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南アフリカの砂糖産業の概要

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2006年1月]

調査情報部
国際情報審査役


はじめに
生産状況
砂糖制度
砂糖産業の現状

 南アフリカは、世界有数の砂糖生産国および輸出国であり、年間200万トンから300万トンを生産し、その半分程度を輸出し、アフリカでは生産量、輸出量ともに他を引き離して最も多い。また、南アフリカでは、業界が定め、政府の認可を受けた法制度によって、砂糖産業の規制が図られ、南アフリカ砂糖協会(SASA)の主導の下、すべての業界関係者が、砂糖産業協定によって法的に、共通の制度的枠組みに拘束されている。
 このような南アフリカの砂糖産業の概要について、英国の調査会社LMC社からの報告をもとに、とりまとめたので紹介する。 


はじめに

 南アフリカのさとうきびは、Kwa-Zulu Natal州とMpumalanga州(旧Eastern Transvaal州)の両州で栽培されている。その約80%がKwa-Zulu Natal州で生産されているが、ここ数年、北寄りのMpumalanga州での栽培面積の増加が著しい。同州では、全さとうきびの栽培を、かんがいが完全に整備された土地で行っている。一方、Kwa-Zulu Natal州で生産の主流をなしているのは、高地に位置する中部地方と、スワジランドと国境を接する北部沿岸からダーバンの南にあたる南部沿岸にかけて広がる沿岸地域の2ヵ所である。
 表1は、過去15年間の砂糖の生産量と消費量及び輸出量の推移を示したものである。生産量については、1990年代の初めに干ばつの影響を被ったが、1998年以降になるとほぼ毎年、250万トンを超え、干ばつ前の水準にまで回復した。しかし、2001/02年度と2004/05年度の収穫が雨不足の影響を受けるなど、生産量が天候の変化に左右される状況に変わりはない。最新の予測によると、2005/06年度の生産量は270万トン前後に再び増加する可能性が高いと思われる。

表1 砂糖の生産量と消費量、輸出量の推移


 南アフリカの砂糖産業が輸出依存型であるということは、国際市場の動向に大きく左右されることを意味し、このところのランド(南アフリカの通貨)高に伴う(現地通貨での)輸出収益の減少に、砂糖の国際価格の低迷が重なり、同産業は厳しい状況にさらされている。このような状況の中、同国の主要な砂糖会社、Illovo Sugar社とTongaat-Hulett Sugar社の2社は、この1、2年の間に、自社の精糖能力の合理化を視野に入れていたようである。


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生産状況

 国内の需給バランス
 南アフリカは、2005/6年度現在、砂糖生産では世界で第9位、粗糖の輸出では第6位となっている。我が国も、タイ、オーストラリアに次いで、南アフリカから多くの粗糖を輸入している。

表2 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)


 南アフリカの砂糖の生産量は、表2の示すとおり、この6年間、2000/01年度の約293万トンをピークに、240万トンから290万トンの間で推移している。このようなばらつきを生む最大の要因は、先に述べたように天候の変動であり、さとうきびは生産の規模、品質共に、この変動の影響を受けてきた。
 また、南アフリカは、ここ数年間、総生産量の50%前後を輸出している。輸出増加の一因としては、スワジランドからの砂糖の輸入があげられる。これは、南部アフリカ関税同盟(SACU)注1)の加盟国から輸入する砂糖は、南アフリカのミニマム・アクセスの一部とみなされること、スワジランドからの砂糖は半加工製品として輸入されるため、関税が課せられないことから、輸出に回される国産砂糖の比率が高まったことによると思われる。
 注1)SACUの加盟国は、南アフリカとボツワナ、レソト、ナミビア、スワジランド。また、スワジランドは、南アフリカを除きSACU加盟国唯一の砂糖生産国である。

