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第22回国際甘味料シンポジウムの概要について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2005年11月]

調査情報部長 加藤 信夫
調査情報部審査役 田村 正宏
調査情報部調査情報第3課 課長補佐 天野 寿朗


第22回国際甘味料シンポジウムについて
1.最近の米国砂糖事情
2.貿易交渉における基本的な考え方
3.DR−CAFTAの議会承認の背景
4.EUの砂糖制度のEU委員会による改革案
5.ブラジルの砂糖事情
6.メキシコの砂糖事情
7.2007年農業法について
8.米国における消費拡大の取組み
まとめ

 平成17年8月8日〜10日に米国アイダホ州サンバレーにて開催された第22回国際甘味料シンポジウムに出席し、米国・EUをはじめとした砂糖を取り巻く国際情勢およびWTO/FTA交渉の状況などが議題として取り上げられていたので、その概要を報告する。  今回のセミナーは機構として初めて参加するものであったが、7月末にWTOのモダリティたたき台について決裂し、一方で、米国内では砂糖業界の関心を集めた中米自由貿易協定(DR−CAFTA)が下院で7月27日に僅差承認された直後に行われたため、これらについて活発な議論が行われたのが特徴的であった。 

第22回国際甘味料シンポジウムについて

  国際甘味料シンポジウムは、全米砂糖連盟(ASA:American Sugar Alliance)の主催により、毎年度開催されているものである。第22回となる今回のシンポジウムは、8月8日〜10日にかけて、米国アイダホ州サンバレーにて開催され、砂糖関係議員、USDA(米国農務省)、EU委員会、学識者、砂糖業界関係者、マスコミなど約350名が参加した。
 シンポジウムの主な議題は以下のとおりである。
1.最近の米国砂糖事情
2.WTO/FTA交渉の考え方
3.DR−CAFTA(Central America Free Trade Agreement)承認の背景
4.EUの砂糖改革案
5.ブラジルの砂糖事情
6.メキシコの砂糖事情
7.2007年農業法について
8.米国における消費拡大の取組み
 なお、シンポジウム期間中に以下の者(*はシンポジウムでの講演者)と面談をしたが、その結果を含めてシンポジウムの概要を以下のとおり報告する。
*Mr. Jack Roney
 American Sugar Alliance(ASA)
 (Director of Economics&Policy Analysis)
*Mr. Simon Harris
 British Sugar
 (Director for Corporate Affairs)
・Mr. Ben Goodwin
 California Beet Growers Association
 (Executive Manager)



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1.最近の米国砂糖事情

(1) 米国の砂糖政策
 米国の砂糖政策の特徴は在庫管理プログラム(inventory management program)といわれ、図1のように関税割当による輸入管理、販売割当による国内需給管理によって、国内補助金や輸出補助金といった政府の財政支出を伴わない(no cost)適切な需給バランスを図るプログラムである(詳細は、砂糖類情報2004年9月号を参照願いたい)。米国の農業プログラムの中では、プログラム作物と呼ばれる、各種補助金が手当てされている米、とうもろこし、綿花、ピーナッツなどと大きく異なり、特殊なプログラムであると言える。


図1 米国砂糖政策のしくみ

(2) 米国の砂糖需給事情
 過去数年間、砂糖価格低迷や砂糖消費減退などにより、生産者は作付面積を削減し続けた。一方、ビートは生産地の良好な気候により生産量が増大し、ビート糖工場は、自己負担で在庫(約50万ショート・トン)を抱えることとなった。工場負担による在庫調整量が不十分なところに、2003/04年と2004/05年の販売割当量が過大に設定されていたことなどにより、2004年の夏には約40,000ショート・トンのCCC(商品金融公社)への質流れが起こった。
 しかしながら、低迷を続けていた砂糖の消費も、2004年から回復に転じている(表1)。米国経済の回復による可処分所得の増大、外食の増加傾向、人口構成の変化(具体的には、より甘味を好むヒスパニック系人口の増大)、アトキンス式と呼ばれる低炭水化物ダイエットの人気低落、大口ユーザーの異性化糖利用減退などがその主な理由としてあげられている。中でも、経済回復を受けての外食の増加(特に高級レストラン)は、砂糖やバターなどの「自然な」食材利用の牽引役となっているようである。
 こうした動向に加え、2005年8月に発生したハリケーンKATRINAの影響により、米国内に砂糖のさらなる供給不足が生じたため、USDAは2005年砂糖プログラムの変更を発表した。販売割当数量について、ビート糖を4,402千トンから4,661千トンへ、甘しゃ糖を 3,698千トンから3,914千トンへと、合計47.5万トンの増加を行うというものである(表2)。

