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第12回ISOセミナーの概要と英国の糖業事情について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2004年2月]

 平成15年11月にロンドンで開催されたISOセミナーに当機構調査情報部及び特産流通部から出席するとともに、英国の糖業事情を調査し、とりまとめたので、その概要を報告します。
調査情報部・特産流通部

ISOセミナーのポイント
全体概要
1.ISOセミナー
  (1)ブラジル  (2)EU  (3)豪州
  (4)米国  (5)ロシア  (6)その他
2.糖業調査
  (1)LMC社  (2)Tate&Lyle International社
  (3)British Sugar社  (4)ビート生産農家


ISOセミナーのポイント
1. フィジー外務大臣、タンザニア農業・食料安全保障大臣、大使他政府関係者、WTO等の国際機関関係者、砂糖産業、生産者代表、金融、メディアなど60カ国、約300名が参加した。(我が国は、財政事情から平成14年にISOを脱退したため、一昨年は不参加であった。今年度は、我が国は当機構からのみの参加となった)
2. 世界的に砂糖在庫が高水準の状況の中であり、かつWTO農業交渉の見通しが不透な中、砂糖の生き残り戦略について議論された。
3. 砂糖の需要拡大については、ブラジルがエタノール需要拡大の可能性を力説し、米国、豪州、インドなどの一部の国が関心を示した。
4. EUのEBA政策を含む砂糖政策の現状維持が困難な中、今後の改革の動向に高い関心が示された。
5. 米国は、間接的で不透明な保護政策が多く採られている砂糖分野は、FTAではなく、WTOの場で、伝統的な3分野以外(国内支持、国境措置、輸出競争)のあらゆる保護措置が捕捉されるべきと主張した。(タイも同様の意見であった)
6. 豪州は、干ばつ、洪水、病害虫の被害により、農家収入が激減し、砂糖産業も対応に苦慮しているところである。このような中で、生産者や砂糖産業の自助努力の取組みが高まっている。一方で、保護措置のない豪州の砂糖産業の発展は、国際価格次第という弱い面がある。
7. さとうきびの生産振興は、発展途上国(特にLDC)の開発支援の材料になる。
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全体概要

1.ISOセミナー
(“Survival in World Sugar -Visions and Strategies for Success”=世界の砂糖の生き残り成功のためのビジョンと戦略)
以下、各国の発表者(砂糖産業、生産者の代表等)の報告要旨を紹介する。

(1)ブラジル
 生産状況
 2003/4年もさとうきびは増産傾向が継続しており、中南部で3億トン、北東部で5,300万トンとなっており、砂糖の生産量は前年比6.9%増(中南部:2,000万トン、北東部:400万トン)となっている。
 一方、エタノールの生産は、前年比12.4%増(中南部:130億リッター、北東部:15億リッター)となっており、一時期の需要の落ち込みから回復基調にある。さとうきびの処理量は、2013年で5億7千万トンを見込んでおり43%が砂糖、57%がエタノール向けとなる。
 現在、砂糖は世界的に記録的な在庫に苦慮しているが、エタノール需要が増加する予測を踏まえれば、将来の展望は暗いことはない。フレックス車(多種燃料適応型自動車)の需要は全体の10%と増加中であり、2004年には車全体で18%の占有率を見込んでいる。今後エタノール需要は、米国、日本で特に有望と考えている。
 需給バランス
 砂糖の国内需要は今後も増え続け、現在の900万トンから2013年には1,300万トンになると見込んでいる。輸出量については、2013年には2,100万トンになると予測している。
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(2)EU
 EU拡大、バルカン半島の特恵措置、WTOでの砂糖パネル、WTO交渉、EBA、将来のEU砂糖政策改革の影響により、先行きが不透明な(霧につつまれた)状況にある。
 EUの砂糖生産
