砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 視点 > 社会 > ビート糖業を巡る事情 (1)

ビート糖業を巡る事情 (1)

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2002年11月]
 砂糖の原料となる農作物は、鹿児島県南西諸島や沖縄県で栽培される「さとうきび」と、北海道で栽培される「てん菜」があります。 北海道内8ヵ所に製糖工場があり、原料のてん菜から製品の砂糖まで、道内で一貫して生産されています。しかしながら、「てん菜」はさとうきびに比べ、一般消費者にはあまり馴染みがないように思えます。
 日本ビート糖業協会森川常務理事に、てん菜の概要について、また、ビート糖業を巡る情勢について執筆していただきました。

日本ビート糖業協会 常務理事  森川 洋典


1.はじめに
2.てん菜の概要
3.北海道畑作物の現状とてん菜の位置付け
4.栽培管理
5.てん菜の生産実態
6.集荷区域
7.輸送受入・原料買入・貯蔵(農務業務)


1.はじめに

 砂糖はサトウキビが原料であることは一般に知られているようだが、北海道で栽培されているてん菜が原料であるビート糖(てん菜糖)のことは残念ながら広くは知られていないように思える。特に都府県の一般消費者には馴染みがないように思えるのである。
 先日、埼玉県に住んでいるという年配の男性から当協会に電話が入り、「北海道に旅行した時に初めて砂糖はてん菜からもとれることを知った。小学5年の孫にも教えてやりたいのでビート糖のパンフレットとサンプルを送って頂きたい。」との内容だった。また「観光バスガイドは馬鈴薯の話はするけれど、てん菜の説明はなぜないのか?」と指摘された時に職員は貴重な意見として拝聴したことは云うまでもなく、一瞬「ドキッ!」としたようだが、早速、手紙を添えて、パンフレットとビート糖を送ったとのことである。
 この話は、てん菜、ビート糖に深い関心を持って頂いた一つのエピソードではある。
 砂糖需要が低迷してるこの時代、関係団体と連携しながら砂糖の消費が伸びるよう努力しているところではあるが、ビート糖についても広く一般の人にも理解してもらうことの重要性を痛感した次第である。
 てん菜は北海道農業の基幹作物として輪作体系上、欠くことの出来ない重要な作物である。
 生産農家がてん菜をつくり、糖業が加工して砂糖にするという一連の図式にあり、いわば生産者と糖業者は車の両輪である。
 砂糖を取り巻く環境が厳しい中、平成12年度には制度が改正され、ビート糖業は国内糖価引き下げ、砂糖需要の維持、拡大を図るため、生産者のご理解とご協力を得ながらコスト削減、合理化に努め、人員削減と併せて原料事務所、中間受入場等の統廃合を押し進める一方、「生産者との協同した取り組み」の中で農務関係業務をJA移管することによって砂糖生産コストを削減する方向で検討がなされているところである。
 したがって、今回の掲載に当っては、それらを踏まえ、てん菜並びにビート糖業の概要の紹介とそれらの現状と課題について報告させて頂きたい。

2.てん菜の概要

 砂糖の原料としての「てん菜」は根が大根のように太くなることから「砂糖大根」とも呼ばれているが、北海道では一般的に「ビート」と呼ばれている。植物分類学上はホウレンソウと同じ仲間でアカザ科に属する2年生の草本であり、1年目は根が肥大し、次いで糖分が蓄積される栄養生長、2年目はとうが立ち、開花結実する生殖生長となる。つまり、砂糖の原料としてのてん菜は糖分が蓄えられた1年目に収穫されたものである。
 収穫された根は逆円錐形の形をし、一本当たりの重量は700〜1,000g程度、また、糖分は年によって変動するが17%程度となる。
 てん菜は米国、欧州などの温帯から亜寒帯にかけての比較的冷涼な地帯で多く栽培されており、わが国では北海道で栽培されているが、特に道内東部の畑作地帯で多く作付けされている。
 栽培法は直播と紙筒を用いた移植栽培があるが、生産性、収益性等が比較的有利で安定している移植栽培が主流となっており、全体の96%を占めている。しかし、最近は省力化が図れる直播栽培が注目されている。
てん菜圃場
てん菜圃場
てん菜
てん菜


