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砂糖類生産流通合理化等助成対象事業について(その3)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


事業団から
[1999年10月]
 砂糖類助成対象事業は、「砂糖需要増進事業」、「砂糖生産流通合理化事業」、「甘味資源作物生産流通合理化事業」の3本の柱に分けられ、8月号では、「砂糖需要増進事業」、9月号では、「砂糖生産流通合理化事業」のそれぞれ平成10年度実施結果及び11年度実施計画の概要について掲載した。
 今月号では、「甘味資源作物生産流通合理化事業」のうち「てん菜耐病性品種育成促進事業」、「てん菜省力・安定生産推進事業」、「てん菜集荷合理化推進事業」、「さとうきび種苗供給安定化対策事業」、「さとうきび安定生産推進事業」、「さとうきび品質測定安定化事業」について紹介する。

農産振興部



【1】 てん菜耐病性品種育成促進事業(補助金額:補助金額:6千8百万円)
  1.耐病性品種育成促進事業推進検討会開催事業業
  2.耐病性遺伝資源導入事業
  3.育種素材増殖等事業(一部、北農試との共同研究)
【2】てん菜省力・安定生産推進事業(補助金額:1億3百万円)
  1.てん菜作付省力化等推進事業
  2.てん菜生産安定化推進事業
  3.てん菜生産安定化栽培新技術導入・実証事業
【3】てん菜集荷合理化推進事業(補助金額:4千2百万円)
  1.集荷合理化計画策定検討会開催事業・集荷実態調査事業
  2.簡易除土機開発・実証事業
  3.ストックポイント整備事業
【4】さとうきび種苗供給安定化対策事業(補助金額:1億1千万円)
  1.さとうきび種苗供給安定化対策検討会開催事業
  2.低コスト種苗増殖技術開発事業
  3.新種苗増殖技術実証試験事業
【5】さとうきび安定生産推進事業(補助金額:6千1百万円)
  1.安定生産推進指導事業   2.安定生産条件整備事業
【6】さとうきび品質測定安定化事業(補助金額:4千3百万円)
  1.甘しゃ糖度換算式検討事業   2.近赤計測定安定化事業
おわりに


【1】てん菜耐病性品種育成促進事業
(補助金額:6千8百万円)

(事業実施主体:財団法人甘味資源振興会)
 この事業は、てん菜の耐病性遺伝資源の導入及び国内の育種素材の増殖等を行い、根腐病・黒根病耐病性品種の早期育成を促進することにより、一層の生産性向上に資することを目的としたもので、検討会開催、耐病性遺伝資源導入及び育種素材増殖等の3本の事業が実施された。これらの10年度の実施結果と引き続き実施される11年度の計画の概要は次のとおり。

1.耐病性品種育成促進事業推進検討会開催事業

 農林水産省北海道農業試験場畑作研究センター、香川県農業試験場等による検討会が開催され、実施計画、遺伝資源導入計画、甘味資源振興会と北海道農業試験場との共同研究、現地選抜ほ調査等について検討が行われた。

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2.耐病性遺伝資源導入事業

 根腐病・黒根病の優良耐病性一代雑種育成のためには、広く海外から耐病性遺伝資源を導入し、早急に優良耐病性品種を育成する必要がある。
 このため、耐病性をもつ遺伝資源について、技術情報の収集や海外現地調査が行われるとともに、アメリカから18系統、ポーランドから17系統、合わせて35系統が導入された。
 11年度では、アメリカから16系統、欧州から16系統が導入される予定になっている。

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3.育種素材増殖等事業(一部、北農試との共同研究)

 海外から導入された遺伝資源や国内優良系統を増殖して育種素材とするため、香川県農業試験場において世代短縮のため越冬母根養成、札幌市の隔離ほ場において採種が行われるとともに、池田町の病害発生ほ場において、これら育種素材の検定・選抜が行われた。
 一方、恵庭市において胚珠培養による自殖系統作出の研究が行われた。この研究は、てん菜の胚珠を培養して半数体(染色体数18)を作出し、さらに薬品処理で染色体を倍加して稔性のある正常のてん菜(染色体数18×2=36)を作ろうというものである。このように受精を経ないで全く同一の染色体を1組有するてん菜に抵抗性遺伝子を入れた場合、抵抗性に関する評価が確実に行え、また、抵抗性が次代に継承し易く、自殖遺伝子も導入することでその有用形質を失わない集団を増殖することが可能となり、早期に優良品種が育成できるとされている。
 11年度においても、引き続き、育種素材の増殖・検定・選抜、自殖系統作出の研究が行われる予定になっている。

