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第4回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の開催について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2004年12月]

調査情報部


第4回さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要

1.挨拶
佐藤特産振興課長
佐藤特産振興課長の挨拶
 (山本理事長) WTO農業交渉、FTA交渉といった国際情勢の厳しい中、農林水産省において食料・農業・農村基本計画の見直しの検討が進められ、砂糖に関しても制度・政策のあり方について検討がなされている。砂糖の自給率を確保しながら、さとうきび産業の振興を図るためには、何よりも国民世論、国民消費者のさとうきびに対する理解、支持が必要である。本検討会では、こうした情勢を踏まえ、現行の食料・農業・農村基本計画に示された収量1割増、労働時間6割減、生産コスト3割減の目標数値の実現に向けた取り組みや課題について議論願うとともに、新たな砂糖政策の見直しについても本音の意見交換を願いたい。
 (農林水産省生産局特産振興課佐藤課長) 農林水産省において、食料・農業・農村基本計画の見直し、WTO農業交渉、FTA交渉など、内外の厳しい情勢下、省全体で総力を挙げて取り組んでいる。砂糖行政に関しては、この10月に17年産のさとうきび価格などを決定するとともに、17年産からさとうきびの低糖度帯価格の見直しを実施するとともに、また、低糖度帯地域対策や多数襲来した台風などの災害対策などの措置を講じることとした。また、8月に「砂糖及びでん粉に関する検討会」を立ち上げ、現在、多角的な議論を進めており、農林水産省としては、今後ともさとうきび・甘しゃ糖業の健全な発展を図りながら、さとうきび・甘しゃ糖生産のより一層の合理化、コストの低減といった課題の解決に向けた取り組みの推進に努める所存である。これらの実現には、適正な事業の実施、関係者の連携とそれぞれの立場での努力を集結していくことが肝要であり、本日は率直な意見を頂戴し、今後の行政に活かしたい。
 (沖縄県国吉農林水産部次長) さとうきびは重要な基幹作物であるとともに基幹産業であり、特に離島地域における比重は高く、経済波及効果も約4.3倍となっていることから、単に農業部門にとどまらず、県経済を支える重要な作物である。近年は、収穫面積の減少も下げ止まり感がみられることや、担い手となる生産法人の拡大、機械化が進展するなど成果が上がってきている。しかし、さとうきびをめぐる情勢は依然として厳しいことから、さとうきび産業の発展を図るには、関係者が一体となって取り組む必要がある。
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2.検討
 当機構和田理事より、鹿児島県・沖縄県作成の生産目標と進捗状況および各検討項目に関する資料を説明した後、以下のような各県からの補助説明および質疑が行われた。

(1) 基本計画の目標値に対する進捗状況
ア.さとうきび収穫面積
 (鹿児島県) これまで新R事業などで春植は順調に伸び、14年度の段階で22年目標値を達成したが、16年度は干ばつの影響による夏植の減少と冬作である馬鈴しょの市況がよくなってきていることから、馬鈴しょに転作する農家が増加したことによって面積が減少し、目標値を下回る見込み。
 しかし、今後は回復すると見込んでいる。
 (沖縄県)13年、14年、15年と順調に伸びてきたが、16年は、度重なる台風の影響から減少し目標値を下回る見込み。
イ.さとうきび生産量および10a当たりの収量
 (鹿児島県) 14年度は史上最低の生産量であったが、これは気象災害(干ばつ、台風)に加えて、これを助長する栽培管理の問題(適期植付の不実行、株出管理の遅れ、肥培管理)が原因。種子島においては、以前は春植あるいは株出とも80〜90%がマルチをしていたが、最近は、株出栽培におけるマルチが30%程度まで低下していたため、16年は、種子島の北部においてもマルチの面積を増やし、8月末の台風襲来前までは、県全体として、60万トンを超えるような近年にない収量を見込んでいた。しかし、8月末から立て続けに大型台風が襲来し、生産量および単収ともに減少したため、目標値を下回る見込み。
