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タイにおける砂糖およびバイオエタノール(3)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2007年5 月]

調査情報部 部長 加藤 信夫
調査情報第3課 竹中 憲一
調査情報第1課 岡田 美乃里


T.タイにおけるさとうきび及び砂糖産業の重要性
U.さとうきび生産の状況
V.さとうきび栽培と収穫方法の特徴
W.タイの製糖事情
X.タイの砂糖消費事情
Y.おわりに
Z.参考文献


1. タイにおけるさとうきび及び砂糖産業の重要性
  さとうきびは4地域(中部、東部、北部、東北部)・49県という広域で生産され、しかもその多くは水や土壌条件が劣悪な地域であり、約10万人の農家と多数の臨時労働者がさとうきび生産に従事している。また、現在(2005/06年)では45の製糖工場(ほか1工場は移転中)が稼働しており、さとうきびの輸送業等の関連産業に従事する労働者も含めると約150万人もの雇用を生み出している。
 
  このようにタイのさとうきび及び砂糖産業は、地域経済上極めて重要な役割を果たしており、年間、600億バーツ以上の収入を生み出している(図1)。

図1 タイのさとうきび・砂糖産業(2005/06年)

2.さとうきび生産の状況
 タイのさとうきびは、図2及び表1にあるように東北部(コンケーン県など)、カンチャナブリ県を中心とする中部(西側に位置するカンチャナブリ県も行政区分上は中部)が主な栽培地域である。

 中部は灌漑施設や土壌条件に恵まれ米作も盛んであるが、この地域ではとうもろこしの作付けも多く、さとうきびはとうもろこしと競合関係にある(図4)。

東北部(コンケーン)のさとうきび畑

  また、タピオカはナコンラチャーシーマ県(コラート県)での栽培が盛んとなっている。一方、東北部は、さとうきびとタピオカが競合関係にあり、両作物の価格動向により作付面積が変動する傾向にある(図3)。東北部は貧困農家が多く、灌漑率はわずか3%であるため(全国平均は10%)、降雨量によって生産が大きく左右される。貯水池、川からの引水が可能な地域は、主に米や野菜が栽培されている。

ナコンラチャーシーマにあるキャッサバ畑

図2 さとうきびの作付面積の分布図

図3 タピオカの作付面積の分布図

図4 とうもろこしの作付面積の分布図

表1  さとうきび・砂糖の生産量と価格の推移

図5 地域別さとうきび作付面積の推移

  タイのさとうきびと砂糖生産は、さとうきび及び砂糖法による政策支援を受け、約20年の間にそれぞれ2倍強の伸びを示しており(表1)、タイにおけるさとうきび生産量は日本の約39倍、ブラジルの約12%の規模である。一方さとうきびの作付面積の推移をみると、2002/03年くらいまでは、中部での作付けが減り、より生産コストの安い東北部の作付けが増える傾向にあったが、2003/04、2004/05年の干ばつの影響により東北部の作付けがより大きく減少している(図5)。

 さらに表1のように、この頃からさとうきび価格が下落傾向に陥ったため(2003/04年の期首価格は465バーツ)、さとうきびから天然ゴムへの転換が進み、さとうきび、砂糖の生産は減少した。

 しかし、2006/07年は天候にも恵まれ、さとうきびの期首価格も800バーツまで上昇したことから、さとうきびの生産量は対前年比28%増の5,978万トンとなる見込みである。

図6 地域別さとうきび生産量の推移

 さとうきびの単収については、LMCのデータによれば5カ年(2001/02〜2005/06年)の平均でヘクタール当たり57.6トンとなっており、ほぼ日本と同程度であるが、ブラジルの74トン[1]に比べれば若干低い水準となっている。また、地域別にみても統計上の単収差はほとんどない。しかし農業協同組合省によると、さとうきびの単収は、灌漑施設があるものは、約81トン、干ばつがなけれ約62トン。中部の平均は約52トン、東北部は約47トンであるとのことであった。中部は粘土質土壌でpH5以上が多いが、東北部は砂質土壌で、pH5以下が多く、灌漑の普及率も低い。

 今回の調査ほ場(東北部のコンケーン市近郊、カンチャナブリ県)では、増収の基本となる水・肥培管理をきちんと行っており、単収がヘクタール当たり140〜190トン程度の高い農家も見られた。これは工場と政府機関(畑作物研究所や農業普及局の出先事務所)の指導が行き届いていること、農家意識が高いことが、高単収が得られている原因である。


3.さとうきび栽培と収穫方法の特徴
(1)栽培
 タイのさとうきびの植付時期は、4月から7月(春植え)と、10月から11月(秋植え)に分けられる。中部は春植えが多く株出回数は3回から4回で、北部と東北部は秋植えが多く株出しは1回から2回である。