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【2】てん菜省力・安定生産推進事業
(補助金額:1億3百万円円)

 この事業は、てん菜の直播栽培について、密植効果により収量・糖分の安定に資する直播狭畦幅栽培技術の確立、初期生育時のリスクに対応した予備苗の確保、発芽・苗立時の生育障害の実態・原因調査等を行うとともに、てん菜の生産について、ほ場の土壌酸度矯正や湿害を軽減させるための新たな栽培技術の普及により、てん菜の生産性向上及び安定生産並びにてん菜生産農家及びてん菜糖企業の経営の安定に資することを目的としたもので、てん菜作付省力化等推進、てん菜生産安定化推進及びてん菜生産安定化栽培新技術導入・実証の3本の事業が実施された。これらの結果と引き続き実施される11年度の計画の概要は次のとおり。
 なお、11年度においては、これら3本の事業に加え、ほ場が過湿状態にある場合に防除作業を可能とするための航空防除技術の確立を推進する新防除技術確立事業が実施される予定になっている。

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1.てん菜作付省力化等推進事業

(事業実施主体:社団法人北海道てん菜協会、一部委託先:北海道、農事組合法人笹川北斗農場等)
 てん菜の直播狭畦幅栽培について、道農政部、道立十勝・北見農業試験場、普及センター、糖業者、てん菜栽培農家、農業機械メーカー、農協等による検討会が開催され、これまでの成績、今後の普及方策が検討され、収穫作業の実演公開・検討も行われた。
 これらの検討を踏まえ、道立十勝・北見農試により、直播狭畦幅栽培の機械化体系を確立するため、効果的除草体系の確立試験、安定収量確保試験が行われたほか、生育初期に発生する障害について対応指針を策定するため、実態・原因調査等が行われ、また、道内17地区において直播狭畦幅栽培に適応した播種機、施肥カルチ、薬剤散布器具、タッパー、ハーベスター等の農業機械が整備された。
 11年度においては、引き続き、検討会開催、直播狭畦幅栽培機械化体系確立研究・開発、生育障害調査・対応指針策定が行われるとともに、道内8地区において直播狭畦幅栽培に適応した農業機械が整備される予定である。

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2.てん菜生産安定化推進事業

(事業実施主体:社団法人北海道てん菜協会)
 てん菜生産安定化栽培新技術について普及推進を図るため、道農政部、道立十勝・北見農業試験場、普及センター、糖業者等による「省力低コスト栽培推進会議」及び「酸度矯正普及推進会議」が開催され、石灰資材の作条施用等について検討され、また、生産者を対象とした「てん菜栽培技術講習会」が開催されるとともに、直播栽培における安定多収化栽培技術を解説した資料「直播栽培の手引」の作成・配布が行われた。
 11年度においても、引き続き、普及推進会議が開催され、また、「高品質てん菜づくり講習会」及び「てん菜省力化技術講習会」が開催されるとともに、てん菜直播栽培における効果的除草剤の使用方法を紹介した資料「てん菜直播栽培における除草剤使用法」及び低ほ場における石灰作条施用効果を解説した資料「てん菜栽培における石灰資材作条施用法」の作成・配布が行われる予定である。

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3.てん菜生産安定化栽培新技術導入・実証事業

(事業実施主体:農業協同組合・営農集団)
 9事業実施主体により、てん菜生産安定化栽培新技術の導入等について検討会が開催されるとともに、ロータリー施肥による酸度矯正、えん麦播種による防風対策、高畦栽培、心土破砕または竪穴暗渠による排水性改善といった新技術の導入・実証を行うため、各地域において、実証ほの設置、高畦サブソイラー等の農業機械の整備、栽培管理指導が実施された。
 11年度においては、5事業実施主体によりこれら新技術の導入・実証のため、実証ほの設置などが実施される予定である。

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【3】てん菜集荷合理化推進事業
(補助金額:4千2百万円)

 この事業は、集荷合理化地区を設置し、集荷合理化計画を策定するとともに、収穫物集積場(ストックポイント)の整備を推進し、併せて集荷時の土砂混入を極力抑えるための簡易除土機の開発・実証を行うことにより、てん菜集荷の合理化に資することを目的としたもので、検討会開催、集荷実態調査、ストックポイント整備及び簡易除土機開発・実証の4本の事業が実施された。これらの結果と引き続き実施される11年度の計画の概要は次のとおり。