砂糖の生産量及び国内消費の実績
 表3は、1999/00年度から2004/05年度における砂糖の生産量の内訳を示しており、このうち国内向けに生産される砂糖のほとんどは、International Commission for Uniform Methods of Sugar Analysis(ICUMSA:国際砂糖分析法統一委員会)基準の色価が高品質の精製糖(ICUMSA値45)を占め、輸出用の白糖と合わせると、全体の60%から70%にも上る。
 一方、輸出される砂糖の大部分は、粗糖であり、ここ数年、約80〜130万トンの間で推移しており、同国は世界でも主要な粗糖輸出国の一つとなっている。南アフリカの粗糖は、糖度が平均で99.4度前後と高く、輸出先の精糖業者の間で人気が高いと言われている。また、粗糖に分類されている砂糖のうち約16万トンは、国内で直接消費されているブラウンシュガーであり、それ以外が粗糖で、すべて輸出用となっている。
 国内消費については、表4のとおり、家庭用消費は、過去5年間にわたって全体の約55%を占めており、最大のエンドユーザーである。実需者向けは、飲料が単独で実需者向けの約40%を占めて最も多く、これに菓子類と果実・食品の順となっている。

表3 砂糖生産量の内訳の推移
(単位:1,000トン、粗糖換算)


表4 砂糖消費内訳の推移
(単位:1,000トン、粗糖換算)


さとうきびの生産状況
 さとうきびの生産状況は、表5のとおりである。南アフリカでは、さとうきびの生産効率が割りと高いが、栽培地の緯度が南寄りであるため、単収が1ha当たり70トン前後で、さほど多くない。また、さとうきびの生産額が、農業粗生産額に占める割合は、ここ数年7%から8%ほどでほぼ落ち着いて推移している。

表5 さとうきび生産状況の推移


 次に、表6は、南アフリカのさとうきびの主要栽培地域であるKwa-Zulu Natal州(対象は、ズールーランドと北部沿岸、南部沿岸、中部の4つの地域)と北部かんがい地帯(対象は、Mpumalanga州とスワジランドの真南に位置する地域)および国内全体の1993/94〜2003/04年度のショ糖の歩留まりの推移を示している。この表からは、北部灌漑地帯のショ糖の歩留まりが際立って高いことが分かり、同地帯の過去5年間の歩留まりが年間平均で11トンを超えるのに対して、Kwa-Zulu Natal州のこの数字は8トン前後にとどまっている。このような格差が生じた主な要因としては、気象条件の違いが挙げられる。

表6 ショ糖の歩留まりの推移


 また、Mpumalanga州は、北寄りに位置しているため気温が高く、かんがいが整備されていることもあって、さとうきびの単収がずっと高く、これとは対照的に、Kwa-Zulu Natal州は気温が低い上に、地形的にも恵まれず、さとうきびの栽培に理想的な地域とは言えない。
 しかし、その乾燥した気候と温暖の差の大きさによって、Kwa-Zulu Natal州が、ショ糖の平均含有量で、北部かんがい地域を上回ることは十分に可能であると思われるが、実際に上回った年はほとんどない。この背景には、同地域が雨水に頼った栽培をしていることに加え、メイガ科の害虫eldana borerの駆除を進めている影響がある。この害虫対策を行っているため、収穫までの平均生育日数が短くなり、さとうきびのショ糖含有率の低下を招いていると思われる。
 この10年間で、ショ糖の歩留まりはある程度の改善を見せているが、改善幅が最も大きいのは北部かんがい地帯である(表6を参照)。これは、2000/01年度に、回収可能数値(RV)を基に算出する支払い制度が新たに導入されたことによる。RVとは、さとうきびから作ることができる砂糖と糖蜜の量を表す尺度であり、この新しい支払い制度は、奨励体制の充実を図り、栽培者ひとり一人のやる気を高めて、納入されるさとうきびの品質の向上を促す狙いがある。この制度変更の成否を判断するのは時期尚早であるが、今後、さとうきびの品質の向上、そして、それにともなうショ糖の歩留まりの増加につながるのはまず間違いないと思われる。

製糖産業の生産状況
 表7は、Kwa-Zulu Natal州と北部かんがい地帯における1999/00年度〜2004/05年度の製糖工場の生産実績の推移を示している。

