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地域だより[2010年1月]

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最終更新日:2010年3月6日

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[2010年01月]

宜野座村で地域情報交換会を開催


 平成21年12月9日、宜野座村中央公民会において、北・中・南部の各地区さとうきび生産振興対策協議会と当機構那覇事務所の共催により、さとうきび栽培技術の向上と生産意欲の高揚を目指し、地域情報交換会を開催した。

 より良いさとうきび作りを目指す生産者らが、本島各地からおよそ250名が出席し、栽培技術や優良農家の事例の紹介に、熱心に耳を傾けていた。

図1 会の様子


【講演概要】

① 「南大東島のさとうきび栽培におけるかん水効果について」  
講師  前田 建二郎氏(大東糖業株式会社南大東事業所)

 一人目の講演者である前田氏からは、南大東島における点滴チューブを利用したかん水について、講演があった。

図2 前田氏による講演

 南大東島は、珊瑚が隆起し形成された島であり、水質・水量ともに十分なものが確保できないため、節水型(スプリンクラーの1/3程度の水量)の点滴チューブを使ったかん水が行われている。点滴チューブによるかん水は、少量の水で効果があり、株元に配置するので水ムラが少なく、液肥を混ぜることで効率的な施肥が可能になるなど、多くの利点がある。

 効果は、豊作・凶作年ともに10アールあたり2〜3トン程度の増産、金額にすると5〜6万円の増収が確認されている。費用は、水源から直接かん水できるほ場で10アールあたり年間1万4000円程度であるので、費用を差し引いても収益が上がることから、手間はかかるが南大東島では普及が進んでいる。

 以上のような南大東島におけるかん水効果が紹介され、具体的にかん水チューブの敷設位置や適期適量のかん水の方法、また、かん水効果をさらに高める新たな試みなどが説明された。

 最後に前田氏は、かん水は干ばつ時にのみ行うのではなく、通常の管理作業ととらえ、「水をまいて雨を待つ」さとうきび農業を実現したい、と抱負を述べた。

参考:かん水は、発芽期には発芽不良を抑制し、補植時には活着をよくする効果がある。また、成長期に干ばつ傾向になると、成長が抑制され深刻な場合には枯れることもあるので、かん水は重要な栽培管理の一つである。


② 「一芽苗補植による増収効果について」  
講師  伊志嶺 正人氏(沖縄県農林水産部営農支援課)

 ハーベスターにより収穫されたほ場は、株の引き抜きや踏みつぶしにより欠株が生じやすいことから、株数を確保する補植作業が重要となる。二人目の講演者である伊志嶺氏からは、その解消策である一芽苗の補植について講演があった。

図3 伊志嶺氏による講演

 さとうきびの芽は各節にあり、節を1つ含むように切断し育苗したものが一芽苗である。一芽苗は、50穴セルトレイで多量生産ができ、運搬しやすく、大苗育苗が可能という利点をもち、自家育苗が可能な補植苗である。

 補植成功のポイントは、発芽率の良い苗作り、補植時期、そして苗となるさとうきびの品種の選定などである。

 苗作りで重要なことは、発芽率を高めることであり、石灰水に一晩浸け、膨らんだものだけを苗として使うとよい。補植苗は植え付け時期が遅くなると周りのさとうきびに負けて成長できなくなる。品種は、元苗よりよく伸びるものを選ぶとよい。これらのことに気をつけて補植すれば、元苗と比べても遜色ないさとうきびに育つ。

 以上のような苗作りから補植までの説明の他、製糖期には工場から出るフィルターケーキを利用すれば暖かい苗床で発芽が促進されるなどの具体的なアドバイスがあった。
  

③ 「さとうきび優良農家の増産取り組み」  
講師  平良 正彦(沖縄県南部農業改良普及センター)
  
 三人目の講演者である平良氏からは、南部地区のさとうきび優良農家3者の取り組みについて講演があった。

 一人目として、畜産農家から譲り受けた堆肥を利用した土作り、適期かん水、肥培管理を徹底するなどの努力で、夏植えさとうきびで10アールあたりの単収が23.74トン(県平均7.82トン)の成績を残している生産者の取り組みを紹介した。

