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こころ和ませるシュガークラフト

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報


今月の視点
[2000年6月]
 ケーキに彩りを与え、味覚的にも視覚的にも私たちの心を和ませてくれるシュガークラフトは、ヨーロッパをはじめオーストラリア、アメリカなど海外の国々ではなくてはならないものとなっています。日本では習慣の違いからか、まだまだ趣味の世界と捉えられていますが、ようやくケーキ職人の間でも認知されつつあるようです。
 日本におけるシュガークラフトの草分け的存在で各種学校の講師もなさっている稲田和子氏にこのシュガークラフトとはどのようなものなのか、世界における歴史、日本における位置付けなどを作品の写真を交えて紹介していただきました。親しい方の誕生日などのお祝い事には、心のこもったプレゼントとして喜ばれるかもしれません。

パディケーキハウス主宰 稲田 和子


砂糖の歴史とケーキデコレーションの始め
段飾りウエディングケーキの始まり
日本のデコレーションケーキ
最近のケーキデコレーション
 ― シュガーデコレーションケーキについて ―
フルーツケーキとシュガーペーストの作り方


砂糖の歴史とケーキデコレーションの始め

 ご存じのように砂糖の歴史は、インドあたりからむしろ東洋圏に先にひろがり、十字軍の遠征とともにヨーロッパに広がりました。砂糖のすばらしさは体にも心にも影響を与えるところから、12世紀頃には香料とともに薬屋で売られ、貴重品でありましたが、高価なものであったにもかかわらず、砂糖の消費量は増えていきました。
 イギリスでは金持ちの貴族の間で、パーティの客を驚かせる趣向のひとつとして、また富の象徴として高価な砂糖で色々な彫刻や飾り物を作ることが流行し、それを作る職人は高給で召抱えられ、半年分くらいのストックを倉庫に収め、また次の貴族に雇われて飾り物を作って渡り歩いたそうですが、それは大きな宮殿、建物、お庭、動物など砂糖の固結する性質を利用した彫刻で、残されているたくさんの絵を見ても素晴らしいものです。
 15世紀コロンブスの新大陸発見以後、スペイン、ポルトガル、オランダ、イギリスなどが南北アメリカ大陸に押しかけ、植民地を築き、16世紀から17世紀にかけて砂糖を生産、労働力としてアフリカから奴隷を買い入れ、砂糖やラム酒を売る貿易で大きな利益をあげました。そのためアフリカの人口は激減、国の疲弊をもたらしました。
 17世紀から18世紀にかけて、イギリスは砂糖、香料や紅茶のプランテーション(同一作物のみを大量に栽培する)に成功しました。ようやく国内もビクトリア女王の治世が安定し、蒸気機関の発明は産業革命のきっかけを作り、大英帝国の基礎を作り、砂糖もようやく一般庶民の手に届くようになりました。紅茶やコーヒーを飲む習慣とその中に砂糖を入れて飲むことも流行し、砂糖漬けの果物や甘いケーキも作られるようになりました。

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段飾りウエディングケーキの始まり

 結婚式の時には、一家の繁栄を願って花嫁の頭に甘い蜂蜜を練りこんだケーキのかけらをふりかけたり、お米のような穀物をまいたりする習慣は、遠くギリシャ、ローマの時代から行われていましたが、1840年ビクトリア女王の結婚式の時には、披露パーティーにウエディングケーキとして、直径90cm、高さ30cm、重さ300ポンドの巨大なプラムケーキが焼かれ、皆にふるまわれました。ケーキには砂糖と卵白を練り合わせたロイヤルアイシングをぬり、上面の飾りは、プロシア(結婚相手はプロシアの方)とイギリスの国旗が交差し、人形や愛犬が砂糖で彫刻され、サイドにはワックスフラワーのバラのガーランドが飾られています。
 しかし、これは巨大なプラムケーキのお化けと呼ばれあまり評判が良くなかったということです。そこで18年後、彼女の長女、プリンセスロイヤルが結婚する時には平べったいケーキではなく、3段に分かれたケーキが初めて作られました。そして、次のレオポルド王子の結婚式の時には、さらに洗練された美しいウエディングケーキが作られ、それは当時大変な人気を呼び、一般庶民の憧れや上流志向の波に乗って、たちまち流行したのです。
 1880年には、ケーキ屋の広告にも3段のケーキの広告が現れています。当時としては、大変高価なものであったにもかかわらず、結婚式の披露宴にはなくてはならないものとして定着していったようです。
 当時、イギリスでの砂糖消費量は、フランスの9倍といわれ、フランスは砂糖の生産地を持っていなかったので、砂糖欲しさにイギリスの所有する小さな島と、広大な北の植民地カナダを交換したのです。カナダが現在知られているような地下資源の宝庫とは知らなかったのでしょう。カナダは戦後イギリスから独立しました。
 イギリスでは、この砂糖のデコレーションケーキはウエディングケーキだけでなく、お誕生日、洗礼式、あらゆるセレモニーに欠くことのできないものであり、ケーキといえばこのフルーツケーキを指すほどです。今と違って保存性が高いことは、長い航海に必要なことであり、遠い植民地に住む親戚、友人に送るためにも必要なことであったのです。ビスケットという言葉も2度焼くという意味があり保存性を高めます。
 お酒に漬けたドライフルーツ、これを入れて長時間焼きこんだケーキ、そして砂糖の衣をかけて保存と装飾を兼ねたデコレーションケーキが今なおイギリス人の生活の中にあるのです。