表1 砂糖の国内消費


表2 最近の砂糖需給の状況

(注1)生産、輸入等のデータは、USDAによる5月末時点の予測値。
(注2)「その他プログラム」は、精製糖再輸出プログラム、砂糖含有製品プログラム。
(注3)「非プログラム」は、糖みつ、thick juice sugar syrup、2次輸入。


(3) 米国砂糖産業の動向
 1990年代後半に砂糖価格低迷の影響により、砂糖産業の再編が加速化した。その結果、1996年以降、約3分の1の製糖工場および精製糖工場が閉鎖された。独立工場は撤退し、工場の買い手が見つからずに原料が行き場を失い、このため、生産者による協同組合方式の工場が増加することとなった。1999年から2004年までの生産者所有工場の加工能力のシェアーは、ビート糖工場で65%から94%、甘しゃ糖工場で14%から57%、精製糖工場で36%から73%へと、それぞれ拡大している。
 このように、生産者は工場をやむを得ず協同で買い取ることとなったが、負債を抱え、とうもろこし、小麦なども栽培しながら、厳しい状況に置かれている。




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2.貿易交渉における基本的な考え方

  砂糖に関する国際貿易交渉における米国(主に砂糖関係の連邦議会議員、ASAなど)の基本的な立場・考え方は、「FTAは基本的に国境措置のみに焦点を当てた断片的な交渉(piecemeal negotiations)であり、FTAによる交渉は砂糖業界にとっては不利益となる可能性が高い。現に北米自由貿易協定(NAFTA)関係国との貿易収支は最近、赤字に転じている(図2)。米国としては、貿易交渉に関しては、2国間交渉であるFTAよりも、多国間交渉であるWTO交渉の場において、貿易歪曲的補助金や不透明な間接補助金を含め、すべての貿易関連措置を取り上げた包括的な合意を目指すべき」とするものである。


図2 NAFTA(カナダ+メキシコ)貿易収支

(1) WTO交渉の見方
 米国砂糖関係者は、12月に開催が予定されている香港での閣僚会議でのモダリティ合意に期待を寄せている。米国の砂糖産業の競争力はブラジルなどの輸出国と比べれば低いものの、砂糖を輸出するほとんどの国が直接的または間接的な補助金などにより保護されている状況下で、WTOにおいてこれらすべての保護措置がグローバルに大きく削減されれば、米国の優位性が高まると信じている。
 また、世界の砂糖生産の約75%が途上国で生産されていることから、途上国にも応分の約束・義務が課されるべきであるとしている。特に、ブラジルやアルゼンチンなどの経済新興国を「特別扱い」することには反対している。
 さらに砂糖関係者は、途上国(特にブラジル)の低コスト生産の大きな要因の一つとして、労働、環境や安全性基準の未設定や不履行などの問題を取り上げている。米国・EU・日本などの先進国は環境保全、食品衛生、労働者保護などにおいて国際的にも適切な基準を設けているがために生産コストが高いものとなっている。従って、このような要因も捕捉した形で、「同じ土俵」の上で交渉すべきと主張している(National Farmers Unionの会長も同様の主張)。
 また、ASAのJack Roney氏によると、DR−CAFTAの承認プロセスへの対応に忙殺されていたため、WTO交渉については十分に検討しているわけではないがと前置きしつつ、砂糖が「重要品目」としての扱いがなされることを望んでおり、「上限関税」よりは「関税割当枠の拡大」を選好している。さらに、低価格な輸入品の国内市場への流入が拡大する恐れがあるため、現在砂糖に適用されている従量税が従価税に変換されることを懸念しているとのことであった。

(2) FTA交渉の見方
 米国と豪州とのFTA交渉では、砂糖のみを完全例外としたことにより、国内外から強い反発が起きた。米国は現在、21の砂糖生産国とFTA交渉の途中だが、最も警戒しているのは全世界の砂糖貿易量の約35%を占めるブラジルである。
 ASAのJack Roney氏によると、現在進行中の21の砂糖輸出国との交渉においての交渉方針としては、(1)完全例外とする、(2) 国内で必要な場合のみ輸入を行う、(3)需要が増加した場合、その一部を輸入分として割り当てる、(4)一定のミニマムアクセス数量の輸入を認める、(5)非食用(エタノール向けなど)として輸入、の5つのオプションが挙げられるが、このうち、(1)は非現実的、(2)も困難、現実的には(3)か(4)の可能性が高いとしている。なお、(5)に関しては、後述する包括エネルギー法案において、現在40億ガロンのエタノール生産を75億ガロンにまで引き上げることとなったことから、さとうきびがこの原料として使用されることへの期待は高いものの、コスト面などから第一義的にはとうもろこしによるエタノール生産が主体となるものと考えられるとのことであった。