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1.集荷合理化計画策定検討会開催事業・集荷実態調査事業

(事業実施主体:社団法人北海道てん菜協会、一部委託先:20農協)
 道内20農協管内において、てん菜生産農家の収穫及び集荷作業について、てん菜生産者に対し個別にてん菜の作付ほ場や集荷経路等の実態や先進ストックポイントを調査し、モデル地区設置を戸別、調査票により調査が実施され、また、現行集荷体制の課題、原料工場受入輸送計画、ストックポイント整備計画等について検討されるとともに、集荷合理化計画が策定された。
 11年度は、13農協において実施される予定である。

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2.簡易除土機開発・実証事業

(事業実施主体:社団法人北海道てん菜協会、一部委託先:北海道糖業株式会社)
 脱着ボディトラック、コンテナ、パイラー除土装置の一部を利用したものの組合せによる簡易除土装置の試験・実証が行われた。  コンテナを試験ほ場に置き、供試原料てん菜をハーベスターからコンテナにあける際に除土を行うというものでコンテナは、自力で脱着可能なトラックにより回収され工場受入場へ輸送される。結果は、ほ場の土壌が湿っていたこと、また、除土部分が短かったことにより供試原料から除土された土砂は1%強と十分除土されず、コンテナを脱着する際に時間を要した。  ヨーロッパのてん菜生産においては、ほ場からトラックに原料を積み込む際の除土機が主流であり、11年度は、海外における簡易除土機の利用実態調査が行われる予定である。

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3.ストックポイント整備事業

(事業実施主体:農協・営農集団)  ストックポイントについて、10年度は、34の事業実施主体により230基が整備され、受益農家は447戸、1基当たりの平均面積は820であった。11年度においては、29の事業実施主体により約230基が整備される予定である。

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【4】さとうきび種苗供給安定化対策事業
(補助金額:1億1千万円)

(事業実施主体:社団法人鹿児島県糖業振興協会、社団法人沖縄県糖業振興協会)
 この事業は、さとうきびの新たな種苗増殖技術に関し、種苗生産コスト低減のための技術開発及び農業技術・経営面のほ場レベルの現地検証を行うことにより、新たな種苗増殖技術の実用化を推進するとともに、技術実証用及び緊急配布用の種苗生産等を行うことにより、さとうきびの安定生産及び生産向上並びにさとうきび生産農家及び甘しゃ糖企業の経営の安定に資することを目的としたもので、検討会開催、低コスト種苗増殖技術開発及び新種苗増殖技術実証試験の3本の事業が実施された。これらの結果と11年度の計画の概要は次のとおり。

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1.さとうきび種苗供給安定化対策検討会開催事業

 鹿児島県糖業振興協会により、鹿児島県農産課、徳之島町、天城町、伊仙町、鹿児島県農業試験場徳之島支場、鹿児島大学、日本甘蔗糖工業会、南西糖業等による検討会が開催され、組織培養苗(メリクロン苗)の現況と課題、実証ほの設置等について検討された。
 また、沖縄県糖業振興協会により、国際農林水産業研究センター、沖縄県糖業農産課、沖縄県農業試験場、石垣市農業開発組合、県内5地区さとうきび生産振興対策協議会、サザンプラント等による検討会が開催され、側枝苗の生産技術、生産コスト、実証ほの実績、栽培管理方法等について検討された。

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2.低コスト種苗増殖技術開発事業

 鹿児島県糖業振興協会により、南西糖業・鹿児島県農業試験場徳之島支場において、メリクロン苗について、低コスト生産技術を確立するため、(1)生産技術開発(培養ロボット)、(2)定植機の改良・開発、(3)二芽苗の生産力、(4)種苗貯蔵法、(5)変異検定等に関する試験が実施された。11年度においては、(1)生産技術開発、(2)種苗長期保存技術、(3)選抜個体の生産力、(4)優良個体の選抜システム等に関する試験が実施される予定である。
 また、沖縄県糖業振興協会により、沖縄県農業試験場において、側枝苗について、低コスト生産技術を確立するため、(1)養液栽培、(2)時期別生産力、(3)栽植密度、(4)発根促進、(5)移植後の水分管理、(6)増殖・育苗のコスト、(7)自動選別装置・挿芽装置・移植機の開発改良等に関する試験が実施された。11年度においても引き続き実施される予定である。

