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寄稿文
[1999年5月]

「食育のすすめ〜現代人の食生活を問う〜」

 本稿は、 当事業団が平成11年2月10日(水)横浜市の 「はまぎんホールヴィアマーレ」 において開催いたしました<砂糖と食文化セミナー'99>における服部先生の講演内容をご紹介するものです。

学校法人服部栄養専門学校 理事長・校長
服部 幸應


●はじめに  ●増える大腸ガン、直腸ガン
●長生きするための食生活  ●大切なのは食教育
●人間の体は32歳までに作られる  ●32歳までにどのように体は作られる?
●恐ろしい偏った食生活   ●長生きの秘訣は、粗食、正直、日湯だらり、下風
●食生活において大切な砂糖を適量摂る   ●健康に良い食べ物


 こんにちは。
 現在、私は、テレビ番組を担当することが増えてまいりまして、週に8本レギュラーを持っています。実際に出演をしているのは3本位でしょうか。あとは企画を立てたり、演出をしたり、監修をしています。
 監修はドラマが多く、松本幸四郎さんが出演していた「王様のレストラン」、また「おいしい関係」、「ザ・シェフ」、「きらきらひかる」、「SMAP×SMAP」、つい最近では「ソムリエ」という番組の監修、「料理の鉄人」という番組では解説を行っておりました。実際には解説だけじゃなくて、材料を揃えるところから企画までやらされております。
 このようにグルメ番組ばかり手がけてまいりましたが、グルメ番組を作る際に、からだのことを考えなければいけないといつも思っています。

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増える大腸ガン、直腸ガン

 私は、生活習慣病の中でも「食生活習慣病」だろうと思っているものがあります。ご承知のように、毎年、年間89万人前後の方が亡くなっております。原因の1位は、ガンですよね。2位は脳血管疾患、3位は心臓病です。4位は肺炎から気管支炎です。5位が不慮の事故ということです。6位が自殺。それも男性が6位です。女性は強いですね。8位です。
 あとは代謝性慢性疾患である肝臓病や腎臓病です。非常に増えていますが、死亡の原因の7割が食生活に関連があるということになっています。ガンもそうだと私は思いますが、非常に増加していて、今は3人に1人。10年前は4人に1人でした。
 ガンは、前は胃ガンだとか子宮ガンが多かったのですけれども、この頃は肺ガンと腸ガンが多いです。これはどういうことかといいますと、我々の欧米化した食生活が原因となっているのではないかと思います。ここ40年間で足の長いお子さんが確かに増えました。ところが、変わっていないものがあります。我々の内蔵です。
 欧米人に比べると日本人の腸の長さは約1.5倍ほど長いのです。これは、我々が基本的に穀物とか植物性の物を食べてきたということです 穀物や植物性の物は、長い道のりがないと消化・吸収されません。これが欧米のようないわゆる高脂肪だとか動物性たんぱく質を摂ると、長過ぎて、一言で言うと途中で腐敗してしまうのです。いろいろな菌が生まれ、簡単に言えばそれがガンの原因になるということです。

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長生きするための食生活

 長生きするためにはどうしたら良いか。江戸時代に「長生きの歌」という歌を作って、108歳、煩悩の数までシャキッとして生きた方がいらっしゃいます。この方の歌を後で歌います。天海和尚さんの歌です。徳川家康から家光まで3代仕えた方ですが、現在、「長生きの歌」という石碑が上野の寛永寺にあります。
 日本人の寿命は、平成8年のデータでは女性が世界で13年間トップで83.82歳。男性は2年間世界一で77.19歳。3年前にアイスランドに一度負けまして、その前8年間はトップでした。ちなみに、日本の中でも女性のトップは沖縄県です。男性は長野県です。何を食べているのかを一生懸命調査させてもらいましたが、長野の方はイナゴ、ザザムシやハチの子を食べたりしているので、あれが良いのかななんて言うと、ワーッと皆さんそれを買い求める。お昼に放送している番組で「これがからだに良い。」と言うと皆さんワーッとそれを買いに行く。あの番組には功罪があると私は思っています。要するに情報が点になってしまいがちなのです。私はこれを線でつなげていくようにしなければいけないと思っています。

