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EU砂糖制度改革案の内容とその影響について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2006年2月]

総括理事         和田 宗利
経理部資金課課長代理 真弓 正展
国際情報審査役補佐  平石 康久


1 これまでのEU砂糖政策の概要
2 EU砂糖制度改革の背景
3 EU砂糖制度改革案の内容
4 砂糖制度改革による各国への影響分析
5 各利害関係者の反応
6 今後のスケジュール
7 ISOセミナーにおいて報告された砂糖関連主要国の関係者による報告概要


 平成17年11月22〜23日にロンドンで開催されたISOセミナーに出席するとともに、11月24日にEUの農相理事会で合意されたEUの砂糖制度改革案について調査する機会を得たので、その概要について2月号ではEUの砂糖制度改革案の内容を、3月号では砂糖制度改革による各国への影響分析や、各利害関係者による反応、今後のスケジュールなどを報告する。なお、当機構のホームページでは既に全体版を掲載している。


1 これまでのEU砂糖政策の概要

 EUの現行の砂糖政策については下記のようなポイントを中心に運用されてきた。
● 介入制度:介入機関が申請の行われた砂糖について買い上げる義務を負っているが、その時の買入価格として介入価格が設定され、事実上の下限価格となっていた。現行では、白糖は631.9ユーロ/t、粗糖は523.7ユーロ/tである。ただし、介入措置が発動されたのは過去に1度だけであり、関税や生産数量のコントロールによって域内の市場価格が介入価格を割り込まないように設定されてきた。
● 生産割当制度:地域内消費量に基づき算出されるA割当と不作時及び生産性の向上を目的とするB割当とよばれる生産割当が設けられ、地域内の砂糖需要を超える分については輸出補助金をつけて輸出されているが、実際にはA、B割当についてはあまり意識されていない。生産割当数量以上に生産された砂糖はC糖と呼ばれ、翌年度の生産割当内の砂糖に繰り越される以外は、世界市場に廉価に輸出することによって、域内に砂糖が必要以上に供給されることがないように管理されてきた。またA、B割当には賦課金が課せられており、輸出払戻金に充てられているといわれる。
● ACP諸国からの砂糖の再輸出:ロメ条約やコトヌ条約のもと、ACP(アフリカ・カリブ海・太平洋)諸国と呼ばれるヨーロッパと歴史的に関係の深い国々などから、EU域内価格を基本とした高価格で砂糖を輸入し、輸出補助金をつけて世界市場に再輸出してきた。
(詳細は2005年2月号を参照)

 しかし、C糖についてはA及びB割当による間接的な補助金によって補助された輸出であるとされると同時に、ACP諸国からの砂糖の再輸出についても、WTOによって定められた補助金つき輸出の枠内に含めるべきものであるとして、2005年4月28日にWTO上級委員会よりWTO違反との判断が下された。これに従い2005年10月28日の調停者による発表により、2006年5月22日までに是正措置を取るよう求められているところである。

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2 EU砂糖制度改革の背景

1 上記に述べたようにC糖やACP諸国からの砂糖の再輸出について、WTO違反との判断が下されたこと。また、年間の補助金付きの輸出量がWTOにより制限されることから(金額で4億9910万ユーロ、数量で127万3500t)、現在生産割当を大きく超えて生産されている域内の砂糖生産を減少させることが必要である。
2 EBA(Everything But Arms)協定により開発途上国から無税による輸入が増加する見込みであること。
3 EUの拡大に伴い、従来の政策では対応できなくなっていること。(ポーランドなど加盟国の増加により生産過剰になる恐れ)。
4 砂糖の価格が世界価格と比較して3倍にも上っていること。



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3 EU砂糖制度改革案の内容

 1 目的
 EU委員会からの聞き取りによると、
 (1)WTO上級委員会におけるEU砂糖制度(C糖及びACP諸国からの砂糖の再輸出)に対する違反判決を受け、砂糖制度をWTOに適合させる必要性が生じたこと。
 (2)世界市場の3倍といわれる域内価格を是正するための市場原理の導入が必要であること。
 これらのことを背景として、今回の改革は、EU生産量約1900万t、輸入量約200万t、消費量約1600万t、輸出量約500万tという現在の需給状況の中で、生産量を減少させることによって輸出量を100万t以下に抑えることを目的とするものであった。また改革に当たっては関係者全てが痛みを伴うことが基本と述べている。

2 対象となる砂糖などの定義
 今回の砂糖制度改革の対象となる砂糖などについては表1のカテゴリーに分類されるものである。

表1 砂糖制度の対象となる砂糖及び関連品目

資料:Council of the European Union, Working Document, DS569/05, Brussels, 13 October 2005

3 EUの砂糖需給の見込み
 11月24日に合意された砂糖制度改革合意案が実行に移されたとき、EU域内での砂糖需給がどのように推移するかを民間の研究者が予測している。(表2)

表2 EU 25カ国の砂糖制度改革による今後の生産量及び輸入量の推計    単位:百万t

資料:Napier Brown Foods社 Tony Evans氏 “Summary of EU Sugar Regime Agreement”
注:数量は全て白糖換算の数字