 15の加盟国のうち、14ヵ国が自国で生産している。生産量は1,750万トン(ビート糖)となっており(うち、1,375万トンが生産割当分で残りがC糖)、30社135工場となっている。
 また、輸入粗糖のうち170万トンが精製糖向けであるが、内訳としては、150万トンがLDCとACPからの輸入で、20万トンがDOM(フランス海外県)からの輸入となっている。精製糖企業は4ヵ国に6社ある。その他、バルカン半島諸国とACPからの白糖の輸入が50万トンであり、砂糖製品の輸入が55万トンとなっている。
(参考)EUの砂糖輸入(砂糖バランス)
プラス
1,750
170
50
55
万トン (域内ビート糖生産)
(輸入粗糖からの精製糖)
(ACP、バルカン諸国からの輸入白糖)
(輸入砂糖製品経由)
計2,025 万トン
マイナス
1,290
80
160
120
375
万トン (域内消費)
(輸出用砂糖製品)
(ACP砂糖の再輸出)
(WTO下の補助金付輸出)
(C糖輸出他)
計2,025 万トン
 現在、EUは、EBAについて、将来LDCからの無制限無税輸入が、EU市場に重大なアンバランスをもたらのではないかと懸念している。移行期間終了後、LDCからの輸入がどれくらいになるかは、予測が困難であるが、約200万〜500万トンと見込んでいる。一方、域内価格を削減するオプションを採用した場合には、多くのACPとLDCは影響を被ることになる。
 欧州委員会は、(1) 現行制度の延長(現状維持)、(2) 域内価格の削減、(3) 完全自由化の3つのオプションを提示した。その中で、450ユーロ/トンを均衡価格として提案しているが、これに対してビート生産者は、LDC諸国への影響が大きいとし、EU域内の田園風景などに悪影響を与え、持続可能な農業発展が望めないと反発した。ビート生産者は、現状維持か欧州委員会の当初案では含まれていた「4つ目のオプション(固定クォータ)を支持している。
 ACP及びLDCにとって最高の支援策については、無制限アクセスと低い域内価格が採用されることである。これによって、輸出のインセンティブが弱まることになれば、ACP及びLDCにとってはよりよい支援策とは言えないものとなる。
 一方、WTOでのEBAスキームに関するパネル報告、EBAの影響に関する欧州委員会からEU理事会への報告がそれぞれ2004年、2005年に出されること、さらにはWTOの合意も2006年頃になるかもしれないことから、これらの「霧」が晴れるのを待って検討することもあり得る。しかしながら、我々としても、EU拡大問題、バルカン半島問題、EU砂糖政策の現実的なオプションの検討は、それぞれ並行して進めていく必要がある。
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(3)豪州
 豪州の農家、砂糖産業は、干ばつ、洪水、病害虫、豪州ドル高(特に最近12月)の影響により、農家収入の激減、地価の下落等が生じ、最近は、まさに不運の連続であった。
 豪州は他国と異なり、保護主義政策を採っていないため、国際価格の変動が農家の所得等に直接影響を与えることとなる。
 このような中、生産農家、甘しゃ糖企業等の改革のインセンティブが高まっている。すなわち、効率性と生産性の向上(農家の規模拡大、高密度作付け技術、収穫技術の改善)や生産物の多様化(diversification)と付加価値の向上に積極的に取り組んでいることである。なお、1ha当たりの規模拡大効果は、3〜7%のコスト削減につながる。
 エタノールについては、1億5千リットルの生産能力があり、グルテン生産の副産物、小麦でんぷんにより生産される。ただし、豪州では、エタノールを利用するには、政府の支援が不可欠である。
 生産者は「トンネルの向こうに光が見えるのを待つな。自分で歩いて行って、自分自身でトンネルを照らせ」という意識を持っている。
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(4)米国
 砂糖生産は、ブラジル、インド、EU、中国に次いで世界第5位である。
 ビートの生産量は430万トン生産されている。なお、10州26工場で操業されている。さとうきびは380万トンで、24工場(4州)で生産されている。なお、精製糖業企業は8社(6州)となっている。
 消費量は860万トン(世界第4位)であるが、最近は低迷している。
 砂糖輸入は150万トン(世界6位)で、うちTQ輸入は110万トン(41カ国のTQホルダーからの輸入)となっている。
