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砂糖の多様な機能性

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2001年1月]
 平成12年11月8日(水)に横浜市のはまぎんホールヴィアマーレにおいて当事業団が開催した 「砂糖と食文化セミナー2000」 における吉田先生の講演内容を紹介します。砂糖には食品素材として様々な機能を有し、人の身体にとって即効性のエネルギー源であることの他、食事はバランスよく食べることによって個々の食品の効果が現れるものであること等興味深い内容でした。

女子栄養大学 教授 吉田 企世子


(はじめに)
甘いものは悪いもの?
バランス良くおいしく食べることが大切
砂糖の食品素材としての機能
  呈味性   脱水作用と保水性   分散性   発酵性
保存性を高める砂糖の機能
  水分活性と砂糖の働き   ジャム・ママレードにおける砂糖の働き
  練ようかんにおける砂糖の働き
砂糖と健康
  エネルギー源としての砂糖   砂糖を食べても虫歯は防げる
  肥満との関わり   糖尿病との関わり
おわりに


 御紹介いただきました吉田でございます。
 私たちは、日本に住んでいますと、大変多くの食べ物に恵まれており、手を伸ばせば簡単に世界中の食べ物が手に入るという環境の中にあります。食べ物の量が満たされていることは、大変幸せなことで、感謝しなければいけないことだと思います。ただ、あまりにもいろいろなものがあるので、何をどのように食べたらいいのか混乱している状況がみられます。
 一方で、日本は今、世界一の長寿国になっていますが、最近は「平均寿命」だけではなくて、「健康寿命」 つまり健康で生き生きと生活できる、活動できる年齢、という言葉が使われています。「平均寿命」 は、日本人は世界一ですが、平均寿命と健康寿命の差が大きいのも日本の特徴だそうです。
 従って、長生きはしているが、寝たきりとか、十分体が動かないという方が多いのが、日本の特徴だそうです。いずれにしても、今の日本は長生きできる環境にあるのは、食生活が基本的に満たされていることもありますが、衛生条件も優れ、医学も進歩しているといった様々なことが関係しています。
 しかし、何といっても食べることが健康の基本です。そのことは分かっているが、正しく把握できていないので、食生活に不安を持っている人が多いのかなと時々感じます。
 それは、テレビ、雑誌、新聞等メディアを通じた、食べ物と健康に関わる情報が非常に多い中、食品を短絡的に述べ過ぎている情報が多いのです。例えば2、3年前に赤ワインが大変ブームになりました。これは赤ワインに含まれているポリフェノールが注目されたからです。ポリフェノールは、かつては専門用語でしたが、現在は日常の用語として浸透しています。ポリフェノールといえば赤ワイン、故に赤ワインを飲めば心疾患やがんの予防になると言われ、赤ワインが特に注目されました。赤ワインには確かにそのような良い点があるのですが、一方で、赤ワインを飲み過ぎて肝機能障害になった人もいるのです。1つの食品がオールマイティではないのです。どのように組み合わせてどう食べるかが大事なことです。

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 いつのころからか、砂糖が大変悪者扱いにされているように感じます。肥満につながる、虫歯になるといった悪い面だけが強調されているように思われます。いろいろな食品の中に砂糖を上手に組み合わせて食べれば良いのですが、砂糖に偏ったときの問題点が、強く表に出ているように感じます。
 私は非常に印象に残る思い出があります。今から15〜6年ぐらい前、お母様方の勉強会で、「子供のおやつと健康」 について話をした時のことです。子供は大人と違う立場でいろいろな食べ物への嗜好性があるという話をした後、あるお母様が 「先生、私は子供には一切キャンディを食べさせません。ああいうものを食べさせるから虫歯になるんです」 とおっしゃるのです。
 私は自分の子育てのときのことを考えますと、キャンディは色も美しいしどのような味があるだろうと、子供には憧れがあるのです。そのような夢を子供から奪い取ってしまうことはしたくないと考えていましたので、お母様がキャンディは一切与えませんとおっしゃった言葉がとても印象に残っております。そのような育て方は、私は納得いかないというお話し合いをした記憶があります。虫歯を防ぐため、キャンディを与えた後は、口をきちんとゆすぎましょうと言っています。
 また、「甘い飲み物は一切子供には与えないできました」 とおっしゃるお母様もおりました。ところが、幼稚園で遠足に行ったときに、お母様は甘い物を飲ませたくないからと、お茶とか湯冷しを持たせたところ、他のお子さんが、市販の甘い飲み物を飲んでいた時、あれが欲しいといって泣いたとおっしゃるのです。でも、子供はそういうものは飲んでいけませんと言いながらも非常に疑問を持ったそうです。これだけ子供が欲しがるものを、そこで無理に抑えることが、この子にとってどれだけプラスになるだろうか。むしろこの子の精神構造の上で、マイナスに働いてしまうのではないかと思ったそうです。「先生、飲ませ方の問題だということですよね」 とそのお母様はおっしゃいました。

