていただきますと、貿易歪曲的な国内支持について、品目ごとに削減する、実施期間の最初の12ヵ月間で最低何%前倒しをする、輸出国については、さらに大きく削減する、米・EUが温存しようとしている青の政策を撤廃するなどとなっています。
 それから、従来は規律の対象外であった「緑」の政策について、「直接支払いについて上限を設ける」、あるいは「削減する」という内容になっております。
 市場アクセスについては、先進国については、基本的にはブレンド方式ですが、センシティブな品目については、一律削減の何%削減という形になっております。加工品については、タリフ・エスカレーションへの対策から、「原材料の関税の一定倍の削減率を適用する」としています。また、平均関税削減率は、「最低、一定水準以上でなければならない」と規定されています。
 それから、関税上限の規定が維持されていますが、リクエストオファーのオプションというのはなくなっておりますし、関税割当については、米・EUペーパーは、オプションとして関税割当の拡大という規定が入っておりましたが、国内消費の何%までに義務的に拡大するとされています。さらに枠内税率も無税にするということになっております。また、特別セーフガードについては、先進国は廃止という形になっております。
 ただし、途上国に対しては、いわゆる特別品目(special products)ということで、特別の待遇をする品目を設けると同時に、全てのタリフラインについては、ウルグアイ・ラウンド方式にするということになっておりますし、それから、関税割当の拡大、枠内関税の削減の義務がないということになっております。
 輸出補助金については、特別品目とその他の品目で分けて規定しておりますが、最終的には全部撤廃という内容になっています。
 以上のように、この提案は、米・EUペーパーに対するアンチテーゼといいますか、国内支持、補助金に対して、非常にゆるい内容になっていたものを非常に強い、しかも、途上国、先進国に強い内容になっておりますし、市場アクセスは、先進国に対してきつく、途上国に緩いという内容になっております。これはまた、米国、EUなどの先進国との対立を生み出す1つの要因になったわけで、いわゆる、先進国と途上国で規律の内容が全く異なる、二重規律(double standard)という言い方をしておりますが、そういうものをWTOの中に持ち込むという意味で非常に問題のある内容であるわけです。
 このような中、我が国を含む輸入国のグループは、米・EUペーパーでは上限関税が入っている、あるいは関税割当の拡大が入っているということなどを中心に、ジュネーブで修正案を紙として出す作業を行いました。このように様々な国が提案を出し、米・EUペーパーの修正を求めていくという形になったわけですが、そういう議論の中で、一般理事会の議長が、カンクンでの閣僚文書の案を出しました。
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4 カンクン閣僚会議文書案
 このカンクンの閣僚文書案は、本文と附属文書という形になっております。本文において、「ドーハの宣言、決定を再確認して、2005年1月1日までに交渉を終結する」ということを確認しています。そのために以下のとおり合意するということで、それぞれ、交渉分野ごとに本文が入っているわけです。
 農業交渉のところですが、「ドーハの目的をモダリティに反映させるための作業を強化する」。「附属書Aの枠組み、これを作業の結論のための基礎として採択する」ということで、枠組みをここで合意しましょうという内容になっております。
 その次に、「いついつまでにモダリティを決める」ということが書かれておりますし、それに基づいて「いついつまでに包括的な譲許表を出す」、こういう構成になっていたわけです。
 農業の部分の附属書がついています。当初、本文に、非貿易的関心事項についての文言が入っていなかったのですが、我が国等の働きかけにより、途中で修正されて、非貿易的関心事項について言及されました。
 基本的には、この閣僚文書案は、米・EUペーパーの主要な部分を取ってきて、途上国配慮をかなり入れ、米・EUペーパーで少し弱いと言われる国内支持、輸出補助金のところをかなり規律強化している、というのが全体的な特徴だと考えております。
 市場アクセスのところですが、基本的な枠組みであるブレンド方式については変わっておりません。関税割当の組み合わせというのは依然として維持されていたわけです。
 また、我が国は関税上限についての文言が残っていたため、これを削除するよう提案をしていたわけですが、ここは受け入れられませんでした。
 ただし、上限を超える関税品目については、リクエスト・オファーのところに若干文言の修正がありまして、「リクエスト・オファーの方式によってこれらの若しくは他の品目において効果的な追加的市場アクセスを確保する」という言い方になっております。従来は、「リクエスト・オファー方式によって効果的な追加的市場アクセス」ということになっておりました。関税上限を超える品目そのものと、それ以外の品目でもいいですという、若干動きの余地が広まるような細かい文言の修正がございました。
 途上国の市場アクセスのフォーミュラについては、3つの分類をしていますが、基本的には、いずれもウルグアイ・ラウンド方式です。ただし、第2、第3のカテゴリーについては、スイス方式、スイス・フォーミュラも1つのオプションとして入れております。これは交渉によって決めるということです。
