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土づくりと基本技術の励行による直播てん菜栽培の安定生産

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

生産地から
[2006年1月]

東胆振地区農業改良普及センター 改良普及員 内藤  誠


1 地域の概要
2 経営の概要
3 てん菜の生産実績
4 輪作体系と土づくり
5 てん菜直播栽培の技術
6 安定多収の要因
7 今後の取り組みと課題

1 地域の概要

 北海道勇払郡追分町は、北海道中央部の南西部に位置し、北海道の中心である札幌市からは50km、北の空の玄関である新千歳空港からは15km、北日本最大の港湾である苫小牧港からは30kmの距離にあり交通の便に恵まれた場所に位置している。平成18年3月には隣接する早来町との合併により、新町「安平町」となる。
気候は、内陸性で夏30℃、冬−20℃を記録するように寒暖の差が激しく、通年して日照時間が長く乾燥しており、年間の降水量は1,000mm程度である。積雪量は30〜50cm程度と北海道内では比較的少ないため土壌は凍結し、その深度は30〜40cmにも達する。
 土壌は樽前山系の比較的新しい火山灰土に覆われ、その下部にも4〜5層の火山灰層がある。標高50〜60mの穏やかな波状型の丘陵は主に畑作地域となっている。
 追分町の農業は、畑作・水稲・畜産経営などの土地利用農業と、メロン(特産のアサヒメロン)・カンロを中心とした施設園芸、アスパラガスなどの集約的農業による複合的な農業経営を展開している。
 今回事例紹介する牧田弘満氏は大規模畑作専業経営であり、以前はてん菜を移植栽培していたが、省力化のため平成13年から全面積を直播栽培に切り替えた。土づくりをしっかり行い、基本技術を励行することで、コンスタントに高収量を確保している地域の代表的な事例となっている。

表1 追分町の農家戸数及び耕地面積(H12農業センサス)



図2 追分町の作付け状況と農業産出額比率(北海道農林水産統計)

表2 追分町の農業産出額(H15北海道農林水産統計)


表3 地域の気象概要(5〜9月、厚真町アメダス平年値より)


表4 てん菜関係農業機械所有状況




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2 経営の概要

(1) 経営の概要
(1) 牧田氏は大規模畑作経営で、作付面積は75ha(内借地面積33ha)である。
(2) ほ場と自宅は追分町の南側に位置し、早来町に接している。
(3) 労働力は大型農業機械を導入することで省力化を図っている。1筆のほ場面積は5〜15ha程度であり、効率的な作業が可能である。
(4) てん菜は以前移植栽培であったが、省力化のため平成13年から全面積を直播栽培に切りかえた。
(5) 品種は平成13〜14年はスコーネ、平成15年からはそう根病抵抗性品種のモリーノである。
(6) 直播栽培を始めるに当たり、新たに必要となった機械は特にない。播種は豆類用としてすでに所有していた総合施肥播種機を、直播てん菜ペレット種子用に改良し使用することで、大きな機械費をかけずに直播栽培に移行できた。

表5 作物別作付面積(ha、%)

注)品種等 秋まき小麦:ホクシン、きたもえ 春まき小麦:春よ恋
      大豆:いわいくろ(黒大豆) 小豆:しゅまり
      緑肥:ひまわり、緑肥用デントコーン、エン麦野生種など


表6 労働力(人)


 てん菜の平均作付面積は10.2ha(3ヵ年平均)で全作付面積(75ha)に占めるてん菜の割合は14%であり、適正な輪作のためには面積がやや不足している。小麦面積(秋まき小麦と春まき小麦の合計の3ヵ年平均)の割合は46%であり、大規模経営のため比較的労力の少ない小麦の作付割合が高くなっている。


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3 てん菜の生産実績

  過去4ヵ年の牧田氏の生産実績は表7の通りである。平成15年は5月上旬に、出芽時の霜害により牧田氏を含め追分町内数戸の直播栽培農家が被害を受けた。牧田氏は毎年コンスタントに高収量を確保しており、4ヵ年平均は、追分町平均(直播栽培)と比較すると収量で109%、根中糖分で104%、糖量で113%となっている。