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 食べることは、すべてバランスが基本です。バランスというのは、いろいろな食品を組み合わせて食べること、その中に砂糖を上手にとり入れること、これが食べることの基本で、健康につながるわけです。
 健康は、ただ身体が健全であるだけではなく、心が豊かであることとが必要なのです。食べ物から栄養素を摂る一方で、おいしく食べることを忘れてはならないわけです。ここが食べ物の大事なところです。これがだめ、あれがだめ、これがいいという極端なことではなく、食べ物をもっと柔軟にとらえて、偏らないで食べ続けることで、本当の意味の健康が維持できると思います。しかし、このことを分かっていても実践できないところが、人間の人間たるところかと思いますが、やはり健康で生き生きと生きていくためには、実行をしなければならないのです。
 私が勤めている女子栄養大学では、食を予防医学としてとらえる教育をしています。食に関するあらゆる分野の教育をしていますが、食べることは栄養素を摂ること、おいしく豊かに食べることと教育しています。料理はそのような意味で、いろいろな食の知識をもとに実際においしく食べることへの実践をする技術です。そこまでつながらないと、本当の意味の健康は維持できないと思います。

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 砂糖の幾つかの機能のうち、1つは食品素材としての機能を紹介します。

呈 味 性
 私たちは、一般的に甘い物を食べると、ホッとした気持ちになります。そのような意味で、甘みを提供するという呈味性としての働きは大きいと思います。一方、砂糖には甘みを強調した働き以外に、料理の中に少し使うことで、非常に味を引き立てる働きがあります。
 例えば、料理のテレビ番組を見ていましたら、あるお料理の先生が、「ホウレンソウをゆでるのに砂糖を少し入れます」 と指導されていました。それを見て、確かめてみたいと思い、ホウレンソウをたくさん買い込んできて実験をしました。ホウレンソウを均一に3等分し、お湯だけの鍋、お湯に0.5%の食塩を入れた鍋、お湯に0.5%の砂糖を入れた鍋と3種類を用意し、同じ時間ゆでました。ゆで上がったホウレンソウを10名の方に食味テストを行いました。その結果、10人中10人が一番おいしいと評価したのは、砂糖を少し入れてゆでたホウレンソウでした。普通は食塩でゆでますが、これは2番目で、水だけのは水っぽくて、一番味が良くなかったのです。
 そのとき、砂糖がどのような働きをしているのかと考えました。化学的な変化ではなく、ホウレンソウのようなあくの強い味を和らげる働きが砂糖にあるのではと推察しております。砂糖の呈味性ということが、ただ甘みを加えるということの他に、くせのある味を和らげる効果があることを、そのときに実感したわけです。
 私たちは砂糖そのものの甘味を味わうだけではなくて、料理に使って、他の食品の味と組み合わせて味わっているのです。砂糖が加わることによって、食品の味が引き立ち、好ましくない味を抑える効果があるのです。例えば、苦みの強いコーヒーに砂糖を少し入れるのは、コーヒーを甘くして飲む目的もありますが、コーヒーの苦みを和らげる目的もあるのです。砂糖には、相手のくせを和らげる 「抑制作用」 の働きがあることが分かります。