表7 製糖工場の生産実績の推移


表8 1工場当り産糖量の推移


 2004/05年度には、Entumeni工場が閉鎖されたため、南アフリカで操業している工場は現在14ヵ所となった。この表でもわかるように、南アフリカの砂糖産業が持つ強みの一つに、工場の操業期間が、年間250日前後と非常に長いことがあげられる。このため、設備稼働率が高くなり、産糖量1トン当たりの固定費を低くすることができる。
 さらに、工場の処理能力は、平均で、1日当たりさとうきび約7,000トンとなっている。しかし、この数字はあくまでも平均であり、中部にあるUnion Cooperative工場は最も規模が小さく、4,000トン未満の処理能力に対し、Flexiton工場とMaidstone工場には1万トンを超える処理能力がある。このように、工場規模に大きなばらつきが見られる。
 また、工場の操業期間も、北部かんがい地帯とKwa-Zulu Natal州とでは異なる。北部かんがい地帯では乾燥した気候であるため、操業期間が長い。表8に示すとおり、同地帯は、処理能力をより有効に活用し、年間の産糖量がKwa-Zulu Natal州よりも多い。ただし、これには、同地帯にある工場の平均規模が大きいことが反映しているといった側面もあるように思われる。
 次に、工場のショ糖回収率は、圧搾部門の抽出状況(南アフリカでは、この作業を、主に浸出機〈diffuser:さとうきびのショ糖を温水で抽出する機械〉で行っている)と、煎糖部門(boiling house)での回収状況によって決まる。抽出率は、現在、平均で98%に近い。煎糖部門で回収されるのは、平均88%から89%程度であることから、全体の回収率は86%から87%ほどとみられる。
 ところで、年間およそ14万5,000トンの生産能力を持つ新工場をMkzuiに建設する計画がある。このプロジェクトは、政府の土地再配分プログラムの一環で、小規模農家が耕作するさとうきび栽培地1万5,000haの新規開発も行う予定である。しかし、最近のランド高で砂糖産業が苦境に立たされる中、このプロジェクトがいつ着手されるのか、あるいは、そもそも着手できるのかどうかも不透明な状況となっている。

その他の甘味料
 南アフリカでは、トウモロコシの栽培が盛んであるにもかかわらず、異性化糖(HFS)は生産も消費もされていない。しかし、代替甘味料は、比較的少ないとはいえ、ある程度消費されている。表9は、過去5年間における南アフリカの代替甘味料消費量の内訳を示している。主に消費されているのはサッカリン(用途は飲料および食品)とチクロ、アスパルテームの3種類である。


表9 甘味料消費の推移
(単位:1,000トン、白糖換算)




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砂糖制度

 砂糖制度の特徴
 南アフリカの砂糖産業では、業界が定め、政府の認可を受けた法制度によって、規制が図られており、南アフリカ砂糖協会(SASA)の主導のもと、すべての業界関係者が、砂糖産業協定によって法的に、共通の制度的枠組みに拘束されている。南アフリカ砂糖協会の役割は、時代と共に変化しているものの、その主な役割は次のとおりである。
(1)国内市場で必要な砂糖の数量を設定すること
(2)業界を代表して生産余剰分を輸出市場に回すこと
(3)砂糖と糖蜜の販売に伴う純利益を栽培農家と製糖工場の間で分配すること
(4)さとうきびの価格を設定すること
 また、南アフリカは、1998年になるまで、さとうきびと砂糖の生産は割当制度によって規制されていた。この制度は、砂糖を価格水準が高い国内市場向けおよび補助金付きの輸出市場向け(A割当)と、国際市場向け(B割当)に分類する仕組みで、生産量を各砂糖会社に割り当てることで、国内市場への砂糖の供給に伴う利益を1社だけが過度に受けないようにしていた。
 ところが、市場の規制緩和に向けた取り組みの一環として、この割当制度が廃止され、その代わりにさとうきびと砂糖の統一価格制度が導入された。割当制度では、割当を超えて生産された砂糖はすべて第2割当価格で販売されていた。しかし、新しい制度の実施によって、すべての砂糖に、国内市場および特恵市場、国際市場の平均価格が適用されるようになった。このように生産に対する管理が行われなくなった現在、さとうきび栽培農家と加工業者の間では、割当価格制度が実施されていた当時を上回る水準に生産を拡大させる機運が高まっている。また、土地区分による納入の規制が撤廃され、さとうきび栽培農家はさとうきびを納入する工場を自由に選ぶことができることとなっている。