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大切なのは食教育

 現在、21世紀の栄養と食を検討する委員会であるとか、環境問題を食を通じて考えましょうという農林水産省の委員会、今荒れている子供たちがいるから、これにどのように対処していくかという文部省の委員会の委員をしています。
 どうしたら良いかを考える際、日本の教育は、3本柱だということを御存じですか。知育・徳育・体育です。私はこれに「食」を加えて、知育・徳育・体育・食育、これをキーワードにしています。食を育むと書きます。「食」というのはどんな字か分解してみてください。人を良くするとか、人を良くすることを育むという意味です。
 その場合、情報は点ではいけない。しかし、点をその人の基本的な知識として身につけさせることは大切です。昔はおばあちゃんの知恵というのがありました。30年位前から大家族制が崩れ、おばあちゃん、お母さんや子供たちと一緒に3世代、4世代が住んでいる家は少なくなりました。だから、今はおふくろの味も途切れているのです。
 コンビニでお弁当を売っています。幕の内弁当は、皆さんもお気付きだと思いますが、30品目位の添加物が入っています。例えば、色がついているとか、かまぼこだとかソーセージなどは噛んだ時にプリプリッとした方がおいしい。あれは人工的にプリプリッとさせたりしているわけです。目に見えないところにたくさんの添加物が入っています。
 1日に皆さんは80〜90品目の添加物を召し上がっているのです。これは農薬なども含めてですが、年間4kg位になるのです。「えっ、こんなにあるの、じゃ食べる物無くなっちゃうじゃないか」と言いますが、どんなものが安全か危険かということを知りながら、我々はきちんとした食生活をして行かなければいけないと思うのです。

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人間の体は32歳までに作られる

 我々の体は、骨に関して言いますと、最終的な機能の完成は、早い人でも20代の後半、遅い人で32歳位です。日本人は、カルシウムや鉄が非常に不足しています。というのは、日本は火山灰の上に菜っぱを植えているようなものですが、欧米は海が隆起して、貝殻の上に菜っぱを植えているようなものですから、カルシウムの量で言えば5倍位違います。600mg摂らなければいけないカルシウムを日本人は540mg位しか摂っていない。そこで、32歳に目標を置いていただきたいのです。どうやって食べていくかというのは、32歳までに密度、重量ともに太くてしっかりした骨を作っておくことが大切です。ところが、お子さんの食生活を正すお母さんもいなければ、学校も教えていないのです。
 皆さんはきっと、どこまでが限界かということは知らなくても、危ないなと思ったら止めなさいよとはおっしゃると思います。「モグモグコンボ」だとか「TVチャンピオン」という番組を収録する際のお弁当を我々の学校で作ってあげるわけです。今の子供たちは、わがままで、食べる子と食べない子の二つに分かれます。
 食べない子に我々は質問しました。「何で食べないの。」と質問すると子供は「硬いし、こんなの食べたことないし、これは嫌いだ」と答えます。お母さんに、「随分、好き嫌いのあるお子さんですね。」と尋ねると「いや、うちの子は何でも食べますよ。」と答えます。よくよく聞いたら、「何が食べたいの」とお母さんが子供にオーダーをとっていたのです。好きな物しか与えていないのだから全部食べるに決まっています。昔だったら、「これを食べなかったら元気にならないんだから。」とか、お子さんに対してお母さん方が言っていたはずです。
 また、「何で食べないの。」と8歳位のお子さんに聞くと、「ダイエット中」と言うんですよ。これは大変だ。「どうしてそうなの。」と聞くと「お母さんがお父さんみたいになっちゃだめって言うの。」と答えます。
 そこで、未婚の方も含めてエステに通っている人とか女性の方々に、どの位の方がエステになぜ通っているかというのを調べてみました。出るところが出ちゃったとか、ファスナーが上がらないとか、いろいろありますが、実際には7割の方がやせなくて済む体型なのです。そのような状況の中で間違った方向に子供たちを暗示にかけて導いているのです。

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32歳までにどのように体は作られる?

