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女満別町におけるてん菜直播栽培優良事例の紹介

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最終更新日:2010年3月7日

砂糖類ホームページ/国内情報

生産地から
[2005年9月]

渡島中部地区農業改良普及センター 地域第二係長 水間 敦文


1 地域の概要と事例農家
2 経営内容の特徴
3 てん菜の生産実績
4 輪作と土づくり
5 てん菜の直播栽培について
6 直播栽培技術について
7 今後の取り組みと課題
8 まとめ

1 地域の概要と事例農家

 女満別町は、網走郡のほぼ中央に位置し、市街地南東部に広がる緩やかな台地と、北西部に広がる網走川流域の低地からなり、夏はオホーツク海からの高気圧の影響で冷涼になりやすいが、7〜8月にかけては30℃を超える日もあり、5〜9月の積算気温は約2,500℃、日照時間は約930時間と長く、年間降水量は約730mmと少ない。
 土壌は網走川流域は泥炭土および低地土が分布し、南東部では台地土が主体である。農業は、主に玉葱を中心に畑作物と施設園芸を組み合わせた複合経営地帯、畑作物採種栽培地帯、畑作専業地帯に分かれるが、土壌条件と経営規模によっても作付構成が変化している。
 今回事例紹介する大隅貴博氏は、前述の「複合経営地帯」の中核的農家であり、まだ、就農7年目(経営委譲は5年前)の若き経営者であるが、その経営内容は直播てん菜を中心に独自に工夫され参考となる点が多い。

(1) 町の概況
 農家戸数    381戸
 総農地面積   7,950ha
 1戸当たり面積 20.9ha
 近年の女満別町における直播栽培面積は、約80ha程度(全作付面積の約4%)で推移し、主に網走川下流域の複合経営地帯を中心に作付けされている。
 平成9・10年はてん菜移植後の強風害により、被害程度の大きいほ場は廃耕し、新たに直播きを行ったほ場が増加した。

表1 女満別町の作付状況


図1 女満別町におけるてん菜直播栽培面積の推移



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2 経営内容の特徴

(1)大隅氏の農地は、町内に地力に富んだ沖積土と泥炭土、町外に地力がやや低い台地土を所有し、その地力に応じた土づくりと輪作を行っている。
(2)家族労働力を主体とする労働配分を実現させるため、てん菜直播栽培導入し、春先のたまねぎの労働競合を解消している。
(3)使用期間の短い農業機械は、共同利用を図り経費を極力抑えている。
(4)安価な肥料・農薬を中心に極力使用量も控えてコスト低下に努めている。


表2 農業従事者



表3 耕地面積および作付状況(H16)

注( )内直播栽培面積


表4 てん菜関連農業機械所有状況

台数/共同利用員数



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3 てん菜の生産実績

表5 年次別てん菜の生産実績

※大隅氏の平成13年以降の収量・糖分・糖量は直播栽培の数値である(生産実績は移植栽培も含めた町平均レベルにほぼ達している)。
※平成15年は4月下旬に直播が強霜害を受け、移植栽培に切り替えたため、直播比率が低くなっている。



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4 輪作と土づくり

 大隅氏は、ほ場の地力に応じて、2パターン輪作体系を行っている。
 地力の低いほ場では休閑緑肥を導入した5年輪作を行ない、さらに、後作緑肥も2作組み入れている。地力の高いほ場は、たまねぎを主体とした作付けだが、休閑緑肥を作付けしない替わりに、後作緑肥を5年輪作の中で3作組み入れている。堆肥は6割を麦稈と交換により確保し、残り4割を購入している。全ほ場に毎年2〜3t/10a投入し、コストを抑えながら地力向上を図っている。
○後作緑肥の栽培方法
 作物はエンバク「ニューオーツ」を作付けし、は種量15kg/10a。硫安20kg/10a施用。
 平成16年からライムケーキを300〜400
kg/10aを堆肥と合わせ、15haの畑に施用。



図2 大隅氏の輪作体系図


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5 てん菜の直播栽培について

  直播栽培を導入する以前は、てん菜とたまねぎの移植作業が重なり、両作物とも適期移植が難しかった。平成13年からてん菜作付面積の50〜60%程度を直播栽培に切り替えたことにより、たまねぎの移植終が5日程度短縮された。また、直播栽培はほ場条件により風害・霜害の気象災害を受けやすいため、なるべく条件の良いほ場を優先して作付けしている。