 (沖縄県) 鹿児島県同様、度重なる台風の襲来によって生産量および単収とも目標値を下回る見込み。単収は、近年大幅に減少しているが、これは本島の南部地区を中心に永年の株出があり、収量減を助長していること、さらには、栽培管理や、土づくりの問題が原因。堆肥の施設整備を急速に進めているところ。
ウ.1トン当たり生産費
 ・両県とも、これは単収との相関が強いため、単収が上がれば生産費は下がってくるのではないかと思っている。ただ、今年の単収見込みが低いことから、生産費については思ったほどは下がらないとの見込み。
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(2) 基本計画の目標値達成のための具体的取組み
[1] 担い手農家の育成
 (和田理事) 鹿児島県で、4ha以上の栽培農家戸数がわずかながら増加している要因は何か。
 (鹿児島県) 担い手農家に対する農地流動化の取り組みや徳之島、沖永良部島、与論島に担い手志向農家が集まってそれぞれ研究会を立ち上げ活動している。また、普及センターが中心になって3つの島の研究会を併せて、各島持ち回りの研修会をしている。そのような活動が経営改善や規模拡大につながっていると思う。
ア.農業生産法人・農作業受託組織の育成
 (鹿児島県) 農家の高齢化や他作物との競合などによる労働力不足による生産力が低下しているため、機械化一貫体系の確立とともに植付や収穫作業の受託組織の育成に努めており、現在、広域的受託組織(農協や第3セクター)が11、担い手農家を中心とする130の営農集団が育成され、高齢農家などの作業受託が進みつつある。一方、営農集団の増加により、一部地域では受託作業の競合が生じており、受託申込みや作業実施について調整が必要になっている。これらを調整するため、島の生産対策本部が受託作業の一括申込みを受け各営農集団に作業分配をし効果を上げている。さとうきび関係農業生産法人は、製糖会社、農協、建設会社などの出資による7法人と少なく、農家や営農集団を対象に説明会や研修会を開催し法人化を支援している。
 (製糖関係者) 現在検討されている新しい制度に向かって、担い手農家をつくるための支援・指導が、県の立場として大変重要になる。農業委員会、農協、行政および普及センターなどが、有効に機能するため、窓口を一本化するなどのワンストップ化が必要で県として担い手をどのような形で支援・指導するかが重要。
 (鹿児島県) 現在、担い手農家の育成のための一つの取り組みとして、市町村農政担当課、あるいは農業委員会を窓口とする市町村経営改善支援センターを中心に、農業改良普及センターなど関係機関・団体と連携を図りつつ認定農業者などの支援を行っているが、市町村によってバラツキがある。今後この窓口をいかに機能させるかが担い手育成の鍵を握っている。
 (沖縄県) さとうきび生産法人は、昨年の29法人から、新たに10法人が設立され、現在39法人となった。生産法人の増加と、個別の経営改善という面で見た場合の規模拡大との関係について、当初生産法人を立ち上げ時は、借地型の大規模生産法人が狙いであったが、資金繰りなどの関係から、作業受託に終始している法人も出てきており、農地の集積による大規模生産法人化は思うように進んでいない状況。県としては借地型による大規模化に誘導するため、農地の貸し借りを各地区のさとうきびの生産振興協議会を活用しながら、借地に結びつける努力を重ねている。また、機械銀行と生産法人の競合に関する質問に対しては、一部競合しており、機械銀行の受託面積は若干下がっているものの、生産法人との受託面積を合計すると6,100haほどに拡大している。
 (山本理事長) 作業受託、担い手の問題と、まず借地を目指すが、土地を貸したくないという地主の気持ちが強い印象を受ける。例えば鹿児島県では、市町村経営改善支援センターがあり、市町村の農政担当課や農業委員会の土地利用の専門家が地主の理解を得ながら、農地の貸し借りや作業受委託を進めることにより、地域の農業育成を図ることが大事なのではないか。
