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南アフリカ、スワジランドおよびモザンビークの砂糖・エタノール生産の現状と見通し(2)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から

[2007年8月]

調査情報部調査情報第3課課長 大泉 和夫
国際情報審査役補佐 平石 康久

第Ⅱ章 南アフリカのバイオエタノール生産の可能性について
本章のポイント
1.南アフリカのエタノール生産の背景
2.南アフリカの現在のエタノール需給
3.エタノール生産の期待
4.エタノール生産に対する懸念
5.エタノール生産の原料別の可能性と課題 
6.バイオ燃料生産に対する各業界の反応
7.エタノール生産プロジェクト
8.エタノールアフリカ社
9.南アフリカ政府による既存のバイオ燃料生産援助プログラム
10.政府による今後のバイオ燃料関連施策
11.今後予想されるバイオエタノー ル燃料の供給形態
12.混合率の義務化の見通しについ て
13.南アフリカエタノール生産の展 望と可能性



第Ⅱ章 南アフリカのバイオエタノール生産の可能性について

本章のポイント

● オクタン剤として利用されている鉛からエタノールへの転換、地域活性化、石油製品の貿易赤字の解消などを背景にエタノール生産への期待が高まっている。こういった背景からエタノール生産は国内の原料を利用し、国内需要に向けられることを想定している

● エタノール生産の懸念、たとえば食料への影響、価格や需給の不安定性などは理解されており、政府は適度な水準の奨励策と、エタノール生産のライセンス制でコントロールすることを検討している。混合率の義務化については、現在のところ否定的である

● 民間投資による生産が期待されているが、具体的な動きとしては、政府主導によるパイロットプロジェクト計画および政府の優遇措置を受けた企業による建設中の1工場のみである

1.南アフリカのエタノール生産の背景

 歴史的に、南アフリカではエネルギー政策のため、80年代前半から合成アルコールを10%前後ガソリンに混合して使用していた時期があった。  更に、近年の南アフリカの農業生産力の向上と世界的なバイオ燃料への気運の高まりに加え、2006年より南アフリカは燃料のオクタン剤として利用されている鉛を、段階的に中止することに決定したため、オクタン価向上剤としてのエタノールに対する需要が生じている。  これに精製度の高い石油製品の貿易赤字の拡大、地域開発の重要性、農村や黒人への経済的利益の移転の必要性、環境問題などさまざまな理由が複雑に絡み合い、バイオエタノール生産への機運が高まっている。

2.南アフリカの現在のエタノール需給


表Ⅱ−1 南アフリカのエタノール需給状況(2005年)
単位:1000kl
資料:F.O. Lichts“ World Ethanol&BiofuelsReport” 各号


 南アフリカの生産量は39万klであるが、そのうち大部分が輸出されている。ここでのエタノールは、合成エタノールおよび糖みつ由来のエタノールである。変性エタノールは洗浄、溶剤などの用途に、無変性エタノールは飲用食品、薬品、化粧品などの用途に利用される。
  輸出先国は年により大きく変動するが、変性アルコールがアジア諸国など、無変性が米国、EU、UAEに向けられている。
  生産量は日本の年間11万klに比較すれば大きいが、米国の1900万kl、ブラジルの1670万klには遠く及ばない。しかし今後のバイオエタノールのプロジェクトが全て軌道に乗り生産されたとすると100万kl程度の生産が追加されることになる。

3.エタノール生産の期待

 今回の調査で面接した貿易産業省からの聞き取り及び各種資料によれば、エタノール生産の期待される効果は次のとおりである。
● 経済的に恵まれていない地域に対する経済活動や雇用の創出、貧困の解消
● 国家的な燃料安保や、石油輸入に対する負担の軽減
● 環境や健康に対する効果(二酸化炭素の削減や、一酸化炭素、亜硫酸ガス、スモッグ等の軽減)