 32歳に到達するまでの流れを申し上げます。現在、私は解剖だとかいろいろなことで医学部へ通うことが多いのですが、胎盤の中の羊水が汚れています。いろいろな物を食べているからでしょうか。お腹の中に小さい赤ちゃんで魚のような格好をしたのがプッとできるのですが、脳が作られるのは、2週間から4カ月の間です。基本的な脳ができるのがこの時期です。もちろん、それからどんどん記憶回路などが発展して大きくなって行きますが、まずそこで基本ができるのです。この時期に、いろいろな物質が関与して、正常な脳ができないということになるのです。まず、そのことを覚えておいて下さい。
 そして、いよいよ生まれてきます。そうしますと母乳を与えます。スタイルを気にして、最初だけあげる人、最後まであげない人、最初から全然あげない人といらっしゃいますが、最近では、免疫を作るためにも母乳をあげるというお母さんも増えました。
 まず、赤ちゃんというのは目が見えないから、授乳の時に声をかけていただきたい。目が見えない時、「かわいいわね」とか、「こんにちは赤ちゃん」とか、そうやって声をかけていただきたいのです。これは大事なことです。ちょうど鳥の卵で、まだ殻を破る前の動き始めている時に声をかけるのと同じことです。くちばしでポンと割って、最初に聞いた声と見たものが親になるのです。声をかけないのは親を放棄しているようなものですからね。
 そして、目が見えるようになった時に大切なことは、目を見つめてほしいのです。そして、声をかけることです。ニコっと笑うと、ニコっと返しますよ。情操教育はここから始まるのです。ところが、しばらくやっていると飽きてしまい、お母さんは横を向いてテレビを見ている。
 思春期には、第1次成長、第2次成長とありますが、第1次成長期は、乳児〜幼児の時期です。第2次成長期は、ホルモンが入れかわって大人になる時期です。いわゆる思春期で、女の子の方がませておりまして、8歳位から始まります。男の子は、10歳位から17〜18歳までが思春期となります。この時期の食育教育が一番大切です。私は食育教育を小・中学校の授業に入れてほしいと言っているわけですが、学校の担当の方が、「それは家庭で教えることです。」と言われます。私は家庭がだめだから言っているわけです。
 食育教育を行うための指導員を育てるだけの予算もなければ時間もない。現在、国・公立の小・中学校に1万3,000人の栄養士がいます。これを使うことはできないか、これは教員免許がないから使えない。しかし、このような状況が続くとおかしな子が育ってしまうと主張しています。
 去年の5月、文部省で決定してくれたのですが、家庭科の授業と保健体育の授業に関しては教員免許なしで特別講師という扱いで、3年間かけて6ヶ所の地区で食育教育が行われることとなり、8月からスタートしています。そういったベーシックなものを教える教育をカリキュラムに入れてもらえそうです。