3.北海道畑作物の現状とてん菜の位置付け

 てん菜は寒冷地作物であり、北海道農業の基幹作物として導入され、輪作体系上、不可欠な作物として取り入れられている。
 畑作は稲作、畜産、酪農と並ぶ北海道農業の基幹部門であり、平成12年度の普通畑は北海道耕地面積の34.9%を占めている。また、生産農家の経営規模は大きく、約半数が専業農家である。
 主な畑作物は小麦、てん菜、馬鈴薯、豆類(小豆、大豆、菜豆)であり、畑作農家はこれら4作物を対象に輪作体系を組んでいる。その内、平成12年産てん菜は23.9%を占め、小麦に次ぐ面積規模となっている。 各品目毎の面積は北海道における輪作体系の一環として、農業団体による作付指標が設定され、計画的な生産が行われている。てん菜作付面積は、近年、全道で66,000〜70,000haで推移している。
 総農家数は年々減少傾向にあり、食糧基地としての北海道農業の維持、発展にとって深刻な問題となっている。てん菜の栽培戸数についても後継者問題、労働力不足、あるいは離農等の理由で減少しており、1戸当りの作付規模拡大によって総体の面積は維持されてはいるものの、将来的に安定した作付維持がなされるのか糖業としても懸念している。
 1戸当たりのてん菜作付規模は平成12年度以降6haまで拡大しており、糖分取引が導入された昭和61年度と比べると約2倍になっている。

北海道の耕地面積と農家戸数(北海道農政部「北海道農業統計表」より)
耕地面積 (単位: ha)
年 次 総土地面積 耕地面積
合 計
普通畑 樹園地 牧草地
S55 (1980)
60 (1985)
H 2 (1990)
7 (1995)
8 (1996)
9 (1997)
10 (1998)
11 (1999)
12 (2000)
8,351,657
8,351,922
8,340,835
8,345,159
8,345,165
8,345,165
8,345,228
8,345,247
8,345,304
1,140,000
1,185,000
1,209,000
1,201,000
1,199,000
1,196,000
1,192,000
1,187,000
1,185,000
267,400
258,100
243,100
239,800
239,100
238,400
237,600
236,400
235,000
405,800
426,400
438,700
417,800
417,200
417,100
415,900
413,800
413,700
4,930
4,350
4,000
3,780
3,700
3,680
3,650
3,630
3,630
461,600
496,100
523,000
540,200
539,100
536,600
534,800
535,500
532,300
資料:建設省国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調査」、農林水産省「耕地面積調査」「農業センサス」「農林統計」より
注:総土地面積には歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島(503,614ha)を含んでいる。

支庁別(平成12年度) (単位: ha)
支 庁 総土地面積 耕地面積
合 計
本地 普通畑 樹園地 牧草地
石狩
渡島
檜山
後志
空知
上川
留萌
宗谷
網走
胆振
日高
十勝
釧路
根室
353,984
371,538
285,007
430,546
655,826
985,221
402,003
405,067
1,068,947
369,747
481,183
1,083,120
599,734
853,381
46,800
27,000
20,600
37,500
122,800
129,600
37,100
55,400
170,500
34,900
40,000
258,800
92,900
110,700
21,800
6,890
9,900
9,110
94,900
62,500
8,900

3,270
10,300
6,400
896

20,800
6,360
9,290
8,500
89,600
58,100
8,320

3,070
9,700
6,110
870

24,900
20,100
10,700
28,400
27,900
67,100
28,100
55,400
167,200
24,600
33,600
257,900
92,900
110,700
16,200
8,750
5,880
19,300
19,500
43,600
2,560
350
103,600
12,000
2,290
175,400
2,740
1,510
121
139
22
2,040
537
242
160

45
194
27
107

8,590
11,200
4,790
7,110
7,880
23,300
25,400
55,000
63,500
12,400
31,300
82,400
90,200
109,200
資料:建設省国土地理院「全国都道府県市区町村別面積調査」、農林水産省「耕地面積調査」、北海道「林業統計」より。
注:総土地面積には歯舞諸島、色丹島、国後島、択捉島(503,614ha)を含んでいる。

農家戸数(専業・兼業別) (単位:戸、%)
年 次 実 数 構成比
総農家数 専 業 兼 業 専 業 兼 業
  第1種 第2種   第1種 第2種
S55
(1980)
119,644 50,287 69,357 38,419 30,938 42.0 58.0 32.1 25.9
S60
(1985)
109,315
(100,123)
47,520
(46,300)
61,795
(53,823)
34,539
(34,490)
27,256
(19,333)
43.5
(46.2)
56.5
(53.8)
31.6
(34.5)
24.9
(19.3)
H 2
(1990)
95,437
(86,704)
42,582
(36,818)
52,855
(49,886)
31,157
(35,009)
21,698
(14,877)
44.6
(42.5)
55.4
(57.5)
32.7
(40.4)
22.7
(17.1)
H 7
(1995)
80,987
(73,588)
35,280
(33,486)
45,707
(40,102)
28,113
(28,018)
17,594
(12,084)
43.6
(45.5)
56.4
(54.5)
34.7
(38.1)
21.7
(16.4)
H 8 79,310
(71,960)
 