表7 年次別てん菜生産実績
※:霜害年


 一般に移植栽培から直播栽培への移行には収量性の低下、出芽不良・霜害など初期生育の安定性の問題がある。てん菜の大規模栽培の意向がある追分町では、多くの労働力が必要となる育苗管理、移植作業が不要となる直播栽培への移行が進んだ。追分町の平成13年の直播栽培面積は18.4ha(てん菜作付面積の1割)であったが、平成16年にはてん菜作付面積の65%を占める125.1haと急激に増加した。追分町の65%を占める直播率(平成16年)は北海道の4.8%、胆振の22%、東胆振の36%と比較しても高い割合となっている(北海道てん菜協会:平成16年産てん菜の生産実績)。
 平成16年の追分町の移植栽培は、平均収量7,029kg/10a、平均糖分16.9%、平均糖量1,188kg/10aであり、直幡栽培はそれぞれ5,812kg/10a、16.5%、959kg/10aであった。移植栽培と直幡栽培との糖量差は229kg/10aであった。
 平成14、15年の追分町平均(直播)収量が低いのは霜害を受けたためである。

(1) 収量
 平成13〜16年の収量は全て追分町の平均を上回り、追分町対比で7〜23%優っている。
 平均収量は、5,550kg/10aである。

(2) 根中糖分
 平成13年は追分町の平均と同等であったが、平成14〜16年は上回っている。
 平均根中糖分は、17.7%である。

(3) 糖量
 平成13〜16年の糖量は全て追分町の平均を上回り、追分町対比で7〜28%優っている。
 平均糖量は982kg/10aである。


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4 輪作体系と土づくり

(1) 輪作体系

 基本的には図3のような輪作体系をとっているが、面積の都合上、部分的に秋まき小麦の連作となる部分もある。秋まき小麦の前作となる加工用スイートコーンは契約栽培のため、契約面積の不足する場合はひまわりや緑肥用デントコーンなどを休閑緑肥として作付している。


図3 輪作体系

(2) 土づくり
(1)堆厩肥の施用
 この地区の土壌は火山灰土で有機物が少ないため積極的に有機物を施用している。
 鶏糞は近隣のブロイラー業者より購入し、牛糞は酪農家から麦稈と交換して、この2つを混合し完熟堆厩肥にしてほ場に施用している。てん菜作付前の施用量は3 t/10aとし、その他作物前には1t/10aを毎年施用することで地力の維持向上に努めている。地力の向上により気象条件に左右されにくいほ場条件となっている。

(2)土壌診断
 土壌診断は毎年実施し、診断結果に基づいて施肥をしている。

(3)透排水性改善
 農業機械の大型化に伴い耕盤層の形成が問題となっており、耕盤層により根の伸長が阻害されたり、湿害の原因となる場合もある。ほ場には暗渠を施工済みであり、一部ほ場には明渠も設置している。
 てん菜は湿害に弱いため、透排水性と通気性確保のため耕起前にサブソイラによる心土破砕(深さ60cm程度)を実施している。生育期間中には畦間サブソイラ(深さ30cm程度)を入れている。また、全作物の作付前の心土破砕は、暗渠と直交方向に加えて平行方向にも同時併用施工することを心がけている。

マニュアスプレッダによる堆厩肥の施用
霜害の状況(平成15年5月)
出芽時の霜害により、土壌中で異常な生育となり、出芽できない。



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5 てん菜直播栽培の技術

 栽植株数は、畦幅66cm×株間18cmで10a当たり約8,400株としている。安定した収量を得るためには裁植株数は8,000株/10a以上が必要となるため、播種作業および出芽条件には気を付けている。
 直播栽培の出芽ムラや欠株防止のため砕土作業は慎重に行っている。ロータリーハローを2回かけ、砕土不良部分は3回かけている。この地区はクラスト(細かく砕土された土壌において播種直後の降雨による雨粒の衝撃によって表層が目詰まりを起こし、その後乾燥過程を経て形成される緻密な表層構造で、発芽を阻害する)は形成されにくい土壌である。
 早期播種は増収の基本となっているが、平成15年は4月26日〜5月1日に播種したところ、5月8〜10日に連続した降霜の被害を受けたため30%程度の欠株が発生し、収量は減少した。4月下旬の播種では出芽時に霜のリスクが予想されるため、平成16年の播種を前年より少し遅らせ5月1〜5日とすることで、霜害を回避することができた。
 てん菜の作付前には土壌診断を実施し、その結果をもとに防散炭カルを60〜80kg/10a程度必ず全層施用している。播種時、作条施用した窒素肥料が硝酸に変わるときにpHは低下する。このpHの低下を防ぐために50kg/10a程度の防散炭カルを作条施用している。