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日本のデコレーションケーキ

 砂糖のアイシングをかけたデコレーションケーキは明治の初め、イギリスから入ってきたもので、背丈ほどの高く積み上げたウエディングケーキは帝国ホテルが最初といわれています。有名人の結婚式がホテルで行われるようになったからです。
 日本では、天井に届くかと思われる程の、ベニヤ板と発泡スチロール製のホテルのウエディングケーキがあたりまえのようになり、インテリアとしか思えない存在となり果てましたが、ようやく最近、このおかしな日本独特のウエディングケーキに疑問を持つ人たちが現れ、「小さくても心のこもったケーキを」と望む人が増えてきました。
 従来のデコレーションケーキは、ロイヤルアイシングをいろいろな形の口金から絞り出して飾ります。これは卵白、粉砂糖をしっかりと練り合わせ、酸を加えたものです。口金を取りかえることで、飾り方が違い、いろいろな花を作ることができます。これはまた大変面白い作業ですが、技術が必要です。アメリカのケーキデコレーションはすこし違って、ケーキ自身、柔らかいスポンジ状のケーキが好まれ、この飾りにはバタークリームが一般的で、カラフルな色付けが楽しいものです。これはバターまたはマーガリン、ショートニングなどと砂糖をホイップしたものです。日本ではこのタイプが好まれますが、最近はさらにホイップした生クリームで飾られたケーキに人気があるようです。これは半分が水ですので長時間保存ができません。その場でお客様にデザートとして供されます。

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最近のケーキデコレーション
 ― シュガーデコレーションケーキについて ―


 私は砂糖で作られた大きなバラの花を飾ったウエディングケーキを外国の本で見つけた時、是非これを作りたいと思いました。オーストラリアで出版された本でした。
 本を読みながら自分なりに作りましたが、この技術を教えてくれるところを探すために、出版社に問い合わせましたが返事がなく、見つけられないまま数年経ったときに、ようやくイギリスで教えているところがあることを英国人の方から聞き、1人でイギリスまで出かけました。1983年頃と思います。
 ミセス・エレイン・マックレガーはオーストラリアから、その2年くらい前に移ってきてブライトンに学校を開いたのです。もちろん日本人は初めてです。その後訪れるたびに、教室は賑わいをみせ、英国のシュガークラフトで今活躍の有名な先生方もここでオーストラリアンスタイルのケーキデコレーションを学びました。従来の砂糖のデコレーションとは違ったシュガークラフトの面白さは誰にでもそれなりに作ることができるところから、急激にイギリスから世界へと発展、日本ではようやく最近になってケーキ職人の方にも認められるようになり、講習を頼まれたりするようになりました。私はこのデコレーションの面白さを知ってもらいたいとただそれだけのために、毎年開かれる東日本洋菓子展に作品を出展し続けました。この12年間に11回参加、いくつかの賞も頂きましたが、最近は同好者も増え、教える人も増え、直接イギリスに行く人も増えて心強くなりました。従来のパスティヤージュ(工芸菓子に使われる粉糖、水で溶かしたトラガント・ゴムなどを入れて良く練った白色の生地)では繊細な花びらなどが作れないため、2年前から東京製菓学校にも教えに行くようになりました。イギリスのケーキデコレーションは旧イギリス植民地でそれぞれの発展をとげ、砂糖をペースト状(お餅状態)にしてケーキをカバリングし花を飾るのはオーストラリアンスタイルと呼ばれ、ロイヤルアイシングを細い糸のように絞り出してレース模様を作るのはサウスアフリカンスタイル(南アフリカスタイル)と呼ばれます。その他ワイヤーの先に花を搾り出すのはフイリピンスタイルともいいます。南アフリカのデラ先生はアイシングの中に少量のゼラチンを入れました。そうして絞り出す口金はNo.0さらに細いNo.00です。そうして腕は丸太の如く太くたくましいのです。力のない私たちは大変です。
 ある時、1人の日系ペルー人が教室に訪ねてきました。見学しているうちにおもむろに背中のリュックから本を取り出し、彼自身の写真とともにデコレーションの作品が並んでいました。シュガーデコレーションの先生なのです。ペルーで?デコレーション?彼ははるばるペルーから粉砂糖も2kgかついで来ました。日本に粉砂糖やゼラチンが無いかもしれないと思ったそうです。このケーキデコレーションはペルーのほうがはるかに先進国だったのです。大変良いお金になるそうです。ブラジルの方も言っていましたが、結婚式には何をおいてもケーキにだけはお金をかけるそうです。外国ではケーキそのものが生活の中で大きな比重を持ち、その中にデコレーションがあることは当然なのです。
 日本ではどうしても趣味の世界として捉えられます。それは習慣の違いによるもので仕方がありません。