 それから、第1のカテゴリーに特別品目というのがありまして、これはハービンソン議長のペーパーの中で初めて出てきた概念ですが、食料安全保障とか、非常に重要な品目について、特別な扱いをするということです。具体的には最低削減率だけ適用し、関税割当の拡大は行わないというものです。また、関税上限については、途上国については、適用するかどうかは今後の交渉に委ねられるという形にしております。
 国内支持については、米・EUペーパーと変わった主な点は、新しい青の政策について、米・EUペーパーでは農業生産総額の5%を超えないというだけでしたが、これに加えて、「さらなる実施期間[ ]間で、毎年等量に[ ]%削減する」という義務が課されました。一方、「緑」の政策については、米・EUペーパーでは全く触れておりませんでしたが、政策の要件について交渉の対象とするということになっております。これは、「緑」の要件が現在の農業協定の中に書かれておりますが、これも、ジュネーブでその要件の見直しについては議論してきておりましたので、引き続き交渉するということになったわけです。
 輸出補助金のところでの大きな変化は、「輸出補助金の段階的撤廃の完了日の問題は引き続き交渉の対象とする」ということで、輸出補助金撤廃完了の問題を交渉対象とするということになっております。ただ、これはいろいろな読み方のできる表現で、完了日の問題が今回決めなければいけない問題かどうかということも含めて議論することになりますので、完了日を決めるとは限らないということで、ここは、EUに配慮しながら、EUにも多少きつい内容になったということです。
 我が方から見て1つの改善は、「輸出禁止・輸出制限について、今後の交渉対象とする」ということで、これは、我が国の提案の中でも、輸出入国間の権利義務のバランスの是正という意味で、輸出国の輸出禁止、輸出制限、輸出税に対して、規律強化を提案しておりましたが、これが一部取り入れられたということです。
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5 カンクン閣僚会合
 こういう状況の中で、カンクンに入っていきました。カンクンに入るときに、この議長の文書案について、これをカンクンに送ることについての議論がまた加盟国間で行われて、加盟国はこれを送ることに反対だという国が非常に多かった状況にありました。要するに、自分たちの意見が反映されていないということです。特にG21は、そもそもこれを議論のベースにできないということで強力に反対したわけです。我が方も、問題があるとの立場を伝えましたが、議長の職権で送る分にはかまわないという話をしたわけです。結局、この閣僚文書案は、議長の職権でカンクンに送ることになりました。

(1) G10提案(輸入国グループ提案)
 カンクンに入ったわけですが、カンクンでは、G21、それから我々輸入国、いろいろな国が表・裏でいろいろな折衝をしたわけですが、その中で、我々輸入国として閣僚文書案修正提案というのを出しております。
 最初は9カ国で出して(後に10カ国となる)、我が国の亀井大臣ほか、韓国の大臣、スイスの大臣、9大臣が共同記者会見して、これを提案いたしました。
 関税の削減方式については、ブレンド方式は認めるけれども、「最もセンシティブなグループへの関税割当の拡大を」という文言を外しております。もう1つは、関税の上限の条項があったのですが、これは全部削除しております。これらについては、途上国も同じような取り扱いにするとの立場です。
 我々のグループの特徴としては、先進的な輸入国で、輸出はほとんどやっていなく、保護水準が高いという国です。米・EU共同ペーパーにしても、一般理事会の議長のペーパーにしても、輸入国に非常に厳しいということで、関税の上限の問題と、関税割当の拡大の問題で、共同歩調を取ったということです。国内支持や輸出補助金のところでは、若干、グループ内で利害が違うということがありまして、そこまでの調整は行えませんでした。したがいまして、協調できるところについて提案を出したということです。
 10カ国集まって共同して出したということは、最終的には力になったと評価しております。

(2) 議長第3次案
 メキシコのデルベス外務大臣が、カンクンの閣僚会議の議長をやっておりますが、この議長の3次案が9月13日に出されています。
 いろいろな修正がなされていますが、市場アクセスのところでは、基本的な方式は変わっておりませんが、若干きつくなった点は、「単純平均の関税引き下げが [ ]%を下回らない」ということで、下支えがされているということです。
 それから、ここが我が国としては一番関心の大きいところですが、関税の上限のところです。非貿易的関心事項に基づき指定されるごく限られた数の品目について柔軟性が付与され、削減方式だけが適用されるということになりまして、上限の規定は適用しないという内容が、カッコ付きですが入れられたということです。
 これは、先ほど言いました10カ国提案を表舞台で出すとともに、裏のほうでは、農業のファシリテーターである、シンガポールのヨー貿易大臣に対して、亀井大臣からいろいろ申し入れをしたり、メキシコの外務大臣で全体の議長であるデルベス議長に、平沼大臣、亀井大臣、川口大臣3人で申し入れした結果だと思っております。
 これは、一定の前進ではありますが、やはり、全体としては上限の問題が原則として残っているということで、依然として、我が方としては厳しい状況にあるということです。また、タリフ・エスカレーションについての規定が明確に入っております。