 収穫時期はどちらも12月〜4月であるが、春植えは翌年の12月〜4月に収穫され、生育期間が9カ月から10カ月に対し、秋植えは翌年の12月から翌々年の4月にかけて収穫され、生育期間は1年から1年3カ月と長い(図7)。

図7 さとうきびの栽培カレンダー

(2)収穫
  収穫方法については、大半が手刈り(葉→トップ→茎下の順で刈り取る)であるが、農業協同組合省によると、ハーベスターは各工場で平均7〜8台所有しており、手刈りから徐々に機械刈りに移行したいとのことであった。

 火入れ(cane burning)については、工場で禁止しているところとそうでないところが混在している。TCSBから農家へは火入れ禁止の「指示」をしており、違反者には罰金が課せられ、指示を守った農家にそれを配分することになっている。また、火入れされたさとうきびはトン当たり20バーツ減額されることになっている。ちなみに、コンケーン県では約65%の面積で火入れが行われているとのことであった。

東北部(コンケーン)での収穫風景

火入れにより収穫されたさとうきび

   
カンチャナブリにある工場で使用されているハーベスタ1日200トン収穫

  さとうきびの運送は、一般的に農家が運送会社に依頼して行っている。工場では収穫当初と終盤には原料が不足するが、収穫ピーク時には工場内で荷降ろしのためにトラックが長時間待機させられる。また、この時期には集荷場の能力を超える場合もあり、その場合にはさとうきびは敷地内に野ざらしにされるため、糖度の低下等の品質の劣化を招く。 

  このように、工場内での荷降ろしのための長時間の待機問題は、輸送費の上昇だけでなく、品質劣化の問題も惹起する大きな課題となっている。農業協同組合省と製糖協会によると、中間の集積場が2〜3カ所あり、うち2カ所は大手製糖会社が所有、コンケーン県から約35キロ離れたところに中間集積場があるとのことである。

荷降ろしのために長い列をなすトラック(コンケーン)

 工業省によれば法令で定めたものではないが、農家の運搬費負担を軽減するため、農家から半径50キロメートル以内の範囲内にある工場へ搬入することを奨励している。 運搬されたさとうきびは、CCS[Commercial Cane Sugar(可製糖率)で糖度、蔗糖含有率、繊維率、搾汁液の純度から計測]に基づいて価格が決定される。

  工業省によると、農家と製糖工場の大部分は契約(生産者が工場に対して一定量のさとうきびを供給することに関する契約)を締結しているが、農家によっては工場と契約を結ばず、生産された分だけ工場に買い取ってもらうケースもあるという。

(3)栽培品種と天敵利用
  コンケーン畑作物研究所からの聞き取りによると、タイの品種育成機関は、(1)TCSB傘下の試験場(カンチャナブリ県)、(2)農業協同組合省傘下の試験場(コンケーン県、スパンブリ県)、(3)カセサート大学、(4)大手製糖会社の研究所である。東北タイでは、20品種のうち主に、(1)K88−92、(2)K84−200、(3)Wthont 1、(4)Wthont 3を使用している。東北部は株出回数が1〜2回なので品種変更が多いのが特徴である。新品種は病害虫抵抗性、分げつ特性など最大限の条件を満たすことが求められる。

 なお、さとうきびの害虫駆除には天敵の利用を進めている。東北部での重要な害虫である、カンシャシンクイハマキの天敵であるTrichogramma confusum (メス)による害虫の卵への産卵、イネヨトウの天敵であるCotesia Flavipes 【camerom】:(メス)による害虫の幼虫(イモ虫)への産卵により害虫を駆除する方法が農家に普及しており、1ライあたり2万匹が配布されている。日本でも、これらの天敵は自然に存在しているが、天敵を増殖して害虫駆除のために利用はしていない。

さとうきびの害虫駆除に利用される天敵(Trichogramma confusum)

(4)農家調査結果

東北部(コンケーン県ナンポーン郡の2農家)と中部(ナコンラシャシーマ県スンカン郡)の農家に対してヒアリング調査を実施した。

コンケーンのさとうきび農家での聞き取り調査

 東北部の農家は、土地が低地であるためタピオカは栽培せず、80〜100ライ(13〜16ヘクタール)の土地を3分割して毎年、さとうきびを作付けしている。作業体系は、施肥・植付け(10月頃)→除草(11月)→中耕除草・除草剤散布(5月〜)→天敵散布→収穫(翌年12月〜4月)で、収穫後の降雨の後に覆土をしている。

