砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 機構から > 生産者が取組むさとうきび増産と担い手育成〜第7回さとうきび・甘蔗糖関係検討会における意見交換から〜

生産者が取組むさとうきび増産と担い手育成〜第7回さとうきび・甘蔗糖関係検討会における意見交換から〜

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2008年1月]

【生産地から】
調査情報部 調査役 大槻 祐資

1.はじめに

 さとうきびの増産に向け、鹿児島・沖縄両県では増産計画に基づき、生産者をはじめ関係者が一体となった取組みを行っている。
 一方、昨年スタートした砂糖に関する新たな経営安定対策においては、生産者に対して再生産の確保を可能とするための直接支払いが行われるが、一定の要件に合致した生産者のみが直接支払いの対象となる。この対策にも対応できる担い手の育成が、緊急の課題となっている。さとうきびの増産や担い手育成は、今後、生産者自らの現場での取組が重要となると認識している。
 本誌12月号で報告した第7回さとうきび・甘蔗糖関係検討会では、鹿児島県と沖縄県の各地域から生産者の代表15名の参加を得て、さとうきび増産と担い手育成に関して、具体的にどのような取組を行っているのか、課題は何なのかについて報告していただき、意見交換を行ったところである。
 今回、その意見交換の内容について紹介するので、各地域での取組の参考として活かしていただきたい。
 なお、本誌次号においては、検討会当日に発表された、株出し管理のポイントについて掲載する予定なので、併せて参考としていただきたい。

2.さとうきび増産に向けた取組の現状と課題

 さとうきび増産に向けた各地域での取組については、沖縄県の2地域からの発表と出席者からの発言をいただいた。
(名護市)久志区ではさとうきび生産向上推進組合を設立し、JA、糖業、行政と連携して、展示ほ場を設置し、地域にあった品種の選定、種苗の増殖、栽培指導などを行っている。これにより、病害虫、地力低下、栽培技術などの単収低下の原因を改善しつつある。なお、4、5年前から、地力の増進のため、春植え更新時に堆肥を投入(1,000トン/35ha)し、これが単収増につながっている。
 新規就農希望者もいるが、遊休地や借地が少なく、栽培面積の拡大は難しい。
(恩納村・JA)かん水設備が整備されていないため、初期生育、成長期にかん水が十分できない状況にある。増産のためには、今後、生産者、地域、行政と十分に話し合った上で、簡易ため池、畑地かんがいなど当地に合った導入を図っていきたい。
 また、地力低下、肥培管理の不徹底、による単収の低下が著しい。これには、村補助金をさらに有効に活用し、堆肥による地力増強に努めたい。
(読谷村)読谷村は、500名余りで生産組合を結成しているが、単収アップのため、この組合が中心となり、土作り、肥培管理を行っている。

 鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場作物研究室の藤田主任研究員からの「種子島における株出し管理のポイント」の発表を受けて、種子島の生産者からは次のとおり発言があった。
(種子島)株出し管理は、ここ2、3年で聞かれるようになった技術。これが、収量アップにつながるということが、今の発表で理解できた。今後、株出し管理を大いに進め、増産につなげていきたい。
 ところで、種子島ではマルチをかけているが、労力とコストがかかることが悩みである。

 作業委託による増産の可能性について、次のとおり発言があった。
(沖永良部)単収の低い農家は、受委託を取り込むことによって単収を上げることができると思う。例えば、肥培管理作業の一部である堆肥散布や深耕などを委託することによって、単収が上がることになるのではないか。農家は、単収が上がれば収入がアップし、その委託にかかる費用も捻出できるだろう。

 作業委託については、次のような懸念も示された。
(与論島)与論島では、畜産が伸びてきているために、さとうきびの収穫面積がなかなか伸びないのが現状。
 ほとんどの農家は作業を委託しているが、委託費が収入を食っている状況。株出し栽培の場合は、1年目の収穫は委託費に相殺され、2年目以降の収穫がやっと収益になる。
(奄美大島・行政)奄美大島では、山の中や道路から離れた場所で、ハーベスタなどの農作業機械が入ることのできないほ場があり、こうしたほ場では、基幹作業の委託ができない。このようなほ場を持っている農家が、さとうきび栽培をやめてしまうのではと、大変心配している。