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 2番目は 「脱水作用と保水性」 についてです。砂糖は水によく溶けます。砂糖の溶解度は温度が関係しますが、大体22〜23度ぐらいの温度で溶かしたとき、2カップの砂糖が1カップの水に溶けるのです。逆に言えば、砂糖は水を奪い取る力 「脱水作用」 が大きいということです。この「脱水作用」が、保存性との関係でもとても大事な働きとなっています。
 私の思い出に、中学校1年生のとき 蒸しパンを作る家庭科の実習がありました。その頃は砂糖を思うように使えなかったのですが、中学生になって調理実習で砂糖が使えることになったことが、うれしかったのを覚えております。この時、先生が、粉、砂糖、塩を分量どおりくださったのですが、私たちのグループは、蒸しパンを甘くおいしく作ろうとし、砂糖を余分に持ってきて多く入れたのです。そうしたら、小麦粉がべたべたになり蒸しパンにならなくなってしまいました。
 この脱水作用と保水性という働きは大きいわけで、その働きによって、消化も助けられているのです。私たちはでん粉の食品を生で食べることはしません。生のでん粉はブドウ糖がたくさん結合してできており、硬い結晶状のブドウ糖がでん粉粒子に詰まっており、消化が非常に悪く、おいしくありません。この状態をベータでん粉と言います。ですから、お米を生でぼりぼり食べるとか、ジャガイモやサツマイモを生のままかじるとかしないわけです。加熱してから食します。でん粉がアルファでん粉という状態に変わります。この状態が味がよく、消化がよいのです。
 パンは、小麦粉のでん粉がアルファでん粉に変わった状態ですが、アルファでん粉になったでん粉をそのままおいておきますと、また、生でん粉のようなベータでん粉の状態に変わってしまいます。そうすると消化が悪くなり、味ももちろん落ちるわけです。それを防ぐのに砂糖の持つ保水性という機能が働くのです。でん粉の分子が生のでん粉のように硬い結晶状に整列するのには、水の存在が必要ですが、でん粉の中に砂糖が存在しますとその水を砂糖が奪い取ってくれますから、そう戻らないのです。従って、パンがアルファでん粉の状態で保たれているので、消化のいい状態でもあるわけです。このような意味で消化を助ける機能と見ることもできます。

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 3番目に分散性という機能についてです。これも砂糖の本当にすばらしい働きの1つですが、例えば葛湯を作るときに、砂糖を入れないとダマのような状態になってなかなか葛湯ができません。そこに砂糖を少し加えますと、とても滑らかにできるのです。
 もっと身近なものでは、皆様方の中には経験ある方とない方がいらっしゃるかと思いますが、かつて脱脂粉乳が給食で使われた時代があります。そのときに、脱脂粉乳をきれいに溶くというのが難しかったのですが、脱脂粉乳にお湯を加えて溶くときに、甘みを加える目的ではなく、砂糖を少し入れるのです。そうすると、脱脂粉乳はきれいに溶けるのです。これは一口に言ってしまえば、砂糖の持つ分散性という機能です。煮物などで、硬いものなどを煮るときに、ある程度火が通ったところで砂糖を少し入れておくと、ほかの調味料が入りやすいというのも、砂糖の分散性という性質が関係しているのです。

発 酵 性
 4番目に発酵性についてです。皆様方の中で、手づくりのパンをお作りになる方も多いかと思いますが、パンを作るときには砂糖が必要です。これはパンを甘くする目的ではなく、パンを作るのにはイーストつまり酵母を働かせて膨らませるわけですが、その酵母の栄養剤として砂糖が必要なのです。イーストを働かせますと、砂糖が分解して炭酸ガスと微量のアルコールが生成され、その炭酸ガスでパンが膨らむわけです。一方、微量のアルコールというのは香りが非常にいいのです。大体私たちの周りの食べ物で、香りがいいところには、いろいろな種類のアルコールが微量に含まれていることが多いのです。
 パンは小麦粉が原料ですが、小麦粉のたんぱく質のグルテンはグリアジンとグルテニンという2つのたんぱく質でできています。水を加えてこねますと、複雑な網目構造を持った生地ができるわけです。そこに炭酸ガスが入って、加熱されますとガスの容積が増え、水分も加わっていますから、その力でふわっと膨らむのです。これは砂糖の存在が大事ということです。もちろん甘いパンを作るのに、砂糖を多目に加えて甘くするという目的もありますが、基本的に酵母の栄養剤として欠かせない働きをしているのです。