 それから、途上国の関税削減方式については、一般理事会の議長がカンクンに持ち越した案では、3つのグループがいずれもウルグアイ・ラウンド方式とし、オプションとしてスイス・フォーミュラが適用されることとされていましたが、今回のデルベス議長案は、「一定の品目はスイス方式とする」ということで、明確にスイス方式になりまして、基本的には、先進国の方式とほぼパラレルな内容になっており、この意味では、途上国に少しきつくなっているところです。関税上限の問題については依然として今後の交渉事項ということになっております。
 国内支持ですが、「新しい青」の政策について、5%を超えないようにして、さらに実施期間[ ]年で毎年等量[ ]%削減する。これは一般理事会の議長の案と同じですが、デミニミス、青、AMSの合計を[ ]%削減するということが新たに追加されております。
 それから、「緑」の政策については、貿易歪曲性を最小化するということを確保するために、要件の見直しを行うということで、要件についての見直しの条項が入っております。この意味で、国内支持については若干強化されております。
 輸出補助金についての一番大きな違いは、一般理事会の議長の案で「完了日の問題は引き続き交渉の対象とする」とされていたのが、「全ての形態の輸出補助金を段階的に撤廃する完了期日は、引き続き交渉の対象とする」とされました。これは、輸出補助金の撤廃日を決めるということを明確にしたということで、EUにとっては非常にきつい内容になったわけです。
 総じて言いますと、この議長案は、途上国にもきつい方向に巻き戻しされていると同時に、米国・EUに対してもきつくなっており、特に、EUに対して非常にきつくなったというふうに見るのが一般的な見方だというふうに思います。特に輸出補助金のところが、撤廃の問題がきちっと入りましたので、EUにとっては非常にきつい内容になっているということです。
 この議長案が出されて、14日の最終日に入ったわけですが、グリーンルームで少数国会合が始まりました。こういう閣僚会合では、全体140何カ国で議論しても収れんしませんので、20〜30カ国が集まって詳細な議論をします。それを通称グリーンルーム会合と言っております。


(3) 交渉の決裂と今後
 14日にデルベス議長の3次案をベースに議論を始めました。シンガポール・イシューから議論を始めて、基本的には、ここで交渉が中断しました。シンガボール・イシューは、投資の問題、競争政策の問題、貿易円滑化と政府調達の4つ問題があるわけですが、日本やEUは、「投資と競争については交渉を立ち上げなくてもいい、政府調達と貿易円滑化だけ交渉を立ち上げればいい」ということで妥協したのですが、アフリカ諸国を中心に、持ち帰って検討した結果、4つの問題とも交渉立ち上げには同意しないという非常に強い反応が返ってきました。そこで交渉をこれ以上やっても意味がないということで、ほかの分野に入らないで交渉が決裂いたしました。
 終わるにあたりまして、今年の12月15日までに、一般理事会で今後の交渉の方向について、取り扱いについて議論するということだけ決まって終わったわけです。
 今後はどういう動きになっているかということですが、一般理事会の議長が少数国会合を4つの分野、すなわち農業、非農産品マーケット・アクセス、綿花問題、シンガポール・イシューについて少数国会合を断続的にやって、12月15日までに一定の方向性を出したいと言っております。
 先週の金曜日(10月24日)に、農業について30カ国ほどが集まった非公式少数国会合がジュネーブで開催されました。各国とも、12月15日に向けて、モダリティの枠組みをつくれるように努力することには、総論として特段の反対はしておりませんが、各国がこれまでに発言した内容は、基本的にはいままでと変わらないということです。それから、作業のベースとして何を使っていくかということについては、大方の国が、デルベス議長が最後に出しましたデルベス議長案を議論のベースにしていこうということになっております。
 これについては、若干異論もありますし、特にEUはまだ域内における議論を終えずにおりまして、11月の初めに理事会で個々の方針について調整をするということになっておりまして、まだ、どういう方向に動くかということが全く見えておりません。
 WTOについては以上のような状況です。
 「世界の農産物貿易ルール交渉について」をサッと見ていただきますと、WTO交渉の構造というのを書いております。カンクンの閣僚会議で、シンガポール・イシューで途上国が強硬に反対して、これで壊れたわけです。農業分野についての対立の構図を取りまとめてみますと、先進国(米国・EU)は、途上国を含めた市場拡大を期待する、あるいは、自国の国内支持、輸出補助金を温存するということでしたが、途上国は、国内支持や輸出補助金の撤廃、それから市場アクセスの大幅拡大を先進国に求めるとともに、自らには特別な扱いを強く求めるという形になっていたわけです。こういう対立が基本的には解消されなかったということです。
 それから、閣僚文書案と主要国の提案の対比を挙げております。重要品目の税率については、それぞれご関心の品目についてはどういう関税率になっているかというのはご案内かと思いますが、100%のところに線が入っておりますが、これを大幅に超える関税水準のものがかなりあります。これは、ウルグアイ・ラウンドの関税化品目が中心で、米・EUペーパー、それから議長案、最終的なデルベス議長案も、この中で上限の問題を入れておりまして、米国のゼーリック通商代表あたりは200%とか、そういう数字を記者会見で言ったりしております。