 国際価格は過去20年間、下落し続けており、1996年以来25工場が閉鎖され、垂直型統合(生産者が販売も行なう)が進んでいる。
 このような中、2002年農業法では、(1) Non-recourse loan(政府負担なしの融資)、(2) TQ、(3) 国内販売の制限が導入された。米国の砂糖政策の基本は、生産者は、政府からの支援を受けるのではなく、市場から利益を得、在庫バランスは生産者負担である。この結果、米国の砂糖の小売価格は、先進国の平均値より22%低く、54セントとなっている(日本は最も高く、85セント)。
 砂糖産業としての貿易交渉の立場については、包括的でないアプローチは不適切で、WTOの伝統的な3分野(国内支持、市場アクセス、輸出補助金)だけでは不十分である。不透明な補助金、間接的補助などの補助金等すべてのプログラムは、WTOで捕捉されるべきとの立場で、途上国も含めてすべての国にルールが適用されるべきであり(all countries, all programs)、セクター横断的な約束ではなく、セクターごとの約束(sector-specific)を支持する。
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(5)ロシア
 ロシアでは、1802年にロシア初の製糖工場が設立され、235工場で70万トンのビート白糖が生産され、ビートの主要な生産国とあった。これは、世界全体の19%のシェアであった。
 しかしながら、世界大戦で140工場が破壊され、1940年代戦前と比べ、40分の1の生産力に低下した。1950年代からは、政治的な背景からキューバからの輸入が始まり、その後定期的に輸入されるようになった。
 ソ連崩壊後は、経済混乱により砂糖産業のつながりが途切れ、全体の消費に関する統計はない。独自のデータで推計すれば、600万〜620万トン程度で近年は一定して上昇している。
 現在、96工場のうち93がビート工場で、ほとんどが生産地に立地している。
 なお、砂糖産業は、工場の機械類は危機的な状況であったものの、ロシアで最初の民営化されたセクターでもある。
 砂糖の輸入は、カザフスタンから10万〜12万トン、キルギスタンから50万トンとなっているが、ウクライナ、ベラルーシ、中央アジアから50万〜60万トンの白糖の密輸が行われているとも言われている。
 今後は、砂糖の消費は徐々に増加し、砂糖生産は400万〜420万トン、粗糖輸入は250万〜300万トンに減少するものと見込んでおり、徐々にCISへの粗糖の輸出国になると思われる。
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(6)その他
(タイ) WTOカンクン閣僚会合決裂後、二国間主義が横行しているが、砂糖にとっては、市場アクセス中心のFTAより、WTOがベターである。我々は、市場アクセスだけでなく、国内支持、輸出補助金も段階的に撤廃されるべきであると考えている。また、WTOの紛争処理メカニズムは途上国にメリットがある。
(インド) 砂糖は純輸入国となったり、純輸出国となったりしている。輸出は生産量の10%未満で豪州、タイ、ブラジルに輸出しているが、今後の量的拡大は否定的である。国内消費は直近3ヵ年で6.3%増しており、1人当たりの砂糖消費量は、地方で17.5kg、都会で31.5kgとなっている。さとうきびについては、他作物にない最低価格制が採られているが、輸出補助はない。また、現在、エタノール開発計画が進行中である。
(ACP)
・フィジー: 砂糖生産振興は、食料確保や国家サービスの財源のみならず、環境や教育等の多面的役割にも貢献すると考えられる。WTOの富は豊かな国に流れており、無制限な自由化はACPに打撃を与えるだけではないだろうか。
・モーリシャス: (EUによる)特恵アクセスが最も重要である。WTO関係では、関税削減方式としては、URフォーミュラー、国内支持のセクターワイドの約束、SSG(特別セーフガード)、平和条項が重要である。また、輸出補助金は純食料輸入発展途上国にはメリットがあると考えている。
 なお、次回は平成16年11月23〜24日にロンドンで開催される予定となっている。
ISOセミナー会場(ロンドン)
ISOセミナー会場(ロンドン)
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2.糖業調査