国内価格支持
 現在、南アフリカでは、法定価格や支持価格の設定、介入買上など、政府によるさとうきびおよび砂糖の国内価格の直接的な支持策は講じられていない。しかし、表10のように砂糖の国内価格は、輸入関税によって間接的に支持されており、常に国際市場価格よりも高いレベルに維持されている。また、単一の機関が販売業務を一手に担っているため、砂糖を国内市場向けと輸出向けに分けることで、砂糖業界全体が国内販売でこの関税保護の恩恵を受けることができる。このように、国内価格が国際価格よりも高い水準に維持されることで、同産業の利益分配協定に基づいて設定されるさとうきびの価格も間接的に支持されている。2001/02年度から2003/04年度の3年間にさとうきび栽培農家が受け取った平均価格は、さとうきび1トン当たり約20米ドルに相当する。南アフリカでは、近年、砂糖のおよそ60%が国内市場で販売されていることを考えると、国内価格の支持は砂糖産業にとって非常に重要であると言える。

表10 さとうきびと砂糖の平均価格(2001/02年度〜2003/04年度)
(単位:USドル/トン)
注:1.輸出価格はすべてFOBベース。
  2.国内の卸売価格は、ダーバンの指標市場価格で、税別。
    基準価格を基にしており、運賃、保険料、手数料、取扱手数料込み。
  3.国内の小売価格は税別。

市場アクセス
 表11表は、世界貿易機関(WTO)交渉の場で決定した南アフリカの関税に関連する取り決めの内容である。南アフリカは、多国間貿易交渉のウルグアイラウンドの合意内容に従って、ミニマム・アクセスを定め、これを段階的に増やしていったが、現在、この数量は最終段階の年間6万2,037トンとなっており、スワジランドを中心とするSACUの加盟国から輸入する砂糖は、南アフリカのミニマム・アクセスの一部とみなされ、輸入実績は、ミニマム・アクセスを大幅に上回っているのが現状である。

表11 現在の貿易政策に関する情報


 また、南アフリカは、アフリカ南部地域内の砂糖貿易の自由化に向けた動きを受けて、SACUおよび南部アフリカ開発共同体(SADC)注2)の加盟国から輸入される砂糖の数量の管理を図り、国内市場の混乱を防ぐことを目的とした貿易協定に加わった。
 これを受けて現在、国内の生産者は、次のようなSACU加盟国およびSADC加盟国からの輸入品との競争にさらされている。

 SACU加盟国
 スワジランドは、関税同盟の加盟国として、南アフリカ市場に無関税で輸出できるが、同国への輸出量を年間22万トンに制限することで南アフリカと合意した。この数量枠は、南アフリカの砂糖消費量と同じ増加率で引き上げることができる。

 SADC加盟国
 SADCの自由貿易協定に従い、SACU加盟国は、砂糖の生産量が消費量を上回るSADC加盟国に、SACU市場への段階的かつ非互恵的なアクセスを与えており、このアクセスの柱は、次の2点である。
 (1)砂糖の生産量が消費量を上回る各SADC加盟国には、SACU加盟国の砂糖消費量の年間増加幅に相当する割当量を案分した数量の輸出が認められる。初年度の関税割当(関税ゼロ)は4万5,000トンであった。
 (2)追加の関税割当(関税ゼロ)年間2万トンを、SACU加盟国以外で砂糖を過剰に生産しているSADC加盟国間で割り当てる。
 注2)SADCの加盟国は、SACUの全加同盟国に加え、アンゴラ、コンゴ、マラウイ、モーリシャス、モザンビーク、セイシェル、タンザニア、ザンビア、ジンバブエ。