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3.DR−CAFTAの議会承認の背景

  7月27日に米国下院をDR−CAFTA法案が通過し、8月2日にはブッシュ大統領がこれに署名した。これにより、米国とDR−CAFTA諸国、すなわち、中米5カ国(エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、ニカラグア、ホンジュラス)およびドミニカ共和国の6カ国との貿易における農産物の扱いは、一部の重要品目を除いて、関税を即刻または5年間、10年間、12年間、15年間、15年以上のいずれかの期間をかけて段階的に撤廃することとされた。
 これまでのFTAは大差で可決されてきたが、今回のCAFTA法案は、上院では賛成54票、反対45票、下院では賛成217票、反対215票と、ごく僅差での承認となった。これは、米国内でも強い政治的影響力を持つ砂糖産業関係者による活発な陳情活動のほかに、グローバリゼーション振興政策における米国経済の利益について疑問の声が上がってきたことなどが挙げられる。
 CAFTAの議会通過に当たって、ブッシュ政権は、米国内の経済効果よりも、「国家安全保障」の必要性を強調し、ブッシュ大統領自らが議員を説得して回った(一説によると30〜40名の議員が賛成に回ったといわれる)。すなわち、この協定によって中米諸国の生活が改善され、これら諸国の民主化に寄与することにより、結果的に米国のテロ対策などの安全保障にとっても有益であるという理屈である。
 米国の砂糖業界は、今回のDR−CA FTA法案可決には失望を隠さない。しかしながら、今後の展望についてはさほど悲観はしていない。なぜなら、議会を通過するに当たって、多くの反対票が投じられ僅差承認であったこと、ブッシュ政権にとっても根回しや駆け引きに要するコストが高くついたこと、そして何よりも砂糖業界の圧力の強さというものが今回賛成票を投じた議員たちにも認知されたことにより(次のFTA法案においては、うまく立ち回らないと再選されないとの不安感が増大)、議会は今後のFTA承認に慎重になることが予想されるからである。
 また、今回のDR−CAFTA法案の承認の直後に、エタノールの生産を奨励する内容を含んだ「包括エネルギー法案(The Energy Policy Act of 2005)」が議会を通過した。この法律において、自動車燃料用としてのバイオ燃料の利用が義務付けられており、2006年時点で年間約40億ガロンのエタノール生産を、2012年に75億ガロンまで引き上げることとされている。具体的な奨励措置としては、バイオマスセルロース製造設備や調査事業への奨励金、研究事業や廃棄物・セルロースをエタノールなどに転換する設備への信用保証、エタノール生産税制優遇措置対象を拡大(3千万ガロン/年→6千万ガロン/年)などが挙げられている。
 砂糖関係者、関係議員ともに砂糖の原料作物がエタノール生産に利用できる可能性が高まったことに対して大きな期待をしているが、現実を直視すると、どの国においても最もコスト面で競争力がありエネルギー効率が高い作物がエタノール原料として利用されており(ブラジルではさとうきび)、米国ではとうもろこしがそれに当たるが、それでも、ブラジルのエタノール生産コストの約1.7倍といわれる。また、米国へのエタノール輸入は、50セント/ガロンの関税で保護されている現実も忘れてはならず、この保護措置もブラジルを含むFTAA交渉で削減される恐れがある。
 今回のCAFTA法案可決に伴って、米国における砂糖のTRQが新たに設定されることとなった。現状の311,700トンの既存枠に、1年目は107,000MT(消費の約1.2%)が追加され、毎年2%ずつ上乗せされ、15年目には151,140MT(消費の約1.7%)が追加されることになる。その後も毎年2,640MTの追加が行われる(2次税率については現状維持)。
 今回のシンポジウムの中で、Conrad上院議員(ノースダコタ州)は、「今回可決されたDR−CAFTAが現在交渉中のタイ、南アフリカ、アンデス諸国およびパナマにもモデルとして利用されれば、毎年、40万トンの砂糖の追加輸入がなされることとなろう。これに加えて、DR−CAFTA諸国からは10万9千トンの輸入とNAFTA加盟国のメキシコからの2次輸入により、米国の砂糖業界は大きな影響を受ける。さらにドーハ・ラウンドの結果、輸入がさらに増大するので、現行の砂糖政策の代替案、すなわち、緑の政策(green box)への転換が必要である」との見解を示した。