 EU25カ国域内の生産量は2005/06年度の1870万tから2010/11年度の1290万tと580万tの減少が見込まれている。また後述するEBAスキームによるLDC諸国からの砂糖輸入の増大により砂糖の輸入量は190万tから310万tへ220万t増加すると予想されている。砂糖の補助金付き輸出は生産量の減少に伴い2008/09年度には消滅するとされている。なお、委員会案の段階(価格39%削減)でEU委員会が試算した数字では2012/13年度にEUの生産量は1220万tに減少するとされており、概ね類似した数字となっている。

4 価格
 介入制度は廃止され、代わりに参考価格(reference price)及び民間在庫システム(private storage system)が導入される(後述)。ただし、導入までには4年間の移行期間を設け、その間は参考価格の80%を介入価格とし、介入対象数量は60万t(白糖ベース)に制限される。
 参考価格は2006年度から4年間をかけて36%引き下げられるが、これについては、加盟国の反対意見を考慮して、当初案の39%削減より若干削減幅を小幅にするとともに、1年目から2年目にかけては価格削減を行わず、削減をより移行期間後半にシフトさせた形で行うこととなった。ビート生産者最低価格も同期間に削減される。(表3)

表3 各種行政価格の今後の動向                    単位:ユーロ/t、%

資料:Council of the European Union, Agriorg81 Agrifin94 WTO207 14982/05, Brussels, 30 November 2005
   Commission of the European Communities “Proposal for a Council Regulation on the common organization of
the markets in the sugar sector” COM (2005) 263 final, Brussels, 22.6.2005より作成


 また、これらの価格削減に対する補償措置として、生産者に対して価格削減の64.2%相当額が直接補助により補填される。
 この他、砂糖の市場価格を把握するため、委員会は白糖の製造や砂糖貿易に携わっている事業者に対して情報提供を求めることになる。

5 生産割当
1)砂糖の生産割当
 現在のA生産割当とB生産割当は統合され、単一の生産割当となる。(表4)

表4 2005/06年の基本の生産割当 単位:t 表5 生産割当追加分 単位:t

資料:Council of the European Union, “Working Document”,
DS569/05, Brussels, 13 October 2005

資料:Council of the European Union, “Working Document”,
DS569/05, Brussels, 13 October 2005より作成

 また現在C糖を生産している加盟国に対し、追加の100万tの生産が割り当てられことになっている。これに加えてギリシャ、スペイン、アイルランド、イタリア、ラトビア、ハンガリー、ポルトガル、スロベニア、スロバキア、フィンランドの各国にそれぞれ1万t(合計10万t)の生産割当が上積みされる(表5)。これらの追加の生産割当は、後述の再構築スキームの買い上げ対象(例えば2006/07年度で730ユーロ/t)となるもので1回限りの補助の対象とされている。なお、この生産割当にも賦課金は課せられる。
 強制的な生産割当の削減義務はない。市場の需給バランスは再構築スキームの対象となる生産割当の減少及び各種市場管理措置によって達成される予定であるが、再構築期間を過ぎた後、更に生産量の削減が必要であれば、各加盟国の所有している生産割当の量に応じて生産割当数量の削減が行われるとされている。
 なお生産割当を超えて生産された砂糖については高額の賦課金が課せられる。
2)イソグルコース及びイヌリンの生産割当
 イソグルコースとイヌリンは砂糖市場と密接な関係があるため、これら品目についても価格の引き下げが行われることになる。また規模拡大によって生産効率を高めることが必要なことから、2006年度から3年間で毎年10万tの生産割当が拡大されることになる。更にイタリア6万t、リトアニア8,000t、スウェーデン3万5000tが1回限りの支払のために割り当てられる。この生産割当も、期限までに再構築基金への申請を行わなければ、生産割当とみなされなくなる。なお、これらの生産割当にも賦課金が課せられる。

6 再構築賦課金及び生産賦課金
 従来の生産者賦課金は廃止される。その代わりに、生産者への直接支払いへ充当される生産賦課金が導入されるとともに、再構築資金及び多様化援助の財源に充てるための再構築賦課金が新たに追加される。生産賦課金は2007/08年より賦課され、砂糖は生産割当1tあたり12ユーロ、イソグルコースおよびイヌリンは生産割当1tあたり6ユーロとなる。このうち半分を製糖企業もしくはイヌリン等の製造企業は原料生産者に賦課することができる。再構築賦課金は2006/07年より3年間の期間限定で導入され、金額については表6の通りである。

表6 生産賦課金及び再構築賦課金の額   単位:ユーロ/t

資料:Council of the European Union, “Working Document”, DS569/05, Brussels, 13 October 2005
   Council of European Union “Press Release 2692nd Council Meeting” 14178/05 (Press290), 22―24 November, 2005より作成