(1)LMC社
LMC社入口
LMC社入口(オックスフォード)
 今年で設立24年目を迎えた、農産物に特化した世界規模のコンサルタント会社で、本部は英国オックスフォードに置く。同社は完全な民間会社で、特定の会社からの出資はなく、生産者、商取引等には一切関係ない。
 同社は、品目ごとに部門が分かれている。具体的には、砂糖、甘味料、でんぷん、発酵製品、植物油、野菜種子、コーヒー、カカオ豆、ゴム、エタノールなどである。そのうち、砂糖部門は最大の人員で6名が常勤、1名が米国ルイジアナ事務所配置でほぼ常勤、2名が非常勤となっている。穀物については、上記産品の経済分析の観点から、市場価格程度のフォローは行っている。
 コンサルティング業務の主な内容は、(1) 市場レポート(四半期毎、砂糖と甘味料は月報も発行)、(2) マルチ・クライアント・サービス(特定のトピックスの研究プロジェクトで、パンフレット等を購読者に配布)、(3) シングル・クライアント・サービス(市場動向、EU政策等についてのアドホックな業務。LMCの業務の半分を占める。)
 LMCの砂糖部門の担当者に、EUの砂糖政策の動向について聞き取り調査したので紹介する。

 EUは、生産者とビート糖企業の保証価格(精製糖企業は低利潤)、生産割当制(クォータ)、輸入関税、TQ、補助金付輸出が主な政策手段であり、この結果、域内価格は国際価格の3倍程度となっている。
 本制度のメリットは、(1) 良質の砂糖の安定供給、(2) 利用者への安定価格の提供、(3) 効率的な砂糖業界の発展、(4) 途上国への価格面の利潤供給、(5) 高い自己財政システムである。
 EUの砂糖政策は、他の作目と異なり、ECによる財政負担でなく、基本的に消費者負担で行われているため、他作物とは別個に検討されている。砂糖施策は、1968年に制定されたが、未だにサブスタンスについては手がつけられていない。これは砂糖向けのEUの予算が少ないことと、消費者負担であることに起因している。
LMC社の砂糖部門の担当者と
LMC社の砂糖部門の担当者と
 しかしながら、現在、以下の2つの外的圧力により、制度見直しの検討が求められている。
・ WTOにおける関税とSSGに対する圧力
  (支持価格引下げ)
・ 農業政策と貿易政策の整合性
 このような中、FTAなどの二国間協定交渉に力を入れるべきとの意見や、Unilateral Trade Initiative(EBAなどの一方的な貿易イニシアティブ)を選好する声がある。
 砂糖政策の検討のポイントとしては、価格か生産割当のいずれにより管理するのかということである。具体的には、域内価格を削減して供給管理するか、あるいは、LDCからの輸出(供給)を制限し、域内価格を維持するかである。
 ただし、2006年から2009年までは移行期で、2010年からは白糖も含めて、無制限アクセスに移行されることとなっているため、後2年くらいは何も変化は起きないであろう。
 砂糖の輸入については、特恵輸入のみであり、粗糖の輸入は、年間170万トン程度で、その大部分が精製糖向けであり、EU消費の13%程度を占めている。完全自由化以降、LDCが白糖をEUに輸出することになれば、大問題となる。途上国からの粗糖輸入が増えても、市場ニーズは品質の高いものを選好するので、品質上の問題は生じないものとみている。
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(2)Tate&Lyle International社
 英国唯一の精製糖企業である。
 英国も厳しい製造競争を強いられており、同社も1968年には6工場で生産体制から1工場体制にまで合理化した。これに伴い、人員も大幅に削減し、20年前3,000人いた職員を6分の1程度まで削減し、現在も毎年、厳しいいコストチェックを行っている。
 工場の施設は老朽化しているが、次の設備投資を行うのは、EUの砂糖政策がどうなるか見極めてからと考えている。
 同社としては、欧州委員会が精製糖業者の増加を提案していることに関心を寄せている。これは来年のEU拡大により、域内生産だけでは需要を賄えないことが背景にあると見られ、同社は将来の粗糖の輸入増により、精製糖企業の出番がくると考えている。
 我々の訪問の際に、担当者からEUの砂糖を巡る情勢についての説明があったので、以下その概略を紹介する。