(34,490)
 
(37,470)
 
(27,570)
 
(9,900)
 
(47.9)
 
(52.1)
 
(38.3)
 
(13.8)
H 9 77,780
(70,520)
 
(32,930)
 
(37,590)
 
(25,500)
 
(12,090)
 
(46.7)
 
(53.3)
 
(36.2)
 
(17.1)
H10 75,690
(68,550)
 
(33,190)
 
(35,360)
 
(22,910)
 
(12,450)
 
(48.4)
 
(51.6)
 
(33.4)
 
(18.2)
H11 73,630
(66,660)
 
(31,840)
 
(34,820)
 
(21,450)
 
(13,370)
 
(47.7)
 
(52.2)
 
(32.2)
 
(20.1)
H12 69,841
(62,611)
 
(29,051)
 
(33,560)
 
(23,652)
 
(9,908)
 
(46.4)
 
(53.6)
 
(37.8)
 
(15.8)
資料:農林水産省「農業センサス」及び北海道「農業基本調査」
注:( )は販売農家の数値

経営耕地規模別戸数 (単位:戸、%)
年 次 総 数 1ha未満 1 〜 3 3 〜5 5 〜10 10〜20 20〜30 30〜50 50ha以上
S55
(1980)
119,644
(100.0)
22,756
(19.0)
18,466
(15.4)
20,096
(16.8)
29,619
(24.8)
15,893
(13.3)
6,910
(5.8)
5,904
(4.9)
S60
(1985)
109,315
(100.0)
20,059
(18.3)
15,690
(14.4)
16,452
(15.1)
26,492
(24.2)
15,862
(14.5)
7,206
(6.6)
7,554
(6.9)
H 2
(1990)
95,437
(100.0)
17,339
(18.2)
11,966
(12.5)
12,132
(12.7)
21,860
(22.9)
15,895
(16.7)
7,443
(7.8)
8,802
(9.2)
H 7
(1995)
80,987
(100.0)
14,390
(17.8)
9,139
(11.3)
8,994
(11.1)
16,725
(20.7)
14,742
(18.2)
7,121
(8.8)
6,587
(8.1)
3,289
(4.1)
H 8 79,547
(100.0)
14,151
(17.8)
9,046
(11.4)
8,673
(10.9)
16,184
(20.3)
14,550
(18.3)
6,984
(8.8)
6,555
(8.2)
3,404
(4.3)
H 9 77,450
(100.0)
13,888
(17.9)
8,691
(11.2)
8,284
(10.7)
15,432
(19.9)
14,189
(18.3)
6,898
(8.9)
6,527
(8.4)
3,541
(4.6)
H10 74,221
(100.0)
13,206
(17.8)
8,171
(11.0)
7,729
(10.4)
14,446
(19.5)
13,704
(18.5)
6,825
(9.2)
6,530
(8.8)
3,610
(4.6)
H11 72,315
(100.0)
12,847
(17.8)
7,923
(11.0)
7,425
(10.3)
13,793
(19.1)
13,418
(18.6)
6,613
(9.1)
6,494
(9.0)
3,802
(5.3)
H12 69,841
(100.0)
13,020
(18.6)
7,289
(10.4)
6,859
(9.8)
12,872
(18.4)
12,764
(18.3)
6,513
(9.1)
6,382
(9.1)
4,142
(5.9)
資料:農林水産省「農業センサス」及び北海道「農業基本調査」
注:( )は構成比率

主要畑作物別面積 (単位: ha)
  てん菜 馬鈴薯 小 麦 豆 類 合 計
大 豆 小 豆 菜 豆 小 計
S55 65,000 64,700 87,600 23,100 29,900 20,000 73,000 290,300
60 72,500 75,900 94,500 21,300 37,700 20,800 79,800 322,700
H 2 72,000 67,500 120,900 12,700 40,400 20,300 73,400 333,800
7 70,000 65,100 87,700 9,620 34,000 17,600 61,220 284,020
8 69,700 64,600 91,200 11,400 31,600 17,000 60,000 285,500
9 68,500 65,000 90,600 12,700 32,700 14,500 59,900 284,000
10 70,200 62,800 92,700 16,300 30,800 11,500 58,600 284,300
11 70,000 61,400 94,700 14,900 30,700 10,700 56,300 282,400
12 69,200 59,100 103,200 16,200 30,000 11,300 57,500 289,000
同割合 (%) 23.9 20.4 35.7 5.6 10.4 3.9 19.9 100.0
主要畑作物割合(平成12年度)
主要畑作物割合