7 市場管理措置
1)持ち越しメカニズム(carry forward mechanism)
 従来の制度と同じように、生産割当を超えて生産された砂糖については、翌年度の生産割当に繰り入れられる。
2)隔離メカニズム(withdrawal mech-anism)
 EU委員会は市場年度内で砂糖、イソグルコース、イヌリンの生産割当数量のうち一定の数量を、市場から隔離する権利を有する。輸入された粗糖についても同比率で隔離することになる。各事業主体は、自己負担により隔離期間中、一定の比率の数量を貯蔵しなければならない。
 EU委員会は、翌年度の生産割当を設定する際には、隔離された数量が在庫として残っていた場合、翌年の砂糖生産分として計算することとなる。ただし、市場動向によっては隔離された砂糖は同年度中に再放出もしくは、翌年度以降に超過砂糖として産業用砂糖などへ転用されることもある。
3)民間貯蔵システム(private storage)
 2)で述べたシステムの他、更に市場から砂糖を隔離することが必要となった場合に備え、民間貯蔵システムが導入される。このシステムは、委員会により市場価格が参考価格を下回ったと認められた時に発動されるが、2)の隔離メカニズムによって隔離された数量は、この民間貯蔵システムの対象数量にならないとされている。貯蔵にかかる経費についてはEUより補助される。

8 産業用砂糖への利用
 現行制度と同じようにラム酒やエタノール、イースト生産等に利用される砂糖生産については引き続き生産割当数量から除外されることになるが、これに加えて、化学・薬品用途に利用される砂糖についても生産割当数量から除外されることになった。
 こういった非食用ビート生産は45ユーロ/haの休耕補助金(set-aside payments)の対象となる。
 なお、化学・薬品産業がその原料となるEU域内産の砂糖を国際価格で調達できなかった場合に備えて、輸入糖に対する関税相当分の払い戻し制度も維持される。
 更に、化学・薬品産業が砂糖の確保に困難をきたした場合は、特別の輸入割当制度を設けることも想定されている。

9 国際条約に関連するとりきめ
 伝統的供給割当メカニズム(Traditional Supply Need mechanism)により、特恵国からの粗糖を輸入し、精製する権利については、フルタイム操業の精糖会社が引き続き保持することになる。また、精糖会社への粗糖の供給を保障するため、補足的な輸入を行う可能性が認められている。砂糖プロトコルに関連した国については、2007年までは最低輸入価格を維持し、それ以降は将来締結されるEPA条約によるものとする。

10 再構築スキーム及び地域多様化
 2006/07年度から4年間で実施される再構築スキーム(voluntary restructuring scheme)が創設される。
 目的は競争力のない砂糖製造業者の撤退を促進すること、工場の閉鎖にともなう社会・環境面の影響を緩和すること、影響を大きく受ける地域に資金を提供することである。再構築スキームを利用するための要件は加盟国によって定められるとされている。
 再構築援助の対象者は一義的には砂糖生産から撤退もしくは砂糖生産を減少させる製糖企業であるが、当初案より変更されて、再構築基金の少なくとも10%の金額は、ビート生産に特化した設備投資を補償する意味で、ビート生産者や機械のオペレーターのために留保されることとなった。
 これら再構築援助及び後述の多様化援助の財源は、生産割当に対する賦課金(生産賦課金)によってまかなわれるとされている。再構築スキームの生産賦課金の単価は、価格削減のスケジュールにあわせて、2年目に増加するように修正された。(表6を参照)
 再構築スキームの補助金の単価は、表7の通り砂糖生産から完全撤退する場合の他、部分撤退に対する補償も認められたことから3つのカテゴリーに分かれている。

表7 再構築援助及び多様化援助の単価    単位:ユーロ/t

注:部分撤退1:部分的な砂糖製造能力の削減。再構築援助の単価の75%である。
  部分撤退2:粗糖の精製を例外として、砂糖生産のため、設備を継続的に使用する可能性がある場合の砂糖割当の部分的放棄。再構
築援助の単価は35%
資料:Council of the European Union, “Interinstitutional Files 0118 ― 120/2005 (CNS)” Agriorg81 Agrifin94 WTO207 14982/05, Brussels,
30 November 2005より作成



 再構築スキームに加えさらに追加的な措置として、生産割当が削減される程度によって、その地域ごとに補助が上乗せされることになった。
 この上乗せ部分は、多様化援助(regional diversification)と呼ばれ、その基本額は2006/07年度から始まる4年間において、再構築スキームによる援助額の15%相当額となり、その資金の利用のための条件は各加盟国によって定められる。更に、各地域の生産割当数量の削減状況によって額の調整が行われ、生産割当数量の削減がその地域で50%未満の場合は15%相当額であるが、生産割当数量を更に減少させる地域に対しては最大30%相当額の上乗せが行われることとされている。
 多様化援助相当分は再構築スキームの上乗せもしくはビート生産から撤退する生産者への補償にも利用できる。
 再構築の援助を申請するには、再構築計画の承認を受けなければならない。再構築計画は、ビート生産者の数(必要なら機械のオペレータの数)、工場の閉鎖のビジネスプラン、必要であれば関連投資額の予測、再教育・再雇用・早期退職の見通しを含めた社会的プラン、環境関連プラン、先に述べた分野についてのそれぞれのコストや投資額を分析した財政プランを含めて作成しなければならない。