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4.EUの砂糖制度のEU委員会による改革案

 EUの砂糖政策は、共通農業政策(CAP)改革プロセスから除外されている唯一の部門といわれており、1968年に制度発足して依頼、大きな見直しは行われていない。しかしながら、以下に掲げる要因から現行制度の維持が困難との見方が強まり、EU委員会は、本年6月22日に改革案を提示した。

(1) EU砂糖制度に対するWTO裁定
 ブラジル、オーストラリア、タイは、次の2点を主張し、WTO紛争処理委員会(パネル)に提訴したが、WTO上級委員会はその主張を認め、本年、4月28日にEU敗訴を内容とするパネル報告書を発表した。
 ア.生産枠内への補助が原価割れの売却を可能としているため、補助金なしで輸出されているC糖も、実質的には割当糖の恩恵を受けており、間接的に補助金を受けているのと同じである。
 イ.EUは旧植民地時代から関係があるACP諸国やインドから、特恵的な条件で砂糖を輸入し、それに相当する量の砂糖に補助金を与えて再輸出している。

(2) EU加盟国の拡大
 ポーランドなど新たなEU加盟国の影響で、域内における砂糖生産量が増加することになり、生産過剰傾向となった。このため、ウルグアイラウンド(UR)交渉で合意した輸出補助金の枠を超過する恐れが生じた。

(3) EBA(Everything But Arms)協定による開発途上国からの輸入増
 EUは2001年3月より開発途上国に対し、武器・弾薬(25品目)以外の全ての産品への無税・無枠措置であるEBAを実施しており、経過措置として最後の例外品目となっていた砂糖についても、2009年までに段階的に開放することになっている。このため、開発途上国からの無税の砂糖の輸入が増加することが見込まれ、これに耐えられる競争力をつける必要が生じてきた。

(4) 高い砂糖価格
 現行の砂糖政策により、域内の砂糖価格が国際市場の約3倍の水準にまで達し、域内の飲料業界等が競争力を失い、廃業もしくは海外への移転を迫られている。

(2) EU委員会の砂糖政策案の提示
 このような事情を背景に、本年6月22日にEUのフィッシャーボエル委員(農業担当)は、1968年の制度発足以来の本格的な見直しとなる改革案を公表した。シンポジウムのパネラーでもあるSimon Harris氏(British Sugar)によれば、今後は、11月に向けてEU加盟国の改革案の承認を目指すことになるが、合意は来年にずれ込む可能性が高い。
 改革案の中心は、WTOでクロ裁定を受けた輸出向けのC糖輸出対策である。EU委員会案では、輸出向けであったC糖については、生産実績より低い生産枠の中に組み込み、生産枠全体を大きく削減することにより、輸出量を改革直後から大きく削減することとしている。
 価格面でも介入制度を廃止し、新たに設定した参考価格を39%削減するが、収入減を6割補填する品目横断的な所得補償を行う。これには、輸出補助金の原資とされてきた生産者課徴金を充てることとしている。
 このように、今回のEU委員会案の特色は、基本的に輸出補助については関与しない方策であると言える。この改革案は2006年7月1日から施行し、9年間で完了する予定となっている。具体的には、以下のような内容となっている。

(1) 介入制度の廃止と品目横断的な所得補償の導入
 白糖の介入価格(Intervention Price、現在631.9ユーロ/トン)は廃止され、その代わりに、参考価格(Reference Price、385.5ユーロ/トン)に置き換えられる。参考価格は3年間かけて2009/10年度までに39%削減される。現行制度でも域内価格は高止まりしてきたため、介入措置が発動されたことは過去1回(1986年)しかないが、介入制度の存続自体がコストアップにつながる可能性があるため廃止することとされた。
 なお、市場価格が参考価格を下回る場合には、民間(製糖会社)が在庫を持つことによって、価格が支持されることになる。ビートの生産者価格は、参考価格に沿って算定されるが、厳格な介入制度がある時と異なり、柔軟性条(flexibility clause)が盛り込まれるため、ビート生産者はより柔軟性を持った価格交渉が可能となる。
 この価格削減の代償として、生産者はビートを生産するか否かにかかわらず、価格削減による収入減の6割相当額を直接支払いとして受け取ることができる。この補償は、Single Farm Payment(品目横断的な農家への直接支払)の中で実施されることと、補償水準が6割にとどまっているため、WTO協定上の緑の政策として位置づけられることになる。