3.担い手育成に向けた取組の現状と課題

 担い手育成に向けた各地域での特徴的な取組や課題について発言していただいた。
(与論島)与論島では、手刈り収穫が7割であり、その中で栽培面積が1ha未満の農家が65%も占めている。その農家を今後どのようして集落営農に取り込んでいくか、ということが大きな課題となっている。担い手育成協議会では、そういった農家をどのようにしてまとめるかということで、協業組織等、様々な組織化の形態について話し合いを進めてきた。しかし、話し合えば話し合うほど、経理の一元化、農協への手数料といった課題が浮かび上がり、これらをどのように解決すべきか非常に悩んでいるところ。国には、そういった状況を現地で見てもらいたい。
(奄美大島・行政)奄美大島では、農作業受委託の取りまとめのための組織が3つ設立されている。各農家がここに基幹作業を委託することによって、まずは、A―4の対象要件を満たすようにしたい。しかし、これらの農作業受委託組織が最終的な目的として、特定営農組合、協業組織、特定団体、営農団体などの法人化を目指すとなると、経理の一元化の問題をクリアできないことが分かり、先に進めない状況にある。今、これらの組織は、農家の脱落がないようにA―4、A―5の農家の受委託の取りまとめを行っている。今は、そこまでの体制しかできていない。
(沖永良部)この場(検討会)にいる皆さんは農家の代表。我々に課せられている任務は、まず、さとうきびを作り、単収を上げること、そして、そのことにより集落の皆さんを引っ張っていくことではないかと日頃感じている。
(名護市)名護市の久志区は共同利用組織としての条件は整えられていると思っている。今後は全生産農家が参加した、農作業の受委託だけでなく、農地の利用調整等も実施できる協業組織等への移行を念頭に置いた取組が必要と考えている。
(恩納村)恩納村では、生産農家の高齢化や後継者不足に伴い、生産面積の維持が精一杯の状況であるが、地域の担い手を中心とした、集落単位の生産組織や機械化一貫体系による農作業受託組合の育成が目的である。現在ハーベスタを完全作業受委託契約により、集落割当てで収穫作業を行っている。しかし、ほ場が分散しているため、移動に時間が割かれ、作業時間の低下がみられる。

4.トラッシュ低減と機械利用料


 新光糖業株式会社の林農務部次長からの「種子島のトラッシュ低下・耕畜連携に向けた取組」の発表を受けて、生産者をはじめ皆様から質問や発言をいただいた。
(徳之島)徳之島では、ハーベスタの機械使用料を4段階に設定している。農家は、設定金額を高いと思っている。加えてデトラッシャーの利用料も払っているので、なおさら高く感じている。農家はハーベスタを持っている人だけに利益が出ていると思われている。しかし、ハーベスタは、燃料の高騰、老朽化に伴う修理・整備費の増大などで経費がかかる。
 種子島では経費について農家の理解が得られているようだが、農家から、利用料金の値下げの要望はないのか。
(種子島)農家からの要望ではなく、精脱葉施設の側から料金の値下げを示した。今も下げたいと思っているが、燃料費などの状況を見ようということで、まだ値下げはしていない。
(北大東島・行政)北大東島には精脱葉施設はないが、今後は、導入に向けて取組まなければいけないと思っており、今の発表は大変勉強になった。
 導入に当たって、精脱葉施設に係る管理費などの設定について農家と調整しているところだが、ハーベスタ料金が高いという農家の考えとも絡み、なかなか進んでいない状況。北大東島ではすべて大型ハーベスタで収穫しており、トラッシュ率は平均で15%、最大で25%にもなるので、糖業は大変悩んでいる。種子島でのハーベスタ刈りのトラッシュ率が3%以内という数字に大変驚いている。本当なのかと不思議でしょうがない。

5.最後に

 今回の検討会は、さとうきびの増産・担い手の育成について生産者間で議論していただき、その内容を各地域の取組の参考にしていただくことを目的のひとつとした。生産者からの発言は大変活発に行われたが、時間が足りなかったように思う。日程の都合上やむを得なかったとはいえ、時間は十分に確保すべきであったと事務局として反省している。
 次回の開催に当たっては、より一層議論が深まるようテーマ設定や時間設定など、工夫してまいりたい。



ページのトップへ



このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ )
Tel:03-3583-8713