1)経済活動の促進や雇用の創出、貧困の解消
  まず、この中でもっとも重要な理由としては、経済的な意味合いである。様々な関係者からの聞き取りにおいても、最初にあげられる理由であった。
  世界銀行の報告によれば、その国の所得格差を表すジニ係数について、南アフリカの2000年の係数が0.578と高い数値を示しており(0から1の間で表されるが、0.4以上の場合、不平等度が高いと一般的に判断される)、世界で第9位の値となっている。しかも国際協力銀行資料によると、この算出にあたっては所得上位のデータに欠損があること、1995年から見て悪化していることから状況は更に深刻であると指摘されている。
  このことから農村の経済活動を活性化し、雇用を生み出す可能性のあるバイオ燃料政策は、国にとってもっとも重要な施策の1つである。この状況はまた、エタノール原料やバイオエタノールを輸入して、エタノール生産・混合を進める方向に推進されないことを示している。

2)燃料安保や石油輸入に対する負担の軽減
  この石油燃料需給に起因する理由は、同国の石油貿易の事情によるものである。同国は1980年代にアパルトヘイト政策に対する国連による経済制裁に伴う石油禁輸措置を経験していること、公共交通手段が発達しておらず車社会であることから、石油の確保について敏感になっている。
  また、原油及び精製された石油の貿易バランスについては、原油の輸入量も大幅に増加している上に、今後国内で需要が増加されると予測される無鉛ガソリンやディーゼルについては大幅な貿易赤字になる見込みであることから、これらを補うことのできるバイオ燃料の生産振興が重要である。

3)環境上の利点
  この環境面での利点は、上記の背景に比べるとやや優先度が低いとの印象を受けた。
  南アフリカは京都議定書の中で発展途上国と見なされていることから、具体的な削減数値を定められていないことも影響しているものと思われる。
  また、バイオ燃料生産工場で利用されるエネルギーも石炭が想定されており、二酸化炭素削減効果やエネルギー収支にも疑問が残る状態である。

単位:10億ランド
図Ⅱ−1 南アフリカの原油輸入額の推移

表Ⅱ−2 精製された石油の貿易収支
単位:百万ランド
原資料:CEF; SAPIA
資料:南アフリカ貿易産業省プレゼンテーション資料による
注:2006年は予想値
:ガソリンには液化合成燃料が含まれていると見られる


4.エタノール生産に対する懸念

 一方でバイオ燃料生産に対する様々な懸念が存在することも事実である。

(1) 食糧安保に対する懸念
(2) 原油価格の不安定性
(3) 農産物(エネルギー作物)の価格の不安定性
(4) 副産物の市場確保の問題
(5) バイオ燃料生産推進にかかるコスト(国家の収入の減少、補助財源)
(6) 環境問題(土地や水資源の競合、生物的多様性への脅威)
(7) 新技術開発による現在のバイオエタノール生産体系の陳腐化
(8) 大規模生産による生産と小規模農場による生産の方向性の相違
(9) 政府による奨励策の程度

 上記の問題はいずれもバイオ燃料の生産を図る際、大きな問題となる点であり、政府の関与が求められる背景となっている。

  (1)の食料に対する懸念については、バイオエタノールの原料に想定されているメイズ(とうもろこし)が飼料用の白メイズだけでなく、貧困層の主食とされている白メイズも利用可能であることから、メイズ価格の高騰等に対する懸念が存在する。

  (2)及び(3)の原油価格や農産物の価格変動の問題も大きな問題である。南アフリカではバイオ燃料工場への投資は投資家が主体となることが期待されており、市況変動が大きければ安定した投資が行えない。このことから、これらの価格の安定化は重要な課題である。

  (4)の副産物の市場確保も大きな課題である。バイオ燃料生産の経済分析に当たっては生産によって発生する副産物(DDGSやオイルケーキ)の収益が重要な要素となっている。聞き取りによれば、たとえば国内のB5の生産を大豆で達成すると140万トンのオイルケーキが発生するが、現在国内では70万トンしか需要がないことから、新たに発生する副産物の市場開拓が必要である。

 (5)の政府にとってのコストも無視できない。ガソリンやディーゼルに課せられている40%の燃料税は石油会社が代行徴収しているが、日本エネルギー研究所及び石油公団のレポートによれば、こういった燃料税は政府税収の1割近くを占めている。
 その他、生産拡大による土地や水資源への利用圧力の増大、セルロース由来の技術が確立した際の、既存生産技術の優位性の問題、小規模生産者による飲料用アルコールへの流用(モラルハザード)等も課題とされている。