(2) 生産割当枠の構造変更と削減
 生産割当の制度は存続するが、A割当およびB割当は統合される。現行のA割当とB割当の合計約1,700万トンが変更後は約1,100万トンになり、C糖(生産実績は約300万トン)の代わりに新たな枠として約100万トンが設定され、2004/05年のC糖生産実績を基に域内の各国へ配分される。従来のC糖と新たな生産枠との差は、バイオエタノールなど化学用途などに向けられる。

(4) 製糖企業の再編ファンド(Restructuring Fund)の創設
 改革の影響による工場閉鎖が想定される が、この対策として新たにファンド(参加は任意)が創設される。この制度は生産枠の削減と新たな枠(約100万トン)の創設に資するための措置であり、4年間にわたって実施されることになっている。
 制度の対象は、施設・機械の解体、環境修復、従業員の再研修とされている。
 財源としては、端的に言えば消費者負担となる。具体的には砂糖の小売価格に賦課金を課すことになるが、参考価格の削減により小売価格も低下することから、この負担は相殺されるものと見られる。ちなみに、こうした手法は工業分野では標準的な手法であるが、農業分野では初とされている。


図3 生産枠の変更の概念図

表3 EU砂糖改革による需給バランスの変更

注*:EBAによるLDCからの輸入関税は、2009年7月1日から無税無枠。
2012/13年の予測輸入量は、約220万トン。



(3) EU砂糖改革案による影響
 この改革案が加盟国の承認を得て実施されることになれば、EUからの砂糖の輸出は改革直後に低減(9年後には約500万トン減)すると見込まれている。また、生産枠は、現行の1,740万トンから1,240万トンに低減し、その一部はエタノールや化学用途に向けられる。輸入は、現行の190万トンから390万トンへ増加し、主に開発途上国から輸入することが見込まれている。
 なお、British SugarのSimon Harris氏は、EUの製糖工場は改革後、5社程度に半減するものと予想している。

(4) 米国側のEU砂糖改革案の評価
 EUの砂糖政策の改革案については、EUが従来の輸出補助による政策から貿易歪曲性が最小である緑の政策へ移行するものであるとして、米国側(USDA担当官ほか)もこれを評価している。また、今回の改革によってEUの砂糖の総輸出量が大幅に減少し、EUが輸入国に転じる可能性があることに対しても期待を示している。
 ASAは、この改革が実施されたとしても、EU以外の国の多くは、依然として砂糖について貿易歪曲的政策を実施しており、特に、ブラジルは30年にわたって、間接的な補助金(エタノールへのCreditや融資プログラムなど)によって、砂糖生産を増大させてきていることを指摘した。


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5.ブラジルの砂糖事情

  砂糖のみならず、エタノールの最大輸出国でもあるブラジルについても関心を集めた。以下は、ASAなどによる報告である。
 ブラジルは大豆、とうもろこし、砂糖、エタノール、牛肉、鶏肉などの巨大輸出国であり、生産の拡大余力も有している。同国の農業利用可能地は、1億4,000万haに及び、これは、米国の全農地および牧場の面積の総計に匹敵するものである。
 同国内の多くの工場では砂糖とエタノールの両方が生産されていることなどによるコスト削減効果は、年間10億ドルといわれている。併せて、同国通貨であるレアルの平価切り下げが低価格での販売を可能にしている。また、前述のような環境基準の遵守の低さや広範囲な児童労働の利用などによる不当なコスト削減が行われているとの指摘もあった。
 さらに、ブラジルにおいては、エタノールに対するプロアルコール政策の恩恵を受けて、さとうきび産業が成長してきた。また、エタノールに対する信用プログラムや免税措置、不透明な特定の内国税の免除や、農業資材の輸入関税の免税措置などを通じて、結果的にはさとうきびや砂糖の生産振興につながる「Cross subsidization」が存在するとした。また、最近、ブラジルの調査を行ったUSDA担当官は、品目特定的ではないが他にも輸出を奨励する措置がいくつかあるとして、不透明さと制度把握の困難性を指摘した。
 以上のように、ブラジル政府はエタノールに重点をおいた生産振興を行っており、加えて不透明で間接的な輸出促進効果のある各種補助制度の存在によって、さとうきびや砂糖の生産量が増加し、ひいては砂糖の国際需給や価格にも影響を与えている。ASAによれば、ブラジルにおいては、「砂糖はエタノールの副産物」であると述べている。
 WTO交渉では、ブラジルはこれまで「途上国扱い」されてきたこともあり、飛躍的に国際競争力を増してきており、米国などは警戒している。




