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砂糖と肥満・糖尿病

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2000年3月]
 糖尿病という名前からか、一般的に砂糖を摂ると糖尿病になると勘違いしている方が多いようです。こうした誤解を払拭するために、「砂糖と肥満・糖尿病」と題し、池田義雄先生及び成宮学先生に執筆していただきました。
 砂糖に限らずエネルギーの過剰摂取により肥満し、糖尿病の引き金になることはあっても、砂糖が糖尿病の直接的な原因になることはありません。むしろ、糖尿病患者の前糖尿病期の砂糖摂取量は健常者よりも少ないという成績も報告されています。また、糖尿病患者でも1日40gぐらい(日本人の現在の平均摂取量は1日約50g)までは、砂糖を摂取しても問題ないという内容は大変興味深いものです。
 
国立西埼玉中央病院内科医長 成宮 学
東京慈恵会医科大学健康医学センター健康医学科教授 池田義雄
 

はじめに
砂糖の代謝
問題は過剰な砂糖や異性化糖の摂取  肥満の新診断基準決まる
肥満を源流とするDeadly Quartet, Syndrome XそしてMetabolic Syndrome
文明社会における肥満の原因  新しい糖尿病の分類と診断基準
2型糖尿病と砂糖摂取との関係  糖尿病患者における砂糖使用の実際
おわりに


はじめに

 食事内容の欧米化に伴い砂糖の消費量は昭和51年ごろまでは、年々増加傾向をたどった。ちなみに、昭和6〜10年の1人1日当たりの砂糖の平均摂取量は、33g前後であるが、欧米の1人1日当たりの砂糖の平均摂取量が130〜150gであるのに比べれば半分程度であるにしても、昭和51年には2倍以上の73gまで増加した。交通網の拡大と人口の都市周辺地域への分散、農村の都市化現象に伴い食生活の欧米化が進行し、砂糖消費量が増加してきたものと考えられる。しかし、昭和51年以降の砂糖の消費量は年々減少傾向にあり、平成9年の1人1日当たりの砂糖の平均摂取量は50gまで低下している。逆に異性化糖の1人1日当たりの平均摂取量は、果糖55%ものの固形ベースの標準異性化糖に換算すると、昭和52年が4gで、その後年々増加し、平成9年には16gに達している。だが、砂糖と異性化糖の両者を合わせた1人1日当たりの平均摂取量は、昭和52年が74gに対して、平成9年は66gとむしろ減少傾向にある。
 一方、モータリゼーションの増大、オートメーションの拡大に伴う運動不足、食事内容の欧米化による異性化糖、脂肪摂取量の増加とともに肥満と糖尿病の頻度の増加が認められている。現在、わが国の成人のうちBMI(体重(kg)÷身長(・))25以上のものは4〜5人に1人にまで増加している。また、糖尿病が強く疑われるものが690万人、糖尿病の可能性が否定できないものを合わせると1,370万人に達する。
 ここでは、砂糖と肥満・糖尿病との関係につき、その生理作用、どのような悪影響を及ぼすか、適正な摂取はいかにすべきかなどにつき考えてみたい。
 
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砂糖の代謝

 砂糖はブドウ糖と果糖よりなる二糖類で上部小腸でシュクラーゼという酵素によりブドウ糖と果糖に分解される。ブドウ糖はすみやかに吸収されるが、果糖は10%がブドウ糖に変換され、残りの90%が果糖のまま吸収される。吸収されたブドウ糖の60%が肝臓、25%が脳、10%が筋肉、残り5%が脂肪組織など他の組織に取り込まれる。
 一方、吸収された果糖はほとんどすべて肝臓に取り込まれる。肝臓に取り込まれたブドウ糖、果糖は解糖系、TCAサイクルを経てATP産生に消費され、余分なものはグリコーゲン、中性脂肪に変換される。
 しかし、ブドウ糖と果糖との間には肝臓における代謝上大きな違いがある。ブドウ糖はインスリン依存性の糖代謝律速酵素のglucokinase,phosphofrukutokinase、グリコーゲン合成酵素などによって調節されているが、果糖の場合には、この調節機構はうまく作動しない。果糖はその大部分がfrukutokinaseによりリン酸化される。しかし、果糖のリン酸化とその後の代謝を制御する機構が存在しない。そのため、肝臓への過剰の果糖の流入は、肝臓のグリコーゲン蓄積には限りがあるため、中性脂肪の合成がこう進し、血中への中性脂肪の放出の増加を招き、高中性脂肪血症をもたらす。特に、インスリン作用不足を伴う糖尿病ではグリコーゲン合成、ATP産生が円滑に行われないため、この過程がより活発となる。
 大量の砂糖が摂取された際には、乳酸や尿酸の産生が増加し、時に痛風発作が誘発されることがあると言われている。
 砂糖の影響を調べる場合、第1に分解されやすく、すみやかに吸収されるという点と、第2にブドウ糖と果糖が同時に取り込まれるという点を考慮する必要があると思われる。
 
