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糖尿病と砂糖

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2001年9月]
 糖尿病とは血糖値を下げようとするインスリン分泌作用が働かなくなったり、分泌量が不十分だったりして、高血糖の状態が続く病気です。飽食、過食の時代が続き、今や糖尿病は「国民病」とまで言われています。日本ではその予備軍を含めると1,370万人にも達するといわれ、実に国民の9人に1人が糖尿病と関わっています。
 糖尿病とは何か、その歴史、遺伝的背景、砂糖とは直接関係がない病気であること等について紹介していただきました。

東京逓信病院 内科部長 宮崎 滋


1. 糖尿病とは「尿」に「糖」が出る「病」 2. 糖尿病の歴史
3. 2つのタイプの糖尿病 4. 2型糖尿病と砂糖の摂取
5. 糖尿病と遺伝 6. 砂糖の代謝
7. まとめ



 糖尿病は最近日本でも患者数の増加が著しく、1997年厚生省調査では約690万人、糖尿病が疑わしい人、つまり糖尿病予備群まで含めると約1,370万人にも達する。2001年の今日では優に1,500万人を超えているものと思われる。  糖尿病は尿に糖が出る病と書く。糖尿病という時の糖は、糖であってもぶどう糖 (Glucose) であり、砂糖 (蔗糖:Sucrose) ではない。砂糖はぶどう糖と果糖が1分子ずつ結合した2糖類である。
 糖尿病は尿に糖 (ぶどう糖) が出る病であるが、これは血糖 (血液中のぶどう糖) が増加するため腎臓より尿中に放出される尿糖 (尿中のぶどう糖) として検出される。
 この稿では糖尿病と砂糖の関わりをみていくが、糖尿病と砂糖の関わりをまず歴史の中で振り返ってみてみたい。

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 糖尿病という病気が人類に認識されたのは紀元前15世紀頃のエジプトで、パピルス文書には「尿がたくさん出てやせて、死んでしまう」という記録があるが恐らく糖尿病のことであろう。人類と糖尿病との付き合いはかなり長いといえる。
 糖尿病を初めて詳しく記載したのは、1世紀頃の小アジア (現在のトルコ西部) カッパドキアのアレタエウスであり、「この病気の患者は四六時中尿をつくるのをやめず、筋肉や骨までが尿に溶け出し日に日にやせおとろえ、意識がなくなり死んでしまう」 と書いてあるという。昔のギリシャ人は、糖尿病の患者からとめどもなく尿が流れ出るのをみて、サイフォンを連想した。現在糖尿病を Diabetes Mellitus というが、この Diabetes はギリシャ語でサイフォンの意味である。
 では何故 Mellitus という単語がついたのだろうか。糖尿病と同様、やはり尿がひっきりなく出る病気があり、最初は区別がつかなかった。ところが尿が大量に出る人の尿をなめた人があり、甘い尿と甘くない尿があることを発見した。「蜜糖のように甘い」 という意味の mellitus をつけ、Diabetes Mellitus =糖尿病、甘くないので insipidus をつけ尿崩症と分けられたのである。尿崩症とは脳下垂体後葉から分泌される抗利尿ホルモンが不足して起こる病気である。
 糖尿病患者の尿が甘いことを初めて気付いたのはインドの医師とされている。インドにはアーユルヴェーダと呼ばれる古典医学書があり、その中のマドフメハという本には糖尿病は「金持ちのかかる病気で米、穀粉、砂糖の大食漢に起こる。口渇を伴い、口が甘くなる。尿に昆虫がたかる。」などと記載されている。尿の特徴として、「ほとんど無色、無臭で沈殿物がなく、色も味もサトウキビのジュースのようである」 と述べられている。
 中国では消渇と呼ばれ、酒好きの者に起こりやすいと書き記されており、慎むことといえば、飲酒、房事、塩味の食物とうどんの3つであるという。古代においては砂糖を食べたり、酒をたくさん飲めるのは一部の裕福な人たちだけであったと考えられ、このような人たちだけが糖尿病になりえたのである。
 1674年イギリス人の Wills は、糖尿病の尿が甘い尿であることを再発見し、やはりイギリス人の Dobson は1776年、尿を蒸発させ残ったものは臭いも味も砂糖に似ていることを確かめた。この砂糖に似たものがぶどう糖であることがわかったのは1815年 Chevreuil の研究によるものである。
 尿に大量の糖が排出されることはわかっても、糖尿病が糖質を主とする代謝異常であるとは考えられていなかったため、治療としては尿中に失われる栄養物を食事で補う必要があると考えられ、過食摂食療法が主流であった。ところが、1870年普仏戦争が起こり、パリはプロシア軍に包囲され、食物が欠乏し食糧は配給制となった。この時糖尿病患者の尿から糖尿がなくなり、症状が改善したことに Bouchardat が気付き、食事制限療法を開始し好成績をおさめた。
 その後1890年、膵臓を摘出すると糖尿病が起こることが明らかとなり、膵臓から血糖を低下させる物質が分泌されていることが明らかにされた。この物質がインスリンであり、このインスリンを1921年初めて発見・分離精製したのが Banting と Best である。この時から新しい糖尿病治療が生まれたのである。