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6.メキシコの砂糖事情

(1) メキシコの砂糖産業概要
 メキシコは国内15州に58の製糖工場(2004/05)を有し、砂糖産業関連での雇用は40万世帯、約200万人以上となっており、その経済効果は25億ドル以上といわれている。
 メキシコの製糖工場は民間により経営されていたが、生産過剰や価格暴落を背景に経営難に陥った工場を2001年9月に政府が買取し、業界再編成が加速化した。この再編成の結果、現在、同国内の58工場のうち23工場が国営企業(FESSA)の所有となっており、そのシェアは全砂糖生産量の41.54%を占める(図4・5)。


図4 メキシコ砂糖生産シェア (2004/05年度)


図5 メキシコ砂糖産業

(2) エタノール生産
 メキシコ国内では燃料用エタノールは生産されておらず、その政策も存在しない。これは、基幹産業である石油産業がすべて国営であるためであり、そのため、政府は燃料用エタノール生産を奨励していない。同国内における石油の開発、精製、製品の製造販売、ガソリンスタンドの経営などに関しては、メキシコ石油公社(PEMEX)がそのすべてを独占しており、主に米国に輸出している。また、メキシコにおけるさとうきびの価格はブラジルのように安価ではないので、エタノール生産がコスト面で採算が合わないことも理由の一つである。

(3) メキシコから米国への砂糖輸出
 NAFTAにより、2次税率については、1994年から段階的に削減し、2008年1月からは無税となる。これにより、メキシコから米国への粗糖および精製糖の輸出が増加することが予想される。
 一方、1次枠の設定については、15年間の移行期間におけるメキシコの輸出量は、砂糖の純余剰生産分(国内生産量−国内消費量)を上限とすると規定されており、純余剰生産が生じなかった場合には、WTO下で保障された7,258トンのみを無税で輸入できるとされた
 しかしながら、NAFTAにおける砂糖条項とは別に、両国間で締結している「サイドレター」をめぐって両国は見解を異にしている。すなわち、このサイドレターでは、メキシコが純砂糖余剰生産国となるためには、生産量の予測が、砂糖と異性化糖を合わせた消費量を越えなければならないと規定されている。この「純余剰生産分」について、米国はサイドレターの解釈が有効としているが、メキシコは消費量に異性化糖を入れることには反対しており、いまだにメキシコ側はこのレターに署名していない。
 以上のように、サイドレターをめぐる紛争は継続されているため、米国としては、米国の解釈に基づいて枠を提示している。すなわち、2003/04年と2004/05年の2年間は、米国の主張する「純余剰国」にメキシコは該当せず、このNAFTA枠は停止され、WTOのミニマム・アクセスである7,258トンのみがメキシコ側に提示された。最近の情報(2005年10月)によれば、2005年/06年については、ハリケーンKATRINAの影響もあり、メキシコのNAFTA枠を250,000トンにすると米国政府は公表した(メキシコ政府関係者は、メキシコの解釈にのっとれば、約800,000トンを米国に輸出できる権利があると主張している)。

(4) 米国からメキシコへの輸出
 メキシコ国内における最大の砂糖ユーザーはソフトドリンク業界であるため、メキシコ政府は砂糖生産者を保護することを目的として、2002年1月に、HFCS入りソフトドリンクを対象に20%の課税を実施した。
 この課税措置によって、砂糖と競合する米国産HFCSの輸入を抑制し、貿易を阻害しているとして、米国がWTOに提訴していた問題で、WTOパネルは6月27日、米国側の主張を認める中間報告を両国に送付し、10月7日には、メキシコ側の措置は違法であるという最終判決が出された。
 しかしながら、米国の関係者はパネルで違法判決が出た後も、メキシコ側で迅速な改善措置が採られるとは考えておらず、HFCSのアクセス改善は当分先とみている。