 (鹿児島県) 市町村経営改善支援センターによって活動や体制に差がある。直接当事者同士では利害が絡み難しい面がある。そのため農業委員会の構成委員である農業委員や農協が仲介するといった支援センターにする必要があると考えている。
 (山本理事長) 農業機械銀行の取り組みに関し、農業機械銀行は、農業生産法人と競合するのであれば、一般論としていえば、農業の担い手である農業生産法人の活動を優先させるべきではないか。  (沖縄県) 農地の大きさや地域性など各地域ごとに特色があって、生産法人でうまく動けるところと、機械銀行でないとうまく動けないところがある。状況に応じて進めたい。
 (製糖関係者) 農業生産法人や機械銀行など、これらはコストを下げるためにある。お互いがその問題点を整理して、農家が魅力あるさとうきび作をやるにはどうしたらいいか、高いコストを下げるにはどうすべきか、機械が何のために導入されたのかなどを整理する必要がある。
イ.遊休地の農地利用の推進
 (鹿児島県) 遊休農地解消対策事業などを活用して遊休農地の解消と流動化の促進に努めたい。
 また、新R事業の推進により奄美地域の耕作放棄地は若干減少傾向にある。
 (沖縄県) さとうきび・糖業再活性化事業などにより、これまで遊休地650haの解消を実現した。
[2] 地域の実情に即した機械化体系の確立
 (鹿児島県) 収穫の機械化が進んできている。15年度に新R事業を活用し、メーカーと農業試験場の共同開発によって株出管理機を開発した。16年度中には30台程度の普及が見込まれており、1台で10〜15ha程度の能力があることから、全体で450〜500haの稼動が見込まれる。植付けから収穫までの機械化一貫体系により、10a当たりの労働時間は、15年は59.3時間と11年の69.9時間に比べ15.2%短縮されており、着実に省力化が進んでいる。
 (沖縄県) 地域の実態に即したハーベスタ導入に努め、機械収穫率は若干伸び悩んでいるものの38%に向上してきており、これに伴って生産費コストも逓減してきている。植付の機械化については、県農業試験場が開発した高性能新型植付機をこれまで30台導入したが、今後も普及に努めたい。
 (学識者) 地域の実情に即した機械化の問題は非常に古くて新しい問題である。地域によって機械の導入の組み合わせというのは違って当然。例えば、収穫調整であれば、ドラム脱葉機でも十分作業できる地域もあるし、ハーベスタ収穫にしてもほ場区画や土壌条件などによっては小型で十分やっていける地域がある。機械の導入の実態をもう一度見直してみる必要がある。機械は、本来持っている稼働効率があり、それを最大限に利用するためには、様々な条件とマッチングさせないと稼働効率が上がらず、低コスト化にもつながらない。
 (製糖関係者) 機械化は地域に合った機械であることが必要である。機械化だけ進めれば良い訳ではない。メリットもデメリットもある。生産者も糖業者もいかにしたらコストを下げられるか、効率よく機械を稼動させてコストを下げ得るか、費用対効果について考えることが重要。
 また、機械化に関連し、ハーベスタのトラッシュ問題があるとし、今後、議論を深めながら、責任の明確化が必要であるとの意見があった。
[3] 収穫面積の増大
 (和田理事) 春植・株出体系の推進ということでは、面積が増えてきているが、その要因は何か。
 (鹿児島県) 平成13年度に奨励品種に採用した農林17号は、種苗管理センターに原原種の供給をしてもらい、新R事業などを活用し、メリクロン苗で急速に普及している。15年で3.6%という割合になっているが、18年には収穫面積で2,600ha程度を目標にしており、F177を全て農林17号に置き換えたいとの考えである。農林17号の特徴は、株出萌芽性に優れ、台風にも強く、糖度も高いことから、農林8号と組み合わせることによって、春植・株出体系が伸びるとの見込み。
 (沖縄県) 春植・株出は各地域とも漸増している。経営耕地面積が限られている中で、収穫面積を増やすためには、ハリガネムシなど病害虫の根絶を通じて春植・株出栽培を増やすなど、地域の実態に即した作型の確立を推進したい。