 仮に200%となりましても、かなりの品目のものがこの上限を超えるということになり、極度に大きい影響を受けるということで、この上限の問題が一番、我が国にとっては影響の大きい問題です。
 もちろん、先ほど関税割当の拡大の問題を申し上げましたけれども、これも、1つの争点になっております。我々輸入国は関税割当の拡大を義務づけるということに対しては反対をしておりますが、逆に途上国やケアンズ諸国は、これを一律に拡大するようにということをデルベス議長案に対しても主張しています。そういうことでは、関税割当の拡大の問題も依然として、焦点として、我が国にとっては大きく残っているということです。

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FTA交渉について

 世界で自由貿易協定が非常に広い範囲で結ばれておりますし、この数がどんどん増えているという状況です。北米、あるいは南北アメリカを対象としたFTAAとか、MERCOSURであるとか、ASEANや中国を中心とした動き、それからEUを中心とした動きがあります。
 このような中、我が国は2002年にシンガポールと協定署名をして、既に発効いたしております。メキシコについては、昨年の11月から交渉を始めております。韓国については、先般の盧武鉉大統領と小泉首相の会談で、今年中に交渉を開始するということが合意されております。
 タイについては、産学官の共同研究会をやっております。これについては、12月に日・ASEANの特別首脳会議が東京で予定されておりますが、その際に、交渉立ち上げをするかということが決められるということになると思います。
 マレーシア、フィリピンも、場合によっては交渉立ち上げになる可能性があります。
 台湾については、経済界の検討会が行なわれております。これは外交的な問題があって、今後の取り扱いについては不透明です。
 インドネシアについては、政府間の予備的協議を行っている状況です。
 FTAを進める場合の、農林水産分野についての基本方針があります。これは8月の下旬に自民党の貿易調査会にお諮りしてご了解いただいたもので、特にメキシコの交渉が、フォックス大統領の来日を控えて本格化するということで、その中で、関税の撤廃案を提示するという作業が必要だったわけですが、そのときの基本的考え方として提示したものです。
 FTAについては、WTOを補完するものとして積極的に推進します。
 ただし、その場合には、農業の多面的機能、食料安全保障、農林水産業の構造改革努力に悪影響を与えないように十分留意するということで、個別品目の事情に応じて関税撤廃をしますが、例外品目にしたり、あるいは経過期間を設定するということです。
 各国のFTAを見ますと、特別な扱い、例外にしたり、再協議にしたりしているものが結構あります。GATTの24条に、自由貿易協定、地域関税同盟などについての規定があります。規定上は、構成国内の、実質上すべての関税を10年以内に撤廃するということになっていますが、「実質上すべて」ということについては、明確な基準がありません。EUなどは貿易量の9割をカバーするということが一応の目安になっているということです。
 それではFTA交渉の最近の動きについて、国別にかいつまんでご説明させていただきます。



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1 メキシコ
 日・メキシコFTA交渉ですが、昨年の11月から交渉が開始され、10月のフォックス大統領の訪日をめどに、交渉の大筋決着を図るということで、いろいろ調整を行ってきておりました。
 まず事務レベルで、農産品、それから鉱工業製品あわせて、追加の提案をいたしております。それから、先方から、我が方が取るべき事項を併せまして、パッケージとして提案をいたしております。
 このような中、我が国としては、農林水産物について、合計480の有税品目の関税撤廃を行う提案をまとめました。これはメキシコからの輸入のうち、豚肉を除きますと、農林水産物の貿易額の9割以上がカバーされるという内容になっておりました。
 事務折衝を受けて、13日から先方のカナレス経済大臣(FTA担当)と、亀井、中川、川口3大臣との間で断続的な折衝を行っております。特に、14日、15日は徹夜の交渉、15日の朝3時か4時くらいまでやりましたし、15日は16日の朝5時くらいまでやっております。15日の段階で、かなりいい線までいっておりまして、あと少しかなという感じでした。
 事務折衝の段階で、牛肉、豚肉、鶏肉、オレンジ、パイナップルの生果、オレンジジュース、パイナップルジュースが先方の主要関心品目だと言ってきました。我々はすべては対応できないので、閣僚レベルで協議する品目を絞るようにと言ったのですが、事務レベルではなかなか絞れなくて、結局、閣僚レベルで直接交渉したわけです。15日の段階で、豚肉についてもオファーをするということで、ほぼ合意の見通しは立っていたので、後はジュースだけの議論です。特にオレンジジュースについては、16日の未明に、フォックス大統領と小泉総理の会談を数時間後に控えた状況で、あと少しの状況であったのですが、まとまらなかったということでした。