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7.2007年農業法について

(1) 2007年農業法の背景
 現行の2002年農業法は2007年に期限切れを迎えるため、次期農業法の検討が開始されているが、米国の財政事情は厳しいものとなっており、このことが2007年農業法の検討に少なからず影響を及ぼすものと考えられる。2005年度の米国の財政赤字は、イラク/アフガニスタンへの支出増加により、4,270億ドルと3年連続で過去最大を更新する見通しである。また、議会予算局(CBO)の見通しによると、社会保障費および医療費など義務的な支出は今後さらに増大する見込みであり(図6)、義務的経費については、議会の財政決議により、今後5年間に約370億ドルを削減、うち農業予算については30億ドルを削減することが求められている。
 こうした予算削減の圧力に加えて、現在交渉途中のWTOドーハ・ラウンドの行方も次期農業法に影響するものと考えられる。


図6 義務的支出の推移および見通し

(2) 2007年農業法の検討
 USDAは、2007年農業法の検討に向けて、全米各地で農業法フォーラムを開催し、生産者などから以下の6つの課題について、2005年12月30日まで意見公募を行うこととしている。
(1) 米国農産物の国際市場および国内市場での競争力
 2国間および多国間での貿易交渉により、農産物貿易に対する障壁が継続的に削減される中、海外市場へ輸出機会の増大や、国際市場および国内市場での競争力を高めることが不可欠であり、世界市場において米国が効果的に競争するために、農業政策はどのように計画されるべきか。
(2) 新規参入者が直面する課題
 過去の農業法による資本投入の結果、農地価格が上昇するなど、本来農業への支援としてなされたはずの政策が生み出した予期せぬ結果により、新規参入を妨げることとなってしまった。また、農地価格の低い国に対する米国の農業者の競争力を弱める理由の1つとなっている。農業政策はこうした「予期せぬ結果」をどのように扱い、新規参入者や次世代の農業者の妨げにならないようどうすべきか。
(3) 農業プログラムの公正で効果的な利益配分
 農業政策の長期的な目標は農産物価格と農業収入の支持および安定であるが、近年の農業政策は農家の規模拡大を支持し、その結果、大規模農場に対する不均衡な利益配分が行われているとの意見がある。農業プログラムは、効果的かつ公平に支持を生産者に分配するために、どのように計画されるべきか。
(4) 環境保護の目標達成
 農業は食物や繊維の生産・供給という主要な機能以外にも、環境保全という重要な役割を担っており、将来の農業政策は、水質や大気の浄化といった明確な便益についての規定を盛り込むべきとの意見もある。そのようなアプローチは、農業政策を拡張する可能性がある一方で、将来のWTOにおける国内支持に対する義務と整合する可能性もある。このようなことから、農業政策は、環境保全という目標をどのように最大限に成し遂げるのか。
(5) 農村の経済成長の進展
 農業と地方は、かつては同義であった。近年、地方の人口や経済的特色は変化してきており、農業の地域経済面での役割にも変化が生じてきている。今後の農業政策において、効果的な地方支援を行うに当たっての重点分野は何か。
(6) 農産物、市場、研究拡大の機会
 農業政策には、品質や新たな特性への着目などにより、農産物の広範な市場を拡大していくことができるような柔軟さが求められている。新農業法においては、こうした新たな農産物の生産、マーケティング、研究に関する事項についてどのように扱うべきか。

(3) 2007年農業法に関する砂糖業界の動き
 新たな農業法については、ASAとしても検討を開始しているところであり、従前のとおり販売割当制などによる納税者に負担をかけないno cost政策を継続することを求めている。また、現在、財政負担軽減策として、製糖会社が砂糖を販売する際に、ローンレートの1%を負担させる砂糖税の導入の話が再燃している(1991年〜1999年にかけて、「marketing assessment」(販売賦課金)が課された経緯がある。賦課金の率は、甘しゃ糖の場合で、当初の1.1%から上昇し、最終的には1.375%となった)。ASAでは、砂糖政策は、小麦や綿花など、補助金を受けている他の農産物とは異なり、納税者に負担をかけておらず、こうした新たな賦課金は合理化に努力している砂糖業界に追討ちをかけるものとして、砂糖税の導入に反対の意向を示している。




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8.米国における消費拡大の取組み

 砂糖に関する誤解の払拭や正しい知識の普及は各国で取り組まれているところであるが、米国においても日本と同様に、砂糖の摂取が肥満や糖尿病の原因であるなどの誤解が存在するようである。米国内の砂糖の製造者や原料作物栽培者をメンバーとする砂糖協会(The Sugar Association)では、砂糖について正しく理解してもらうことを目的とし、科学的根拠に基づく、健康的な食生活の一環として砂糖消費を増進するための以下のような活動を行っている。