5.エタノール生産の原料別の可能性と課題

 南アフリカ政府は現在のところ、特定の作物をエタノール原料として示すようなことはしておらず、今回の聞き取り調査でのプレゼン資料の中でも各作物を網羅的に取り上げた表を提示していた。
  ただし南アフリカの鉱物エネルギー省が取りまとめたバイオ燃料産業戦略において、原料作物はとうもろこし、さとうきびがあげられており、貿易産業省の説明の中でも、エタノール生産についてはメイズ(黄・白とうもろこし)、さとうきび、ディーゼルについては大豆がもっとも可能性が高いとの指摘があった。
  ひまわり油については、コストが高く、話題になっているジャトロファ(Jatropha)は生態系に与える影響(食用植物を駆逐する危険)、毒を含み副産物が利用できない弱点、栽培に思ったより水を使う等の弱点が明らかになり、難しいとの判断であった。
  各作物の賦存量については表2―3のとおりである。全ての原料をエネルギー生産に利用してもガソリン消費量の40%、ディーゼル消費量の5%程度しか賄えない。


6.バイオ燃料生産に対する各業界の反応

1)穀物業界
  極めて積極的である。南アフリカ穀物協会(Grain SA)の話によれば、メイズは南アフリカの穀物生産量の8割を占める主要穀物であり、現在は300万haの作付面積で、白メイズが500万トン、黄メイズが400万トン程度の生産量がある。ただし作付面積は最大となった1986年度には500万haであったのが、2004年度には320万haに減少している一方、当時2トン/haを下回っていた単収が、2004年度には3.6トン/haに達しており、生産量はおよそ900万トン程度で維持している。

  こういった経緯から、同協会は以前メイズが作付され、現在は粗放的な放牧が行われている土地150万haの面積をメイズ生産に戻し、単位収量をGM作物などの利用により4トン/haに増加させることによって容易に現在の食糧需給に影響を及ぼすことなく、E10を達成することができるとしている。また、DDGS等の副産物については現在大豆のオイルケーキを年間60万t輸入しており、その代替需要があるため当分は心配していないということであった。

  ただし穀物業界は生産拡大への前提条件として、
  (1) 100%の燃料税控除
  (2) 混合率の義務化。石油業界が購買する義務
  (3) 政府による品質保障
  (4) 安定化措置(equalization)。例えば原油価格が60セントを超えると税金、40セントを割ると補助金支給。

  等の措置を政府に求めているが、特に(1)及び(2)の措置については実現できるかどうかは不明である。
  その他、現在未利用の土地を耕地に戻す費用も必要である。更に、同国のメイズは天候に大きく左右され、特に12年に1度程度の大干ばつにより、生産量が例年の生産量の半分程度の400万トン前後に落ち込むことがあるため、そのときの原料確保に問題を抱えている。

表Ⅱ−3 南アフリカバイオ燃料原料の利用可能量
資料:貿易産業省プレゼン資料による
注:南アの現在のガソリン消費量は120億褄、ディーゼル消費量は70億褄程度

2)砂糖業界
  南アフリカ砂糖協会はさとうきびからの燃料用エタノール生産について冷ややかに見ている。政府のバイオ燃料戦略文書や政府高官の発言でもさとうきびからのエタノール生産(ケーンジュースもしくは糖みつかは不明)を期待しているが、砂糖協会としては幾度にわたる経済的な分析を行った結果、砂糖のほうが収益が良いこと、糖みつもすでに高純度のアルコール生産等に利用されていることから、燃料用に転用する余地はないことを主張していた。

  また政府からのバイオエタノール生産への直接の働きかけもないとしており、エタノール生産を進める政府部門との連携はうまく取られていない模様であった。

3)エネルギー業界
  石油業界に直接話を聞くことができなかったが、鉱業エネルギー省の担当官からの聞き取り及び報道によると、石油業界はバイオ燃料の混合について歓迎するとの意思を表明している。
  ただしバイオ燃料の品質について懸念を表している上、もし混合が義務化になることがあれば、バイオ燃料の使用に対して断固反対するという声明を出している。
  石油業界は、代替燃料としてのエタノールではなく、ガソリンの無鉛化に伴うオクタン価向上としての使用であれば、一定の価格で購入できる範囲に収まる限り反対しないということであると思われる。

