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インドの砂糖産業とバイオエネルギー

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から
[2007年8月]

インドの砂糖産業とバイオエネルギー

国際情報審査役上席調査役 河原 壽
調査情報部調査役 廣垣幸宏
4.バイオエタノール生産の見通し



はじめに

  インドはここ数年の急激な経済発展に伴い、世界でも上位を占めるエネルギー消費国となっている。そのエネルギー消費の大部分は石油が占め、その原油の約70%を輸入に依存していることからエネルギー安全保障が重要な課題となっている。
  一方、モータリゼーションの進行が加速しインド国内での自動車販売台数も増加している。USDAによれば、ガソリンとディーゼル消費量の2001/02〜2005/06の5年間年平均増加率は各々5.2%および2.7%であり、今後の自動車利用人口増加率を10〜12%とすると、ガソリンベースの需要量の増加率は5〜8%としている。このように、原油価格上昇が経済に与える影響は、ますます大きなものになっている。
  このため、石油天然ガス省では、バイオ燃料を石油代替エネルギーと位置付けており、インドのエネルギー政策にとってバイオ燃料政策が重要な位置を占めるにいたっている。

1 バイオ燃料政策

  バイオ燃料は、石油の輸入依存脱却によるエネルギーの安全供給につながるものであること、ガソリンやディーゼル燃料の代替によるCO2排出量の削減効果による環境保全から、中央政府は以下のバイオ燃料政策を推進している。

(1) 糖みつ(Molasses)
  現在の中央政府のバイオ燃料政策は、砂糖の生産過程で生じる副産物である糖みつを原料とするエタノールを中心に進められている。糖みつは、10%が動物用飼料等、90%がエタノール原料となり、そのエタノールは、産業用に70%、飲料用に10%、バイオエタノール用に20%が使用されていることから、全体の需給バランスを考慮した政策が進められている。

表1 インドのガソリンおよびディーゼル消費量
単位:100万トン
出所:USDA、 Ministry of Petroleum and Natural Gas, Government of India
注:ディーゼルは鉄道およびトラック、バスなど輸送用、トラクター、灌漑ポンプなどの農業用および発電のために使用されている。

出所:インド自動車工業会 Society of Indian Automobile Mnufacturers(SIAM)
図1 インド自動車国内販売台

表2 インドの主要都市のガソリンおよびディーゼルの価格(2007.2.16)
単位:ルピー/リットル(円/リットル)
出所:現地新聞
1ルピー=2.8円(2007.4.6)


(2) さとうもろこし(Sweet sorghum)
  また、バイオエタノールの糖みつ以外の原料としては、さとうもろこし(Sweet sorghum)、熱帯シュガービート(Tropical sugar beat)原料の開発が進められている。
Indian Council of Agricultural Researchによれば、さとうもろこしは、従来から雨量が安定している中央インドのマディア・プラデーシュ、カルナータカ、アーンドラ・プラデーシュ、グジャラート(Gujarat)の東部で栽培されていることから、糖みつの不足に備え、これらの地域における量産体制を整備する方向である。
 
(3) 熱帯シュガービート(Tropical sugar beat)
  熱帯シュガービートは、米国シンジェンタ(株)から種子を購入し、マハラーシュトラでの実証実験段階であった。熱帯シュガービートは収穫直後の加工が必要であることから、インフラが整っている加工工場での実証実験を予定している。試験結果が良好であれば、アーンドラ・プラデーシュ、マハラーシュトラ、カルナータカにおける既存のさとうきび製糖工場設備の改良により、生産体制を整備する方向であった。

(4) バイオディーゼル
  一方、バイオディーゼルでは、原料としてジャトロファ(Jatropha)の導入が推進されている。
  石油天然ガス省によれば、バイオディーゼル政策は、国家計画立案委員会(PLANNING COMMISSION Government of India)により立案され2005年10月に導入された。実施機関は、農村開発省(The Ministry of Rural Development)である。
  既に自動車、トラック、大型車、鉄道ディーゼル機関車での実証試験を行い、良好な結果を得たことから、導入初期段階である5%混合を目標に本格的な栽培が開始され、果実が実る2〜3年後の商業ベース利用をめざしている。
  現在は、実証試験で整備された20ヵ所のバイオディーゼル供給所で供給されており、価格は26.50ルピー/l(2006年12月に25ルピー/lから変更)である。価格は、現在も見直し中であり、石油価格に基づき変更される。