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(3) 低収量・低糖分地域における栽培技術の高位平準化への取り組み
[1] メイチュウの駆除対策について
 沖縄県農業試験場病害虫部さとうきび害虫研究室の永山敦士研究員より、さとうきびの芯枯れを引き起こし、台風などによる折損被害を助長する「イネヨトウ(ダイメイチュウ)」の駆除研究成果として「イネヨトウの配偶行動および合成性フェロモンの誘引試験」の研究報告があった。  報告後の質疑において、実用化の目処について質問があり、永山研究員は、いつまでとは言えないとしながらも、メス成虫との実際の比較で、合成性フェロモンが同等以上の誘引力があるということが確認できれば合成性フェロモンの成分自体は価格的に高いものではないため、十分実用化できるとした。合成性フェロモンの有効期間の質問に対しては、比較的安定した物質であるため、ハリガネムシで使用しているチューブ式で3ヶ月程度とした。また、合成性フェロモンは、カンシャシンクイハマキに応用できるかとの質問に対し、成分は類似しているが、異なる物質である。カンシャシンクイハマキ用の合成性フェロモンは完成しているとした。
[2] 台風被害軽減のための取り組みの現状と今後の方策
 (沖縄県糖業振興協会) 単収が上がらないのは水が大きな要因で、農家の栽培管理だけに問題がある訳ではない。さとうきびは生産力は高い、光合成能力が高い、台風や干ばつに強いとされているが、さとうきびは台風や干ばつに強いのではなく、やや強いだけであるとし、台風・干ばつ対策が進まない限りは、同じことの繰り返しになる。これらの対策検討には、土地改良、林業試験場や土木試験場なども入れて、奄美以南の南西諸島での環境整備、基礎条件整備を検討すべきとの意見があった。
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(4) さとうきび増収に向けた基本栽培技術の普及・啓発の取り組み
会場の模様
会場の模様
 (山本理事長) 近年の現状を見ると基本栽培技術が励行されていないのではないか。当機構の企画により関係者の協力を得て制作したさとうきび生産者向けビデオ・パンフレットを営農指導の現場で積極的に活用してもらい、単収を上げ、生産コストを下げるための基本栽培技術の普及・啓発の一助にしてもらいたい。今の生産状況のままでは、ただ過保護に安住しているのではないかとの批判を受ける。農家は土づくりや栽培管理を確実に実行することが必要。
 (製糖関係者) 多数の農家の方に、こういうビデオやパンフレットを活用したフェイス・トウ・フェイスでの継続的営農指導が重要との意見があった。また、機構が制作したビデオを農家の方に見てもらったが評判が良かったとの感想とDVD化できないかとの要望があった。
 (沖縄総合事務局) 基本的な栽培管理や土づくりを確実にやる必要がある。畜産廃棄物の処理が大きな問題になっているが、耕畜連携ということで、総合事務局で検討チームをつくり検討している。関係者が連携していくことが肝要である。また、さとうきび増収には水の確保が重要。
 (九州沖縄農業研究センター) 土づくりについては、沖縄・鹿児島でも、何十年も前から言われてきたことである。これからは島別・地域別の各論が重要であり、営農指導も個々の事由に対する個別の対応が必要である。今回制作したビデオ・パンフレットの中で示したデータにも言えることだが、島別・地域別で土壌性質は違うが、これらに対応し得るような基礎的データが不足しているのが現状である。
 (製糖関係者) 普及センターで実施した農家アンケートの結果を見ると、適期植付の時期などかなり高い率で知っている。しかし、他作物との作業の競合などの問題により実行できないでいるのが実態である。
 (山本理事長) このビデオ・パンフレットは鹿児島県、沖縄県を包含するため総論的になっている。地域ごとに土壌や環境条件が違うため、各論については、指導機関などで具体的なチラシなどを作成願い、普及・啓発に努めてもらいたい。

(5) その他
 (種苗管理センター) さとうきびの原原種を取り巻く情勢は厳しい。総務省の政策評価委員会からは、さとうきびについては、鹿児島県、沖縄両県に、技術も含め移管をしてはとの意見が出ている。