関税システム
 現行の関税システムは、2000年9月に導入され、米ドル建ての基準価格を用いて、関税率を設定している。基準価格は、ロンドン白糖No.5の価格の長期平均(300米ドル)を、世界各国で保護貿易政策が採られ国際価格が下落した場合を見越して、上方に調整(+60米ドル)、かつ、輸入業者が運賃を負担することを考慮して下方に調整(−30米ドル)した結果、1トン当たり330米ドル(1ポンド当たり14.97セント)に固定されている。
 関税は、基準価格と指標価格(ロンドンNo.5の価格の20日移動平均)の差額で、現在の為替レートを適用してこれを南アフリカの通貨ランドに換算する。2005年7月現在の関税は、平均で1トン当たり36米ドル注3)前後であった。これは、従価税が12%であることを意味する。しかし、国際市場において砂糖がこれを下回る水準で取引されている時期には、関税はこれよりもずっと高いと思われる。
 注3)基準価格と20日平均を用いた、指標となる数字に過ぎない。ロンドン国際金融先物取引所(LIFFE)におけるNo.5の2005年7月までの20日間の平均価格は1ポンド当たり13.33米セント(1トン当たり294米ドル)であった。基準価格からこの1トン当たりの平均価格(米ドル)を差し引くと関税になる(330−294=36米ドル/1トン)。実際には、20日移動平均は、指標価格の±20米ドルの範囲で変動しても変更を加えられず、20日間連続してこの範囲を超えて変動した場合にだけ修正が行われる。

砂糖の販売制度
 1994年までSASAが国内外向けともすべての砂糖の販売を手がけていたが、1990年代終わりに実施された制度改革の一環として、国内販売に関しては、砂糖会社にそれまでよりもかなり自由が認められるようになった。2000年の砂糖産業協定では、精製糖とブラウンシュガー、高品質の砂糖の国内販売は、製糖工場が担うことになっている。これに加え、国内の販売価格も、以前のようにダーバンでの貨車渡し価格としてSASAが設定するのではなく、製糖工場と精製糖業者がドル建ての基準価格設定システムに基づき決めている。
 また、白糖の輸出も製糖工場が行っているため、SASAは現在、粗糖の輸出しか手がけていない。輸出用に精製される粗糖は、SASAが精製糖業者に販売する。その一方で、価格水準が高い国内市場と低い国際市場の割当を各会社に確実に(各々の産糖量に応じて)案分するという任務をSASAは引き続き負っている。
 この対応によって、1つの会社が圧倒的な国内市場の占有率を誇るといった事態や、国内会社間の競争で砂糖の国内価格が下落する恐れを回避できる。さとうきび栽培農家と製糖工場は、同産業に対するこうした関税保護の恩恵を受けている。

さとうきび栽培農家と製糖工場の関係
 南アフリカでは、砂糖と糖蜜の販売から得た純利益をさとうきび栽培農家と製糖工場で分配するシステムが採用されている。分配の対象となる純利益は、SASAが負担した借入金の利息と販売費用、管理費用を砂糖産業の総利益から差し引いて算出する。
 さとうきび栽培農家に対しては、最終製品(砂糖および糖蜜)の回収可能数値(RV)に基づき支払いが行われる。この支払いシステムは、ショ糖とショ糖以外に加え、繊維の含有率を踏まえていて、個々の栽培農家の意欲を高めてさとうきびの品質の向上を促す、より効果的な仕組みである。ここ数年間、栽培農家に分配される利益の比率は拡大し、全体の約63%に達しており、残りの37%を製糖工場が受け取っている。
 また、精製糖の国内販売に伴うプレミアムに関しては、固定の比率で利益が分配されている。この比率は1994年に、国内市場向け砂糖の精製コストを加味するために改正された。ただし、輸出向け砂糖の精製コストはその後も、輸出関連の費用として扱われていた。この精製コストは砂糖産業の総利益から差し引かれていたが、これも改正され、2000年4月1日から、輸出用に精製される粗糖の移転価格は精製糖業者が支払っている。移転価格とは、粗糖の国際価格(FOBベース)にプレミアムをプラスした金額で、世界の白糖プレミアム注4)に連動している。総移転価格は収入としてプールされ、通常の収入分配協定に従って、製糖工場と栽培農家で分配される。
 注4)プレミアムは、世界のプレミアムが1トン当たり50米ドル以下の時には、1トン当たり9米ドルに固定されているが、これ以上の水準になると、移転価格にさらにスーパープレミアムが加算され、白糖プレミアムに連動して上昇する。