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恐ろしい偏った食生活

 去年の夏でした。全国の高校の校長先生と教頭先生の集まりがありました。そこで、私は講演をやりました。子供たちが今いろいろと体を悪くしている。一番大事な時期、32歳までの間にきちっと体をつくらなければいけないにもかかわらず、偏った食生活や朝食を摂らないなどいろいろな問題があるといった講演内容でした。その後、先生方と懇談した時に聞いた話ですが、今の地方の国・公立の中学校、高校では、教室は穴だらけで、窓ガラスはバリンバリン、ベニヤで補強してあるような教室が多いそうです。人の頭をポコポコなぐっちゃうとか、そういう不安定な子が非常に増えているのです。
 いつもイライラしている子供の割合について、高校、中学、小学校と調べさせていただきましたが、いつもイライラしている子は高校が32.6%、中学が34.3%、高校生を上回っています。予備軍である小学生は0.87%でした。そして、「たまにイライラする」という子がそれぞれ6割いるのです。ということは、9割位の子供がいつも何らかの形でキレる可能性があるということです。
 1985年のアメリカのデータを、1987年頃に手に入れたことがありました。6,000名を収容する刑務所の受刑者をA〜Eランクの五つのグループに分けました。Aランクの中には、無差別にだれでもかれでも撃ってしまった人もいます。また、この中には年齢も小学生から始まって老人までいますが、大体若い人が多い、20代の後半位までです。この人たちがどんな環境で育ち、どんなものを食べてきたかということを分析しました。その結果、スナック類を中心に食べ、まともな食事を摂らずに偏った食生活をしていた人が大体Aランクとなっていましたが、食生活が安定するに従ってAランクの人数が徐々に少なくなったというデータです。1985年前後のアメリカでは、その関連のデータばかり出されました。
 日本でも、現在、小学生位から32歳までの一番大事な時期に偏った食生活をしている子供たちが大変多いのです。お母さんが、「勝手に何か買って食べなさい。」などと言っていると、これとこれを食べなさいと言っても食べない。食べさせたら子供がムカついて向かってくるなんてこともあるのです。やはり、きちんとした安定した食生活をさせる必要があるのです。
 若田光一さんというスペースシャトルで9日間空を飛んだ宇宙飛行士の方にNHKの対談で会いまして、彼が食べた9日間の食事を僕が全部試食する役目でした。フリーズ・ド・ドライになっているものですが、食べてみました。どんな味かというと、スナック類だとかコンビニで売っているインスタント食品の味そのままでした。9日間飛んでいるうちの5日目位になったら、6人の飛行士がみんなイライラしてきたというのです。彼は目をつぶると、おふくろの味である肉じゃががクルクル回ったと言うのです。そこでやはり、精神安定剤というのはお母さんの味なのです。
 今これだけ忙しくなってしまったので、全部作れというのは難しいでしょう。そこで私が提唱してるのは、一汁一菜、一つのお汁と一つのおかずは絶対作りなさい。あとは組み合わせで、加工食品でも良いから、安全な食事だなというものを買ってらっしゃいということです。お汁物はみそ汁でも良いし、具だくさん、実だくさんが欲しいのです。旬の物をたくさん入れたものを作ってください。
 旬にとれた野菜と旬を外れた野菜とを比較すると、ビタミンが平均すると5倍違います。日本の土壌で仕上げたものに関していえば、ミネラル類、鉄、亜鉛、マグネシウム、カルシウムはあまり変わりませんが、ビタミンが違う。中の酵素の活性が違います。春先になると芽吹きます。あれは酵素が非常に働いていますから、ちょっと食べただけでも効くのです。
 要するに偏った食生活だけはやめてほしいと私は言いたいのです。