4.栽培管理

 てん菜は他の畑作物に比べ、、作業開始が早く、収穫時期が遅い最も管理期間の長い作物であるが、播種から収穫まで機械化作業体系が確立している。
 北海道は概ね3月頃までは雪に覆われている。移植用の苗づくりはその頃より開始され、ビニールハウスの中で紙筒に種を播き、温度、潅水管理をしながら40〜50日間育苗する。
 雪が消えて圃場の条件が整う4月下旬頃から移植機による苗の定植作業と直播の播種作業がほぼ一斉に始まる。 高品質てん菜を生産するために生産者は合理的な施肥、定植後の除草、中耕、及び病害虫防除などの栽培管理を収穫時まで念入りに行う。
 根部が肥大し、登熟(糖分上昇)が進んだてん菜は10月に入って機械(ハーベスター)で収穫される。収穫作業は概ね、雪が降り始め、冷え込みが本格的になる11月上旬までには終えている。
 収穫された原料は生産農家の庭先集積場に堆積され、乾燥、凍結防止のためにシートで被覆して、出荷日の積込トラック(業者)を待つことになる。
苗の移植作業
苗の移植作業
収穫作業
収穫作業
収穫原料の庭先堆積状況
収穫原料の庭先堆積状況

原料カレンダー(標準的なもの)
原料カレンダー
原料カレンダー
原料カレンダー



5.てん菜の生産実態

 糖業独自に開発した紙筒による移植栽培法が普及したのは昭和30年代後半に入ってからである。昭和50年代から収量水準が欧米並の50t/ha台まで上昇し、生産性が飛躍的に向上した。
 欧米主産地では、3月頃より種を播いて年内まで収穫可能であり、生育期間は長いが、北海道は概ね、11月から翌年の3月頃まで、厳しい寒さと深い雪に覆われることから生育期間が限られる。
 紙筒による移植栽培法の開発はそのような北海道の気象的ハンディを雪解けを待たずに播種、育苗するという生育期間の延長で乗り越えたのである。
 原料てん菜の取引は、昭和60年まで重量取引で行われていたが、重量指向の弊害を解消し、一層の合理的な原料生産を図るため、昭和61年度から糖分取引が導入された。
 制度移行後、品種の改良、施肥方法の改善等の取り組みにより、原料てん菜の品質向上が図られるようになった。
 てん菜も他作物と同様、その年毎の気象条件により生産量、品質が大きく左右される。深根性であるてん菜は、特に湿害に弱い作物とされている。
 昭和50年には、湿害の影響を大きく受けて、収量は36t/haまで落ち込み、減反に拍車がかかり、ビート糖業は大きな試練に直面した。
 国の奨励、関係者一体となった取り組みで面積が増反し、基幹作物としての確固たる位置を確保した。
 また、平成10〜12年の直近3ヵ年は連続して低糖分となり、生産者の経営に大きな影響が出たが、平成13年産では、生産農家の努力と気象条件に恵まれたこととが相俟って、高糖分、高収量となり、10a当りの平均粗収入では10万円を超えることが出来た。
栽培戸数
栽培戸数
作付面積
作付面積
一戸当たりの作付面積
一戸当たりの作付面積
てん菜生産量
てん菜生産量

てん菜生産実績
項目

年次
栽培戸数
(戸)
作付面積 1戸当たり
面積
( ha/戸)
ha 収量
( t )
総収量
( t )
買入
糖分
(%)
直 播
( ha )
移 植
( ha )