 両県に原種圃が設置されているが、15年度は86haあったが16年度は68haと18ha原種圃の設置面積が減少してきている。さとうきび増収のためには優良な種苗は欠かせないと考えているが、両県の今後の方向性について意見を聞きたい。
 (鹿児島県、沖縄県) 予算的に厳しく原種圃の設置面積は減少しているが、密植により原苗供給をしている。県も予算を出来るだけ確保し、原種圃の設置を続けたいとし、種苗管理センターの従来どおりのシステムでの継続を要請した。
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3.砂糖及びでん粉に関する検討会の検討状況と今後の方向性について
 佐藤特産振興課長より、「砂糖及びでん粉に関する検討会」および「砂糖分科会」における検討状況について、資料に沿って説明があった。また、斉藤特産振興課課長補佐からは、10月1日に決定した17年産さとうきび最低生産者価格内容などについて説明があった。
 説明の後、質疑応答があったので概要を紹介する。
 (農業関係者) 生産者と糖業者の収益分配とはどのような仕組みで、制度的に何が変わるのか。
 (佐藤特産振興課長) 今後WTOで国際規律が強化されることが予想される中で、WTO上削減対象にならない「緑の政策」に転換を図っていきたいが、「緑の政策」で認められるのは、品目特定ではなく、産品を特定しない品目横断的な政策体系に転換していこうということで、担い手に安心感を持って農業経営に取り組んでもらうということがその方向であり、品目ごとではなく、経営全体の視点から担い手を捉えて支援していこうという考え方である。将来的に効率的、安定的な農業経営の育成を図っていくことが、いまの農政改革の大きな方向である。
 甘味資源作物については、糖価調整制度の下で、最低生産者価格という行政価格を決め、年間通して生産される作物全量について固定しており、市場原理が全く入っていないという批判がある。これを、品目横断対策への移行とあわせて、市場原理を入れるためには、この原料代について、固定した行政価格ではなく、生産者と糖業者の相対による契約の中で決めていくべきではないかということを検討している。
 その際、原料代は、砂糖を売った代金から得られる収入(市価)と政策的支援の交付金の部分からなるが、その場合に、生産者と糖業者がどういう形でそれを分配していくか。言いかえれば、交付金のうち、生産者・糖業者がどのような内訳で分配していくかという方式を提案している。
 諸外国の例では、およそ生産者6に対して糖業者4というのがある。そういった例も参考にしながら、その分配のあり方を検討しようとしている。大きく変わる点は、これまでは、全ての原料について同じ価格で支払われたものが、市場の需給動向を反映させる形で、契約的な概念を入れながら価格が決まっていくという点が大きな変更点になる。
 (学識者) 我々が理解している言葉でいえば、分糖法ということか。
 (佐藤特産振興課長) 多分、これが分糖法という仕組みなのかもしれないが、諸外国の例にならって検討したい。
 (製糖関係者) タイの分糖法の変形と言える。
 (鹿児島県糖業振興協会) 契約栽培取引による仕組みを基本に検討とあるが、具体的にはどのようなものか。
 (佐藤特産振興課長) 加工原料用の農産物のようにある程度原料の搬出先が決まったものについては契約栽培をしている例が多いが、これらをイメージしている。
 (製糖関係者) 生産対策と今回の経営対策との関連がわからないので教えてもらいたい。また、零細な専作の多いさとうきびが品目横断に適するかどうかということも含めての検討としているが、1つの品目で、この現在の検討の枠組みの中に入れるのか。
 (佐藤特産振興課長) 生産対策と経営安定対策との関係であるが、現在の国際規律上、各作物に対する助成措置は、総合的AMSという観点で全体の助成水準を下げていくようなことを約束している。そういった観点からすれば、品目に特定した価格支持などは、全て削減の方向になるが、品目横断的にすることによって、産品を特定しない対策に転換することになり「緑の政策」として削減対象にはならないということになる。
 生産対策は、生産総合対策の中で従来どおりやっていくということである。