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 このように人類は糖尿病を発見してから長い時間をかけて、試行錯誤を繰り返しながら、糖尿病を治療し、またその成因を探究してきた。20世紀になってようやく、糖尿病の発症、進展は、膵臓で産生、分泌されるインスリンの作用と密接に関係することが明らかとなった。
 インスリンが発見されてから39年後の1960年に Berson と Yalow はラジオイムノアッセイ (RIA) という方法を用い、血液中に微量に存在するインスリンを測定した。インスリンを測定すると、同じように血糖が高くなっていても、インスリンが測定できない患者と、インスリンが高値でありながら血糖の高い患者がいることが分かった。
 インスリンが測定される以前から、経験的に糖尿病のなかに、2つのタイプがあることが知られていた。第一のタイプは、比較的若いやせた人がある日突然口渇、多飲、多尿という症状を示し、急激にやせていき、最後には意識がなくなり (昏睡)、死亡するタイプである。第二のタイプは、40歳以上の成人で肥満した人が、ゆっくりではあるがやはり口渇、多飲、多尿を呈しやせていくというものである。第一のタイプの治療にはインスリンが必要であり、使用しないと急速に血糖が上昇し、脂肪組織の分解が亢進し血液中にその分解産物であるケトン体が増え、血液が酸性となり、糖尿病性ケトアシドーシス性昏睡になり、死亡してしまう。そのためインスリン依存型糖尿病といわれている。第二のタイプでは、治療に必ずしもインスリン注射は必須でなく、食事の摂取量を減らし、体重を減少させると血糖値の低下がみられるもので、インスリン非依存型糖尿病と呼ばれる。
 インスリン依存型糖尿病といわれるタイプの糖尿病の原因は、膵臓でインスリンを作っているランゲルハンス氏島のβ細胞が、ウィルス等の感染により破壊され、インスリンの産生、分泌がなくなってしまうためであり、このためインスリン注射が必要となる。現在ではこのタイプの糖尿病は、ウィルス感染などを契機として起こる免疫異常が原因と考えられており、新しく作成された糖尿病分類では1型糖尿病といわれている。この発症機序からみても、1型糖尿病の発症には砂糖の摂取と関係がないことは一目瞭然である。
 一方、インスリン非依存型糖尿病は、過食、運動不足などのため肥満すると、糖の代謝が悪化するために起こる。肥満の場合は膵臓でのインスリン産生、分泌は低下しておらず、逆に過剰になっている。これは各臓器、主に肝臓、筋肉、脂肪細胞など、糖を取り込み代謝する組織のインスリンに対する反応性が低下していることにより起こる。各組織にはインスリン受容体という「受け手」がある。この受容体数が減少したり、反応が悪かったり、あるいは反応後の代謝に障害があったりする。このような状態をインスリン抵抗性という。インスリン抵抗性が強ければ、膵臓がインスリンを増産しても血糖値は上昇する。この期間が長く続くと膵臓は疲弊して、インスリン産生力が徐々に低下し、血糖値もさらに上昇する。これがインスリン非依存型糖尿病といわれるもので、現在では2型糖尿病といわれている。
 血糖の上昇に食事中の糖質が関係していることはもちろんだが、血糖値を決めるのに重要な働きをしているのが、肝臓における糖質代謝である。簡単にいうと血糖の主たる源泉は食事からとるぶどう糖と肝臓に貯蔵されているグリコーゲンであり、肝臓は血中の糖質、アミノ酸などを取りこみ糖を産生しグリコーゲンとして貯え、必要な時グリコーゲンを分解し、肝臓よりぶどう糖として放出し、全身の細胞へエネルギーとして送り出す。
 膵臓より放出されたインスリンの作用は、血中のぶどう糖 (血糖) を肝臓、筋肉、脂肪細胞に取りこむ一方、肝臓からのグリコーゲンの分解、ぶどう糖の放出の働きを抑制する。すなわち、インスリンの働きは血液中のエネルギーを肝臓、筋肉、脂肪細胞に取り込み、貯蔵する働きであり、その結果血糖値が低下することになる。インスリンの作用を表面だけ見ると血糖低下作用であるが、インスリン作用の本質はエネルギー備蓄作用にあり、この作用こそがたくさん食べた時はエネルギーとして貯え、飢餓時に少しずつ使っていくことを可能とし、我々人類を生き長らえさせてきた主作用といえる。
 ではインスリン作用が不足するとどうなるかというと、まず肝臓、筋肉、脂肪細胞へのぶどう糖の取り込みが低下し、さらに肝臓でのグリコーゲンの分解、ぶどう糖の放出が抑えられずにどんどん働くため、血中にぶどう糖が放出される。その結果高血糖となり、ついには、糖尿病となる。
 つまり、1型糖尿病はインスリンが作れなくなった病態、2型糖尿病はインスリン作用が低下した (効きにくくなった) 病態である。2型においても、終末期になるとインスリンが作れなくなるので1型と同様の病態になることが多い。

