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沖縄県におけるさとうきび増産に係る農地防風林のあり方について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

生産地から
[2007年7月]

沖縄県農林水産部 村づくり計画課 副参事 根間 恵勇


1 はじめに
2 沖縄県の気候特性と作物への影響
3 防風林の効果について
4 農地防風林について
5 防風林帯における樹種の組み合 わせ
6 地域の取り組み事例
7 終わりに


1 はじめに

  沖縄県では、琉球王府時代には官有林である杣(そま)山のほか、集落や農作物を台風や季節風による強風および潮風害から防ぐため、海岸部や集落周辺部にある林帯を、防風林、防潮林(抱護林注1)として禁伐区に指定し保護していた。
  第2次世界大戦時は、戦争に備えて軍需用木材として、特に、歴史を重ねて巨木に生長したリュウキュウマツの多くが松ヤニ採取のために伐採された。さらに、米軍の沖縄上陸によって約3ヶ月にもわたって戦場化した県土は、砲火によりほとんどの森林、緑地が焼失した。
  戦後は、戦災からの復興を図るため、住宅や施設修復等に必要な木材、さらには薪等の燃料材調達のため、沖縄本島北部地域や西表島に残る山林の樹木が乱伐された。
  昭和25年2月、米軍政府管轄下で琉球林野庁が設置され、沖縄の林野行政が復活の緒についた。特に、植樹については、緑化推進の中心的行事として、植樹祭が昭和26年から、また育樹祭は昭和52年から開催され、緑化の普及啓発を図るため現在も継続して県民参加による植樹・育樹思想の定着に努めている。
  この間、昭和27年の4月1日には、琉球政府が発足し、造林事業を積極的に推進した。昭和33年からは、日本政府の援助による農地防風林補助事業が導入され、昭和47年に本土復帰を果たした後は、昭和56年度から農業農村整備事業のほ場整備と併せて、主防風林の造成が始まった。
 
注1:風水思想に基づいて、集落や農地を台風や潮風から守るために整備された林帯のこと。方言では「ポーグ」と呼ぶ。


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2 沖縄県の気候特性と作物への影響

 沖縄県の農業は、亜熱帯海洋性気候と地勢的な条件から気象災害が発生しやすい厳しい自然環境下にある。毎年のように、風速30m/s以上の台風が襲来する。しかも、台風が発達して停滞し、長時間強風が吹き荒れることが多い。また、年平均降水量は2,300mmと多いが、ほとんどが5月上旬から6月中旬の梅雨期と台風襲来期の8月から9月に集中している。
  台風襲来時に雨を伴わない場合は、農作物は、強風と塩害の二重の被害を受けることになる。
  特に、夏植さとうきびの場合は、在ほ場期間が1年8ヶ月と長いため、台風と冬の季節風、干ばつの影響をそれぞれ2回受けることになる。


強風で茎の折損や倒伏、葉の裂傷と潮風被害を受ける台風後のさとうきび(久米島)


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3 防風林の効果について

 一般的に防風林による減風効果は、風上で樹高の5倍、風下で樹高の20倍といわれている。また防風林の密閉度は60〜70%で最も減風効果が高いと言われている。
  図−1にさとうきびを例に防風林の収量と品質向上に対する効果について示した。防風林の周辺は温度の上昇や土壌水分蒸発散の減少等、栽培環境の改善効果がある。これによって初期生育(茎伸長)が促進され、光合成に重要な生葉数も増加することから、収量向上と糖度の上昇につながると考えられる。

図−1 防風林からの距離がさとうきびの収量品質に与える影響(Hは樹高:10m)

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4 農地防風林について

 農地防風林は、台風や強い季節風から農作物を守り、農村の景観を高め、土砂流出防止の役割を果たす。ほ場整備における農地防風林は、人為的に樹木を植栽した人工林であり、木材生産を日的としたそれとは、維持管理や仕立て方が異なる。