 それから、さとうきびの経営状況から見て、この品目横断対策へ移行するのはどうかという懸念であるが、さとうきびの場合には、いまの経営構造などから見れば、品目横断対策よりも、品目ごとの経営対策を考えていくべきではないかということを提案している。
 (黒砂糖工業会) さとうきびは分みつ糖地域だけでなく、含みつ糖(黒砂糖)の地域もあるが、含みつ糖についてはどのような議論がなされているのか。
 (佐藤特産振興課長) 現時点では、含みつ糖についての議論はなされていないが、現行の糖価調整制度の枠組みそのままでいこうということになると、含みつ糖については制度の枠外である。その意味では、含みつ糖についてはこの経営安定対策にそのまま移行することにはならないわけだが、現在の仕組みの下でも、制度に準じた扱いが現実にはなされているという実態があるので、今後、この対策の移行に当たって、それに準じた扱いが可能かどうか、財源的問題なども含め検討したい。
 (九州沖縄センター) この市場原理の導入の仕組であるが、これは全てのさとうきび農家が対象になると思うが、そもそも品目横断型の制度の中では、担い手育成という大きな柱があると思うが、担い手を育成するための制度的な仕組みを考えているのか。
 (佐藤特産振興課長) 制度面から言うと、さとうきび農家についてだけ、例えば担い手育成の対応を盛り込むということは困難だと考えている。他の手当てを考えたい。
 (製糖関係者) 15社、17工場を1社にという極端な意見があるが、1社にして数十億の赤字が一遍に出た場合、それをリスク負担できる会社が実際にあるかどうかという問題がある。県などで引き受けられるか聞きたい。
 (鹿児島県) 鹿児島県の財政状況については、新聞などで報道されているように大変厳しい状況で、現実的には難しいとした。
 (沖縄県) 鹿児島県同様、財政状況から見ればかなり厳しい状況。県においても行政改革ということで、公社の整理・統合ということも含めスリム化を図ろうとしているところであり難しいとした。
 (佐藤特産振興課長) 検討会は様々な意見を多角的に入れながら進めようとしている。経済合理性だけで律しようということではない。例えば、さとうきび・甘しゃ糖で言うと10倍という内外価格差のままでいいのかどうかという問題点がある。国民的理解を得るためには、そうしたコスト削減を図って、内外価格差を縮めていこうということが目的である。そのために市場原理をどう入れていくかということをまさに議論している。さとうきびは重要な作物なのでいままでどおりで何もできないということでは議論は進まない。やはり、国民に理解を得るためには、全てが経済合理性ということではないとしても、国民に理解の得られる水準があるはずだと思う。
 (製糖関係者) 15社、17工場あるものを、やはり1社、17工場という考えなのかその辺について考え方を聞かせてもらいたい。
 (佐藤特産振興課長) 委員によっては、1社にしてもいいのではないかという意見があったが、沖縄、鹿児島両県それぞれ糖業のこれまでの経緯などがあるので、それを一気に1社に持っていくというのは現実的には不可能と思っている。
 ただ、1つの島で複数社、あるいは複数工場あるところがまだ幾つかあるので、まずそういったところについて合理化できるのかどうか、そういうところが出発点になると思う。その上で、究極の姿として1社というのはあるかもしれないが、まずは地域の実情を踏まえた合理化のあり方が議論されてしかるべきだと考えている。
 (製糖関係者) 国産糖企業の支援の前提は、最大限の合理化を行なうことで、その極端な例が1社、17工場だと思うが、国民の目に見えるように国産糖企業も合理化をしたということを何らかの形で示さなければならないと考えている。
 (佐藤特産振興課長) 国民一般からすると、砂糖の仕組みとか、あるいは制度の内容というのは非常にわかりづらい。合理化によって、企業数なり工場を、数値的な面で改革したというのが一番わかりやすいのではということで、15社、17工場の話をしている。
 また、消費者の方にわかりやすいということからすれば、いま、食の安全の問題がテーマになっているので、そういったものがきちんと、国内の南の離島でつくられているという姿を消費者にわかりやすく示すことが必要だと思っている。