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 2型糖尿病は日本人では1型糖尿病より圧倒的に多く、糖尿病患者の95%以上は2型であるとされている。過去欧米、日本を問わず美食家、大食漢の肥満者の糖尿病の大部分は2型であった。このような人々は往々にして富裕者であり、砂糖をはじめ甘い、美味な食事をとっていたため、また尿が甘い砂糖の味に似ていることより、砂糖の食べすぎが糖尿病の発症、進展に作用する可能性が高いといわれていた。
 日本でも、確かに第二次大戦中、直後は糖尿病は少なかったにもかかわらず、最近では初めに述べたように1,500万人、人口の10%以上に達するほどの増加である。ではこのような糖尿病人口の増加とよく関連しているものは何であろうか。いささか古いデータだが、1986年に後藤が示したものでは、糖尿病人口の増加に関係のあるのは、老年人口の増加、自動車の増加、BMI (肥満の判定に用いられる体格指数) の増加、糖質、穀類摂取の減少、脂肪、動物性蛋白摂取の増加、タバコ消費の増加、GNP の増加、クーラーの増加などであるという。一口でいえば豊かになり寿命が延びたことが糖尿病患者数を増加させたといえる。さらに、1日のエネルギー摂取量は1975年 (昭和50年) の2,226kcalをピークに減少しているが、脂質の摂取量や動物性食品の摂取量は増加の一途をたどり1995年 (平成7年) にともに最高となり、以後ほぼ同じ水準を保っている。では砂糖の1人あたり1年の消費量はどうかというと1973年 (昭和48年) に29.18kgと最高であり、現在 (1999年、平成11年) ではその約6割の18.31kgに減少している。1960年から1985年までの間の糖尿病有病率と砂糖の1人当たりの年間消費量とをグラフに示すと、砂糖の消費量は1970年以降減少しているにもかかわらず、糖尿病の有病率は増加の一途をたどっている。砂糖の摂取と糖尿病の発症とは直接的な関係はないといえるだろう (図)。
 糖尿病特に2型糖尿病は生活習慣病の代表的な疾病であり、エネルギー摂取量の増加が多くなくても、運動等によるエネルギー消費の減少から生じる、相対的エネルギー過剰がつづくことによって、肥満し糖尿病が発症すると考えられる。

図 糖尿病有病率と砂糖消費量との関係
糖尿病有病率と砂糖消費量との関係グラフ
糖尿病有病率は国民健康調査 (厚生労働省)、
砂糖消費量は砂糖統計年鑑 (精糖工業会)