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長生きの秘訣は、粗食、正直、日湯だらり、下風

 私は最近ダイエットしました。一番安全な方法は何かと考えました。
 そこで、いよいよ本題の歌を歌わなければいけなくなりました。歌は、「長生きは粗食、正直、日湯だらり、時々下風あそばされたし。」これだけです。
 解説のその1。長生きは粗食です。腹八分目とよく言いますが、私は実は腹七分目にしました。普段食べている量、朝から晩までいつもと変わらず、お酒の量も変わらず、同じ物が食卓に並んでいます。いろいろなところに行ったりする。そのうちの3割を残すことにしました。残すのが気になるので、隣に人がいると最初から分けました。
 そういう前提のもとに始めましたが、知っている料理人などに、「悪いけれど、今控え目なので半分にしてくれ」と言うと、大体7割持って来ます。「ちょっと減らしてよ」と言うとほとんど減ってない。だから私はいつも半分と言うのです。そうすると丁度良い。そんなことで、9カ月経った時に丁度10kg落ちていました。
 実を言うと、体脂肪が32%ありましたが、19%になりました。1日30gから50g徐々に減って行きました。
 このようにすると、胃が小さくなります。2週間もすると3割位受け入れないような胃になります。もともと偏った食生活をしている人たちにはまねしてほしくありません。朝食を抜いているような人、そしてスナック類を中心に食べている人は絶対やってほしくない。ちゃんと食べているから言えることなのです。
 朝、昼、晩3食をきちんと食べたとして、3割ずつ減らすと総摂取カロリーという観点からは1食抜いたことと同じです。今は8割に戻っています。なぜかというと、体重を維持したいからです。
 皆さんは、年齢差があります。それと労働差があります。普段食べている物に差があるから、やたらまねはしていただきたくないので、まねができるように、この年齢のこういう仕事をして、こんな物を食べている人がこうなりますと、今一生懸命書いています。
 やっぱり粗食は大事ですね。いろいろなことが言われているし、いろいろな学者の方も調べておられる。要は食べ過ぎです。体質ももちろんあります。なりやすい人、なりにくい人。しかし、食べ過ぎは全て良くない、極端なことは良くない。
 長生きの歌の2番目は正直です。歯に衣着せず、何でもずけずけ、ストレスがたまらない人。こういう人が長生きします。
 3番目は、日湯だらり。「日」という字に「だらり」。これは片仮名で結構ですけれども、仏教から来ている言葉です。小原庄助さんのことです。朝湯、昼湯、夜湯は是非入りなさい。それで真っ裸で畳の上で大の字になってダラッとさせろということです。
 最後の言葉が決定的かもしれません。時々下風あそばされたし。皆さん、時々下風あそばされてますか。これは我慢しちゃいけないものですよ。何でしょう。ゲフウ。江戸時代から生きている方は良く分かるのですが、おならです。下の風と書きます。これを我慢すると緊張する。緊張したところで我慢する。逆流するんですよ。ガスが腸の毛細血管から血管の中に入りまして体の中を回ります。もちろん肺のところへ出てきて、そこからすっと抜けるのです。ですから是非下風あそばされたしですよ。

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食生活において大切な砂糖を適量摂る

 お砂糖が発明されたおかげで食卓がバラエティに富んで、おいしい物が増えました。なにしろ「うまい」という言葉は「甘い」から来ていますからね。「ウマイ」というのは「アマイ」から変化したのです。だから甘さというのは食の原点なのです。
 しかし、西洋料理の場合は、特にフランス料理はほとんどデザートにしかお砂糖を使いません。一部使うとすれば、ソースに色合いをつけたり、キャラメリーゼというプリンを作る時に、色がキャラメルみたいな物が入っていますでしょう。ずっとお砂糖を煮詰めていくと糸を引いて茶色い色になります。むしろ、苦みであるとか、甘みよりコクを出すということに使われます。あとはデザート類に使われるだけです。
 日本料理の場合は、「さしすせそ」といって、煮付ける場合もそうですし、これは相当使われていますし、皆さんも使い方をよくお分かりだと思います。肉じゃがなどにもお砂糖がたくさん入っていますよね。
 中華料理はどうか。中華料理も結構使います。
 砂糖には塩と似ていて脱水作用があります。西洋料理の方が皆さんお分かりだと思いますが、スモークサーモンを早い時間で脱水させるためには塩2に対して砂糖を1入れます。それをすり込む。そうすると後で甘みが残らない。結構きれいに水を抜いてくれる。野菜を塩でもみますが、これは砂糖でもんでも同じような効果が得られます。砂糖は、脱水効果というか、いろいろなものを吸収してくれる。お砂糖があるおかげで腐りません。これは細菌が必要とする水分を砂糖が吸収してくれるからです。
 調味料の使い方として、それぞれタイミングがありますから、「さしすせそ」というわけです。「さ」と「し」は、どうしてこのような順番になったのかは、分子の大きさが違うからです。砂糖は分子の大きさが塩に比べて大きいのです。塩は小さい。塩を先に入れてしまうと、煮ているものの周りに塩でびっちりコーティングされてしまうのです。そうすると後から大きい分子の砂糖を入れても中に入り込めなくなってしまいます。丁度ビニールの膜を張っているようなものです。逆にお砂糖を先に入れてから塩を入れると、すき間から塩が全部入ってくれる。昔の人たちが顕微鏡も見ないのに分かっていたことなのです。
 「さしすせそ」の「すせそ」というのは、香りの部分を重視したもので、酢、醤油、みその順に入れるのが良いということで、「さしすせそ」と言うのですが、調味料をどのようにうまく使うかについての昔ながらの知恵なのです。
 我々は砂糖などを使う際、的確な使い方をすることが大切です。朝、眠いなという時にコーヒーにちょっと砂糖を入れて飲むと、サーッと血管の中にブドウ糖として入って行きます。10分前後で元気になります。
 要は摂取量が問題なのです。摂り過ぎてはいけません。できたら小さいお子さんに指導していただきたいのです。お子さんの将来を考えた場合には、それをきちんと指導してもらいたい。そのかわり、極端なことを言えば、32歳を超えた人は、もう何をやっても良いのです。毒を食べちゃっても大丈夫ですよ。それまでにちゃんとしたものができ上がっているからです。
 我々はある時期にきちんとした食生活をして体を作ってしまえば、後はそれほど気にすることはないのです。例えば、骨のことで言いますと、牛乳などたくさん摂ることは大切ですが、骨の中のカルシウムは、32歳をピークにして、減少する一方です。