(1) 森林と林
  森林とは、辞書によると「多数の高木が広い範囲にわたって、枝と枝とが接するように密生している所」と記述されている。人の手が全く加わらず、長い期間において自然に発達した森においては、生物の多様性が保持され、自然生態系の循環する環境が形成される極相林の状態にある。極相林とは、これ以上発達しない状態で、概ね50〜60年で安定するといわれている。そういう意味では、第2世界大戦後、乱伐された沖縄本島北部や西表島の山林は、戦後60年を経て極相林を形成していると言えよう。
  一方、林は「樹木がたくさん群がっている所、樹木の群落。森に比べると木々の密集度合いが小さく、小規模の群落をさすことが多い。」と記述されている。これからすると、農地防風林は林として位置付けることができる。林では森林のように複数樹木で構成される複層林とは異なり、樹木そのものは単木である。単木で防風機能を持たせるには、樹木を帯条に密植させ、枝と枝とが適当に接していることが要件となる。
  一定地域に集団で植栽した場合、連続性を持つように工夫すれば、防風効果を効率的に発揮することが可能となる。

(2) 樹種の選定に当たって
  第2次大戦後は緑地を早期に復興する目的で、生長の早いモクマオウやソウシジュを主体に植樹されることが多かった。それと同様の考え方で、農地防風林についてもモクマオウを主体としながら、フクギ、テリハボク、ソウシジュ、ブッソウゲ、シャリンバイ等を組み合わせて植栽されてきた。
  これまで主体としたモクマオウはマメ科に属し、根粒根を有して生長が旺盛であるが、他の樹種と混交して植栽すると、他の樹種の生長を被圧してしまう。また、モクマオウの葉は農地に落葉し、根がほ場内に伸長するなどして作物栽培に影響が出ることから、農家から敬遠されている。さらに、台風時の強風によって幹、枝とも折れ易く、農地に飛散し、防風林の機能を果たさなくなる。
  そして、平成15年9月11日に宮古島を襲った記録的な大型台風14号による強風害は、防風効果の視点から防風林の樹種選定を見直す契機となった。
台風による潮害で枯れたモクマオウ防風林帯(多良間村)


(3) 農地防風林としての樹種要件
  樹種の選定は、農地防風林としての成否を左右すると言っても過言ではない。100年以上の防風効果が期待できるように、樹種の耐用年数を考慮することが大切である。樹種の選定に当たっては、
(1)高木で弾力性に富み、台風時の強風にも幹や枝が折れたり、倒木したりせず、葉が著しく落下しない強靭な樹種であること。また、葉形もやや大型で肉厚があり、塩害に強いこと。
(2)樹冠が密で枝葉の着生点が低く、樹木の低部から頂部までバランス良く枝葉が着生していること。
(3)夏季の台風時期に樹勢があり、枝葉が繁茂していること。
(4)深根性であること。
(5)地域の土壌や気候条件等の環境に適していること。
(6)病気、害虫に対する抵抗力があること。
(7)農作物の生育を阻害しないこと。特に、農作物に被害を与える害虫の中間宿主とならないこと。
(8)100年以上生長するような耐久性(耐用年数)が期待される樹種であること。
(9)維持管理が容易であること。
  以上の要件を備えている樹種として、主防風林にはフクギ、テリハボク、アカテツ、サキシマハマボウ等を、防風垣(補助防風林)の樹種としては、マサキ、イヌマキ、クロキ(リュウキュウコクタン)、イスノキ、モクタチバナ等が適している。

(4) 防風林帯の設置要件について
(1)防風林の生育に必要な土層深が十分確保されていること。
(2)防風林帯に隣接する農地への根の伸長を防止するため、林地と農地との境界に石積みやU字溝等の障壁をもうける。さらに、林地の形状は中央を盛り上げたカマボコ状にすることで、根の伸長を防止する。
(3)沖縄県内のほ場整備における主防風林帯は、必要最小限の林帯幅である6.0mを確保する。
(4)防風効果は樹高の20倍の範囲まで見込めることから、林帯の配置間隔は、樹高を10m以上と想定して、200m間隔で配置する。
(5)林帯の配置は、冬の季節風対策を考慮して、ほ場の北側に配置する。
(6)ほ場の筆境界には、補助防風林を設置し、主防風林帯と補助防風林で、ほ場を格子状に囲むように配置する。