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3.新種苗増殖技術実証試験事業

 鹿児島県糖業振興協会により、鹿児島県内3地区にメリクロン二芽苗を用いた60aの実証ほが設置されるとともに、植付け、施肥、かん水等の栽培管理指導が行われ、また、天城町にメリクロン苗の培養棟等の実証施設が設置され、クリーンベンチ、培養ロボットシステムが導入され、技術・経営面での検証が行われつつ実証用・緊急配布用のメリクロン二芽苗が生産された。
 11年度においては、鹿児島県内4地区に165aの実証ほ、天城町に育苗順化に関する実証施設が設置される予定である。
 また、沖縄県糖業振興協会により、沖縄県内5地区に側枝苗を用いた2,545aの実証ほが設置されるとともに、「側枝ポット苗栽培マニュアル」に基づく肥培管理技術の指導、側枝苗栽培講習会の開催が実証され、玉城村と石垣市の側枝苗増殖・育苗実証施設において、技術・経営面での検証が行われつつ実証用・緊急配布用の側枝苗が生産された。
 11年度においては、沖縄県内5地区に側枝苗を用いた2,000aの実証ほ、玉城村と石垣市に育苗培地生産及び採穂苗低温貯蔵に関する実証施設が設置される予定である。

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【5】さとうきび安定生産推進事業
(補助金額:6千1百万円)

 この事業は、かん水の励行を徹底する観点から、さとうきび農家の意識啓発のための推進指導を行うとともに、限られた水資源を有効に活用できるかん水チューブ等をモデル的に整備することにより、さとうきびの安定生産及び生産性向上に資することを目的としたもので、安定生産推進指導及び安定生産条件整備の2本の事業が実施された。これらの結果の概要は次のとおりで、11年度も引き続き実施されることになっている。

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1.安定生産推進指導事業

(事業実施主体:社団法人沖縄県糖業振興協会)
 かん水の励行の徹底を図るための推進方策等の検討を行うため、平良市、石垣市、那覇市、農協、製糖業者等により検討会が開催されるとともに、6市町村においてかん水に関する栽培管理指導が行われ、また、7市町村において700aの実証ほが設置された。

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2.安定生産条件整備事業

(事業実施主体:7農協)
 沖縄県内7農協により、10市町村において、モデル的に点摘かん水チューブ、レインガン、ポンプ等のかん水施設が整備された。

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【6】さとうきび品質測定安定化事業
(補助金額:4千3百万円)

(事業実施主体:社団法人鹿児島県糖業振興協会、社団法人沖縄県糖業振興協会)
 この事業は、さとうきびの品種構成が高糖度の品種へ移行してきていることを踏まえ、甘しゃ糖度換算式の見直し等を行うとともに、近赤外分光分析計で測定された蔗汁糖度(原料さとうきびの搾汁液の糖度)と従来方法である施光糖度計で測定された蔗汁糖度との比較検証等を行うことにより、甘しゃ糖度測定の信頼性を確保し、もって品質取引の定着化に資することを目的としたもので、甘しゃ糖度換算式検討及び近赤計測安定化の2本の事業が実施された。これらの結果は次のとおりで、11年度も引き続き実施されることになっている。

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1.甘しゃ糖度換算式検討事業

 農林水産省砂糖類課・畑作振興課、鹿児島県・沖縄県、鹿児島県・沖縄両県糖業振興協会、生産者団体、糖業者団体、学識経験者による検討会が開催され、甘しゃ糖度換算式の検討が行われるとともに、鹿児島県内7の分みつ糖工場における525点、沖縄県内11の分みつ糖工場における850点のサンプルが分析され、両県各農業試験場においてこのデータの解析が行われた。

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2.近赤計測定安定化事業

 鹿児島・沖縄両県糖業振興協会は、近赤外分光分析計による蔗汁糖度と従来方法である旋光糖度計による蔗汁糖度との比較検証等を行うため、鹿児島85点、沖縄122点のサンプルが分析されるとともに、近赤外分光分析計の品質測定の安定性を確保するため、システム管理等に関する研修が開催され、また、各工場において操業前の点検・検量線の調整、操業中の保守管理が行われた。

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おわりに

 これまで3号にわたって、平成10年度実施結果及び11年度実施計画の概要について紹介しました。
 平成10年度の各事業については、各事業実施主体により円滑に実施され、期待された成果をあげることができたと思われます。
 実施に当たっては、農林水産省砂糖類課・畑作振興課、北海道、鹿児島県、沖縄県等の行政機関、関係団体のご指導、ご支援をいただき、感謝します。
 平成11年度の事業についても、事業の実効を期待するとともに、関係者の皆様の一層のご指導、ご支援をいただきますようよろしくお願いいたします。

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「事業団から」
1999年10月
砂糖類生産流通合理化等助成対象事業について(その3)
 農産振興部

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