砂糖の輸出
 砂糖の域内価格は国際価格とのギャップがあるが、生産課徴金をベースとする補助金付輸出(WTOの約束により制限)により輸出している(ただし、C糖については制限なし)。これにより、EUはブラジルに次ぐ、世界で2番目の砂糖輸出国となっている。
砂糖消費
 砂糖消費は、停滞若しくはやや下降気味である。これは、消費者が糖尿病、肥満問題等から、甘いものを避ける傾向にあることに起因していると考えられる。政府も子供に加工食品を食べないように指導している。
 一方で、EUの砂糖業界はSugar bureau(砂糖産業代表がメンバー)を設立し、砂糖の誤解の払拭等の活動を行うとともに、同社としても、学術的な研究を実施している。
 ドイツの糖尿病協会理事の話によれば、砂糖は食生活全体の中で重要なものとして位置付けており、バランスのとれた食生活に寄与するとのことである。
原料糖の荷揚げ作業等
 Tate&Lyle社テムズ工場の原料糖荷揚げは、テムズ川に突き出す形で建設された埠頭で行われている。テムズ川は潮の干満差は大きいものの、大きなバラ積貨物船を接岸させるため川底を定期的に浚渫している。その浚渫規模は縦188m、横28m、深さ10mに及び4万4千重量トンの船まで接岸できる能力を有するが、今までの最大は3万5千トンである。1日当りの荷揚げ能力は9千〜1万トンで、24時間荷揚げが可能である。
 原料糖は、埠頭からベルトコンベアーで工場内の原糖倉庫に搬入される。搬入前にサンプルを採取・品質分析(糖度、水分、灰分等)を行い、各国から輸入される原料糖をブレンドし、最も効率よく溶糖するための体制を整えている。
 輸入原料糖の原産国は、モーリシャスが全体の約4割に当たる47万トンを占め、他はフィジー、カリブ海諸国となっている。
(参考)EUの国別精製糖会社と生産能力
都市 所有者 国別推定
最大供給量
トン/年
精製糖
製造能力
トン/年
イギリス London Tate&Lyle Europe 1,128,581 1,300,000
フランス Marseiles
Nantes
Saint Louis Sucre/Sudzucker
USDA/Beghin Say
296,627
500,000
ポルトガル Lisbon
Oporto
Tate&Lyle Europe
RAR
291,633
456,000
フィンランド Porkkala Danisco 59,925 230,000
    1,776,766 2,486,000
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(3)British Sugar社
British Sugar社
British Sugar社
 英国唯一の国産糖製造企業である。
 同社は、EUで生産コストが最も低いと言われている。その主な要因は、工場の操業に特徴があることである。具体的には、製糖期間が160日(フランスなどは80日程度)であることから、製糖後期にタンクに貯蔵していた液糖を原料に、製糖を行なっている。規模の小さい工場でも効率よく生産が可能で、フランスの工場より3倍の生産能力がある。また、加工技術についても、米、EUの優れた技術だけを利用した独自の技術を築き上げていることも生産コストの削減に貢献している。
 担当者からの聞き取りによると、ビート糖製造における加工経費のうち、電力コストの削減にも力を入れているとのことであり、2工場にガスタービンを導入し、これにより5倍の電力を創出し、余った電力を販売して利益を得ているとのことであった。
 砂糖消費については、若干減少(全体1%、小売り4%減)している。この背景には、加工食品を多く購入し、家庭で食事を作らない消費者が増えてきたことにある。小売向けより業務用の需要が増加しているが、小売の方がマージンが高い。砂糖の消費拡大のための広告は、最近10年ほど行なっていない。しかし同社では、人工甘味料やシロップも生産しているので、これらの広告は行なっており、売上は好調である。
 オーガニック・シュガーについては、Newark工場で、生産日を特定し、普通の砂糖と完全に分離して少量(1万トン程度)生産している。原料の有機栽培ビートについてはプレミアム価格で農家から購入している。
 今後の自由化の影響については、現行砂糖制度の下では、国産ビート糖製造企業のマージンは、精製糖企業の加工業者のマージンより大きいことから、中途半端な自由化は、精製糖企業に不利に働くと見られている。
