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十勝地域におけるバイオエタノール事業の取組

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最終更新日:2010年3月6日

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生産地から
[2006年9月]

財団法人十勝圏振興機構 研究開発課 課長 大庭  潔


背景
おわりに

背景

 全国でも有数の畑作地帯であると同時に豊富なバイオマス資源を有するここ十勝地域においては、地球環境に配慮したエネルギー利用、特にバイオマス資源の有効活用は、環境への負荷軽減をする上でも早急に進めなければならない課題である。さらに、十勝地域における畑作農業の基幹作物(小麦、ばれいしょ、てん菜、豆類)は海外からの輸入競争にさらされることにより、今後の農業対策面からもこのバイオエタノール事業は早急に検討をする必要がある。
 現在十勝地域では、このバイオエタノール事業に関して、地域におけるバイオエタノール原料としての賦存量調査、寒冷地におけるE3燃料混合自動車の走行試験、さらには規格外小麦等を用いたバイオエタノール製造試験について順次実施している状況である。ここでは、それら事業について、その取り組みを簡単に紹介するものである。

(1) 北海道十勝地域の規格外農産物及び農産加工残渣物利用におけるバイオエタノール変換システムに関する事業化可能性調査(北海道経済産業局FS調査事業)
 十勝地域の農業形態は畑作・酪農を中心とした大規模経営に象徴される。畑作においては、主として小麦、ばれいしょ、てん菜、豆類の4品目による輪作体系が確立されており、ほ場の生産性を維持する上での合理的なシステムを形成している。従って、エタノール生産の可能性を検討する上では、上記の品目の安定的な農業生産を維持するために有効と思われる品目を見極めることが非常に重要となってくる。なお、これら畑作物を実際にバイオエタノール生産に使用したと想定し、バイオエタノールに変換した場合、原料重量当たりのバイオエタノール生産量は小麦、ともろこしで多いが、てん菜では少なく、畑の単位面積当たりのバイオエタノール生産量では、逆にてん菜が多いという結果が得られた(図1)。

図1 原料別、原料の耕地面積当たりのエタノール収量
出典:米国農務省資料および財団法人十勝圏振興機構調査結果

 また、基幹作物以外にも規格外農産物および農産加工残渣物が非常に大量に発生している。主な素材として、規格外小麦、ビートトップ、コーン茎、豆殻および澱粉工場残渣物などがあげられる。この中で最もバイオエタノール用原料として有望であると思われる素材は規格外小麦である。それ以外の素材については、高水分であると同時に一時期に大量に発生するという問題、さらにはセルロース系物質が大量に含まれているという問題から、すぐにはバイオエタノール用原料として使用できるものではない。今後これらの素材をどうやって利用できるかが、十勝のバイオマス利用促進の鍵になると考えられる。

(2) 寒冷地におけるE3燃料混合自動車の走行試験(環境地球温暖化対策技術開発事業)

 寒冷地である十勝では、冬期の浸水と凍結により、E3燃料の相分離が起こりやすいと考えられる。相分離が発生すると、燃料の組成が変わり、適正なエンジン燃焼が阻害される。よって、E3燃料混合自動車の走行試験により適性燃焼対応技術の開発を行う必要があると考えられる。本事業では、通常使用されているガソリン車にE3燃料を使用し、実際に低温で始動・加速した時の、加速性、始動性、排ガス特性との関連性等を明らかにする目的で、E3燃料試験車とガソリンを給油したガソリン試験車における違いを、始動性、加速性および排ガス特性の項目を測定することにより検証した。さらに、E3燃料において最も重要視される水分含量、エタノール含量および蒸気圧についての分析方法の習得を行うと同時に、E3燃料を低温に保管しておくことによるE3燃料の品質経時変化やE3燃料用供給器等について検討を行った。また、公用車9台を用いての走行試験を平成17年9月〜平成18年2月まで行い、始動性、加速性、燃費等モニター調査も併せて実施した。
 その結果、E3燃料、ガソリンとも、両燃料による始動性の違いはみられなかった。両燃料とも気温の低下とともに長くなる。同様に燃料温度、燃料圧力、エンジン回転数は燃料による違いはみられなかった。また、燃料流量については、ガソリンに比べどの気温(低温)においてもE3燃料で増加している。原因としては、車輌の個体差とも考えられるが、燃料の粘性、性状、成分(オクタン価等)の影響も考えられる。また、低温での加速性能については、両燃料とも、立ち上がりに大きな差異はみられなかった。また、数値には現れないが、E3燃料車の加速時に、排気管からガソリン車よりも多い水分の噴出が確認された。この現象は、エタノールのOH基が燃焼室で水素と反応し、水になったものが排出された可能性が考えられる(写真1)。