強風・潮風に強いフクギ
(3列植の中央が フクギで、両端はアカテツ)
畑の四方を囲む理想的な防風林配置
南大東村(県森林緑地課提供)の写真を
加工して作成したイメージ


(5) 防風林の植え付けと育成
(1)種子、苗木の選び方
ア.種子は、樹勢があり生長良好で形質の良い優良母樹の完熟した実から採取し、中身が充実して表面に艶があるものを選ぶ。
イ.苗木は根の活着や、その後の生育が良好な2年苗で樹高30cm程度のものが望ましい。
ウ.苗木は、幹、枝とも太めで、葉の着生バランスが良く、葉の厚みがあり、色の濃いものを選び、また、若葉が出ている苗木は控える。
(2)防風林の植え付け
ア.植え付け間隔は、30cm以下が望ましい。根や枝が触れ合って密生して壁をつくることで、強風にも耐えられる。
イ.土固めがゆるい場合や深植えすると活着が悪くなることから、苗木の植え付け後は、根の活着を促すためしっかり土を固める。
ウ.植え付け後には、蒸発散を抑えるため枝の剪定やススキ等の敷草を行う。
エ.植え付け後には、必ず十分灌水する。
オ.ポット苗を根巻きしたまま植えると、台風時に倒木する可能性が高くなることから、必ず根巻きをほどいて植え付ける。
カ.植え付けの時期は、旧暦の10月頃が良い。この時期は植付した後、冬越する不安はあるが、翌年の春期は着根し、生長による若葉・若芽が出て夏の台風に耐えられるという利点がある。
(3)健全な木の育て方(維持管理)
ア.防風林帯に苗木を植え付けた後は、初期生長を促進させるため四方からの風による揺らぎや倒伏、根切による枯死を生じないよう保護支柱をつける。併せて、林帯が防風効果を発揮するまでの間、防風林の代替えの役割と幼木の生長を促進するため防風ネットを設置する。
イ.樹木の枝葉や敷き草等マルチ資材を活用して、雑草の繁茂を抑制する。
ウ.植え付け時に有機質を投入し、生長期には緩効性の化学肥料を追肥として投入する。
エ.樹木はそれぞれが競合、補完しあって生長することから、生長に応じて密閉度の調整や畑の枝の侵入防止のために間伐や枝打ちを行う。ただし、過度の間伐や枝打ちは、防風効果そのものを低下させる恐れもあるので留意する。
オ.持続的な効果を発揮させるために、継続的に維持管理を行う。

育成ために防風ネットと支柱で保護された
防風林帯(うるま市宮城島上原土地改良区)

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5 防風林帯における樹種の組み合わせ

 樹種の組み合わせは、風の影響を多く受ける海岸側と比較的少ない内陸では基本的に異なる。海岸付近では、既に植生しているアダン、モンパノキ、トキワギョリュウクサトベラ、オオハマボウ、クロヨナ、サキシマハマボウに加え、フクギ、アカテツ等比較的塩害に強い樹種を組み合わせる。
  一方、内陸側においては、上述の樹種の中から、単一樹種もしくは2から3樹種を組み合わせる。
  従来の整備事業の中では、早期の防風効果を期待して比較的生長の早いモクマオウを主体として、それに生長は遅いが高木で耐久性のあるフクギ、その他テリハボク、低木のシャリンバイやブッソソウゲ、ソウシジュ、クロヨナ等5から6樹種が組み合わせられてきた。
  性質の異なる複数樹種の組み合わせは、自然林の発想に基づく、理想的な考え方である。ただし、生育速度の異なる樹種で防風林帯を維持するためには受光を良くする枝打ちや伐採等の管理が必要である。
  モクマオウからフクギへ、早生から永年生の樹種へ世代交代により安定した防風林帯の完成を目指すものであったが、多くの場合、管理不足から次代の主たるフクギの生育がモクマオウに抑えられ、またモクマオウ自身も衰退し、当初の目的を達成した事例は少ない。
このような状況を受け、近年はテリハボク、フクギを主とする2〜3種の組み合わせに変わってきた。
  今後は維持管理の省力化を図りながら、長期的な視点からフクギ等単木による優良農地防風林を造成していく必要がある。