 その一方で、台風などでかなり苛酷な気象条件の下で生産せざるを得ない状況、こういったことも、砂糖一般ではなくて、「南の離島の甘しゃ糖」という立場で、消費者に訴えられる機会づくりを進めていくことを考えるべきと思っている。
 (製糖関係者) 今この制度を維持するのがなかなか難しくなっているファクターの1つに、砂糖の市場が小さくなってきているということがある。その一番大きな要因は、制度の不公平さがある。例えば加糖調製品は、海外とは扱いが異なり不公平であるということである。砂糖の市場というものを大きくするということによって、解決できる点があるのではないかと思う。
 もう1点は、内外価格差の縮小があるが、例えばタイと日本だと10倍も違う。経済合理性、これも確かに必要であるが、食糧安全保障だとか、そういった観点から必要なのだということを、逃げずに正面から説得していくことも必要と考える。ただ、それを正面から、国民の皆様に説明していく必要があるが、これまでその点が不足していたと感じている。
 (佐藤特産振興課長) 1点目の、需要が低迷している中で加糖調製品の増加によって砂糖市場が奪われてきたという点であるが、もう何年も前からこういった問題についての議論があり、検討している。加糖調製品については、これはアメリカとの12品目合意により輸入されるようになった品目である。現在、タイと韓国からかなりのものが入ってきているが、仮に、バインドされている税率を上げて国境措置でブロックしようとすれば、代償措置を出さなければならない。タイや韓国からの他の輸入品目で増やさないとこれをブロックできないというのが、WTO上のルールであり、他の品目でその代わりになるものがあるかどうかである。数十億円レベルの輸入をカバーできる品目が出てこないと、代償措置という形にはならないので、ハードルはかなり高いと思う。
 国境措置ではブロックできないとすれば、どういう形でこの加糖調製品の輸入を食い止めるかということだが、例えば内国調整金的なもので加糖調製品に負担をかけるということも考えられるが、実質上、輸入の阻害要因になるという形をとるので、WTO上認められるかどうかという議論も出てくると思う。過去においてもこの問題はいろいろ議論したが、なかなかいい対応策がないということである。精糖工業会からも従来からこの問題については問題提起されているので、引き続き検討を行っていくということで理解をいただきたい。
 2点目の問題について、国民に対してもう少し真正面から議論をし、理解をしてもらうという点であるが、これについても、砂糖の重要性などについてはいろいろな形で国民にも納得してもらえるような機会を設けている。ただ、現実的に申し上げたいのは、内外価格差があまりにも大きすぎるという点である。例えば自給力強化の点ということであれば、それでは北海道のビートのほうが内外価格差が小さいのだから、そちらのほうを多く作ればいいという議論にもなりかねない。ただ、その一方で、交付金支出が増大し調整金収支が悪化するという問題もあり、これは全体のバランスの中で解決しなければいけない問題だと思っている。負担される側としては、適量を、きちんとした形でつくり、なおかつ、その保障水準は国民がある程度納得できる水準のものにしていくということが制度として求められる。現在の制度の安定的バランスを考えた上で、諸施策を考えていかなければならないという基本に立ち返って議論をしていきたい。
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4.総括
 (山本理事長) 今回の検討会で、目標値に対する進捗状況を検証するとともに、担い手農家の育成、機械化一貫体系の確立、収穫面積の増大に対する取り組みや病害虫防除などの重要項目について具体的な議論ができた。
 特に今回は、今後の砂糖政策の方向を示す「砂糖及びでん粉に関する検討会」の検討状況と今後の方向性について佐藤特産振興課長から説明いただき、また、忌憚のない意見交換が出来たと思う。  ここに参集する産学官のさとうきび関係者それぞれの立場において日々努力し、創意工夫し、食料・農業・農村基本計画に定められた目標数値の実現に向けて、今後一年間それぞれの数値目標を設けて、その目標達成に向け取り組むことが肝要である。当機構としてもさとうきび振興のため努力してまいりたい。