写真1 E3燃料車における排気管からの水分噴出

 また、E3燃料用供給機について経時的に定期点検を実施した結果、一点目の課題として、定期点検1年後において、ポンプあるいはホース等のつなぎに使用されているゴムパッキン類に、写真2に示されたような変形が見られた。同時に、ゴムパッキン類の変形に伴い、硬化も確認された。これは、今後E3燃料を使用続けることにより、ゴムパッキン類が損傷し、パッキンとしての役割を果たさなく恐れがあることが推測されたが、エタノール専用のパッキン類を使用することにより防止できるとも考えられる。また、定期的な点検を行うことにより、交換等の措置により防止できるとも考えられる。さらに、地域における一定の品質管理を実施する上で、E3燃料の水分含量、エタノール含量、蒸気圧の項目について、その分析方法の習得をすることにより、E3燃料の製造、貯蔵における品質管理体制の基盤作りができた。同時に、約半年間の冬季走行試験を実施した結果(写真3)、9台の公用車における始動性、加速性においては両燃料での違いに差はみられなかった。しかし、燃費については、E3燃料車において若干落ちる傾向がみられた。この結果は、通常走行における燃費についてそれほど差はみられないが、寒冷地特有の現象である路面凍結や圧雪により、通常走行より過負荷が余計にかかることによる影響が大きいと考えられる。

写真2 E3燃料使用供給機におけるパッキン類

写真3 走行試験開始の様子

(3) 規格外小麦等を用いたバイオエタノール製造試験(北海道農業研究センター再委託事業:農林水産省農林水産バイオリサイクル事業)

 本事業は、小麦、てん菜およびばれいしょを中心にした畑作物を多段階かつ有効利用する地域循環システムを構築し、北海道における大規模畑作農業の持続的な発展を目指すことを目的としており、その中でわれわれは規格外小麦からのバイオエタノール製造に関わる研究を中心に行っている。現在、国内での発酵法によるバイオエタノール製造は、NEDO〔(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構〕が糖蜜(さとうきび)を原料として製造を行っており、それ以外の原料については建築廃木材からのバイオエタノール製造について検討が行われているにすぎない。従って、穀類からのバイオエタノール製造は国内では初めての試みとなる。通常発酵法によるバイオエタノールの製造は図2に示されるような工程を経る。もちろん、穀類からのバイオエタノールの製造についても図2に示されているような液化、糖化の工程を経ることとなり、現在それらの工程についての検討を行っているところである。今後、穀類ばかりでなく、セルロース系資源についても順次検討を行っていかなければならないと考えている。

図2 バイオマス資源からのバイオエタノール製造方法


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おわりに

 北海道、とりわけ十勝地域には有効活用可能なバイオマス資源が豊富にあり、その代表的なものとして規格外小麦およびてん菜が挙げられる。十勝地域での小麦生産量は年間約20万トンで、そのうちの約1割が選別等の作業で規格外品にされている。これらの用途は家畜の飼料であり、価格は規格品の1/10にしか過ぎない。一方、てん菜の生産量は年間178万トンであり、砂糖製造工程における様々な副産物を利用する試みは以前からなされてきた。もっとも大量に発生するビートパルプ(年間発生量9万トン)に関しては、機能性食物繊維として優れた効果があるにもかかわらず、特有の臭いがあるために一般食品への添加は限られており、大部分は飼料にされているのが現状である。また、これ以外にもでんぷん工場から発生するポテトパルプも大量に発生している。今後、これらのバイオマス資源をいかに有効に活用するかが、地域において早急に取り組んでいかなければならない課題である。
 また、得られたバイオエタノールはE3燃料として利用されるが、十勝地域は寒暖の差が非常に大きく、特に冬期間の温度の低下は非常に厳しいものがある。そんな中で実際にE3燃料を使用することによる検討を行っており、数点の課題がみつかっている。実質、走行する上での基本的な面においては通常のガソリン燃料使用とほとんど差はみられなかったが、今後さらなる検討が必要と考えられる。
 本バイオエタノール事業は十勝地域ではまだ緒についた段階である。今後、発生するバイオマス資源を有効活用することが可能となり、さらにE3燃料を使用した走行試験を積み重ねることにより、地域におけるE3燃料の使用が拡大し、ますます発展することを願うものである。同時に、地域におけるエネルギー循環システムの確立がなされるように、今後のさらなる進展が待たれるところである。


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