台風による幹、枝の折損や潮害で
衰弱したモクマオウの防風林帯
防風林の日制定を記念して、うるま市宮城島で開催された
植樹大会の模様 (樹種はフクギ、アカテツ)

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6 地域の取り組み事例

(1) 防風林の日制定と記念植樹
  平成18年11月に農業生産性の向上を目指して防風林設置の重要性を啓発するため「沖縄県防災農業推進会議」が設置され、毎年11月の第4木曜日を「防風林の日」として各地で講演会や苗木の植樹を行うこととなった。第1回記念行事として、平成18年11月30日にうるま市宮城島で農家、関係者150余名が参加して、防風林苗木の植樹大会が催され、フクギ、アカテツ300本が植えられた。平成19年度は宜野座村での開催を予定している。

(2) 宮古多良間村における防風林の事例
  古くから伝わる「抱護」の考えを基に造成された防風林では、風や鳥類により種子が運ばれる自然の営みの中で、長い時間をかけて環境に適した草類や低木が着生し、生物多様性も築かれ全体としてバランスの取れた林帯が形成される。
  多良間村では、1740年代に造成されたフクギ、テリハボクを主とする抱護が、現在も集落や畑地を台風、季節風から守っている。

多良間村のフクギ、テリハボク抱護


(3) 宮古島市における防風林植栽のボランティア活動
平成15年9月11日に襲来した台風14号を契機に、県宮古支庁の「宮古地域防災営農推進会議」による支援で、平成17年6月にボランティア組織「美ぎ島(かぎすま)グリーンネット」が設立された(かぎすまとは宮古の方言で美しい島の意)。宮古森林組合を事務局に、法人77団体(年会費1万円)、個人693名(年会費2千円)で構成される組織である。平成17年度は4回、延参加人数544名の植樹活動を通じて、テリハボクを中心に約47aに5種5,109本を植栽し、翌平成18年度はさらに植樹活動の回数を6回(延参加人数667人)に増やし、テリハボクとフクギを中心に約28aに10種3,829本を植栽した。

(4) 沖縄製糖株式会社宮古島工場の防風垣の造成支援
平成15年9月の台風14号によって、さとうきびは甚大な被害を受けた。その時、防風林のある地区の台風被害がそれのない地区に比較して少なかったことから、沖縄製糖株式会社は、従来の原料用苗の増殖、配布等に対する補助から、さとうきび増産と品質向上のための防風林用苗木増殖、配布に補助対象を切り替えて防風林の育成を積極的に推進している。具体的には、通常300〜400円/本で流通しているフクギ、テリハボクの苗について補助を行い、100円/本での販売を行っている。2005〜2006年の販売実績は11,000本に達している。
同製糖会社の工場長は「一番の目的は農家自身に防風垣の重要性を認識させること。自主的に植えることへの援助である。防風垣の有無で農産物の状況が大きく変わってくる。防風林に対する農家の意識を高めるきっかけにしたい。防風垣の普及・地力の増強、病害虫対策をしっかりとやってさとうきび増産につなげたい。」と話す。

美ぎ島グリーンネットによる植樹活動風景

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7 終わりに

台風14号により葉の脱落、
梢頭部折損、倒状したさとうきび
宮古島市で
さとうきび畑の農道沿いに植栽されたテリハボク防風垣

 沖縄県の農業においては、台風、干ばつ、病害虫の発生は農作物の安定生産を阻害する大きな要因であり、農業振興上大きな課題になっている。
  防風、防潮林の必要性については生産農家も十分認識しているが、一方で、日陰の発生、根の侵入、実作付面積の減少などを理由として、事業を進めるに当たり合意形成が進まないという面もある。しかし、気象災害に強い農業を進めるため防風林の造成は必須であり、さとうきび増産プロジェクトの中でも計画的、かつ緊急に取り組むべき事項として位置付けられている。
  防風林は、農作物を保護し市場のニーズに対応した付加価値の高い農産物を安定的に供給するために不可欠である。今後も地域が連携して長期的な視点から焦 らず、慌てず、諦めずに、健全な農地防風林の造成に取り組んでいくことが大切である。


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