11 その他期間限定の援助
1)フルタイム精糖業者への援助
 2009/10年度を含む移行期間中に総額1億5千万ユーロの援助がフルタイム精糖業者に対して、EBA諸国から供給される粗糖の輸入増加に対応するため行われる。この援助は前回の報告(平成17年2月号参照)によれば、粗糖とビート糖では原料経費に相当の開きがあるため行われているものである。精糖業者間での配分は加盟国によって策定されたビジネスプランによって決定されることになっている。
2)大幅な生産割当の減少を行う加盟国内で生産を続けるビート農家に対する品目別支援
 生産割当を50%以上減少させる加盟国に対して行われる。この援助は2006/07年度から2013/14年度に終わる8年間の内、連続する5年間に限定してEAGGFの一部門であるEAGFより資金が提供される。この援助は価格削減による収入の減少の30%相当額が、直接支払いによる補償分に上乗せして支払われることになる。また、上記に記述した期間内かつ承認された予算の範囲内であれば、独自に加盟国が資金を提供することができる。イタリアの場合で言えば最大11ユーロ/tが承認されている。
3)派生価格に対する補償
 2006/07年度に始まる4年間の移行期間の中で、フィンランド、アイルランド、ポルトガル、スペイン、英国は、現在の派生価格の60%相当額が上乗せされる。

12 輸出に関しての制度
 現在WTO体制の下で、一定の数量及び金額以下での砂糖の補助金付き輸出は認められている。制限枠は金額で4億9910万ユーロ、数量で127万3500tとされている。
 EU委員会での聞き取り及びLMC社によると、補助金付きの輸出を行う際の流れとしては、まず、申請者は加盟国の介入機関を通じて、EU委員会内の砂糖管理委員会が毎週木曜日に行っている入札に対して申請を行うこととから始まる。輸出者はビート糖製造企業の場合もあるが、一般的には商社であることが多いといわれている。加盟国の介入機関は申請を取りまとめ、個々の申請者については匿名にした上で砂糖管理委員会に申請を行う。各国の介入機関の役割はあくまで取次役であり、個々の申請の調整を行うようなことはしないとされている。申請を受け付けた管理委員会は入札を行い、それを加盟国に提示することによって最終的な数量の決定が行われる。 なお、A国の貿易会社がB国で生産された砂糖を買い付けて輸出することは可能であり、その場合、輸出された砂糖は生産国であるB国の生産割当にカウントされることになる。
 この他、砂糖を利用した加工品に対する輸出補助金も継続される。
 ただし2005年12月のWTOの香港閣僚会議において、EUは2013年までの農産物の輸出補助金の撤廃に合意しており、砂糖の補助金付き輸出は廃止されることとなる。

13 EBA(Everything but Arms)による輸入自由化
 「武器以外は全て」の頭文字をとってEBAスキーム呼ばれている。
 このスキームは、LDCと呼ばれる49の後発開発途上国に対して、EU市場への無税かつ輸入割当なしのアクセスを認めるものである。現在は砂糖など一部のセンシティブな品目は除外されているが、砂糖については2006年より輸入関税割当数量を設定及び関税削減を開始するとともに、2009年には完全に自由化されることとなっている。
 また、移行期間中に砂糖輸入が急増(前年比25%以上増)した場合、輸入を制限できる措置が盛り込まれている。
 また、EBAにより輸入される砂糖には、原産地規制が適用されるとされている。
 将来はこのスキームによる砂糖輸入の増大が予想されているが、例えばLDC諸国が自国で使う砂糖を全てブラジル産等の安い砂糖によって充当し、国内生産した砂糖を全てEUに向けて輸出(スワップ貿易あるいは三角貿易と呼ばれている)するといったモラルハザードをどのように防ぐかといった課題が残されている。
 この件については、過去に前例があり、EU議会農業委員会の調査委員会責任者であるFruteau氏の講演及びLMC社によると、2001年に西バルカン諸国(アルバニア、ボスニア、コソボ、クロアチア、マケドニア、セルビア、モンテネグロ)がEUの砂糖市場に対して特恵的なアクセス(輸入割当数量かつ関税なし)が認められた際の混乱がその事例とされている。
 2002年度までは輸出量がなかったこの中の3カ国から大幅な砂糖の輸出が行われ、さらに2003年の第一四半期にはセルビアが輸出を劇的に増加させた。
 これに対し原産地規制(rules of origin)の違反が生じたとされたことから、2003年5月にセルビアからの特恵的アクセスを利用した砂糖の輸入は停止されるとともに、西バルカン諸国からの砂糖輸入全般についても、2006年に見直しが行われるまで特恵的なアクセスは停止されることになった。

14 ACP諸国への補償
 2006年度に4000万ユーロの「多角化援助資金」が提供される。その後は資金の利用状況を見ながら予算が増減される見込みである。具体的には開発人権委員のLouis Michelの管轄下で、ACP諸国が多角化についての計画を作成し、EUに認められればEUの事業として実行される。(なお、EU委員会農業総局ではこれを「補償」とは言っていない)


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4 砂糖制度改革による各国への影響分析

 EU委員会が2005年6月22日付に発表した作業文書によって、当初改革案(価格削減39%案)が行われた場合の、各国の生産等に与える影響が予想されている。この文書の中でビート及び砂糖の生産のための損益分岐点も計算されている。ただしこの中には、将来の消費動向や、他作物の価格等が分析にあたっての諸条件に含まれており、それら条件の変化によっては違った結果になることもあり注意が必要である。