 フォックス大統領と小泉総理の会談で、小泉総理から、今日中に妥結しましょうということで、フォックス大統領も基本的にはそれに合意して、それぞれの閣僚に柔軟性を持って交渉に当たるように指示することになりました。これを踏まえまして、午後、閣僚レベルでまた交渉しましたが、先方は前の段階ではオレンジジュースを1,000トン(無税枠)と言っていたのを、首脳会議の後の再開のセッションでは、初年度6,000トン、3年目に1万トンというような数字を言ってきまして、我々としては、オーダーが全然違うということで結果的に決裂しました。
 メキシコのオレンジジュースの対日輸出は、昨年が4,000トンです。その前は数百トンの単位でした。昨年4,000トンまで拡大したのは、ブラジルが不作で、それを補うために輸出量が4,000トンに至ったということです。通常ベースでいけば、1,000トン入ればよい方で、今年も、8月までの段階ですけれども、まだ800トン程度しか入っていないということで、せいぜい年間で1,200トン程度のオーダーですから、6,000トンとか1万トンというのは桁が違うと認識しています。
 先方がこのような要求をした背景については、1つは交渉の妥結時期についての認識がメキシコ側と我々との間で違っているのではないかと思うのです。メキシコ側はいろいろなところとFTA交渉をやっておりますが、通常は交渉に3年ぐらいかかると思っておりましたし、大統領訪日の際に、日本とのFTAもまとまったほうがいいには決まっておりますが、中身がメキシコにとってうまみのないものであるなら、慌てて結ぶ必要はないというように思っていたし、また、そのように公言もしておりました。
 最後にこのような「数字」を出してきたということの背景はよくわかりませんが、今回まとめるつもりがなかったというふうに見るのが妥当ではないかと思っております。
 共同声明では、「今後の取り進め方については、柔軟に対応すべきとの両首脳の意向を受けて、両政府間で協議していく」ということになっております。
(注:その後、東京での閣僚折衝の内容を確認するため11月5日にロサンゼルスにおいて次官級協議が開催された。この協議において、メキシコ側からは閣僚折衝の経緯を踏まえないと考えられる主張がされ、これに対して日本側から具体的に先般の閣僚折衝の状況を説明し、オレンジジュース以外は合意済みである旨反論した。メキシコ側は折衝内容について持ち帰り確認することとなり、また、数週間以内に第12回実務者レベル会合を開催することが両国間で合意された。)

 フォックス大統領と小泉総理が10月のバンコクのAPEC首脳会合の際に、若干意見を交わしておりまして、小泉総理から「選挙の前であろうと後であろうと、やることには変わりない。選挙後だからいい内容が出てくるというのは間違いである。そういうことで、選挙にかかわりなく交渉を早くやりましょう」という話をしまして、フォックス大統領も基本的にはこれに同意したということで、事務レベルでの接触を始めているという状況です。ただ、先方も、今までいくつもFTAを結んできて、国内においていろいろな業界から、特にNAFTAによる農業への影響とか、業界への影響についてはいろいろな意見が出されているようです。日本とのFTAについても、そういう観点から非常に厳しく見ている向きがあるのではないかと思いますし、恐らく、業界との調整も必要なのではないかと思います。それから、フォックス大統領の政治基盤については、今年の5月か6月ごろ選挙がありまして、上院で過半数を大きく割り込むような状況になっておりまして、少数与党になっています。
 このような状況のため、必ずしも、我々が思っているようなスケジュールで先方が応じてくるかどうかというのは予断を許さないという状況です。
 資料に、メキシコ側の主要関心事項ということで挙げておりますが、いま言いました肉類、果実、ジュースなど、関税とかメキシコ国内の生産状況、対日輸出状況などについて若干書いておりますのでごらんいただければと思います。
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2 韓国
 10月20日にバンコクのAPEC首脳会談において、両国政府が今年中にFTA締結交渉を開始し、2005年以内に、実質的に交渉を終えるということで合意しました。
 共同研究会の報告書が10月にまとまって、これを受けて、両首脳が交渉入りを決断したということでございます。この報告書では、包括的な交渉、物の貿易だけではなくて、いろいろな分野についてもカバーするということと、センシティブなセクターについてお互いに配慮するというようなことが書いてあります。この共同研究会には、政府と学者の皆さんが入っていただいておりますし、全中、それから、最後の段階では全漁連もオブザーバーとして参加いたしておりますし、先方の農業団体なども議論に参加してきているという状況です。
 GNPは日本との間で10倍ぐらいの格差があり、我が国の1人当りGNPは3倍ぐらいです。平均関税率は我が国がかなり低いです。それから、有税品目を見ていただきますと、韓国から日本への輸入のうち、農林水産品の有税率は8.9%で、割合はかなり低くなっております。そういう意味では、我が国にとってはハードルは低いということは言えます。韓国の工業製品の有税割合は非常に高いということで、工業分野における関税撤廃交渉というのも相当難しいものがございます。
 我が国は韓国とかなり農業構造が似ておりますが、水産の関係も結構難しい問題を抱えております。
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3 ASEAN