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健康に良い食べ物

 最後に皆さんに召し上がっていただきたいものを申し上げます。野菜を少なくとも400gは摂っていただきたい。内訳は緑黄色野菜100g、淡色野菜200g、芋類100gが良いです。中位のトマト1個150gです。キュウリ1本150gですから簡単です。日本人はそれもまともに食べていないのです。
 現在の日本人は繊維分が少な過ぎます。1日に16g位しか摂っていません。できたら25g摂ってほしいのです。それには「ゴズコン」を摂る。奈良時代の僧たちが食べていたようなものです。「ゴ」、ごまのことです。「ズ」、豆のことです。「コン」、昆布です。それプラス、きのこ類を是非摂っていただきたい。「ゴズコン」はそれぞれ30gずつで結構だと思いますが、きのこに関しては50〜60gは摂っていただきたいと思います。もちろん、お豆腐だって豆からできていますし、納豆だって良いわけですが、そういう食べ方をしていただきたい。
 32歳までに極端な偏食をしてはいけないということを知っていただきたいのです。今まで32歳までの物差しで見た人はいません。これは私がお医者さんと随分討論したりしました。そんなことで限定するなんて、先生それは危険だよ、なんて言う人がいました。本当にそこまでで命を断っちゃう人がいるかもしれないなどと言う人がいます。しかし、32歳までをバロメーターとしてきちんとした食生活を送る。それを目標に皆さんに食べていただきたいのです。そして、私もこれを小・中学校から教えていくような、それも見やすい漫画形式であったり、人形劇を使ったり、いろいろなことを通じて、テレビでも今から仕掛けて行きたいと思っております。
 食生活において重要な位置を占める砂糖の持っている良さを理解するとともに適度に摂ることが大切ですが、疲れた時は、是非甘い物で心身ともに活性化して下さい。今日、この講演会が終わったら、大分お疲れでしょうから、早速パーラーへ行って甘いものを召し上がっていただきたいと思います。
 大変ありがとうございました。

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BACK ISSUES
●1999年5月 食育のすすめ〜現代人の食生活を問う
 学校法人服部栄養専門学校理事長・校長 服部幸應
清涼飲料と砂糖
 清涼飲料相談センター 前センター長 水内武男
●1999年4月 子どもをむし歯にしないために
 大阪大学歯学部小児歯科学講座 大嶋隆、祖父江鎮雄
砂糖の誤解を解く〜健康な脳を作るために〜
 浜松医科大学教授 医学博士 高田明和
●1999年3月 適量の砂糖で健康に
 女子栄養大学客員教授 東畑朝子
和菓子へのこだわり
 株式会社虎屋 社長室広報課課長 川口達也
●1999年2月 「食と健康」 〜砂糖と健康の関わり
 京都大学名誉教授・椙山女学園大学教授 安本教傳
●1999年1月 おいしゅうございます〜人生を楽しくする砂糖
 食生活ジャーナリスト 岸 朝子

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