(1) 砂糖に関する不適切な表示の是正
 「Sugar Free」あるいは「○%砂糖低減」、などといった誤解を招く表示で食品を販売している業者が多く、そのため、同協会ではこうした表示の排除に向けた取組を行っている。近年、人工甘味料、特にスプレンダと呼ばれる低カロリー甘味料の進出が注目されるが、「砂糖を原料として作られている」など虚偽の販売促進文句が謳われており、これを是正すべく、食品医薬局(FDA:Food and Drug Administration)に対して規制を要請するなどの活動を行っている。

(2) 肥満と砂糖に関する正しい理解の促進
 米国成人の約3分の2が肥満または過剰体重の範疇に属するといわれており、その一因として砂糖消費増大を唱える向きが多い。しかし、肥満傾向が増大した過去十数年間の一人当たりの砂糖消費量は増大していないという事実などを基に、砂糖=肥満という思い込みをなくすための研究成果の紹介を行っている。
(3) エンドユーザーとの連携
 砂糖協会ではソフトドリンク協会および製菓協会との間で、最低毎年1回の会合(砂糖協会はソフトドリンク協会の会員でもある)の機会を設けており、大口ユーザーとの意思疎通を図り、良好な関係を築くことに努めている。また、砂糖をソフトドリンクに用いている清涼飲料製造者への直接的な働きかけにより、media spokespersonとしての役割を果たすよう宣伝依頼を行っている。

 なお、後日、砂糖協会のブリスコ会長に協会の財政事情について確認したところ、以下のとおり。
●会員数:16(多くが(製糖業を営む)生産者協同組合、1民間企業、1政府所有の民間企業)
●年間会費合計:約750万ドル
 米国の砂糖業界の総販売額40〜50億ドルからすると非常に微々たるもの(ブリスコ会長の弁)
(内訳)
・通常予算:約200万ドル
・砂糖振興プログラム:350万ドル
・スプレンダに対抗するための法的活動および宣伝活動:150万〜200万ドル

 砂糖協会では、消費者の健康志向、天然食品志向に着眼し、人工甘味料との差別化を図るために、本当の砂糖は天然食品であることを広く訴えている。また、砂糖一さじ当たりのカロリーはたったの15カロリーであることを示し、肥満の主犯とされている汚名返上のための戦略を展開中である。さらに、次の目標として、「自然(natural)」の定義を表示として採用するよう、FADに陳情することを検討中である。




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まとめ

 最後に、今後の米国とEUの砂糖をめぐる課題を整理すると、次のとおりである。

1.米国
 NAFTA、DR−CAFTAに続き、現在進行中である21カ国の砂糖輸出国とのFTA交渉、あるいは南北アメリカ全域を包含する自由貿易協定である米州自由貿易圏(FTAA)交渉(特にブラジルが脅威)の進展等により、砂糖を完全例外するオプションを採ることが相当困難な状況になっていることに鑑み、今後ますます米国への砂糖のアクセスは増加すると予想される。
 米国側が最も期待する貿易交渉の場であるWTOにおいても、関税の一層の削減、TRQの拡大などを余儀なくされる可能性がある。包括エネルギー法案によるエタノール振興により砂糖業界がどれくらいメリットを享受できるか疑問であり、また、財政難の中で、しかもno cost路線を踏襲してきた砂糖セクターに対して「緑の政策」を導入することも相当な困難を伴うと推察される。
 ASAは、次期農業法の検討に向けて、従来の販売割当を基本とするno cost政策の必要性を主張しているが、上述の状況からするとno costによる需給管理が行えるかどうか疑問を禁じえない。

2.EU
 EU委員会作成の砂糖政策改革案が、果たして加盟国の了解を得られるかどうかという問題がある。特に多くの生産枠を割り当てられているドイツ、フランス、イタリアなどの強い反発が予想される。
 改革案がそのまま実施されれば、製糖工場の減少、途上国からの輸入増、輸出減による国際市場の喪失など、EU域内の砂糖産業に大幅な構造改革を促すこととなり、国際需給にも大きな影響を与える。試算によれば、EUは約500万トンの市場を失うことになり、ブラジル側はその約6割の市場を奪うことに自信をみせている。
 同時に、参考価格の大幅な削減により、特恵枠によって大きな恩恵を受けてきたACP諸国にも打撃を受けることになり、これら諸国からも反発が予想される。
 EU委員会としては、改革案について11月までに加盟国の大筋合意を得て、12月の香港でのWTO閣僚会議に臨みたいとしているところだが、加盟国の強い反発が予想される中、合意までには多くの困難に直面すると考える。




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