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問題は過剰な砂糖や異性化糖の摂取

 甘いものを欲するという味覚は、人間が原始生活を営み、魚や獣を獲り、たんぱく質や脂質に富む食物を摂取するだけでは不十分な時代に、果物を欲するというかたちで、炭水化物に富む食物を摂るために備わっていた感覚であった。しかし、人間が甘いものを本能的に欲するがゆえに本能のおもむくままに甘いものを摂っていると過剰摂取になるという問題が生じてきた。
 例えば、よく言われていることであるが、人がケーキやアイスクリームを食べるのは、その人がケーキやアイスクリームの外見や味に引き付けられるからであって、それらのもののもつエネルギーを必要としているわけではないのである。果物も品種の改良により本来自然界に存在していたものよりさらに甘味が強いものが生み出されてきている。また、体内の水分量が減少し、のどの渇きが生じた際にも、その不足を補うために水の代わりにしばしば調味嗜好飲料が求められるようになっており、これも過剰な砂糖や異性化糖の摂取を促す結果となっている。甘いものが直接肥満につながり、悪影響を及ぼすのではなく、おいしいがゆえについ過剰摂取になることが問題なのである。

肥満の新診断基準決まる

 平成11年10月に開催された第20回日本肥満学会の席上、肥満症の新しい診断基準が決定され、さらに肥満に対する国民と立法、行政機関の認識を高めるために「東京宣言」が肥満学会として発表された。
 新基準では、これまでのBMI26.4以上から、WHO分類のBMI25以上(5きざみ)の過体重を肥満1、BMI30から35未満を肥満2、BMI35から40未満を肥満3とし、BMI40以上を肥満4としている。さらに、糖尿病、脂質異常、高血圧、冠動脈疾患、脳梗塞、痛風、睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、変形関節症、腰椎症、月経異常、不妊症などの肥満による健康障害がある場合、ならびに腹部CTで内臓脂肪型の場合は肥満症と定義している。
 東京宣言では、BMI25以上の肥満者が現在、日本の成人の20〜25%、4〜5人に1人おり、今後も増加が予想されること、そしてこの傾向は子供にもみられること、高血圧、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の30〜60%が肥満に起因していること、さらに生活習慣病による動脈硬化の進行が心筋梗塞、脳梗塞の増加を招き、医療費の急増に拍車をかけていることを述べ、さらに肥満の知識の全国規模の普及、肥満の成因、病態についての研究活動の推進による科学的根拠に基づく肥満治療の確立、肥満に対する質の高い医療スタッフの養成と健康サービス提供施設の増加に努力するとともに、肥満に対する国民の理解と、肥満への迅速な国家的レベルでの対応を求めている。
 
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肥満を源流とするDeadly Quartet, Syndrome X
そしてMetabolic Syndrome

1.上体肥満とDeadly Quartet(死の四重唱)との関係
 肥満には腹部周辺に特に脂肪がつきやすい“りんご型肥満”と呼ばれる上体肥満と、臀部から大腿部に脂肪がつきやすい“洋梨型肥満”と呼ばれる下体肥満の2種類がある。同じ過剰体重でも、下体肥満に比べて上体肥満の方が体に種々の悪影響を及ぼす。近年、上体肥満が高インスリン血症を介して耐糖能障害、高中性脂肪血症、高血圧と結びつくことが明らかとなった。1989年米国の内科医Kaplanは耐糖能障害、高中性脂肪血症、高血圧、上体肥満の4つの冠動脈疾患発生のリスクファクターを合併する病態をDeadly Quartetと命名した。