 この生産者は、野菜作りの経験から、A級品でないとよい値段で売れない野菜づくりと同じ意識で、高糖度・高収量のさとうきび作りに努めている。「自分の暇な時間に畑に行くのではなく、さとうきびに合わせて畑に行かなければならない」という同生産者の言葉を紹介し、生産意識の向上を呼びかけた。

 二人目として、自身では機械を所有せず、整地から中耕培土にいたるまで多くの作業を委託し、自身はまめに畑に通い肥培管理を徹底することで、茎径4センチにもなる(通常2.5センチ程度)のさとうきびを作っている生産者が紹介された。
 
 三人目として、豚糞尿処理水を利用したかん水を行う生産者の事例を取り上げ、その肥料効果とかん水効果、また散布時期やさとうきびの出来栄えについて紹介された。

図4 多数の生産者が参加

④ 「わたしのウージ作り」  
講師  照屋 勝弘(宜野座村さとうきび生産組合長)

図5 講師 照屋氏(宜野座村さとうきび生産組

 最後に、今年度の沖縄県さとうきび競作会農家の部で第一位(農林水産大臣賞)を受賞した、宜野座村さとうきび生産組合長の照屋氏から、競作会で一位を受賞するウージ(沖縄の方言でさとうきびを指す)作りの様子について講演があった。

 照屋氏は、特別な栽培方法を行っているのではなく、除草・補植・施肥・かん水などの栽培管理を適期に適切に行うことが、高品質・多収量のさとうきび生産に繋がるとことを強調し、それらの具体的な方法を紹介した。また、やそ(野鼠)駆除について、薬剤がカラスに持ち去られないよう、トイレットペーパーの芯に駆除剤を入れて設置するなど、ユニークな方法も紹介された。

 最後に、照屋氏は、「作物は主の足音を聞いて育つ」という言葉を引用し、ウージ畑に頻繁に足を運び、その状態に応じて栽培管理を行うことが、よいウージ作りにつながると締めくくった。

おわりに

 今回の地域情報交換会では、多くの参加者が栽培技術や優良生産者の取り組み事例について熱心に耳に傾けている姿が印象的だった。また、具体的な作業の方法を質問する場面もあり、生産者の関心の高さをうかがわせた。出席者からは、「情報交換は重要、農家の活力源になる」「地域に持ち帰り普及に努めたい」「地域情報交換会の回数を増やして欲しい」といった意見が多数寄せられた。
   
 今回の講演では、日頃の栽培管理の徹底がさとうきび増産につながる、ということが改めて確認された。今後も当事務所では、生産者の生の声による情報交換をする場としてこのような会を開催し、優良農家の優れた取り組みの拡大に寄与していきたい。

 



平成21年度 沖縄県「防風林の日」関連行事について


1 はじめに


 平成21年11月26日(木)に久米島町仲里農村環境改善センター他において沖縄県防災農業推進会議主催、久米島町協力により「防風林の日」関連行事が行われた。

 沖縄県は台風の常襲地帯であり、強風や潮害による農作物や農業用施設などへの被害が大きく、防風・防潮林の整備を加速させる必要があることから、平成18年に「沖縄県防災農業推進会議」を設置し、また、11月の第4木曜日を「防風林の日」と定め、防風・防潮林についての普及啓発に取り組んでいる。

 「防風林の日」の関連行事として、①防風・防潮林の整備に積極的に取り組んでいる団体・個人を表彰する沖縄県防災農業賞表彰式②さらなる理解の啓蒙を深めるための防災農業推進講演会③関係者、地元児童および農家による植樹大会-が行われたので紹介する。

 なお、関連行事開催にあたり、主催者を代表して、同会議の委員である護得久沖縄県糖業振興協会理事長が「沖縄県は毎年台風により農作物に多大な被害を受けている。本年も南・北大東島が台風の被害を受け、改めて防災農業の確立の必要性を認識した。防風林の整備は育林のための地道な取り組みを継続していくことが必要であり、地域の活動として定着させることが重要である。」と述べた。