(5) 糖みつを原料としたバイオエタノール普及計画
  中央政府の普及計画は、3段階のフェーズを経てインド全土へ普及するというものである。
  調査では、既設のガソリンスタンドは、E10(エタノールを10%ブレンドしたガソリン)までのエタノール混合ガソリンは設備更新の必要がなく、E10の販売が可能とのことであった。このことから、バイオエタノール導入計画では、E10導入を前提に計画されているが、その導入は各州の状況により順次実施されている模様である。

① フェーズ1
  インド政府は、2002年からE5(エタノールを5%ブレンドしたガソリン)導入を開始し、2003年1月からはエタノールの商業生産に移行し9州および4特定都市においてE5を導入する計画であったが、2003/04年の大干ばつによるさとうきび生産の大幅な減少によりエタノールの主要原料である糖みつも不足し、2004年10月には当該計画断念を公表せざるを得なくなった。

② フェーズ2
  2005/06年になると、減産による砂糖価格の上昇を背景にさとうきび作付面積が回復し、また、作柄も良好となったことから原料である糖みつの不足も解消したため、2006年11月1日から全国でE5導入することを公表した。
  石油天然ガス省によれば、ウッタル・プラデーシュ、ウッタランチャル、ゴア、カルナータカ、の4州ではE5の供給が開始され、マハーラーシュトラ、アーンドラ・プラデシュでは一部地域で供給が開始されているとのことであった。
  また、2007年5月16日付け、日刊 インドビジネスによれば、5月15日にニューデリーにおけるE5導入が正式に開始された。

③ フェーズ3
  また、インド製糖業者協会によれば、中央政府は2007年6月からE10を導入する計画である。
  しかし、インド砂糖技術者協会によれば、E10の導入にはエタノール原料となる糖みつの不足が懸念されている。

表3 バイオエタノール普及計画(2007年2月現在)
(注)9州:アーンドラ・プラデーシュ、ゴア、グジャラート、ハリヤーナー、カルナータカマハー ラシュトラ、パンジャーブ、タミルナードゥ、ウッタル・プラデーシュ、
特定都市(4連邦直轄地):ダマン・ディーウ、ダドラ・ナガルアベリ、チャンディーガル、ポンデ ィシェリー


表4 2007年2月現在の各州のバイオエタノール導入状況
注1:2007年2月12日の石油天然ガス省の聞取りをまとめたものである。


(6) 中央政府の支援策と隘路
  米国農務省(USDA)のレポートによれば、中央政府の支援は、製糖工場のエタノール生産設備建設に対してのみ、政府の砂糖開発基金(Sugar Development Fund−SDF)からの融資を計画費用の最大40%まで認めるというものである。エタノール生産やマーケティングのための直接の財政支援は行なわれていない。
  しかし、石油天然ガス省によれば、中央政府によるバイオエタノールに関連する税の免除が打ち出される一方で、一部の州政府は燃料用エタノールに対し課税するなど、州政府の税制度がバイオエタノールの生産・普及の大きな隘路となっている。
  中央政府の法定最低価格や州政府の勧告価格でさとうきび最低買付価格が決められている製糖工場にとって、糖みつから生産されるエタノールは重要な収入源となっているが、州政府のバイオエタノールに対する課税政策は、製糖工場のエタノール生産設備への投資を抑制するものであることから、今後の製糖工場におけるエタノール生産を左右する問題であり、中央政府は地方政府に対し減免等の措置を求めている。


表5 さとうきび生産量、圧搾量、砂糖生産量、糖みつ生産量
出所:HAND BOOK of Sugar Statistics, September, 2006. INDIAN AUGAR MILLS ASSOCIATION

表6 州別エタノール生産能力(2005-2006年)
出所:HAND BOOK of Sugar Statistics, September, 2006. INDIAN AUGAR MILLS ASSOCIATION

2 エタノール工場

(1) YESHWANT協同組合製糖工場(砂糖・エタノール工場)の概要
  当該工場は、マハーラシュトラ・プーネ市郊外に位置し、協同組合製糖工場が運営している。1992年11月27日からエタノール製造を開始し、設備はALFA―LAVAL社が開発したBIOSTILプロセスである。製糖工場の糖みつ4%を原料とし、1トンの糖みつから270リットルのエタノールが造られ、1日当たり3万リットルのエタノールが生産可能である。
  2006/07年は10ヵ月操業で900万リットル〜1,000万リットルのエタノールを生産し、産業用、飲料用、燃料用として出荷している。