2.Metabolic Syndrome(新陳代謝症候群)の基礎となったSyndrome Xは冠動脈疾患の危険因子
 一方、米国の糖尿病学者Reavenはその前年の1988年、冠動脈疾患の重要な危険因子としてSyndrome Xという考えを提唱した。これがMetabolic Syndromeのはしりである。Syndrome Xとは表1にあるような症状を合併した症候群のことである。彼の考えの優れた点は、従来、動脈硬化の危険因子といわれていた種々の因子がインスリン抵抗性という1つの原因によってもたらされることをはじめて明らかにしたことである。
表1 Syndrome Xにみられる症状
・インスリン刺激によるブドウ糖取り込みに対する抵抗性
・耐糖能障害
・高インスリン血症
・血中中性脂肪の増加
・血中HDLコレステロールの減少
・高血圧

3.Metabolic Syndromeを引き起こす肥満とインスリン抵抗性
 大阪大学の松沢佑次らはいち早く腹部脂肪のCTによる分析に取り組み、肥満を腸間膜などの内臓脂肪の多い内臓脂肪型と皮下脂肪の多い皮下脂肪型に分類した。この分類は従来欧米で提唱されてきた上半身肥満と下半身肥満をさらに科学的に分析したものである。これらの種々の名称で呼ばれていた病態をまとめて最近ではMetabolic Syndromeと一括して呼んでいる。Metabolic Syndromeとは表2に示す5つの動脈硬化の危険因子を併発した病態である。
表2 Metabolic Syndromeの5つの危険因子(WHO1997)
・BMI25以上、上半身肥満、内臓脂肪型肥満
・耐糖能障害(空腹時血糖値110≦、<126mg/dl、または75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値140≦、<200mg/dl)
・高血圧 140/90mmHg以上
・血液脂質異常(中性脂肪150mg/dl≦、HDLコレステロール<40mg/dl)
・微量アルブミン尿陽性
 
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文明社会における肥満の原因

 ところで砂糖を摂ると太るという考え方が一般的に広くいきわたっているが、これまで砂糖のみの摂取による肥満の招来を確実に支持する成績はほとんど得られていない。多くの疫学的な成績によると、砂糖の消費量は実際にはむしろ逆に肥満者よりもやせたものの方が多いことが明らかになっている。そして、オランダ栄養対策委員会の行った利用可能な成績の注意深い分析によって、砂糖の摂取は肥満や短命を引き起こす主要な原因ではないという結論が得られている。また、Hoodらの報告でも、エネルギーを一定にして砂糖の含量を3〜50%と種々に変化させても、肥満者の体重減少の速度には何ら影響が認められていない。
 砂糖の投与を含めて種々の食事成分の変化によりラットで肥満が生じるという報告もあるが、大部分のもので高脂肪・低糖質食が用いられている。しかしながら、これらの成績が必ずしも砂糖の消費の増加が肥満の危険を増大させるという可能性を否定するものではなく、ただ一般に広くいきわたっているところの砂糖が唯一の肥満の原因であるという考え方に対して警告を与えるものとして理解されよう。
 砂糖のエネルギーは4kcal/g、アルコール7kcal/g、脂肪9kcal/gで、これらの中で砂糖はアルコールや脂肪に比べて単位重量当たりのエネルギーは少なく、文明社会において砂糖の消費ばかりでなく、精神的・身体的ストレスの増加に伴いアルコールの摂取量もますます増えている。また、外見や口当たりのよい高脂肪を含む食品が出現している。さらに、国民栄養調査の成績で一時減少傾向であった塩分の摂取量が加工食品の普及により再び増加傾向にある。塩分の摂取は食欲を増加させ、肥満の誘因となる。さらに異性化糖を添加した調味嗜好飲料の消費の増加が認められている。さらに、わが国の砂糖の消費量が減少していることを考え合わせれば、最近の肥満の増加の責めは砂糖よりもこれらの諸因子にこそ負わせるのが妥当と考える。
 したがって、文明社会における肥満の原因は、砂糖の消費が増加してきたためではなく、インスタント食品、各種スナック、菓子類、調味嗜好飲料などが容易に摂取でき、料理に手間のかからない冷凍食品、レトルト食品が出現し、それと同時に運動不足がますます拡大してきたために、相対的に摂取エネルギーが増大し消費エネルギーが減少し、その結果として体内エネルギーの過剰蓄積が肥満をもたらせていると考えられる。
 