 (和田理事) 次回の検討会の開催については鹿児島県で行いたい。日程や議題など具体的なことは、両県などと相談しながら決めたい。
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まとめ
 この検討会も第4回を迎え、これまで以上に鹿児島県農政部や沖縄県農林水産部をはじめ、各機関がさとうきび糖業発展のため明確な目標を持ち、その達成のためにお互いに連携しながら、各々の機関が大きな努力を傾注している様子をうかがい知ることができた。
 本検討会では、目標に対し、具体的な数値で達成状況を確認し、その背景を検証することを目的としているが、今年は、台風の度重なる襲来はあったものの、収量や糖度の向上という点で見れば十分な効果が上がっていないのが実情である。特に単収については右肩下がりで下がってきている。また、これまで取組んできた中で収穫面での労働時間の減少については、確実に数字として出てきているが、トン当りの生産費で見ると、生産コストの低減がなかなか進んでいないという実態があった。
 当機構としても、こうした中、特に今回は、土地利用についての専門家である農業委員会などの活用や農協、普及センターなどの相談窓口の一本化、いわゆるワンストップ化など現場の指導体制についての意見が多く出され、今後の重要な課題であるとの思いを深くした。
 砂糖だけではなく、あらゆる作物についていえることであるが、農家自身が本当に意欲を持って取り組んでいるのか。特に新たな基本計画が検討されている現在、目に見える数字で努力というものがあらわせないと、国民なり納税者の支援、支持というものは得られないのではないかと思慮される。
 この検討会の成果が活かされ、食料・農業・農村基本計画に定められた目標数値の実現に向けて、今後一年間それぞれの数値目標を設けて、その目標達成に向け、関係者一丸となって取り組むことが、最も重要である。

(参集範囲)
農林水産省生産局、農林水産省農林水産技術会議事務局、農林水産省九州農政局、内閣府沖縄総合事務局農林水産部、鹿児島大学、琉球大学、鹿児島県農政部、沖縄県農林水産部、鹿児島県農業試験場、沖縄県農業試験場、沖縄県農業協同組合中央会、鹿児島県糖業振興協会、沖縄県糖業振興協会、日本甘蔗糖工業会、日本分蜜糖工業会、鹿児島県農業・農村振興協会、沖縄県黒砂糖工業会、独立行政法人種苗管理センター、独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構九州沖縄農業研究センター、独立行政法人農畜産業振興機構他

 なお、本検討会に先立って行われた「第4回さとうきび研究会」(27日)では、さとうきび研究を巡る諸状況、昨年の話題提供に関して1年間の研究及び検討の進捗状況について報告された後、南西諸島における持続的なさとうきび産業展開のための生産技術開発の方向についての検討(地域経済・産業のあり方という視点から)として下記の基調講演および研究テーマにより各々発表が行われ、質疑応答が活発に行われた。これらの研究は、今後のさとうきびの生産振興を図るうえで重要な研究内容であり、これらの研究成果が早期に具体化されることが切に望まれた。

基調講演: 地域経済と糖業の位置、その課題
来間泰男(沖縄国際大学教授)
[1]  サトウキビの安定多収量生産及び収穫期間拡張に向けた技術開発の現状
松岡 誠(九沖農研・さとうきび育種研究室長)
[2]  農業経営から見た新生産技術導入の意義と問題点(種子島の分析を中心に)
笹倉修司(九沖農研・農村システム研究室長)
[3]  製糖企業から見た新生産技術(秋収穫・収穫期間拡張法)導入の意義と問題点
宮城貞夫(翔南製糖会長)
[4]  鹿児島・沖縄両県におけるさとうきび生産の現状、新生産技術導入で想定される意義と問題点解決のための技術開発の方向
沖縄県において ;宮城克浩(沖縄県農業試験場さとうきび育種研究室長)
鹿児島県において;白澤繁清(鹿児島県農業試験場徳之島支場作物研究室長
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