1 ビート生産に対する影響
 この分析の中で各国の個別の事情も説明されており、例えばフィンランドは(ビートの低単収のための)穀類や油糧作物と競合、ギリシャ、スペイン、イタリアの一部は収益の高いメイズと競合が生じる一方、ベルギー・オランダは投入資材の効率的な利用、フランスは高い単収により競争力を維持するとされている。

表8 加盟国における農場段階のビート損益分岐価格の推計

資料:Commission of the European Communities “Commission Staff Working Document, Update of impact assessment” SEC (2003)
1022, COM (2005) 263 Final, Brussels, 22.6.2005


2 砂糖生産に対する影響
 同じく生産割当内で生産される砂糖の損益分岐価格も分析されている。
 この表によると、価格が550ユーロ/tを割り込むとイタリア南部及び北部の生産が脅かされ、500ユーロ/tを下回るとアイルランド、ポルトガル、イタリア中部、ギリシャ、スペイン南部(一部)で砂糖の生産による利益が薄くなり、生産が減少する。そして400ユーロ/tに近づくとスペイン北部、デンマークも利益が出なくなると同時に他の地方(オランダの一部、南部スペイン、ドイツの一部地域)でも生産が減少するとされている。
 これらのことからレポート内では、ギリシャ、アイルランド、イタリア、ポルトガルは砂糖の生産が劇的に減少もしくは完全に撤退することになる一方、オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、オランダ、ポーランド、スウェーデン、英国への影響は限定的であると予想している。
 以上の分析から、レポートは影響を強く受ける4カ国の生産割当が放棄されると同時に、その他加盟国あるいは新規加盟国の生産量が減少することによって400万tの砂糖生産が減少すると見込んでいる。


表9 加盟国・地方別砂糖生産の損益分岐価格と砂糖の生産量   単位:千t

資料:Commission of the European Communities “Commission Staff Working Document, Update of impact assessment” SEC (2003)
1022, COM (2005) 2s63 Final, Brussels, 22.6.2005




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5 各利害関係者の反応

1 EU議会の反応
 EU議会農業委員会の調査委員会責任者であるFruteau氏はISOセミナーにおいて次のような寄稿を行っている。
 今回の改革については避けられないという認識であり、新しいEUの共通農業政策の原則に砂糖制度を適合させるとともに、WTOとの整合性をとらなければならないことは理解している。しかし同時に、発展途上国との約束を果たすとともに、効率だけで図ることのできない社会的基準を守らなければならないとも考えている。今回の改革により2014年度まで政策変更がされないという保障がされた事実は、生産者による将来設計を容易にすることから歓迎している。
 しかし、現在提案されている砂糖の価格レベルについては、ヨーロッパの砂糖産業関係者の生存を脅かすほどの水準である。また西バルカン諸国の加入の際に起こったようなEBA制度の悪用も心配される。これらのことから下記のような4つの提案を行いたい。
1)長期にわたる穏やかな価格引下げを行うこと
 特に価格については25%の価格削減によってWTOで定められた輸出数量を守ることができるという複数の経済研究がある。(またEUの合意案が発表された後の11/30付けインタビューでは、同氏は30%を越えない価格削減が望ましいとする発言を行っている)
2)統制の取れた市場にするための規制を設けること
 介入制度を維持しつつ、固定的な介入価格を変動的な基準にする。また、供給のコントロールを図るため、EBAからの輸入の完全自由化に当たっては、6年以上の移行期間をもうけるほか、セーフガードの制度を導入する。完全自由化の後は不正貿易の防止(原産地の偽装)に力を注ぐべきであると考えている。
3)影響緩和措置を講じること
 深刻な影響を受ける人々への緩和策が必要。例えば、再構築資金のうち一定割合をビート生産者のために利用するなどである。
4)代替需要を創出すること
 エタノール生産を始めとする代替需要向け生産への援助を求めたい。具体的にはエネルギー作物への補助、エタノール工場に対して再構築事業が利用できるような事前対策的な制度を期待したい。例えば最大2200haまでという限定つきで80ユーロ/haのエネルギー作物への援助を提案したい。

  注:EU議会の最新の反応については、国際情報ウォッチ内の海外トピック平成18年1月分にある「EU委員会の砂糖制度改革案に対するEU議会の修正案(EU)」(国際情報審査役 平成18年1月25日発)を参照ください。

2 生産者の反応
 加盟国により反応が分かれており、各団体のプレスリリースによれば、例えば競争力があるとされる英国の農民連合(Farmersユ union)は今回の合意案について、生産者にとって価格削減は厳しいものであるにしろ、削減幅の緩和ともに強制的な生産割当の削減が回避されたことを評価するというコメントを発表している。
 一方、壊滅的な打撃を受けるとされるアイルランドの農民連合は、今回の決定が行われた11月24日はアイルランドのビート生産者にとって暗黒の日であり、ブリュッセルでの政治的取引によりアイルランドのビート生産は壊滅することになると非難している。
 比較的競争力があるとされるオーストリアビート生産者協会についても、平均的なオーストリアのビート農家でも12.2%の収入の減少を被ることになり、ビート生産に特化していた農家にとっては収入の減少は20%に達するであろうという政府研究機関の研究結果をうけ、一部の農家はビート生産をあきらめざるを得ず、製糖工場の閉鎖もあり得るであろうとのコメントを出している。