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新しい糖尿病の分類と診断基準

 平成11年5月に17年ぶりに糖尿病の分類と診断基準が改定された。新しい分類では織物の縦糸と横糸のように病型分類とステージ分類の2つの分類を用いている。新しい病型分類では、糖尿病は (a)1型糖尿病、(b)2型糖尿病、(c)その他のタイプの糖尿病、(d)妊娠糖尿病の4つに分類されている。1型糖尿病は主に子供や若年者に起こることが多く、発症が急速でケトアシドーシス傾向が強く、インスリン治療を必要とするという臨床的な特徴を有している。また、発症に関しては、特定のHLA抗原が関与していることが分かっている。HLA抗原というのは、いわば白血球の型のことで、膨大な数の型がある(ちなみに、臓器移植などの際には、このHLA抗原の型が合うかが問題になる)。そして、自己免疫異常によって膵臓のB細胞が破壊されインスリン欠乏が生じると考えられている。また、各種ウィルス感染が1型糖尿病発症に先行することが報告されるようになり、ウィルス感染による1型糖尿病の可能性も指摘されている。一方、2型糖尿病は遺伝的背景に、肥満、過食、運動不足、ストレスなどが発症因子として作用し発症する。中でも肥満は重要で、2型糖尿病患者の70〜80%に肥満が関与している。特定の遺伝子異常や膵臓・内分泌の異常によるのがその他のタイプの糖尿病である。妊娠中に発症する糖尿病は厳格な治療を必要とするため、妊娠糖尿病として独立した分類項目としている。ステージ分類はインスリン作用不足の程度と糖代謝異常の程度により、正常領域、境界領域、糖尿病領域(インスリン非依存状態、インスリン依存状態)に区分している。
 糖尿病の診断は、血糖測定により、正常型、境界型、糖尿病型に分類される。空腹時血糖値が126mg/dl以上、あるいは随時血糖値ないし75g経口ブドウ糖負荷後2時間血糖値が200mg/dl以上が糖尿病型で、この糖尿病型が2回以上確認できると糖尿病と診断される。空腹時血糖値が110mg/dl未満かつ75g経口ブドウ糖負荷後2時間血糖値が140mg/dl未満が正常型で、両型の中間が境界型である。
 糖尿病を放置しておくと、神経障害、網膜症、腎症などの合併症が起こる。糖尿病が原因で毎年3,000人が失明し、9,400人が透析導入を受けている。また、アテローム動脈硬化が10年以上速く進行し、その程度も数倍ひどいといわれている。境界型の内、高インスリン血症を伴うものでは動脈硬化による狭心症、心筋梗塞、脳梗塞の危険性が高いといわれている。
 
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2型糖尿病と砂糖摂取との関係

最近まで過剰の砂糖摂取が2型糖尿病を引き起こすという考え方が通説となっていた。しかし、疫学的見地及び実験結果からも、このような考え方を支持する成績はほとんど得られていない。そして、2型糖尿病と診断された患者の砂糖摂取量は、健常者と比較してむしろ少ないという成績が報告されている。また、砂糖摂取量が多い群が少ない群に比べて耐糖能が良いと報告されている。そして、ある種の糖尿病や軽症の糖尿病患者では少量の砂糖に対する感受性が良い可能性も考えられる。
 Cohenらは、ラットに大量の砂糖を摂取させ糖尿病を発症させたと報告している。しかし、砂糖成分の半分を構成している果糖の代謝が、ヒトとラットでは非常に異なっており、ラットで得られた成績をそのままヒトに当てはめて結論を下すことはきわめて危険であるといえよう。また、彼らの成績では、総エネルギーの70%と非常に多くの部分を砂糖として投与している。確かに長期間にわたり砂糖を大量に投与すればヒトにおいても糖尿病が発症するかもしれないが、しかし、このような可能性は糖尿病の成因として考える場合にはほとんど問題にならない。
 糖尿病と食事内容についての疫学的研究によれば、糖尿病の頻度は高脂肪・低糖質食の国に高いといわれ、Himsworthらの成績では糖質制限により耐糖能は悪化し、糖質の投与により再び改善している。そして、この耐糖能の改善は糖質源として砂糖を投与しても同様に認められるという報告もある。
 高脂肪食が糖尿病の発症に関与するという見方に対して、Yudkinらは砂糖の摂取によるものだと主張した。すなわち、彼らの調査によれば、高脂肪食を摂っている国では同時に砂糖を大量に消費しており、糖尿病の頻度は高脂肪食よりも砂糖の過剰摂取とより強い相関を認め、砂糖の過剰摂取が糖尿病を引き起こすと主張した。しかし、この考え方に対して、糖尿病患者の前糖尿病期の砂糖の摂取量は健常者よりも少ないという成績も報告され、砂糖の過剰摂取が2型糖尿病の成因と考えることには無理がある。
 