砂糖政策の決定機関

 砂糖産業協定は、砂糖法で規定され、法的にすべての業界関係者を共通の制度的枠組みに拘束してはいるが、業界関係者の協力を必要としており、本質的には任意の協定である。この協定の調整ならびに運用を行うSASAは、南アフリカ・さとうきび生産者協会と南アフリカ砂糖生産者協会(South African Sugar Millers’Association)の代表者から構成されている。業界の利益のために定められたこの協定を順守することは業界関係者にとってプラスとなり、当然のことながら、今まで同協定は順守されてきた。このように砂糖産業は自主規制を基本としているが、砂糖政策の取り決めと監視は、通商産業省(DTI)を通じて南アフリカ政府が行っており、砂糖法も政府が管理・運営している。
 また、南アフリカ政府は、2001年2月、国内の砂糖市場で競争を高めることを目的に砂糖法を見直すと発表した。それ以降、なかなか進展が見られなかったが、2006年初めに施行される予定である。
 新法は、関税保護と輸出/国内市場の割当案分の2点を引き続き柱に据え、基本的に現行法と同じ内容になるものと思われる。その中で予想される大きな変更点は、国内市場への、いわゆるバーティカル・スライシング手法の導入である。この手法が採用されると、製糖工場は、国内販売に伴い実際に得た利益に基づき栽培農家への支払いを行うこともできるようになる。
 これに対して現行のシステムでは、毎月発表される、みなし価格を基に支払う金額が決められている。このようにシステムが変更された場合、短期的という条件に適っていれば、価格の下落分を栽培農家に転嫁できるようになるとみられる。こうした変更の狙いは、減収を余儀なくされた時に、製糖工場がその負担を栽培農家と分担できるようにすることである。


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砂糖産業の現状

 製糖産業および精製糖産業の構造
 表12で、2004/05年度の工場別の生産データをグループごとに示した。この表を見ると、製糖工場は全部で14ヵ所あり、そのほとんどが主要な3グループによって所有されていることが分かる。最大規模を誇るのはIllovo Sugar社注5)で、2004/05年度初め現在、7つの工場を所有し、その生産量は合わせて年間110万トンであるが、これは南アフリカ全体の約45%にあたる。Tongaat-Hulett Sugar社は2番目に大きく、4つの工場があり、同国全体の30%ほどの砂糖を生産している。同社は2003/04年度末まで5つの工場を操業していたが、2004/05年度になり(最も規模が小さい)Entumeni工場を閉鎖し、その分のさとうきびをAmatikuluにある工場に回している。
 Transvaal Suiker Beperkグループ(TSB)は、北東部にあるMpumulanga州に本拠を置いており、Union Co-operative はKwa-Zulu Natalの中部地域に位置する協同組合所有の工場である。
 先に述べたように、南アフリカのさとうきび工場は操業期間が長く、その恩恵を受けている。特に乾燥した気候の北部かんがい地帯にあるTSBが所有する工場と、Illovo社のPongola工場は、Kwa-Zulu Natalの工場よりも長期間操業する傾向にある。これら工場の2004/05年度の操業日数は240日から275日で、Tongaat-Hulett Sugar社の工場の215日から245日に比べて、かなり長い。
 南アフリカの製糖産業には、近隣国にある工場も所有し、アフリカ南部地域の砂糖産業との統合を強めているという興味深い特徴がある。Illovo Sugar社は現在、スワジランドとモザンビーク、タンザニア、マラウイにある製糖工場の株と土地を所有しており、Tongaat-Hulett Sugar社もスワジランドとジンバブエ、モザンビークに製糖工場や土地を持っている。
 注5)Illovo Sugar社のGledhow工場とUmfolozi工場は2004/05年度になってからBlack Economic Empowerment(BEE)グループに売却されたため、南アフリカにある同社の工場の総数は5ヵ所に減った。Gledhow、Umfolzi両工場に併設されていた精糖所も売却されている。
 南アフリカで操業する精製糖工場と、それを所有する会社、その2004/05年度の生産量を表13にまとめた。
 南アフリカには、現在、操業中の精製糖工場が6ヵ所あり、3つの会社がこれを所有している。精製糖産業でも主流をなしているのはIllovo Sugar社とTongaat-Hulett Sugar社で、この2社の精製糖の生産量を合わせると南アフリカ全体の80%を超える。Tongaat-Hulett Sugar社のダーバン工場を例外として、精製糖はすべて併設の精糖所で生産されている。Illovo Sugar 社が、所有する工場のうち4ヵ所に精糖所を併設している一方、TSBは自社のMalelane工場で砂糖の精製を行っている。こうした精糖産業の構造は、生産量に幾分変動があるものの、ここ数年間、ほとんど変わっていない。