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水分活性と砂糖の働き
 次に、保存性を高めるという砂糖の大事な働きです。食品を保存するというときには、一定量の水分を除いてしまいますと、微生物の働きを抑えることができますので、保存性が高まるわけです。先ほどの脱水作用と同じような働きにはなるのですが、水分活性というのは、食品に含まれている水分は不動のものではなくて、置かれている環境の湿度で変動します。そのような、水分を動的にとらえる考え方を、「水分活性」 と言います。食品にある程度の砂糖を加えますと水分活性が小さくなります。
 微生物が働くことができる水分は、食品に含まれている水分の中で 「自由水」 という水なのです。食品に含まれている水分は、大きく分けますと自由水と結合水との2つのタイプがあります。多くは自由水ですが、食品によって違いますが、例えば炭水化物とか他の成分と結合している結合水が一定量あります。
 乾燥したりすると自由に出ていって、水に漬けるとまた入ってくるというように、割合自由に動く水である自由水を微生物が使って食品をいためてしまうわけです。そこで、自由水を少なくしてしまえば保存性が高くなるわけで、その自由水を少なくする、すなわち水分活性を小さくするのに砂糖が役立っているのです。

ジャム・ママレードにおける砂糖の働き
 その1つの例にジャムやマーマレードを作るときに、これは結構大量の砂糖を使います。ジャムやマーマレードは果物に多く含まれているペクチンという成分とクエン酸とかリンゴ酸のような酸味成分、そして砂糖と、この3つの因子がちょうどいいバランスで組み合わさったときに、あの固さのペクチンゼリーができるわけです。
 ジャム、マーマレードの水分は、約30%で結構多いのですが、 砂糖が自由水を奪い取って、水分活性が小さくなっているので保存性があるのです。微生物が利用する自由水が少なくなっているわけです。そのために保存性のある食品になっているのです。
 また、冷凍した場合でも自由水が少ないため凍らないのです。ですから、冷凍庫から取り出しても柔らかく使いやすいのです。手づくりのジャムやマーマレードを長く保存するのに便利です。この場合は、小分けにして冷凍し、取り出したものはそこで使い切る使い方が望ましいです。

練ようかんにおける砂糖の働き
 次に、練りようかんですが、練りようかんは自由水が少なく、保存性があります。
 これも砂糖がかなり加わっておりますので、水分活性が小さく保存性があるのです。練りようかんを作るには、原料の小豆を煮てでん粉を取り出すのですが、小豆のでん粉にはおもしろい性質があります。小豆のでん粉はアルファでん粉に変わっても、さらさらと容易に集めることができます。その集めたでん粉に砂糖を加えてよく練って、そして寒天を入れて作るのが練りようかんです。主成分がでん粉であるのに、1年置いてもでん粉は老化しません。これは、でん粉の老化を防ぐという砂糖の働きが発揮されているわけです。

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エネルギー源としての砂糖
 今は食べ物がたくさんあることから、いかにエネルギーを摂らないようにしようかと考えることが多いようですが、まずエネルギーが確保されなかったら生きていけません。エネルギーを摂ると太るというのは、要するに摂取するエネルギーと消費するエネルギーのバランスの問題です。少し多目に摂ったと思ったら、家の中の掃除を一生懸命するとか、片づけものをするとか、歩いてもいいですし、とにかく体を動かし摂取するエネルギーと消費するエネルギーのバランスをとればいいのです。
 あまりにもエネルギーの摂り過ぎということを意識して、肥満につながるという意識が強過ぎるのですが、実は、まずエネルギーは生きていくうえでの活力のもとであることを忘れてはいけないのです。
 砂糖の主な成分はショ糖です。ショ糖は、果糖とブドウ糖が結合してできている二糖類です。グラニュー糖は、99.9%がショ糖です。料理に良く使う上白糖は、砂糖を加水分解した転化糖が少し入ってますから、グラニュー糖よりショ糖の純度は落ちますが、主成分は同じショ糖です。
 ショ糖は二糖類ですから、摂取したときに消化・吸収が早いわけです。従って、早くエネルギーを必要とするときには、とても良い供給源になります。このエネルギー源としての砂糖は、筋肉を十分に動かすこと以外に、脳の機能を活発にする大事な働きをしています。脳の機能に必要なものは、砂糖の成分であるブドウ糖です。
 朝起きて食欲がないのは、体全体が目覚めていない状態です。そのようなときに少し甘い物をとると食欲も出ます。同時に脳の機能も活発になってきますので、朝起きて甘い物を少し摂るとか、あるいは、食事の後に摂ると良いのです。昔は、旅先の旅館で、朝起きると砂糖をかけた梅干しが出てきました。これは梅の酸の働きも大事なのですが、砂糖の甘みもプラスしていることでうまく考えていると思うのです。外国の食事の場合、食事の前にジュースを飲むことが多いのですが、これはジュースの酸味の他に甘みが大事でして、甘みの働きで体も目覚めるし、脳の機能も活発になります。
 砂糖のエネルギー源としての機能は、我々の体の中で、いろいろな部分で大事な働きをしているということです。