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糖尿病患者における砂糖使用の実際

 食品交換表を見ると、1日の調味料として使う砂糖は1,200kcalの食事で6gとされている。これは大変少ない量である。この量は以前1,200kcalで10gとなっていたが、食品成分表に変更があったおり、帳尻合わせ上4g減らすことになった。このことは糖尿病患者にとっては迷惑だったのではないかと考える。
 糖尿病患者において、基本的に1日の使用量としてどの位まで許されるのか、すなわち調味料と出来上がり商品などに含まれているものも含めて、それは1日量として30g位、最大限40g位までは許容できるのではないかと考える。食品交換表では、調味料として砂糖6g以内とされているが、その他食品、特に加工食品に使われているものを合わせると20g位はどうしても摂ってしまうことになる。ここのところを踏まえると1日30g位までの砂糖使用は許容されうるということである。
 砂糖のもつ欠点があるとすれば、糖尿病との絡みで見ると、急峻な血糖上昇、ともかくおいしいということ、また他の食品を大変おいしく作り上げるという性質、これらはやはり直接的に糖尿病、特に血糖コントロール状態に影響するので、これらの点を十分に認識した上で砂糖摂取指導を行えば問題はない。しかし、甘味への要求度の高い患者は少なくない。そこでよく導入されるのが、人工的な、あるいは天然も含めた砂糖に代わる甘味料である。
 代替甘味料については、糖質系と非糖質系に分けてみると分かりやすい。糖質系のうち果糖、ソルビトールなどは1g4kcalを有する。マルチトールは1g約2kcalとなっている。果糖については、血中尿酸値や中性脂肪を上昇させやすいという点で、これの摂り過ぎは気をつけなければならない。現在、我が国では非糖質系の文字通りの代替甘味料が利用可能で広く用いられている。それには、ステビオサイド、サッカリン、アスパルテームなどがある。この中でアスパルテームは蛋白質で1g4kcalを有するが、砂糖100とした場合の甘味度は200あり有用度が高い。しかし、いずれの甘味料をとってもやはり砂糖に勝るものはないようである。こういう非糖質系の甘味料等を使用していても、結果的にはおいしさの勝る砂糖に戻らざるを得なくなる。このため基本的には砂糖の少量(糖尿病患者で1日30g位まで)に慣れるように初めから指導するのがよく、代替甘味料はどうしようもない甘味欲求への対応策としてやむなく活用するための手段として残し、安易に用いることは慎みたい。
 
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おわりに

 糖尿病の成因と食事との関係を考える場合、食事の組成よりもむしろ総エネルギー量が問題となる。臨床的にも2型糖尿病の発症前に先行する肥満の既往を認めることが多く、肥満は2型糖尿病の重要な発症因子と考えられている。肥満時には筋肉、脂肪組織などの末梢組織のインスリンレセプターの数が減少し、また肥満が高度に長期間続くと、細胞内の代謝障害によるインスリン抵抗性が加わり、過剰エネルギーの摂取とともに膵臓のランゲルハンス氏島B細胞に対する負荷がますます加わり、生まれつきB細胞機能が弱い場合には、B細胞の疲弊を招きインスリン分泌が低下し、その結果、血糖レベルはますます上昇するという悪循環が生じ糖尿病が発症すると考えられる。
 したがって、砂糖に限らずエネルギーの過剰摂取によって肥満を誘導し、特に上体肥満は、Metabolic Syndromeを介して糖尿病の発症・進展に大きな影響を与えている可能性が大きいとするのが妥当な見方だと考える。
 
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「今月の視点」 
2000年3月 
砂糖と肥満・糖尿病
  国立西埼玉中央病院内科医長 成宮 学
  東京慈恵会医科大学健康医学センター健康医学科教授 池田義雄

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