シュガーアート作品の数々

シュガーアート作品 シュガーアート作品
シュガーアート作品

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フルーツケーキとシュガーペーストの作り方

 ケーキ作りの好きな方の心を捉えるこのシュガーデコレーションは、卵白に粉砂糖を加えるロイヤルアイシングに加えて、増粘剤としてゼラチンやトラガントガムなどを使用し、自由な造形を楽しむことができます。1993年に出版した本「シュガーフラワー」は1年で大半がなくなり、関心の深さがうかがえました。細工の仕方は和菓子の工芸菓子に似たところがあります。
 中のケーキは、しっかりとお酒に漬けられたドライフルーツなどを入れて焼きこまれたフルーツケーキです。砂糖で覆われたこのケーキは長く保存できるので、外国では1年後の結婚記念日や、最初のベビーが生まれるまで取っておく習慣があります。私は4年置いてあったケーキを皆様に食べて頂きましたが、大変おいしく、4年前のケーキとは誰も信じませんでした。賞味期限など言われたら困るところです。イギリスではじっくり焼きこんだケーキにマジパン(アーモンドの粉末と砂糖を合わせて練ったもの)ペーストをかけ形を整え、その上にシュガーペーストをかけます。これは花を作るペーストと配合が違い、いつまでも柔らかいように、水あめ、ショートニング(食用植物性油脂、乳化剤)を多く入れたり、保湿材グリセリンを入れます。日本の細工用のマジパンでカバーすると砂糖には変化がないのに、このマジパンがどろどろに溶け出すのには驚いてしまいました。何か別のものが入っているのでしょう。私はケーキだけをラップに包みシュガーペーストをかけています。というのも気候の違い、特に湿度は大変影響が大きく、イギリスの配合が日本には良いとは限りません。

カバー用のシュガーペースト ※グリセリンは、高等植物や海草、動物などに多く含まれ、人間にも皮下や筋肉などに「脂質」という形で蓄えられています。用途は、香粧品、医薬品、タバコ、樹脂や火薬などのほか、食品にも多く使われ食品添加物として登録されています。
ゼラチン 8g
 75cc
水あめ 20g
ショートニング 20g
グリセリン※ 20cc
粉砂糖 500 g〜600g
余分の粉砂糖を用意しておく

 ゼラチンは予め75ccの水の中につけておく。湯煎にかけて溶かす。水あめ、ショートニング、グリセリンを加え、粉砂糖の半分を湯煎状態のまま加える。湯煎からはずし、残りの砂糖を加える。さめるまで良く練り1日寝かして使用する。かけやすい状態に砂糖その他を調節する。
 配合は人それぞれの工夫があり外国の本を見てもゼラチンのほかに増粘剤としてトラガントガムやCMC などそれぞれの先生方の配合があり工夫があり、シュガーペーストそのものを販売しているメーカーもあります。パディケーキハウスではインスタントシュガーペーストを使用しています。これを粉砂糖とともにふるい、水を加えて使用しますが、カバー用にも使えます。
 フラワー用シュガーペーストは、上記のカバリング用シュガーペーストからグリセリンを除き、水あめ、ショートニングを減らします。これらが多いと花がかわきにくくなります。

パディケーキハウス
スタジオ 横浜市西区岡野2−13−5−岡野パークハイツ407 Tel:090-1808-2311 FAX:045-312-7177
http://homepage2.nifty.com/paddy/

シュガーアート制作手順

シュガーアート制作手順1 シュガーアート制作手順2
シュガーアート制作手順3
シュガーアート制作手順4 シュガーアート制作手順5

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2000年6月 
こころ和ませるシュガークラフト
  パディケーキハウス主宰 稲田和子

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