図Ⅱ−2 メイズの生産量と作付面積

7.エタノール生産プロジェクト

 南アフリカ政府は、バイオ燃料生産は民間からの投資が主となって行われるべきとしているが、一方で地域開発、貧困の撲滅に重要な役割を果たす手段としても、バイオエタノール生産に強い期待を寄せている。
  そのためバイオ燃料生産は、ムベキ大統領の主導による2005年7月に発足した中期経済成長戦略「成長加速と共有に向けたイニシアチブ(Accelerated and Shared Growth Initiative for South Africa:ASGISA)」の中で、重要な柱の1つとなっている。

  この国家プロジェクトにより南アフリカ政府は2010年以降経済成長率6%を達成し、2014年までに失業率を半減させることを目標としている。この中で政府主導により、いくつかの州におけるバイオ燃料生産プロジェクトを行う旨の記述があるが、特に重要なプロジェクトとして、マカティーニプロジェクトが具体名をあげて例示されており、実現可能性の高いプロジェクトとなっている。(内容は第1章の5「今後の砂糖生産拡大の見込み」を参照)

  同プロジェクトを含め、現在判明しているエタノール生産プロジェクトの計画は、表2―4のとおりである。なお、エタノールの生産コストは50―70ドル/バレルとなると見込まれている。
  ムプマランガ州の2つプロジェクトは産業開発公社(Industrial Development Corporation,IDC)と中央エネルギー基金(Central Energy Fund,CEF)から32億ランドの融資を受ける予定である。

  また、東ケープ州ではビートからのエタノール生産が計画として上げられているが、貿易産業省の聞き取りによれば、3年1作の体系(全面積は2万ha)、当地の気候に適した品種がなく、育ちすぎて収穫が困難であること、病害虫の影響が不明で調査が必要等克服すべき課題が多いとのことであった。


表Ⅱ−4 政府によるエタノール生産プロジェクト予定一覧
資料:南ア政府2007年4月10日付BuaNews ”Five small towns to benefit R3.2 Billion biofuel project”


8.エタノールアフリカ社

 エタノールアフリカ社は、メイズ生産者及び海外のクリーンエネルギー投資会社(Sterling Waterford)の1:1の共同出資による民間資本の会社である。設立は、メイズの生産余剰対策を検討していたメイズ生産者主導により行われた。
  8つの工場を建設予定だが、現在(2007年6月現在)最初の1工場を建設中。この工場の建設費は7億ランドで、年間38万トンのメイズを加工し年間1.6億リットルのバイオエタノールの生産能力を持つ予定である。なお、当初計画では2007年中に建設を完了予定としていたが、2008年の第1四半期に完成が延期されている。

  当社のホームページによると、製造されるエタノールの販売先はNCP(南アフリカの醸造エタノールの販売会社)との5年間の契約が締結され、NCPが専属的に引き取る契約となっている。販売されたエタノールの市場は南アフリカでエタノール混合率の義務化が行われた場合国内向けに限定されるが、行われなかった場合、世界市場に販売することができるとしている。またエタノールアフリカ社は30日の貯蔵を持つことも義務付けられている。

  国内の販売価格は国内燃料インデックスにリンクされ、海外向けにはブラジル及びフランスの価格の単純平均に300ランドを足したもので算出されるとしている。
  副産物であるDDGSは地方の飼料製造者と契約を行っているとしている。
  原料となるメイズの供給は農家と事前契約を結び確保する予定。天候要因でメイズが納入されないときには、市場で手当てを行うためのコストが保険でカバーされ、天候要因以外で納入されないときは財政的な措置(先物市場等と思われる。)を利用し、市場から手当てを行うコストをカバーする予定である。