表7 エタノール生産の概要
注:生産量はきび年間処理量より機構で推定

(2) エタノール1リットル当たりの製造コスト
原材料:8ルピー
加工費用:5〜6ルピー 
計  13〜14ルピー/l
販売価格:19.5ルピー/l(政府決定価格) → 収益 5.5〜6.5ルピー/l

 (参考1)マハーラシュトラの別工場
  さとうきびの平均処理能力:1日当たり5,000トン
  1トン当たりのエタノール生産量:260リットル
  エタノール1リットル当たりの製造コスト
   原材料:8.5ルピー
   加工費用:7.5ルピー 
   計 15.5ルピー/l
 
  (参考2)エタノールに係る税金
  エタノールに関連する税額は年総額200億ルピーに上る。
  産業用および燃料用エタノールは、物品税16%と付加価値税6.4%、教育税2%、計24.4%と高率の税金が付加される。

3 バイオエタノール産業の問題点

  (1) 石油天然ガス省は、2003年1月からE5の導入を9州および4特定都市において行う計画であったが、2003/04年の大干ばつによるさとうきび生産の大幅な減少によりエタノールの主要原料である糖みつが不足し、2004年10月には当該計画を断念せざるを得ない状況となった経験から、さとうきび生産の不安定要因によりエネルー政策の一貫性が欠如することを強く懸念している。
    現段階では、さとうきびの作柄が良好であることから、砂糖価格が下落しており、E5導入を推進しているが、さとうきび以外の原料の確保が軌道にのるまでは、さとうきびの作柄により、再度、大きくバイオエタノール政策を見直す可能性が高いと推測される。

 (2) 製糖工場にとってバイオエタノールは、砂糖生産における重要な副産物であり、エタノール生産・販売は重要な収入源となっているが、地方政府におけるエタノールへの課税によりその収益は大幅に圧縮されている。また、当該課税は小売価格の上昇をまねき、消費者のバイオエタノール利用のメリットも少なくなっている。
    エタノールに関連する中央および地方政府の税制の改革なくしては、製糖工場および消費者のバイオエタノール生産・利用のメリットが少なく、生産・消費拡大には限界があると推測される。

4 バイオエタノール生産の見通し

エタノール生産工程(BIOSTIL プロセス)
エタノール生産


  バイオエタノールの主要原料である糖みつ生産は、中央・地方政府のさとうきび栽培農家保護政策およびグル・カンサリ消費から砂糖消費へのシフトにより今後も人口増加に見合って砂糖生産量が増加することが予想されることから(2007年6月号 (3)砂糖、グル・カンサリの消費動向と生産動向を参照)、今後も増加傾向で推移すると推測される。

  また、さとうきびの単収が安定し、グル・カンサリの消費減少により砂糖生産が増加しているウッタル・プラデーシュにおいて、州政府の主導のもと民間製糖会社の事業拡大計画が実施され、製糖・エタノール工場の規模拡大が進み、生産性の高い砂糖およびエタノールの安定供給能力が高まっている(2007年7月号 6.(1)―(2)(3)、表25を参照)。

  現段階では、主産地マハーラーシュトラにおける干ばつ等によるさとうきびの作柄変動による砂糖および糖みつの生産量の変動が非常に大きい(2007年7月号 図12 参照)が、今後のインドのバイオエタノール生産は、ウッタル・プラデーシュにおけるバイオエタノール生産がマハーラーシュトラにおけるバイオエタノールの生産変動を補いつつ拡大すると推測される。

  しかし、全国協同組合砂糖工業連盟(NATIONAL FEDERATION OF COOPERATIVE SUGAR FACTORIES LIMITED)の試算によれば、産業用、飲料用の既存の需要量に燃料用需要量予測を加えた場合、E5導入まではさとうきびの糖みつを原料とするバイオエタノール生産体制でエタノール供給は可能であるが、E10導入となるとさとうきびの糖みつ以外の原料を考慮に入れなければならない。

  一方、バイオディーゼルにおいては、ディーゼル需要がガソリン需要を大幅に上回る(表1参照)ことから、ジャトロファによるバイオディーゼル供給が本格化し、価格面等の条件が整えば、バイオディーゼルが大幅に普及すると推測される。


バイオエタノールの流通


製糖工場付属のエタノール工場 (タンクローリで輸送)


ブレンダー



ガソリンスタンド


表8 E5(E10)導入の需給バランス
単位:100万リットル
出所:NATIONAL FEDERATION OF COOPERATIVE SUGAR FACTORIES LIMITED資料

ジャトロファ


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