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 2型糖尿病は遺伝することが明らかになってきた。といっても親が糖尿病なら子供も糖尿病になるというような、単一の遺伝子があって、この遺伝子を持つ人は皆、糖尿病になるという病気ではない。遺伝するのは糖尿病になりやすい体質が遺伝するのであって、糖尿病そのものが遺伝するわけではない。血糖値を変動させる多くの因子、血糖変動に関係する遺伝子が数多く発見されてきた。現在でも50以上の遺伝子が知られており、今後の研究が進めばさらに何百もの遺伝子の関与が考えられている。このひとつひとつの遺伝子のかかわりは、あるものは血糖を上げるように、あるものは血糖を下げるように働くと考えればよい。ある遺伝子は血糖を上げる働きが+2、ある遺伝子は−1、などと各々の血糖の増減に関与する力が違っている。これらの何百という遺伝子の血糖に対する作用の総和が大きければ糖尿病になりやすい体質、小さければなりにくい体質ということができる。
 糖尿病になりやすい、あるいはなりにくい体質が少しずつ形や程度を変えて遺伝する。いってみれば親子であればその程度の差はあっても遺伝的体質に大きな差異はないはずである。このことは祖父母と比較しても同じであろう。ところが祖父母、父母は糖尿病ではなかったのに、本人だけ糖尿病ということもありうる。それはどうしてかというと、遺伝的に糖尿病のなりやすさとしての体質に差がなくても、祖父母の代と今とでは環境因子が大きく変化しているからと考えられる。つまり、現在は飽食の時代といわれるほど食物が豊富であり、かつ自動化、コンピュータ化され、身体を動かすことなく、ほとんどの仕事をやり終えることができる。遺伝 (内部因子) と環境 (外部因子) とが重なり合って糖尿病が発症する。決して砂糖を多く摂取するだけで糖尿病になるわけではない。

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 砂糖 (蔗糖) はぶどう糖と果糖が結合した二糖類である。砂糖は小腸粘膜上皮細胞でぶどう糖と果糖に分解され吸収される。生体でのエネルギー産生は解糖系から TCA 回路を通して行なわれる。ぶどう糖 (グルコース) は直接解糖系にはいり、ピルビン酸に至るまでエネルギーを産生し、さらに TCA 回路で代謝され二酸化炭素になるまで代謝を受けエネルギーを作り出す。一方、果糖は直接解糖系にはいらず、迂回路を通って解糖系にはいる。詳しい説明は省くが、動物は解糖系の産生物であるビルビン酸、乳酸に加え、蛋白質を構成しているアミノ酸や脂肪酸からもぶどう糖を再合成することができる。このしくみを糖新生という。高血糖は食べたぶどう糖だけでなく、糖新生によるぶどう糖も含まれている。インスリンは糖新生を抑制する作用があるのでインスリンが不足すると血糖が上昇しやすい。
 糖尿病の合併症に眼 (網膜症)、腎 (腎症)、神経 (神経障害) の疾患が三大合併症として知られているが、これらは高血糖が長期に続くと発症、進展しやすいことがわかっている。これまで説明したように、糖尿病の誘因はエネルギーの過剰摂取が原因であり、糖質の食べすぎだけではない。食物による血糖の上昇の違いを表す指標 Glycemic Index (血糖上昇係数) と呼んでいる。この指数はぶどう糖を摂食した時の血糖の上昇を100として、食品のぶどう糖と同じエネルギー量だけ食べた後の血糖上昇の割合を示したものである (表)。この値が低いほど、食後の血糖が上昇しにくいので、糖尿病の発症、進展、合併症の発症、進展を起こしにくい食物ということができる。この意味から砂糖はぶどう糖が半分しか含まれていないため、摂取に対してさほど気にする必要はない。

Glycemic Index (血糖上昇係数)
100
80〜90
70〜80
60〜70
50〜60
40〜50
30〜40
 〜30
ぶどう糖
蜂蜜、コーンフレーク、にんじん
白米 (ご飯)、パン、じゃがいも、そら豆
玄米、バナナ、レーズン
スパゲティー、ビスケット、ポテトチップス、山芋、砂糖
スィートポテト、オレンジ、オレンジジュース
りんご、アイスクリーム、ミルク、ヨーグルト
果糖、だいず、ピーナッツ、いんげん豆

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 砂糖の摂取自体が糖尿病発症、増悪の原因とはならない。糖尿病の遺伝的素因のある人がエネルギー摂取過剰であったり、運動不足であったりすれば、糖尿病が起りやすくなるし、悪化しやすくなる。糖尿病の食事療法の基本はエネルギー摂取制限 (食べすぎ) にある。その範囲の中で、砂糖の使い方を工夫し、食事をバラエティー豊かにしていくことが大切である。

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「今月の視点」 
2001年9月 
糖尿病と砂糖
東京逓信病院 内科部長 宮崎 滋

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