 昨年(14年)の1月に小泉総理が日・ASEAN包括経済連携構想というのを提唱いたしました。11月に共同宣言に署名をいたしまして、政府間で枠組みについて検討をしましょうという合意をしまして、1年内に首脳に報告書を出すということになっていたわけです。これはASEAN全体を対象とした経済連携の問題です。ASEAN10カ国ございますが、その1つ1つの国ではなくて、全体についてどうするかという枠組みです。
 ASEANについては、先ほど説明いたしましたが、各国ごとにそれぞれ取り組みを進めておりまして、タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアと協議を行っているわけです。個別の問題がこういうふうに進んでいると同時に、全体としての枠組みを議論しているということです。
 日・ASEAN委員会、これは、この枠組みを議論する委員会でしたが、協議をしてきまして、目的、原則、内容、タイムフレームを内容の骨子とした枠組み案について、まず経済大臣会合で合意しまして、10月8日の、ASEAN+3の首脳会談の際に、日・ASEAN首脳会議で署名いたしております。
 目的のところにありますように、幅広い分野を包摂するということで、自由化だけではないということです。
 原則のところで、ASEANの統合等への配慮ということで、これは、ASEANの中でいろいろな開発段階の違う国がありますが、その取り扱いをあまり違うようにしますと、ASEANが統合しようとしているこの取り組みに悪影響を与えるということで、特にカンボジア、ベトナム、ラオス、ミャンマーのような国によく配慮してやっていかなければいけないという意味です。
 タイムフレームとしましては、2004年初めから協議を開始するということです。自由化の問題につきましては、2005年初めから交渉を開始するとなっており、全体については、2012年までに枠組みを完成するということになっております。
 ただし、関税の交渉は、ASEANはまだ関税同盟になっていないため、ASEAN全体で物の貿易関税撤廃の交渉はできませんので、各国と個別に関税撤廃交渉を行うということになっております。

 以上、WTOとFTAの状況、考え方についてご説明いたしました。
 FTAについて、最近マスコミやいろいろな声が非常に強くなってきておりまして、特にWTOのカンクンの閣僚会議が失敗したということで、FTAに対する期待とか、圧力というのが強くなってきております。政府全体の考え方としては、WTO交渉を引き続き中心に据えるけれども、これを補完する形で、FTAについても積極的にやっていくということです。農林水産省も、この政府全体の方針の中で、農林水産物の対応を、ギリギリのところで図っていくということになるわけでございます。
 他方、何もWTOやFTAに対応するために考えるわけではございませんが、国内農業政策のあり方についても、8月の末に大臣から事務方に、3つの分野についての検討の指示がございました。その中では、品目横断的な経営に着目した経営安定対策をどうするかという問題、それから、担い手、農地制度などの見直しの問題が含まれておりまして、これを着実、かつ急速にやっていかなければいけないという認識で農水省の中はおるところです。
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質疑応答

質問者 1点は、メキシコのカンクンの決裂の後、やや交渉は水入りになっているような感じも受けたのですが、一方では、10月のAPECの会議などにおいても、デルベス議長のテキストを基礎に今後進めていくということでもございますし、また、メキシコを見てみますと、途上国の21カ国、あるいは22カ国が非常に大きな台風の目になっているような感じがいたします。そういうことを踏まえて、今後の交渉の見通しについてお聞かせいただきたいと思います。
 もう1点は、いま、日本で「食の安全と安心」ということが大きな課題だと思うのですけれども、BSEがカナダで1頭発見されて、それをめぐってカナダ、あるいは米国と、輸入を止めるとか、止めないとか、いろいろあったと思います。今後例えば、あってほしくないわけですが、米国で1頭発見されたというような事態もないとは言えないわけですが、そのような場合、日本と同様の個体識別とか、トレーサビリティを求めるとすれば、かなり摩擦という問題が生じてくるような感じがいたします。
 それから、米国とEUでもGMO(遺伝子組み換え体)をめぐる問題とかいろいろあるわけですけれども、そこら辺の、市民社会の関心といいますか、安全・安心に関する議論が行なわれているのかいないのか。もし議論が行なわれているとすれば、どういう議論がされているのか。その2点、お願いいたします。

質問者 国内の品目横断的な経営安定対策のようなもの等をこれから至急検討していくというお話ですけれども、WTOとかFTAの、マスコミの論調などを見ていると、国境措置は低くして、国内の直接所得保障のようなものを手厚くするべきだという意見があります。しかし、先ほどのご説明を聞いていますと、開発途上国は先進国の国内支持の削減を非常に強く要求しているということを考えると、国内対策をやってみても、国際交渉でうまくいくのでしょうか。だんだん開発途上国も仕組みがわかってきて、ルールとしては、国境措置は下げたが、国内で支持している。結果として、開発途上国の輸出量が増えなければ非常に不満が高くなるのではないでしょうか。だから、実を求めているのではないかという印象があるのですが、その辺はいかがかなと思います。
