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韓国砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2005年7月]

 韓国においては、日本と異なり、てん菜、さとうきびともに国内生産は行われていないため、全量を輸入糖に依存している。
同国の主な砂糖政策は輸入精製糖への高関税と輸入ライセンス制度であるが、異性化糖の生産量が甘味料需要の約25%を占め、精製糖の余剰生産については輸出されている。
 このような韓国の砂糖産業について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに、調査情報部でとりまとめたので紹介する。

  調 査 情 報 部

砂糖産業等の現状
砂糖の需給バランス
 表1は、韓国における98年以降の砂糖の需給状況を示すものであり、グラフ1は90年以降の消費量と輸入量の推移を示すものである。なお、この表で示すのは砂糖のみの需給状況であり、グルタミン酸ナトリウム(MSG)とリジンの製造用の輸入粗糖は含まれていない。また、加糖調製品についても詳細が不明ということもあり、輸出入実績には含まれていない。

表1 砂糖需給バランス

注:2004年は推定
資料:ISO、LMC予想、USDA


グラフ1 砂糖の消費量と純輸入量(注1)

注1)純輸入量は輸入量−輸出量

 韓国は国土の3分の2が山岳地帯であることに加え、気候がシベリアからの大陸性気候であり、てん菜やさとうきびの栽培に適していないことから、国内需要のすべては輸入糖に依存している。輸入された粗糖は、国内の精製糖会社3社(Cheli Sugar and Chemical(第一製糖)、Samyang Corporation(三養社)、TS Corporation(大韓製糖))によって精製されている。輸入されている粗糖の24%(約33万トン)が香港、インドネシア、フィリピンをはじめとする極東地域全般に向けて輸出されている。
 消費量はここ数年、約100万トンほどで比較的安定しており、98年にはアジア金融危機によって輸入量・消費量が大幅に減少したが、その後は通常の水準まで回復している。ここ数年の1人当たり消費量は、24〜27kg/人で安定している。

砂糖消費の内訳
 表2は、韓国における98〜2004年の砂糖消費量の合計と、主なエンドユーザーの業種別内訳を示すものである。主なものは家庭用、飲料用、菓子生産用で、これら3種類で消費量全体の約50%を占めている。このほか、その他(食品以外を含む)が全体の32%を占めているが、その中で最も多いのがグルタミン酸ナトリウム(MSG)とリジンの生産用で、両者で年間約21万トンを消費している。

表2 砂糖の用途別消費量

注1:MSGおよびリジン生産用を含む
資料:LMC推定


グルタミン酸ナトリウム(MSG)とリジンの生産
 グラフ2は、韓国における90年以降のMSGとリジン生産用の粗糖輸入量の推移を示すものである。主に、発酵製品業界等によって約22万トンの粗糖がMSGとリジン生産用に輸入されている。うち、約14万トンが主に飼料用として使用されるリジン生産用であり、生産されたリジンの約90%が輸出されている。

グラフ2 MSGおよびリジン用の粗糖輸入量


異性化糖の状況
 現在、韓国には主に4つの異性化糖製造業者があり、韓国最大のDoosan Corn Productsが生産量の約29%を占めている。ほぼ差のない2位がDaesan Co. で28%を占め、3位がSamyeng Genex Co. で27%、Shin Dong Bang Co. が残りの16%を占めている。異性化糖の原料はほぼ全面的に輸入のトウモロコシに頼っており、その大部分は米国産である。
 表3は、98年以降の異性化糖と砂糖の消費量を示している。異性化糖は砂糖と異性化糖の合計消費量の約25%を占め、異性化糖の消費量の約85%は、飲料部門が占める。

表3 異性化糖及び砂糖消費量の推移

資料:USDA、LMC推定

代替甘味料の状況
 韓国における代替甘味料の中で最も消費量が多いのはサッカリンで、砂糖換算で10万トン近くに達しているが、近年は需要が横ばい傾向にあり、年間の増加率は1%を下回っている。同国内での低カロリー飲料産業は小規模だが、ステビアの市場は約2万トンで、主に焼酎の生産用である。また、ぶどう糖の消費量も多く、約31〜33万トンである。