  ただし近年のコーン相場の高騰等、後述する混合率の義務化に対する先行きの不透明性など、予想される経営環境は好ましいものばかりではない。

9.南アフリカ政府による既存のバイオ燃料生産援助プログラム

 以下に述べるプログラムはバイオ燃料生産に対象が限定されたものではないが、今まで行われたバイオ燃料プロジェクトに対する支援に役立っている。
 
1)小中規模起業発展プログラム(Small and Medium Enterprise Development Programme)
  新たに事業を始める場合や、既存の事業を拡張するときに資産コスト、建物のリース費用等の固定的な経費のうち、10―1%(事業規模により段階的に率が下がる)を補助するプログラム。また、海外からの必要機器の輸送費については最高100%まで、トレーニング費用は最高50%まで補助される。プログラムの受益は最長3年間。
  対象となる産業は、製造業、観光業、高付加価値農産物、水産物、リサイクリング、バイオテクノロジーなどであり、バイオ燃料生産も対象となっている。


表Ⅱ-5 小中規模起業発展プログラムの補助率
単位:ランド
資料:Dectra社小中規模起業発展プログラム関連ホームページによる
注 :合計1億ランドまでが対象


2)政府調達における国内産業参加促進規制(National Industrial Participation)
  南アフリカ政府や関連機関が海外の供給者から1000万ドルを超える物品やサービスを調達する際には、その供給者はその調達額の一定の比率部分を南アフリカ国内に再投資(農業や鉱業は除く)を行わなければならないとする規制。これにより過去4年間で15のバイオ燃料プロジェクトがこの規制の下で(海外の投資により)行われたとされている。(このため、この規制による投資はOffset program=帳消しプログラムと呼ばれる)

3)戦略的産業プロジェクト(Strategic Industrial Projects)
  2006年で終了したプログラムであるが、一定額(5000万ランド)以上の投資規模であり、戦略的に重要であると認められた産業に対する補助。国内及び海外からの投資を誘引するためのプロジェクトであった。対象期間中資産の100%もしくは50%の額が税金控除の形で免除される。エタノールアフリカ社もこのプロジェクトを利用して設立されたということであった。

10.政府による今後のバイオ燃料関連施策

 南アフリカ政府鉱物エネルギー省が2006年11月に取りまとめ、後に内閣により承認されたバイオ燃料産業戦略文書(Draft Biofuels Industrial Strategy of the Republic of South Africa)及び2007年2月に財務省のタスクチームがまとめた提言書(Possible reforms to the fiscal regime applicable to windfall profits in South Africa's liquid fuel energy sector,with particular reference to the synthetic fuel industry)によれば、現在南アフリカ政府のバイオ燃料関係政策の案は下記のとおりとなっている。

1)政府目標
  戦略文書により、2013年までにガソリンやディーゼル等の輸送燃料使用量のうち、合計で4.5%をバイオ燃料で置き換えることを提案している。この目標値については、ガソリンではE8、ディーゼルでB2の混合により達成できるとしている。達成のためには例年余剰生産が行われているメイズとさとうきびを利用したエタノール生産や、未利用地3万haの一部(1万ha)においての大豆の生産を通じてバイオディーゼルを生産することで、過剰な政府からの支持政策なしで達成できるとしている。

2)ライセンス制度
  石油製品法に基づき、バイオ燃料製造に対するライセンス制が検討されている。ライセンス制は現在も石油業界に対して実施されているものであるが、その既存の規制にバイオ燃料製造に対するライセンス制度を新たに付け加える形で検討されている。
  具体的にはライセンスにより許可された国産原料によって製造されるバイオ燃料の量に対して1/4をBEEによって扱われるといった規制を付け加えること等である。ただし、ライセンスにより提供される数量を超えた生産を行うことには差し支えなく、商業ベースで取引されることになる。

  聞き取りによれば、1億リットル以上の生産を条件に、何を原料に使うか、どこで調達するか、使用する原料の量、生産者との契約形態、新規雇用の創出等がライセンス発行のための検討条件となる。原料については、それぞれの原料毎のエタノール生産の割当を行うようなことはしないが、政策の実施に当たっては砂糖産業から使用見込みを出してもらうことにはなるだろうということであった。
  1つの工場で1ライセンス発行される模様であり、見込まれるライセンス数は、10ライセンス(工場)程度と見込まれていた。
  政府はこのライセンス制により、必要とされるバイオ燃料の国内供給量を必ず製造させるとともに、原料の種類や使用量の把握、BEE等の順守、モラルハザードの防止等の管理を行うことができることを期待している。