 もう1つはFTA交渉についてですが、日本も非常に難しい品目だけが残っていて、FTAを早くまとめろという圧力も、経済界等から大変強くかかっているのですけれども、これをどういう具合に切り抜けていかれるのかなというところでございます。

村上総括審議官 WTOの今後の見通しですが、APECで貿易大臣会合、それから首脳会合で、早く交渉を再活性化しよう。その際、デルベス議長の案を基礎にして、その上に作業を積み上げていこう、こういうことになりました。
 それから、先ほど言いましたように、ジュネーブでは、一般理事会議長が主要国会合を開いて、何とか交渉のモメンタムを新たにつくり出して維持しようということになっております。
 カンクン後、米・EUで相当の作業をして、彼らに言わせれば、各国から求められて、相当の作業をしたら、それに対して非常に大きい文句を言われて、結局まとまらなかった。もう自分たちからイニシアティブをとることはしない。ほかの国が出てくるのを待つというような感じがかなりございました。
 そういうことで、交渉が本当に本格化するかというのは非常に難しい面があると思います。他方、G22ですが、カンクンではまさにG22として結束して、全く一歩も譲らなかったという状況でしたが、カンクンが終わってから、これは、1つは米国の圧力があるのかと思いますが、中米諸国などはかなり脱退しておりますし、それから、タイも、米国とFTAを結ぶということで、G22との関係などについて弁明をするようなことになっておりまして、G22の結束というのはかなり揺らいできている。
 もう1つは、G22の中には途上国それからケアンズ諸国がたくさん入っておりますが、インドは別といたしまして、今回の交渉で何らかのものを得るほうが自分たちにとっては当然プラスであるわけで、完全に潰してしまったのでは何も取れない。そういう反省も若干生まれてきているというふうに思います。
 そういう中で、デルベス議長の案が、それでいいのだということではないですが、一応、それを議論の素材にしましょうということでは、大方の一致を見ています。当然、我が方も、デルベス議長案は相当問題がありますので、修正を求めていきますけれども、それは各国とも同じです。これに100%満足しているわけではないけれども、その中で議論していきましょうということだと思います。  カスティーヨ一般理事会議長は、12月15日までにモダリティの大枠合意まで目指しております。総論としてはみんな、結構ではないですかと言っていますが、中身はほとんどいままでと変わっていない議論を展開しておりますので、なかなかそう簡単にはなかなか進まないのかなと思います。ただ、何が起こるかわからないというところもありますので、安心はしておりません。
 もう1つは、米国の大統領選挙がこれから本格化してまいります。それから、EUの委員の任期が来年の10月末で切れます。ラミーとフィシュラー両方とも切れますので、何かやるとすれば来年の春過ぎぐらいまでにやらないと、恐らく、急速にモメンタムが失われて、大統領選が終わって、米国の政権が立ち上がらないと本格化しないと考えるのが自然であろうと思います。
 安全・安心の問題ですが、これはWTOで議論されているかということでしょうか。
 米国、カナダとの間では、BSEについては、カナダで発生して、カナダからの輸入を止めておりますし、米国との間では、カナダ産の牛肉が米国経由で入らないように、政府による証明のシステムを交渉してつくったわけです。
 カナダからの牛肉輸入については、日本と同じような措置を取るということを向こうに要求しております。ただ、これについては、もちろんカナダ側は過剰ではないかということで、米国自身、メキシコとか、幾つかの国がカナダ産の牛肉の輸入解禁を既にやっております。カナダ政府、米国政府などは、OIE(国際獣疫事務局)に対して、この基準をどのように考えるのかということを問題提起しておりまして、共通の基準でやりましょうという議論をいま始めております。これは専門の方がよくご存じだと思いますが、状況としてはそういうところです。
 農水省としては、カナダ政府はBSEの発生は1頭だけだと言っていますが、日本の場合は全頭検査等の対策を講じて8頭出ているということもございますので、カナダが1頭に限ると断言できないと思います。それから、いろいろSRM(特定危険部位)の状況とか、そのサーベイランスの密度とか、いろいろなものについての要求事項がまだ完全に満たされていないという状況です。
 米国で発生すれば、同じ措置を取ることになると思います。ただし、当然OIEの議論がまた出てくるということは考えられると思います。そこは、そのときまた、そういう議論の中でどういうふうになっていくかということはあると思いますけれども、少なくとも、いまの我が方の立場は、いま申し上げたとおりでございます。
 GMOや安全・安心の問題については、WTOのSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定)では「予防的な措置を取ることができる」となっていますが、EUの主張を受け、これを明確化するかどうかというのが1つの議論になっています。EUはガイドラインをつくるといいますか、明確化することを交渉対象としてやろうということで、提案をしておりますが、各国から強い反発を受けて、全然作業が進まない状況です。