図3 春の播種・移植作業の体系



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6 直播栽培技術について

○秋に堆肥散布を散布した後、プラウ→サブソイラ→ソイルクランブラの順で耕起している。
○融雪剤は3月20日頃を目安に防散融雪炭カル40kg/10a散布している。
○土壌改良資材は「粒状生石灰」を40kg/10a、「アヅミンZn」を20kg/10aを施用している。
  てん菜には「アヅミン」で十分であるが、たまねぎに亜鉛欠乏を生じやすいほ場が多いため「アヅミンZn」を選択している。
○整地はロータリー1回掛けし、その後アッパーロータリー1回掛けしている。
○施肥は、土壌分析値と土壌改良資材の成分を勘案し、単肥配合している(表6)。
○単肥配合は20年前から取り組み、現在では全作物で行っている。特にてん菜は要素量を多く必要とするため、経費削減に有効である。
○平成14年から全層施肥と作条施肥を組み合わせ、初期生育中に分肥も行っている。一度に多量の肥料を根の近くに施肥しないため、低pH障害や濃度障害を防ぐことができている。また、以前にチリ硝石と第二燐安の全層施肥試験を行ない、現在は成績の良かった第二燐安を全層に施肥している。
 (1)品種     アーベント
 (2)は種日    4月26日(直播栽培)
 (3)栽植密度   60cm×12cm=14,000株/10a
 (4)間引き    6月上旬
 (5)中耕・除草  中耕は計4回実施している。種草取りは7月上旬および8月末頃。
(6)防除
 大隅氏の農薬費は地区平均より、1,000円/10a程度低く抑え、4,000円/10a程度になっている(図5)。この農薬費の節減ポイントは次のとおりである。
(1)「Teejet:AIノズル」を使用し、農薬散布水量は75〜80リットル/10aの減量散布を行っている。
(2)褐斑病防除は適期散布を心がけ、高価で残効の長い薬剤に頼り過ぎない。
(3)5年輪作により根腐病の発生は少なく、発生しやすい気象条件下でも特に防除は必要としない。

表6 施肥内容




図4 中耕除草時期


表7 防除内容






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7 今後の取り組みと課題

 大隅氏は父親とよく相談しながら作物の管理を行っていることから、若くしてしっかりした経営を実践している。本人に今後の努力目標を伺うと次の点であった。
(1)特に地力の低い畑は、今後も休閑緑肥を取り入れた輪作体系を継続し、堆肥の投入も積極的に行い地力の向上に努める。
(2)施肥・防除に関しては更に研究、経験を重ね経費節減に努める。
(3)農業機械などの共同利用は、今後も地区内で連携して行い経費の抑制に努める。
(4)直播栽培は条件不利地では行わない。
(5)今後も新しい技術などに積極的を取り入れるなどして農業経営を行っていく。


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8 まとめ

 網走管内は小麦、ばれいしょ、てん菜の作付け比率が高いため3年輪作が主体である中、大隅氏は5年輪作を実施し、さらには休閑緑肥も導入するなど、地域の模範的な事例農家である。当管内は気象条件が厳しいため、輪作・地力の向上が極めて重要な経営技術と思われる。平成13年に美幌地区農業改良普及センターでは、美幌町・女満別町・津別町のてん菜(前年作付ほ場)各ほ場の土壌サンプルを採取し、簡易灼熱損量方式(土壌を105℃で24時間乾燥後、アルコールを添加し灼熱する)により有機質含量の測定を行った結果報告が、大隅氏の経営成果を裏付けるものと考えられたので併せて紹介する。
○実態調査結果
 管内の土壌は有機質含量が低いほ場が多い(2%以下のほ場50%以上)。また、有機質含量と収量・品質の間に密接な関係があり、てん菜では1%未満と3%以上では10a当たり6万円近い収益差が確認された(図6)。
 このことから、大隅氏のような積極的な土づくりの取り組みは、今後一層の収量・品質向上につながっていくものと思われる。


図6 有機物含量とてん菜の収量・糖分・10a金額
(美幌地区全体2001年6月)


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