砂糖を食べても虫歯は防げる
 次に虫歯との関わりです。いつも口の中に甘い物が残っていたら虫歯になってしまいます。虫歯は、ミュータンス菌が口の中で、砂糖などを栄養として働いて、その菌が出す酸が歯のエナメル質を溶かしてしまうことによりますから、食べ物を子供たちが口にしたら、その後で口をゆすぐことを習慣にしておけば問題はないのです。私たち大人でも同じことです。

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 やはり砂糖というとすぐ肥満に結びつけますが、実は食事全体の中での脂肪の摂り方が問題になっているのです。
 厚生省が毎年、国民栄養調査を行っていますが、これは日本全体から7,000世帯ぐらいをランダム・サンプリングして食事記録を取り、どのような食品をどう食べているかを調べています。その内容を見ますと、最近は脂肪の摂り方が多いのです。1日に摂取するエネルギーの中で、脂肪から摂るエネルギーは、今は25%を超えてきているのです。脂肪から摂るエネルギーに偏り過ぎていまして、これは単に肥満だけではなく、それ以外の成人病との関係で、いろいろと問題になってきております。
 外で食事をすると油を摂り過ぎる傾向があります。また、家庭でも煮物を作るよりも、油でさっと炒めるというように油を使う料理が多くなってきております。
 少し先ほどの話と前後しますが、子供のおやつにキャンディを与えないお母様が、「このごろは、子供が甘くないおやつが好きでとてもいい傾向です」 とおっしゃるので、何を食べているのかなと思うと、「ポテトチップスとかそのほかのスナック食品を食べますので安心です」と言うのですが、ポテトチップスは50%が油ですから、5枚食べれば2枚半は油を摂取していることになるのです。また、スナック食品は食塩が比較的多いのです。食塩も今、日本人は摂り過ぎの傾向でして、これをもっと少なくしようということで、私どもは日ごろ指導しております。
 食生活においても、片方だけ見て片方に落とし穴を作るような発想をしがちですが、脂肪の摂り方が大変多くなっているということを、ぜひ意識していただたきと思うのです。お子様方だけではなくて、皆様方の食生活の中でも、そういう傾向があるのではないかと思います

糖尿病との関わり
 糖尿病は、インスリンの投与が絶対必要なタイプ(インスリン依存性糖尿病)とそうでないタイプ(非インスリン依存性糖尿病)に大別され、後者が多数を占めています。つまり糖尿病は、遺伝的背景に、肥満、運動不足、ストレスなどのいろいろな要因が関わって発症するのです。実際に今、日本人は糖尿病の方が大変多くて、70万人に近い方が糖尿病だそうですが、予備軍を加えると130万人ぐらいの方が糖尿病の枠に入るそうです。これが、日本の医療費を大変大きく食い込んでいるのです。
 一般に若い人たちは、少量の野菜でも食べたという意識なのです。それではだめでして、量的に肉の3倍から4倍の野菜を食べる意識を持っていただきたいと思うのです。
 野菜を十分に摂っていないことは、やはり糖尿病につながる食生活の大きな要因であります。いろいろな食べ物を組み合わせて摂ることによって栄養素のバランスを保つわけです。  栄養素の摂り方は、過剰であってもいけないし、また、不足であってもいけないわけで、過不足なく組み合わさって摂れていないといけない。 私どもの大学では食品を大きく4つに分類して、それぞれから一定量を摂ると、結果として栄養素のバランスがとれている、という食べ方を指導しています。

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 私たちが健康で生き生きと生活する、いわゆる健康寿命を長らえるためには、毎日の食事の積み重ねが大事です。このためには、極めて平凡な表現ですが、バランスよく食べ、偏らない。バランスのとれた食べ方をすると、1つ1つの食品が生きてくるわけです。その中で砂糖の優れた面も生きてくるわけです。  健康は知識だけでは維持できませんので、バランスのとれた食生活を、きょうからぜひ、実践していただきたいと思います。

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「今月の視点」 
2001年1月 
年頭所感
  理事長 山本 徹

砂糖の多様な機能性
 〜新しい食品への展開と健康への寄与〜

  女子栄養大学 教授 吉田企世子

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 〜プロスポーツ選手に学ぶコンディショニングの決め手、
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  平石クリニック院長 平石貴久

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