 EU砂糖制度については、改革によりACPからの輸入は悪影響を受けると予想されている。欧州委員会は完全自由化を含む3つのオプションしか取り上げていないが、我々としては、落とされた「4つ目のオプション」(固定クォータ)を支持しており、これはCEFS(欧州ビート協会)統一の見解である。
 エタノールの需要拡大の状況については、スウェーデンで、穀物、ビート(砂糖)を原料とするエタノール工場があるが、現在はブラジルから輸入していると承知している。ドイツについては、輸入されるバイオ・エタノールの関税をゼロにする予定があると聞いており、これにより将来、ブラジルからの輸入が増える可能性もある。しかしドイツは、国産小麦からエタノールを生産したい意向があると考えているようである。
 豪州については、小麦からエタノールを生産しているが、補助金によりエタノール振興を図った結果、ブラジルからの輸入が増加してしまったため、補助金は国産エタノールのみに変更された。ブラジルについては、砂糖の生産コストが最も低いので、砂糖からエタノールを製造する最も競争力のある国となっている。
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(4)ビート生産農家
 British Sugar本社近郊にあるフィリップ・ブラッドショウ氏の農場を訪問した。同氏は農作業の機械化を進めるとともに、2台のパソコン(本人による栽培管理用と夫人による経営管理用の2台)を活用した栽培及び経営管理を行っている先進的な農家である。

 ビートの栽培
 農作業は通常夫婦の2人で行なっており、小麦等の植付け時期などは1名臨時に雇用する。栽培については、日本のようなペーパーポットを使った移植栽培は行っておらず、すべて直播きで、ペレットシードを使用している。ペレットシードを使った栽培方法は、環境に配慮した栽培方法であり、農薬の使用量が減少することにより、コスト削減につながる。この15年間で農薬使用量は農家間の勉強会等を通じて95%削減した。また、ビートトップは、圃場に鋤きこんで肥料にしている。
 この地域は、降水量が年間600mmと少ないため、昨年、ジャガイモ、ビート用に貯水池を建設した。規模は2haで、5万立方メートルの貯水力があり、水はこの地方が湿地帯なので人工的に排水した水を有効利用している。この地方(フェンランド地方)は、降水量は少ないが湿地帯であるため、逆にビート生産に適している(この地方の耕地面積の25%がビートを作付けしている。英国全体では15%が平均である。)
 農家ごとにBritish Sugar社から生産割当てがある。売り手は、農業を引退する人、ビート生産不適地の所有者、若しくはまとまった収入を得たい人である。これに対して購入者は、大規模農家及び6輪作体系を考えている農家等である。
 収穫作業は、全て下請けに任せている。1日当たり約15haを収穫し、手数料はha当たり143ポンドを支払っている。ただし、ビートの集積場所まで遠距離の場合は、別途運賃が必要となる。搬入先は、工場の合理化により、最寄りの工場が閉鎖されたため、原料は70km離れたNewark工場まで運んでいる。
 経営面積は400haである。約半分は個人借地で、残りはグループでの借地である。このうち、ビート栽培面積は15%で、農作業量全体20%程度を占めている。今年の作付け面積は50haで、2,500トンを生産する見込みである。
 輪作体系は、小麦、ビート、ジャガイモ、菜種の4作物である。ビートは安定生産が可能で、所得確保の要のひとつとなっている。ha当たり最も収益性の高い作物は、今年はジャガイモ(過去2年間不作)であったが、通常はビートである。その他には契約栽培でプレミア小麦を生産している。
 なお、欧州委員会からは様々な農家研修のための財政支援がなされており、ブラッドショウ氏本人もいくつかの技術研修を受講し、現在は農業経済学を学んでいる。
 今後の経営上の課題としては、(1) 人件費の削減と機械の導入、(2) 特化した農作物の開発・生産(プレミア小麦等)を挙げていた。
収穫作業
収穫作業(ビートハーベスタ 9畦刈り)
収穫ビートの集積場
収穫ビートの集積場
ビート生産者と
ビート生産者と
農家事務所
農家事務所
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