図1 護得久沖縄糖業振興協会理事長あいさつ

2 沖縄県防災農業賞表彰式

 今後のさらなる取り組みの拡大を図るため、防風・防潮林の整備を積極的に推進し、他の地域の模範となる取り組みを行っている美崎地域資源保全の会(久米島町)と南大東村さとうきび生産振興対策協議会(南大東村)の2団体に対し表彰が行われた。

 団体の概要は次のとおりである。


(1)美崎地域資源保全の会(代表者:平田 勉氏)

 平成19年、久米島町で設立され、農家150名、美崎地区内の3自治会、各種団体16団体が構成員となり、地域内の農村環境の保全と向上を目的に活動している。

 主な活動として、平成19・20年度の2年間、延べ参加人数857名を動員し、風当たりの強い農地周辺に、フクギなどの防風林を植樹し、あわせて、除草、整地作業を実施した。また、地元小学校、PTAと連携し、花壇を新設し、児童生徒とともに花木の植栽を行うとともに、定期的な除草作業、植え替えなどの管理作業も行っている。


(2)南大東村さとうきび生産振興対策協議会(代表者:仲田建匠氏)

 平成14年、南大東村で設立され、村、大東糖業(株)、JA、各字代表、村農業青年クラブなどを会員とし、さとうきび生産振興を円滑かつ効率的に推進することを目的として活動している。

 主な活動として、平成18年から毎年4月第4土曜日をさとうきびの日とし、地域住民が一体となって植樹・保育活動に取り組んでおり、これまで延べ11箇所、約1万5000メートルの防風・防潮林の植樹を実施している。また、苗木を極力村内で育苗しており、植樹を希望する農家には無償で配布し、積極的に防風・防潮林の育成などの活動を行っている。

 受賞者を代表して平田 勉氏が、「(植樹・保育活動を通して、)生産農家や地域住民に対して、農地防風林の重要性についてさらに意識啓発が図られるよう取り組んでいきたい。」と述べた。

図2 表彰団体の代表者
図3 受賞者挨拶

3 防災農業推進講演会

 「地域における防風林の植樹・保育活動と樹種選定について」をテーマとして、石垣市の元・宮良川土地改良区事務局長の宮良安晃氏と、沖縄県森林資源研究センターの生沢均氏を講師に招き、講演会が行われた。

 宮良氏は、「ふるさとフクギの会の活動について〜農地防風林の維持管理活動〜」と題して、土地改良区の所有する防風林帯の一部を一般住民の方に提供し、野菜などを栽培してもらいながら防風林の維持管理(水やり、雑草除去など)を行う活動内容および会の今後の課題とこれからの計画について講演を行った。また、生沢氏は、「防風林で島を守ろう!〜恒久的な防風林を目指して〜」と題して、防風施設の種類、防風林の必要性・機能、樹種選定・配置などの考え方、主要防風樹種の特性などについて講演を行った。

図4 講師(左)宮良安晃氏(右)生沢 均氏
図5 講演会の様子

4 植樹大会

 会場を同町の仲里土地改良区に移して植樹大会が行われた。開催地の平良久米島町長、当機構理事長(代読)あいさつのあと、農家代表として久米島町さとうきび生産組合長の新垣氏の発声のもと、スローガン・がんばろう三唱が行われ、引継ぎセレモニーとして平良久米島町長から来年度開催地である前田伊是名村長へ苗木が引き渡された。

 植樹は、さとうきびほ場脇への代表者の記念植樹に続き、今回初めての試みとして、次代を担う地元仲里小学校、緑の少年団3年生26名が参加して植え付けが行われた。その後、関係者と参加農家の手によりフクギ、テリハボク、アカテツ400本の植樹が行われた。子供たちも加わることで、地域を挙げた防風林推進活動が広まることが期待される。

図6 植樹大会
図7 緑の少年団の植え付け


5 おわりに

 台風の常襲地域である沖縄県は毎年台風の被害を受けており、農作物の安定生産のため防風・防潮林の整備は重要である。しかし、木が生長し、防風・防潮林として効果を発揮するには長い年月がかかり、植樹後の定期的な雑草防除や肥培管理が必要である。今後、地域の理解と協力により、防災農業の確立が推進されることを期待している。