3 製糖業者の反応
 主要な製糖業者は今回のEUの改革案について概ね好意的に反応している。たとえばBritish Sugarはプレスリリースの中で、(EUの砂糖の過剰問題を解決するために必要な)6月の改革案の主要点は維持された同時に、移行期間がより長期間に渡って設定されたこと。また、資金援助が追加されたことによって限界的な生産者の生産割当がよりスムーズに廃棄され、効率的な(British Sugarのような)砂糖製造者に集約されると同時に、EU全体の砂糖生産を減少させることにつながること。2014/15年度まで今回の制度改革によって砂糖制度の見直しが行われないことなどを歓迎している。
 Daniscoも同様に移行期間の延長を歓迎しているが、同時に再構築スキームの対象期間が長期にわたり、その間砂糖生産が継続されることによって、砂糖の過剰問題が悪化することを心配するコメントを発表している。

4 砂糖需要者の反応
 砂糖需要者の代表団体である砂糖需要者委員会(CIUS, The Committee of Industrial Users of Sugar)の事務局長であるPainsmaye氏はISOのセミナーにおいて、EU改革案に対し次のような見解を示している。

1)現在の状況
a)競争の欠如
 少数の企業により生産割当が独占されていることから、製糖会社同士で暗黙の協定が行われている。このため割り当てられた生産割当の中で最大限利潤が上がるよう価格を操作し、残った砂糖については輸出を行うことができる。また生産割当は新規参入を阻害し、加盟国間で配分されていることから、異なる加盟国企業間での、国境を越えての競争も行われない。200年10月のヨーロッパ裁判所の判決から引用すると「わずか5社が50%のEUの砂糖生産割当を保持し、14か国中10カ国ではわずか1−2社が全ての生産割当を保持している。」としている。更に国境での高関税による保護によってEUの砂糖価格は本来の価格より大幅につりあげられている。
b)その他甘味料に対する制限
 砂糖とイソグルコースの生産量が固定されていることから、競争が欠如している。また異性化糖の価格が砂糖の高価格を基に算定されているうえ、生産量が少なく、イソグルコースも生産割当で規制されている。

2)改革についての見通しおよび評価
 WTO判決の対応等を考えると、EUの生産を減少させる以外の選択肢はない。しかし、国境を越えた生産割当の移動は制限され、引きつづき、砂糖の供給の主力は生産割当を持ったビート加工業者に委ねられている。しかも改革により砂糖生産の特定の企業への生産の集中化がますます進むものと予想されている。
 他国からの砂糖の輸入についても、EBAによる関税なしの輸入は国際価格動向と類似した価格動向となるかは不明であるとともに、輸入される粗糖の大半は一社によって精製される状態である。また輸入糖に対する品質への懸念や、三角貿易の防止策など不明な点が多い。参考価格は引き下げられるが、本当に市場価格に反映されるのかも不明である。イソグルコースの生産割当は拡大されるが、砂糖の割当の5%にすぎない状況に大きな変化がなく、1社が70%の生産割当を保持しているのは問題である。
 このような環境下で生産割当制度が残っている限り、自由な競争が行われることはなく、改革は不十分である。

5 ACP諸国の反応
 今回の砂糖制度改革案によってもっとも影響を強く受けると考えられているのが、ACP諸国である。モーリシャスの農業室海外代表(ロンドン)のJean-Claude Tyack氏は、ISOのセミナー及びプレスリリースの中で、今回の改革案についてその内容について強い懸念を表明した。
 まずACP諸国とEUは砂糖に関する条約を締結しており、関係国はその条約を守る義務がある。条約では砂糖の特別扱いが定められており、保障された価格で、期間を限定せずEU市場にアクセスできる権利について定められているが、今回の改革案はこれに違反している。急激な移行を行わないという約束も反故にされている。
 全体的に言えば改革案は早すぎ、大幅すぎ、急激過ぎるものである。
 介入制度の廃止もACP諸国にとっては条約違反である。砂糖の介入価格の支持で得ていた利益について、EU生産者は直接支払いにより補填されるが、ACP諸国生産者は受けることができないことも問題である。
 また、ACPからの輸入についても独占状態にあり、輸入量のうち、78%がまず「伝統的精製糖業者」に割り当てられ、その後新規業者へ割り当てされている。このことから販売先が固定されており、バイヤーを選択することができない問題がある。ACP諸国において今回の砂糖制度改革に対応するためのAction planとして、我々の計算では1億ユーロが必要であったが4000万ユーロしか認められていない。また、砂糖価格の削減による影響が出る前に各種対策を講じたいが、財源がないことから実施が遅れかねないことを懸念している。前倒しの実行を希望している。
 砂糖はACP諸国にとって単なる作物の1つではなく、社会経済的に多様な役割を果たしており、多くの雇用をもたらすとともに、社会基盤整備や、地域経済に多大な利益をもたらしている。熱帯気候に適応しながら、これらの利益をもたらすような代替作物は考えられず、今回の砂糖制度改革について、より柔軟な適用及び代償措置の充実を求めている。
注:砂糖制度の対象となるACP諸国とは
バルバドス、ベリーズ、コートジボワール、コンゴ、フィジー、ガイアナ、インド、ジャマイカ、ケニア、マダガスカル、マラウイ、モーリシャス、モザンビーグ、セントクリストファー・ネービス、スリナム、スワジランド、タンザニア、トリニダード・ドバコ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエである。