 2人の農家はいずれも火入れ収穫をしていなかった。この農家によれば、火入れが止められない農家が主張する火入れのメリットは、(1)ネズミの捕獲(食用となる)、(2)労働費軽減、(3)作業時間軽減の3つであるとのことであった。

 タイでは栽培・収穫・運搬作業の大部分を外部労働に依存しているのが特徴となっている。東北部の訪問農家によれば、外部労働費は1日当たり100〜120バーツ(339〜407円)で、収穫においては25本で1バーツ、車載費は60バーツ/トン、運搬費は100〜150バーツ/トン。外部労働に依存する作業は、土壌耕起、植付け、収穫時にそれぞれ30名程度。さとうきびの生産コストの半分は労働費。道具(鎌など)は労働者が持参するとのことであった。

 工場との契約は5月に行い、肥料代など手付金を受取り、9月のほ場作業時に必要な融資を受けている。さとうきびの出荷先は10〜20km離れた工場に継続的に出荷している。いずれの農家もさとうきび価格(Aクォータ)による収入とコストは同じ水準だとのことであり、工場との契約により融資を受けられる特権を活かして何とか生活している状況だと言える。

 中部の農家は、さとうきび(70ライ。株出しは3回)とタピオカ(50ライ)を栽培しており、元からあった貯水池に1km離れた水源から引水し、スプリンクラーを50ライの面積に設置していた(この地域では初めて)。スプリンクラーの設置に必要な経費は10万バーツ、パイプの設置に1ライあたり1,400〜1,500バーツかかっており、すべて自己資金とのことであった。このスプリンクラーの設置の理由は、近くに水源があることと、灌漑により増収が見込まれることから投資に踏み切ったとのことであった。

(5)さとうきび農家のコスト負担(考察)
中部のさとうきび農家における経費(トン当たり)を整理すると、さとうきび・砂糖基金への出資金(3.8バーツ)+さとうきび農家協会への出資金(2バーツ)+肥培管理費(125バーツ)+焼ききびの収穫代(67バーツ)+焼ききびのペナルティ(20バーツ)+車載・運搬費(220バーツ)の計438バーツとなる。このうち、肥培管理費と車載・運搬費は、カンチャナブリ県での製糖工場の聞き取り調査の結果である。

 さとうきび価格(2005/06年)は800バーツであるため、約55%がコスト割合となる。この割合は東北部(コンケーン県ナンポーン郡)の農家のヒアリング調査結果の結果(経費はさとうきび価格の約半分を超す)とほぼ一致する。

 なお、農業普及局によれば、さとうきびの生産コストは560バーツ/トン(2006年)で、上記のコストの積上げ計算より高いが、特に収穫時の労働費コストが占めるウェイトが高いとのことであった。

(6)生産農家と技術指導
農家規模については詳細な統計はないが、農業協同組合省によると中部には1,000ライ(160ヘクタール)規模を誇る農家もいる。その一方で、東北部は概して小規模である。大規模な農家は、外部労働に大きく依存した農家も見られる。一般的に400〜500ライ(64〜80ヘクタール)の規模になると、車を所有し従業員も常駐させる、あるいは農業機材も所有している場合が多い。
 
  農業協同組合省によると、農家への技術指導については、工場と農家との契約の下で、工場からの肥料などの供給、普及員や工場の材料管理部による技術指導、農家への融資保証が行われている。また、工場ごとに「さとうきび農家協会」が設立されており、農家からの出資金(1〜2バーツ/トン)を原資としてセミナー、研修会の開催や病害虫対策(天敵など)を実施している。なお、本協会の全国レベルの連合組織から代表3名がTCSBのさとうきび・砂糖委員会のメンバーとなっている。

 普及用のパンフレットについては、農業協同組合省作成のGAP関係の冊子を農家へ配布するとともに、センター職員が講師となるセミナーで使用している。

 今回調査したカンチャナブリ県の製糖工場では、工場自らが品種や栽培に関するパンフレットを作製し、農家に配布するとともに、肥料会社と協力して年に4〜5回、150名程度の農家を集めてセミナーを開催している。工場の指導員はカセサート大学の卒業生を採用し、採用後も大学で研修させるなど養成面も力を入れている。一方、畑作物研究所では、年に3〜4回、50名程度の農家を集めて2〜3日間の泊まりがけのセミナーを開催している。


4.タイの製糖事情
(1)概況
タイでは45の製糖工場で砂糖の生産が行われている(そのほか1工場は移設中)。このうち、Thai Roong Roongグループ、MItr Poolグループの規模が大きく、2つのグループで全体の33%の生産を行っている。