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砂糖関連政策の概要
 韓国の砂糖関連政策としては、生産規制、国内の価格支持、販売規制の3つが挙げられる。

生産規制
 韓国では、精製糖の生産割当も粗糖の輸入割当も存在しない。ただし、精製を目的とする粗糖の輸入を行うためには、輸入ライセンスが必要である。

国内の価格支持
 砂糖の国内価格は、政府によって直接的または間接的に、国際価格よりもはるかに高い水準に維持されている。政府は砂糖価格を直接定めてはいないが、国内市場における精製糖の卸売価格と小売価格についてガイドラインを定めている。精製糖会社は、砂糖の販売価格を変更する場合には政府に届出を行う必要があり、価格引上げの場合は理由を説明しなければならない。政府は、次の2つの主な手段によって、高い国内価格を維持している。
 1つは、輸入精製糖に高い関税を課していることである。1993年までは精製糖の輸入は許可されていなかったが、ガット・ウルグアイ・ラウンドの決定に従って、砂糖の輸入が自由化された。
 1994年1月1日、韓国政府は精製糖の輸入を解禁し、60%の関税を課した。1996年7月には、精製糖に対する関税を50%に削減した。表4に示すとおり、この数値は韓国のWTO譲許税率の範囲内ではあるが、粗糖と比較すると47%もの開きがあり、これが国内の精製糖業者の保護につながっている。

表4 砂糖の輸入関税とWTO義務

注1:いずれか高い方を適用

 この関税障壁の設置は「タリフ・エスカレーション」と呼ばれ、これは加工度が低い粗糖よりも加工度が高い精製糖の関税率を高く設定するという方法である。表5はその効果を表すもので、粗糖と精製糖の長期的な国際価格を用いて比較を行っている。この表からもわかるとおり、単価あたりの関税率の差は47%であるが、関税を含めた価格に換算すると、実質的な関税保護の効果は178%になるというものである。
 粗糖に対する関税は、1998年の初頭に5%から3%に削減され、特恵関税についても4.5%から2.7%へと削減された。この特恵関税は、2国間の政府協定に従ってタイなどに適用されている。
 国内価格維持のためのもう1つの政策は、輸入ライセンス制度である。精製糖会社3社とMSGおよびリジンの生産会社のみが、粗糖の輸入ライセンスを与えられている。
 輸出用の精製糖は国際市場価格で輸出されている。一方、精製糖業者が粗糖を輸入する際に、精製した後に再輸出する目的で輸入するものについては、3%の粗糖関税を免除され、政府の介入や援助が直接行われることはない。

表5 名目保護率と実質保護率

注:粗糖および精製糖の長期平均価格から算出

 ちなみに、異性化糖業界に対しては、主に次の2つの方法で間接的な価格保護が行われている。1つは、通常の輸入トウモロコシに対する関税率はわずか1%であるが、異性化糖生産向けについては、関税率が高く設定されており、輸入量にも制限が設けられているというものである。もう1つは、異性化糖生産者には課税の優遇措置が適用されることである。国内の課税は10%で、消費税と教育税が免除されている。一方、競合関係にある砂糖生産者に対する課税は23.4%で、異性化糖生産者の方が、税制面で有利な扱いを受けている。

砂糖の流通
 韓国の国内市場には、日本にあるような販売会社(特約店)は1社も存在せず、精製糖会社が工場から消費者にいたる流通システムの大部分を管理することによって支配的な役割を果たしている。代理店は存在するが、特定メーカーの製品のみを販売するケースが多く、政府から輸入ライセンスを与えられている精製糖会社3社によって支配されているのが実態である。
 精製糖会社は、国中に販売網を持ち、約50%を食品産業部門のユーザーに販売している。販売経路としては、大手ユーザーや大手小売業者(デパート、大型スーパー、ディスカウントストア、コンビニエンスストア、流通センターなど)向けには直販、中小ユーザー、中小小売業者などには、代理店を通じて販売している。

砂糖産業の現在の問題点
 砂糖産業の主な問題点は、異性化糖との競争である。韓国の甘味料市場における異性化糖のシェアは、ここ数年間、28%前後で推移している。90年代初頭以降、初めて異性化糖のシェアがこの水準に達した。

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