3)燃料税控除
  現状ではバイオディーゼルのみ燃料税の4割を控除する措置がとられているが、これをバイオエタノールについても控除を行う。

4)均等化基金(Equalization Fund)
  均等化基金は中央エネルギー基金法に基づき、合成燃料の生産維持、拡大に多大な貢献をしてきた仕組みである。
  基本的な仕組みは、石油価格(政府が設定する石油統一価格IBLCから逆算された原油価格)がFloor Priceと呼ばれる価格の下限値を下回った場合、その差額を元に補助金を算出し、合成燃料製造者に支払うシステムである。
  バイオ燃料についても同様の制度を取り入れることを勧告されており、財務省タスクチームの提言書によれば、Floor Priceを40ドル/バレルに設定することが提言されている。一方で、価格高騰時60ドル/バレルを超えた場合にはバイオ燃料製造者から特別の税を徴収する制度を導入するように求めている。

5)関税
  バイオ燃料作成に利用される農産物等の原料の輸入については、一定の制限のもと、関税をかけないようにする。

11.今後予想されるバイオエタノール燃料の供給形態

 政府は直接混合方式を推進している。
  ただし、ETBEを考慮したとき南アフリカには利点があり、

▼ ガソリンへの直接混合は品質保持の観点から10%を以内が望ましいとする世界燃料の憲章上の制約があるが、ETBEにすれば制約にかからず、混合率を引き上げることができる
▼ 南アの精油所で過剰に生産されているイソブチレン(またはその原料)とエタノールを混ぜることによって簡単にETBEに転換できる利点がある

  ただしMTBEが米国で禁止されたこともあり、水質汚染の懸念がぬぐえないことから直接混合の方式が採用されている。

12.混合率の義務化の見通しについて

 今までの政府の提案の中では、混合率の義務化については提案されていない。
  混合率の義務化については、穀物業界が需要確保のために強く求めているものであるが、石油業界が強力に反対していることから実現については課題が高いものと思われる。
  また、貿易産業省担当者からの聞き取りにおいても、車社会である南アフリカにおいて、エタノール不足時に価格高騰要因につながりかねない混合率の義務化は難しいとの見通しを示していた。
  これらのことから混合率の義務化は今の見通しでは可能性が少ないと予想される。

13.南アフリカエタノール生産の展望と可能性

 南アフリカのエタノール生産は未だ初期段階であり、政府による各種奨励策が提案されているが、生産の将来像はまだ明らかではない。バイオ燃料生産の規模もブラジル、米国、EUに比べれば規模が小さく、基本的には国内需要向けに供給されることが想定されることから、世界需給に大きな影響を与えるプレーヤーになるとは現時点では考えにくい。

  一方でSACUやSADCといった南部アフリカ諸国との地域協定を結び、潜在的生産能力を持つこれらの国に大きな影響力を持つこと、かつ、諸国からの輸入が容易であることから、南部アフリカ地域におけるエタノール生産に期待をよせる(特にヨーロッパ系の)外資の拠点としての重要性は無視することはできない。

  また、利点と欠点の両面が考えられるが、同国は合成エタノールの生産が継続的に行われており、バイオエタノールへの混入に対する懸念がある一方、エタノールが不足した際、オクタン剤(あるいは含酸素剤)としてのエタノール供給の代替が可能であることは注意すべき点である。これは以前ブラジルがエタノールの供給不足に陥った時に、南アフリカから合成エタノールの輸入を行ったことからも、重要なポイントであるといえる。

  日本にとっては、現時点では予想することは難しいが、南アフリカの国内消費に供給されるエタノール以外の供給余力がどの程度になるかが注目されると思われる。混合率の義務化が行われない場合、石油業界とエタノール製造者との相対で交渉が行われるとすると、交渉の結果次第では一定程度のエタノールの輸出も考えられるからである。この点についてはエタノールアフリカ社が日本を含め、海外への輸出を考慮している。そのほかにも、日本がETBEでの供給を選択した場合を想定すると、ETBEの生産のポテンシャルを持つ同国の重要性は高まる。
  今後の同国でのエタノール生産が、実際どの程度行われるのかが注目される。

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