6 その他
 LDC諸国で操業を行っている製糖企業は今回のEUの改革案を歓迎している。アフリカの最大手の砂糖製造者であり、LDC諸国で操業を行っているIllovo社は、プレスリリースの中で、今回のEU砂糖制度改革により、ACP諸国であるスワジランドの砂糖生産は打撃を受けることになるが、その他の国ではEUに対して、より多くの輸出を行えることを歓迎している。
 また、英国の環境保護団体であるRSPB(The Royal Society for the Protection of Birds)は今回の改革案によって、干ばつがおきやすい地中海沿岸諸国において、砂糖生産に利用されていた水資源への需要が減少することによって環境に与える負荷が減少することを利点としてあげている。その一方、英国においては、今回の砂糖価格の減少により集約的なビート生産が行われるようになるとすると、環境に負荷を与えること、また英国でのビート栽培が減少した場合、ビートの葉を冬季の食用にしている鳥や、地上に巣を作る際の遮蔽物として利用している鳥にとっては、不利益を与えるのではないかとの推測も行っている。


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6 今後のスケジュール

 今後の砂糖制度改革の進展について表10のようなスケジュールが想定される。
 この中で2006年1月〜3月にかけてEUの農相理事会による最終の改革案の合意が予想されるが、そこにいたる交渉によって今回合意された改革案の修正が行われることも否定できない。2006年7月からの新しい砂糖制度の施行に向けての議論の進展について、引き続き注視していく必要がある。


表10 想定される砂糖制度改革の今後の日程

資料:Napier Brown Foods社Tony Evans氏 “Summary of EU Sugar Regime Agreement”


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7 ISOセミナーにおいて報告された砂糖関連主要国の関係者による報告概要

1 米国
 米国の砂糖関係ロビイストであるMcNiel氏はISOセミナーにおける質疑応答の中で次のように米国の砂糖制度の今後の見通しについて意見を述べている。
 今回のEUの砂糖制度改革が米国議会しいては現行の米国の砂糖制度に大きな影響を与えるとは思わない。今回のEUの砂糖制度改革はうまくいったとしても、EU域内の砂糖価格は現行の米国国内の砂糖価格と同程度までしか下がらないと予想しているからである。
 また、米国での砂糖制度改革のプレッシャーはあまりない。直接的な財政負担がないうえ、安定価格で提供できている。砂糖については輸出助成金もなく、しいて言えば国内の予算赤字の削減による影響が農業政策にとっての問題である。
 砂糖にとっての貿易面での脅威はFTA交渉である。ほとんどの国が米国とFTA条約を結びたいと考えており、その中でかならず砂糖の自由化を求めてきている問題がある。砂糖の輸出国も各種の保護措置により価格がゆがめられており、国際交渉を通じて是正を図る必要があると考えている。
 米国の現行のWTOでの提案については、発言者(McNiel氏)自身交渉団に加わっていたが、とても真剣な提言であったとは思えない。また、先進国にとっても農家に単純に収入をあきらめろというのは難しい現実がある。(米国が要求している)最高90%の関税カットは現実問題としてありえないのではないか。
 NAFTAにおける砂糖のあつかいは米国及びメキシコ両国政府ともに深刻な問題となっている。私の認識では2008年にはNAFTAで決められたように関税が撤廃され自由貿易になるのではないかと考えている。ブッシュ政権が条約を見直し、交渉をやり直すとは思えないからである。