 Thai Roong Roong グループは7つの工場を持ち、総産糖量は約81万トンである。一方、MItr Poolグループは5つの工場を持ち、総産糖量は約100万トンにものぼる。外国資本としては、日本の三井グループが所有するKumpawapiグループがあり、2つの工場を持っている。2つの工場の総産糖量は約30万トンである。

 タイの工場全体での1日当たりのさとうきび圧搾能力は平均70万トンで、製糖期間は約100日間。さとうきびの1日当たりの圧搾能力は様々であるが、平均すると1万5千トンで、日本(867トン)の約17倍の圧搾能力である。また、世界最大の砂糖生産国のブラジル(5,900トン)に比べてみても約2.5倍の圧搾能力を誇る。ナコンサワンにあるThai Ekalak グループの Kaset Thai 工場が最大で1日当たり4万トンものさとうきびの圧搾能力を持つ[2]。

 なお日本向けの粗糖の規格(SPEC)について、製糖協会および農業普及局によると、日本向けの粗糖の糖度は98.5度未満に定められているが、これは国際標準の99.5度に比べ低く(低品質)、糖度調整が大変なため、2007年からは、タイの輸出用の砂糖は一般輸出向けの品質の良い規格(HIGH-SPEC)と日本向けの特別な粗糖(J-SPEC)に分けるとのことであった。また現在、タイでは糖度が高いVHP糖が主流であるとのことであった。カンチャナブリ県の製糖工場によればタイの砂糖のスペックの規定は、今までは「糖度」のみであったが、今年から「白度」(3,500以下)も追加されるとのことであった。

(2) カンチャナブリ県の砂糖・エタノール工場と契約農家の状況
 1974年設立の製糖工場で、従業員は270名、うち農家管理・指導員は12名、季節労働者は330名雇用している。製糖期間は12月20日から3月下旬で、収量によっては4月中旬までとなっている。さとうきびの圧搾能力は1日当たり14,000トンで、製糖能力は年間8.7万トン〜11.5万トン(さとうきびの歩留まり10%)で、かつてのタイの最大の製糖工場であった。

  砂糖の種類は、白糖(73〜75%)と粗糖VHP(25%)であるが、粗糖は一時貯蔵し、精製するので、最終的には白糖が90%となる。仕向け先は、国内30%、海外70%で、大部分は輸出業者を通し、韓国、台湾、日本等へ輸出する。

 糖みつは、年間、45,000トン生産し(さとうきびの4〜5%相当)外部販売していたが、本年2月から稼働するエタノール工場で利用する。このため、糖みつが55,500トン程度不足するため、他の製糖工場から購入する。2006年の糖みつ価格はトン当たり92ドルで、一時115ドルまで高騰したが、今は70ドル程度に落ちている。

 バガスは、さとうきびの27%相当量を生産し、大部分を燃料として利用し、一部外販している。ボイラーは4つあるが、そのうち一つはエタノール工場用に利用する。

 契約農家数は480戸で工場から約160km県内に位置する。経営規模は20〜1,000ライとバラツキがある。灌漑率は30%と高く、スパンブリ県に集中している。品種は、ランパーン、K-200、K-300、K-65で、単収は1ライ当たり15〜20トン(灌漑あり。ヘクタール当たり94〜125トン)である。

 植付時期は12月が多く(以前は3〜4月)、株出しは3回。収穫方法は、手刈りが6割で、火入れ収穫は3割(確信犯は2割、1割は他人の火入れのために焼けてしまう被害者分)。火入れきびはトン当たり20バーツのペナルティを課している。工場で所有するハーベスターは35台。

 平均トラッシュ率は11%であるが、県内に複数の製糖工場があるため、さとうきびの集荷量が安定せず、かつトラッシュ率の変動が激しいため、工場の稼働率が落ちることが課題となっている。

(3)カンチャナブリ県にある製糖工場と契約農家の概要
1974年設立の製糖工場で、従業員は350名、うち農家管理・指導員は26名で、ハーベスタなどの機械技術の指導や、農家へのさとうきび代金の支払い等を行っている。季節労働者は400名雇用している。さとうきびの圧搾期間は12月20日から4月下旬で、さとうきびの圧搾能力は1日当たり12,500トン、製糖能力は年間7.4万トン(さとうきびの歩留まり9.8%)である。

 砂糖の種類は白糖(25%)、粗糖(25%)、精製糖(50%)で、そのうち国内出荷分は3万トンで

 残りの粗糖(100%)、白糖(60%)、精製糖(70%)を、インドネシア、フィリピン、マレーシア、中近東等へ輸出している。今年から、日本向けの粗糖(J-SPEC)の製造は中止するとのことであった。