(1) 施肥について
 土壌診断の結果をもとに肥料配合機で単肥配合を行い、コスト削減につながる部分もでてきている。牧田氏のてん菜10a当たりの肥料費は8,913円で、追分町慣行と比べ5,472円/10a少なくなっている。てん菜以外の作物についても単肥配合をしており、肥料1袋(20kg)当たりの価格が900円以内を目指し、大幅なコスト削減を実践している。
 直播栽培は、移植栽培に比べて肥料やけに弱い栽培法のため、肥料ストレスを緩和する低ストレス型施肥をしている。この施肥法は基肥の半量をロータリーハローでの整地時に全層施用し、残りの半量を播種時に作条施用するものである。肥料ストレスを回避することはもちろん、施肥作業の大幅な省力化ともなっている。
 てん菜はもともと酸性に弱い作物であるが、直播栽培は移植栽培に比べ特に酸性条件に弱いことが分かっている。直播てん菜の初期生育障害発生の最大の原因は酸性であり、生育が停滞したり、ひどい場合には枯死することもある。酸性害を防ぐため、pH6.2を目標に石灰質資材を施用している。土壌診断をこまめに行い土壌改良を続けてきた結果、ほ場はすべてpH5.8〜6.3の範囲に収まり、適正pHとなってきている。
 分肥作業は施肥カルチではなく、ブロードキャスターを使うことで省力化している。

表8 施肥量(kg/10a)と10a当たり肥料費(円/10a)

注1)肥料費はJA当用価格を使用。
注2)慣行の基肥はビート配合2、分肥はチリ硝石として算出。


(2) 除草
(1)除草剤の散布状況
 直播栽培は移植栽培より初期の生育量が小さいため、雑草管理が重要となる。直播栽培に登録のある除草剤は限られており、移植栽培に比べて少ない。また、除草剤の散布の成否が、収穫までの雑草管理に大きな影響を与えるため、除草剤の効果を最大限に発揮できるよう心がけている。除草剤は2剤の同時処理で、播種後30日前後の6月5日に1回目、50日前後の6月17日に2回目の除草剤散布をした。

表9 除草剤(H16)


(2)手取り除草
 雑草が結実する前の8月上旬に種草取りを実施し、翌年の雑草の繁茂を防いでいる。

(3) 中耕作業
 カルチ作業はてん菜、大豆、小豆で競合する作業であり、てん菜では1回のみの作業となった。畦間サブソイラは排水促進と地温上昇を図るため6月26日に実施した。

(4) 病害虫防除
 病害虫防除は、状況に応じて減量散布(慣行散布水量の10a当たり100Lより散布水量を少なくする技術)を実施している。減量散布により作業効率の向上や農薬散布量の減量化に伴い、生産コストの低減やクリーン農業の実践にもつながっている。また、当然ながらほ場をよく観察し、適期防除を実践している。

表10 病害虫防除(H16)


(5) 収穫
 10月31日〜11月10日


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6 安定多収の要因

(1) 毎年、積極的に堆厩肥を施用している。
(2) 土壌診断結果を利用し、効率的な施肥を実施している。直播栽培は酸性土壌の影響を受けやすく初期生育不良となりやすいので、石灰質資材を全層施用と作条施用を併用して行っている。
(3) 直播栽培は肥料やけに弱いため、基肥の半量を全層施用し、残りの半量を作条施用する。さらに分肥をすることで肥料ストレスを緩和している。
(4) ほ場をよく観察し、適期防除に努めている。

てん菜収穫作業の風景



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7 今後の取り組みと課題

(1) 土づくりや基本技術を励行し、適期作業を徹底する。
(2) 病害虫防除では減量散布を実施しているが、さらに散布量を減量したい。
(3) 大規模経営の利点を生かして、さらなる省力化と生産コストの削減を目指したい。


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