表12 製糖会社の所有する工場および生産状況に関するデータ(2004/05年度)

注:2004/05年度の間に、Gledhow工場とUmfolozi工場はIllovoからBlack Economic Empowerment(BEE)グループに売却された。

表13 精製糖会社:所有する工場および生産状況に関するデータ(2003/04年度)

注:1.2004/05年度の間に、Gledhow工場とUmfolozi工場はIllovoからBlack Economic Empowerment(BEE)グループに売却された。


砂糖産業の現在の問題
 砂糖産業にこのところ影響を及ぼし、その影響力が今後も続くとみられる最も重要な問題の1つに、土地の再配分がある。南アフリカ政府は土地改革政策を推し進め、2015年までに全農地の30%を黒人農民の所有に移転することを目指している。リース契約による20%も加えられ、この目標値は先日、50%に引き上げられた。政府の目標達成を助けるべく、SASAもさとうきび栽培地の移転に力を注ぎ、すでに全体の25%を黒人農民の経営にすることに成功した。
 これに加え、昨年にはIllovo Sugar社の工場2ヵ所(GledhowとUmfolozi)がBlack Economic Empowerment(BEE)グループに売却された。所有拡大を望む政府の姿勢と、現生産業者の国内市場占有率の低下につながる、産業の規模拡大に対する業界の警戒感が今後軋轢を生む恐れがある。
 また、SACUの取り決めに従い、スワジランドから輸入される砂糖に南アフリカが関税をかけていないことが、引き続き両国の砂糖業界間の確執を招いている。両者は過去数ヵ月間、南アフリカに輸出できるスワジランド産砂糖の数量を巡って論争を繰り広げてきた。スワジランドは2004/05年度に自国の割当を6万トンもオーバーし、これが両者の対立を引き起こした。南アフリカの生産業者にとって国内市場がいかに重要であるかを考えると、スワジランドをはじめとするSADC加盟国に今後認められる同国への輸出数量の水準が、引き続きこれら業者の懸念材料になるものと思われる。
 国内市場で競争が激化する中、新砂糖法では、ブランディングとマーケティングへの投資の強化を製糖業者に促すことが最大の目的となるのは確実と言える。先に取り上げた国内市場のバーティカル・スライシングが、この強化を後押しすることが期待される。
 政府が近い将来、環境にやさしい代替燃料の使用を認める法律を制定することを見越して、一部の砂糖会社は砂糖を主原料とするエタノール製造への投資を検討している。エタノールの製造は、砂糖産業の収入源の多様化を助けるとみられる反面、砂糖を主原料とするエタノールが、石炭から作られるエタノールに対してどの程度の競争力を持つことができるのか疑問が残る。このため、化石燃料よりも、再生可能な資源を原料とするエタノールを優遇する法律の制定が、今後の動向を大きく左右すると思われる。


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