 糖みつは、年間、35,000トン生産し(さとうきびの4.7%相当)国内の業者に販売している。

 バガスは、さとうきびの26〜27%相当を生産し、工場のエネルギーはバガスですべて賄っている。工場の電力は年間10メガワットの電力が消費され、3〜4メガワットの電力は電力会社に売電している。

 契約農家は750戸で、年々増加傾向にある。経営規模は50〜2,000ライ(8〜320ヘクタール)であり、平均すると100ライ(16ヘクタール)の規模である。1,000ライ(160ヘクタール)規模になると農家は自分で機材を購入し、植え付けや収穫を外部労働者に依存している。

 品種はK-84-200が主で、単収は1ライ当たり8〜12トン(ヘクタール当たり50〜75トン)である。植え付け時期は4月から7月が90%で、10月から2月が10%。株出しは平均で4回である。収穫は手刈りが86%で、そのうち火入れ収穫は27%程度である。工場で所有するハーベスタは14台、1台当たりで年間1万トンの収穫が可能。ハーベスタのサービス料は、運搬費込みでトン当たり130バーツである。

 今後エタノールの生産については考えてはいないが、余剰分のバガスの販売を検討しているとのことであった。


5.タイの砂糖消費事情
タイの砂糖の国内消費は、毎年、おおむね200万トンで、そのうち直接消費が62万トン(31%)、間接消費が138万トンとなっている。間接消費としては、加工食品や果汁向けが一番多く、70万トン(51%)、次に飲料で、47万トン(34%)、キャンディが3%で4万トンとなっている。


おわりに
(1) タイの砂糖産業はこれまで、「さとうきび及び砂糖法」に基づき、砂糖の厳格な販売・価格管理対策を展開し、国内支持により得られる高いマージンを利用して輸出促進を図ってきた。しかし、今後は発展が見込まれるバイオエタノール需要の拡大への対応、エタノールの収益分配などの問題があるため、20年以上も続いてきた制度の見直しの声があがっている。

 政府や工場側は、「管理」から「監視」政策への移行を望む声があり、変革の時を迎えている。

(2) タイの砂糖需給に影響を及ぼす他の要因としては、(1)AFTA実施の進展によるアセアン諸国への輸出の増加、(2)アジア諸国の砂糖需要の増加、(3)アジアの他の砂糖輸出国の動向等が挙げられる。(3)に関してはインドが国内需要を賄うために、2006年7月から砂糖の輸出を停止している。

(3) タイの輸出向けの粗糖生産については、より高品質なものに関心が高まっている。日本向けの粗糖は、生産された粗糖の糖度をわざわざ引き下げる手間がかかることから、コスト面でも品質管理面でも工場側からすれば、扱いづらい製品となっている。このため、日本向けの特別なスペック(J-SPEC)の生産を中止する工場も現われている事実には、留意する必要がある。

(4) 以上のように、タイの砂糖需要は国内的にも対外的にも高まることが予想されるが、さとうきびの作付面積の拡大余地は乏しく、需要拡大に対処するためには、さとうきびの水管理や適切な栽培管理と品種選択等を徹底して単収を向上するか、第三国での生産も進める必要があろう。

 粗糖の輸入の約4割をタイに依存しているわが国にとっては、タイ国内の事情はもとより、特にインドシナ半島のAFTAの進展に加え、周辺4カ国とのACMECS(エーヤワディ、チャオプラヤ、メコン経済協力戦略)や東西・南北経済回廊を中心とする道路インフラの急速な発展により、タイのみならず周辺国を含めた、地域単位で砂糖の需給問題を捉えなければならなくなってきている。


<参考文献>

〔1〕独立行政法人農畜産業振興機構  『砂糖類情報』 2007年4月号 「統計資料」
〔2〕LMC入手資料「タイの砂糖産業」(非公表)


(参考)主な調査先

訪問先

場所

農業協同組合省農業経済研究局、カセサート大学、農業普及局

バンコク

さとうきび・砂糖委員会(TCSB)事務局(工業省)、製糖協会

バンコク

ブレンダー、エネルギー省、タイ・アグロ・エネルギー社

バンコク

コンケーン畑作作物研究所、コンケーン県農業事務所

コンケーン

さとうきび農家(2)、キャッサバ農家(1)

コンケーン

ナコンラチャーシーマ農業事務所、タピオカでん粉工場

ナコンラチャーシーマ

タイ・アグロ・エネルギー社(エタノール工場)

スパンブリ

ナコンラチャーシーマ農業事務所、タピオカでん粉工場

ナコンラチャーシーマ

製糖・エタノール工場、製糖工場

カンチャナブリ


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