2 ブラジル
 ブラジルのUNICA(サンパウロ製糖協会、Uniao da Agroindustria Canavieira de Sao Paulo。砂糖・エタノール製造者のうち90の大企業会員で構成される団体であり、ブラジルのさとうきび生産の約55%、砂糖・エタノール輸出の75%を占めている)の理事長であるPereira氏はISOの講演及び質疑応答の中で次のように述べている。
 発展途上国に対してのよりよい生活への援助は先進国の義務であり、持続可能な発展のためにもエネルギー消費量の削減及び持続可能なエネルギーへの転換は重要である。砂糖とエタノールは双子の兄弟であり、持続可能な社会の達成に向けて、この二つが重要な鍵を握っている。新興国は未来のエネルギー消費国であるが、ブラジルの例を見ても再生可能なエネルギーにより発展することは可能ではないか。
 ブラジルはエタノールについての技術を独占するつもりはなく、発展途上国がこの技術を使って先進国と渡り合うことは可能であると考えている。例えばアフリカを例にとっても、初期の投資は必要であるが、さとうきびの生産を増やし、エタノールや砂糖の生産、さとうきびのトータル利用によって、経済効率を高め、雇用を確保し、環境問題の緩和に資することは可能と考える。
 この分野での先駆者であるブラジルの存在が再生可能エネルギーに関する世界市場の信頼性を高めていると自負している。
 砂糖や綿花について現在のWTO交渉でブラジルを始め途上国が得るものは何もないと思っている。
 ただし、EUとの再生可能エネルギーの開発についての共同開発に関する協議は可能であると考えている。事実、協議の提案が出されている。このまま世界のエタノール需要が伸びると、ブラジルのエタノール生産だけでは2010年までに世界のエタノール需要をまかなえなくなる可能性もあるので、エタノール生産増大のための各国間の協力は必要であろう。
 炭素取引についてはまったくビジネスとして期待できない。ある企業の例であるが、炭素取引の部門を設立したが、得られる利益より政府などとの各種調整のためのコンサルタントの費用の方がずっとかさんでいるのが実情である。
 バイオ燃料で現在のところ実用化されているのはさとうきび由来のエタノールだけである。他の原料からのバイオ燃料は持続可能でなく、石油などの枯渇するエネルギーを消費しなければ生産できないのが現状ではないか。唯一セルロース由来の燃料が15年後に実用可能ではないかと予測しているが、今日のさとうきび由来のエタノールの価格が維持できれば競争は可能であると考えている。
 ブラジル外務省農業農産物部(Head of Agriculture and Commodities Division, Ministry of Foreign Affairs)のトップであるDamico氏はISOセミナーにおける質疑応答の中で次のように述べている。
 WTOの成功の鍵は途上国が安心して合意に加われるかである。ACPの提案については十分考慮する必要があり、それに答える一つの可能性として長期的な特恵待遇が鍵になると思う。
 意味のあるパッケージを作っていけるのかを考えたとき、関税率を低くするだけでは不十分である。技術、財政的な観点で柔軟性が必要であり、少数の市場に依存を避けることが重要(現行のEUのACP諸国に対する特別扱いをさすものと思われる)。特に途上国は、関税なしかつ割当なしで先進国に輸出できるようになる可能性について考慮すべきである。
 今後ブラジルのエタノール産業にとっては、日本やEUでエタノールを石油に加えることに対する規制を緩和させることが重要であるが、いまのところ政治的な意欲はまだ不十分である。米国ではエタノールのような新しいエネルギー生産に生産者が目を向けているようだが、これにより輸入障壁が高くなるかもしれないことについて警戒はしている。

3 インド
 インドの消費者省R. N. Das氏(Permanent Secretary, Department of Food and Public Distribution, Ministry of Consumer Affairs, India)はISOの講演および質疑応答の中で次のように述べている。
 インドの砂糖政策は、1991年を境に二つの時期に分かれる。1991年以前は、砂糖工場を新設するためにも、既存の能力を拡張するためにもライセンスが必要であった。また先物取引は完全に禁止され、砂糖の国内供給及び貿易に関しても政府が管理していた。
 それに対して1991年以降、特に1998年以降大幅な砂糖政策の自由化が進んだ。ライセンス制度を廃止して、課徴金を40%から10%へと減少させた。先物取引を導入し、輸出の量的制限を撤廃した。自由化のみならず、新たな政策も導入した。2002年には1982年に制定された砂糖開発基金法が改定され、エタノール生産およびバガスによるコージェネレーションの為に基金から砂糖工場に対するローンが許可された。これらの政策によって、工場の新設、整理統廃合が進み、効果的なエタノール政策も導入され、インドの砂糖業界の競争力が増している。これから砂糖の生産を増やすには、サトウキビの栽培地域を増やし、他国と比べて低い生産性を向上させていくことが大切である。ライセンス制度が廃止されたので、新しい地域でもサトウキビ生産を始めることが可能となった。エタノール生産も増えていくだろうが、採算を考えると原料のサトウキビ価格が高いという問題がある。
 現在インド政府、インド砂糖業界は、国内ニーズの促進を進めている。現状ではほとんど輸出はしていないが、将来的には世界市場に向けて生産を始め輸出国になることも可能だろう。砂糖政策の中心は、砂糖業界、消費者などの利害関係のバランスをとるということです。政府としては完全な自由化に向かいたいと考えているが、どうしても関係者の利害を考えていかなければならない。
 さまざまな問題は残っているが、インドの砂糖業界へは海外からの投資もあり、これから技術的な効率性の向上も進んでいくので、我々は大きな希望を持っている。世界第1位の砂糖生産国になることも可能だと考えている。

(主な参考資料)
Commission of the European Communities "Proposal for a Council Regulation on the common organization of the markets in the sugar sector" COM (2005) 263 final, Brussels, 22.6.2005
Commission of the European Communities "Commission Staff Working Document, Update of impact assessment" SEC (2003) 1022, COM (2005) 263 Final, Brussels, 22.6.2005
Council of the European Union, "Interinstitutional Files 0118-120/2005 (CNS), Working Document" DS569/05, Brussels, 13 October 2005
EU Press Release "EU radically reforms its sugar sector to give producers long-term competitive future" IP/05/1473, Brussels, 24 November 2005
Council of European Union "Press Release 2692nd Council Meeting" 14178/05 (Press 290), 22-24 November, 2005
Council of the European Union, "Interinstitutional Files 0118-120/2005 (CNS)" Agriorg81 Agrifin94 WTO207 14982/05, Brussels, 30 November 2005
Napier Brown Foods社Tony Evans氏 "Summary of EU Sugar Regime Agreement"
USDA Foreign Agricultural Service, GAIN Report "EU agrees sugar reform 2005" E35225, 11/30/2005
ISO 14th International seminar (2005年11月22―23日開催)各種資料


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