 それから、品目横断的な経営安定対策です。これは、いま申し上げましたように、もちろん、FTAやWTOの交渉に対応するという側面もありますが、国内政策として、これは基本法の中でも既に品目横断的な経営安定対策というのは既にうたわれていたわけで、国際ルールで許された政策システムにしていこうというのが基本的な発想でございます。確かに、国内支持そのものに対する反発が、これはNGOが後ろでいろいろ煽ったりしているところもあるわけですが、先進国の国内支持そのものを問題視するというところがかなりありますし、先ほどの説明の中でも申し上げましたが、「緑」の政策についても、貿易歪曲性があるということで、特に直接支払いなどについては上限を設けるべきだとか、そういう議論が途上国からはかなりあるというのは現実です。
 ただし、ほかに方法があるかといいますと難しく、結局は現在認められている「緑」の政策の中でも、要件にきちんと合致した政策を取っていくという方向で検討を進めるとともに、他方、WTOにおいては、途上国からの攻撃、特に「緑」の政策に対し新たな制限を課すという提案に対しては、徹底して戦っていくしかないということかと思っております。
 それから、FTAの交渉ですが、先ほど基本方針のところで申し上げましたが、これは品目ごとに見ていくしかないわけです。8月の段階で、自民党の貿易調査会の幹部の方に、メキシコの交渉に当たっての関税撤廃案をご議論いただきました。この時にかなりの品目の関税撤廃案を出しましたけれども、そのときの考え方が基本方針の中にあるわけですけれども、具体的には、例えば関税化品目であるとか、価格支持制度を取っている品目であるとか、そういうものについては除外するという考え方でやってきております。
 しかし、今後は、例えばタイなどと交渉するときには、彼らの関心は、まさに我が方の難しい品目にあるため、相当な困難が予想されます。もちろん、いまの考え方で対応していきますが、国によって対応の仕方をある程度変えていくということも必要かもしれません。相手の国の農業事情、生産事情、それから輸出余力、貿易構造、そういうものを見た上で、この国にはこう対応したけれども、必ずしもそれは前例にならないといいますか、別の国にはまた別対応をすることも必要でしょう。
 メキシコは、豚肉については、EUとの間では再協議品目として関税撤廃の約束をしておりませんが、我が国に対しては撤廃を求めてくる。これは、FTAというのは自分たちのためにやるものですから、国によって対応を変えることはあたりまえだという考え方もできると思っています。
 ただし、この経営安定対策ですぐ将来の姿が見えて、FTAにすぐ対応できるというふうに甘いものでないというふうには当然思っております。

質問者 農水省はそろそろ「食料・農業・農村基本計画」の改定作業といいますか、検討に入るということを聞いております。一方、WTOやFTA交渉では頑張るにしても、低価格で物が入ってくるという傾向は強まると考えています。
 従来の、長期見通しでありますと、きちっとした自給率目標はなかったので、あるトレンドにおける需要、あるいは精一杯頑張ったときの供給量、その他は外国からの輸入でという具合ではなかったかと思うのですが、自給率目標が設定されている状況で、今度の基本計画の改定作業というのはなかなか難しいのではないかと、思っています。この点について、ご意見を伺いたいと思います。

村上総括審議官 そこは、基本計画見直しの中で一番難しい問題だと思います。
 基本計画の見直しという中で、先ほど言いましたような幾つかのポイントについて検討作業を急ぐということで、今年中に審議会を立ち上げて、検討を始めるというスケジュールになっております。国境措置で国内農業を未来永劫に守っていくというのは、難しいというのは現実です。我々はWTOの中でも、漸進的な改革と主張し、関税削減については、ウルグアイ・ラウンド方式を主張しております。しかし、かなり世の中の動きは速く、関税等の国境措置で国内を守るというのは、ずっと維持できるわけではないという認識が底辺としてはあると思います。
 ただし、自給率の問題はその中でどうやっていくかということですから、教科書的に言えば、国境措置で自給率を維持するのではないということで、いわゆる、国内における農家の創意工夫がいかに発揮できて、それが自給率に結びつくようにするか。そういう条件整備のための政策転換ということをしなければいけないということだと思います。その場合に、本当に自給率が向上するように働くのか、オランダのように、園芸とか酪農とか、そういう方向にいってしまうのかというところの見通しというのは非常に難しいところがあるかと思います。
 いずれにしましても、北海道の畑作にしましても、いま、品目ごとの価格政策と国境措置の形でずっと維持することは難しいので、横断的なことを当然考えていかなければいけない。その中で、例えば北海道の中で、農家が一番儲かる方向でフルにノウハウと資源を活用して、土地を活用した場合に、自給率は上がるかどうかという、そういう見通しになると思うのです。
 そこは、非常に難しい作業になると思いますが、公式見解としては、国境措置で自給率を上げる努力をするのではなくて、そういう条件を整備して、国内の生産力を上げていくということではないかと思います。
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参考資料
カンクン閣僚会議文書3次案(農業部分)の概要
WTOカンクン閣僚会議の結果について
日・メキシコFTA交渉について
農産物に関するメキシコ側の主要関心事項
日ASEAN包括的経済連携の概要


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