( ha )
移植率
(%)
昭和51年 18,981 7,108 35,153 42,261 83.2 2.23 51.32 2,168,726
52年 19,767 7,602 41,578 49,180 84.5 2.49 47.43 2,332,529
53年 21,723 8,059 49,677 57,736 86.0 2.66 49.91 2,881,719
54年 21,528 6,402 52,500 58,902 89.1 2.74 56.78 3,344,483
55年 23,014 5,300 59,520 64,820 91.8 2.82 54.77 3,550,252
56年 24,805 4,783 69,028 73,811 93.5 2.98 45.45 3,354,383
57年 22,839 4,013 65,670 69,683 94.2 3.05 58.95 4,107,929
58年 22,987 4,107 68,415 72,522 94.3 3.15 46.56 3,376,744
59年 21,263 3,522 71,595 75,117 95.3 3.53 53.78 4,040,115
60年 20,520 3,057 69,325 72,382 95.8 3.53 54.17 3,920,838
61年 20,110 2,806 69,325 72,132 96.1 3.59 53.54 3,861,848 17.2
62年 20,070 2,639 68,739 71,377 96.3 3.56 53.62 3,827,243 16.9
63年 19,922 2,620 69,209 71,829 96.4 3.61 53.58 3,848,511 17.3
平成元年 19,252 2,428 69,485 71,913 96.6 3.74 50.95 3,663,925 17.0
2年 18,506 2,088 69,865 71,953 97.1 3.89 55.50 3,993,571 16.4
3年 17,493 2,000 69,899 71,900 97.2 4.11 57.23 4,114,784 17.6
4年 15,965 1,907 68,653 70,560 97.3 4.42 50.75 3,580,605 17.6
5年 14,767 1,734 68,349 70,082 97.5 4,75 48.34 3,387,655 18.0
6年 13,887 1,582 68,170 69,752 97.7 5.02 55.23 3,852,569 15.6
7年 13,415 1,616 68,400 70,016 97.7 5.22 54.46 3,813,213 17.3
8年 13,036 1,708 67,956 69,664 97.5 5.34 47.30 3,295,192 17.6
9年 12,509 2,191 66,068 68,259 96.8 5.46 53.98 3,684,564 17.6
10年 12,313 2,741 67,259 70,000 96.1 5.69 59.49 4,164,421 16.6
11年 11,924 2,616 67,383 69,999 96.3 5.87 54.10 3,787,098 16.6
12年 11,311 2,246 66,863 69,109 96.8 6.11 53.15 3,673,429 15.7
13年 10,702 2,375 63,499 65,874 96.4 6.16 57.62 3,795,693 17.6


6.集荷区域

てん菜製糖工場の配置図
てん菜製糖工場の配置図




 北海道全体がてん菜生産振興地域に指定されており、ビート糖業は、3社、8工場でビート糖を生産している。工場は作付面積の多い畑作地帯の十勝、及び網走地区に各3工場、また道北地区、道南地区に各1工場が配置されている。各工場は原料生産量に応じた処理能力を備え、又、輸送距離等を充分考慮した立地条件となっている。
 主な市町村には地域の生産者と密着した原料事務所があり、所員は耕作奨励、資材販売、栽培技術指導、原料買入、貯蔵管理等、多岐にわたる農務業務を担っている。
 砂糖コストを引下げる取り組みのため、糖業は全ての面で見直しを行っており、農務関係業務についても例外ではなく、平成14年10月現在、平成12年度時点と比較すると、原料事務所数では4ヶ所、中間受入場ではは6ヶ所それぞれ減少している。

原料てん菜集荷区域(平成14年10月現在)
糖業者名 製糖工場 公称能力
t /日
操業開始 原 料
事務所数
原 料
中間受入
工場数
集荷区域
日本甜菜製糖株式会社 芽室製糖所 8,619 昭和45年 5 (6) 1 (5) 十勝支庁管内の内、音更町、芽室町、中札内村、更別村、幕別町、帯広市
美幌製糖所 2,805 昭和34年 4 (4) 1 (1) 網走支庁管内の内、美幌町、津別町、東藻琴村、常呂町
士別製糖所 2,878 昭和11年 5 (8) 3 (3) 空知、上川、宗谷、留萌支庁の全市町村
小 計 14,302   14 (18) 5 (9)  
ホクレン農業協同組合
連合会
中斜里製糖工場 6,023 昭和33年 6 (6) 5 (6) 網走支庁管内のうち、斜里町、清里町、小清水町、女満別町、及び釧路、根室、各支庁の全市町村
清水製糖工場 2,616 昭和37年 5 (5 3 (3) 十勝支庁管内の内、清水町、新得町、鹿追町、士幌町、上士幌町
小 計 8,639   11 (11) 8 (9)  
北海道糖業株式会社 北見製糖所 2,819 昭和32年 1 (1) 3 (3) 網走支庁管内の内、端野町、訓子府町、置戸町、留辺蘂町、佐呂間町、生田原町、遠軽町、丸瀬布町、白滝村、上湧別町、湧別町、滝上町、興部町、西興部町、北見市、紋別市
道南製糖所 3,005 昭和34年 2 (2) 2 (3) 石狩、後志、桧山、渡島、胆振、日高、各支庁の全市町村
本別製糖所 2,815 昭和37年 1 (1) 2 (2) 十勝支庁管内の内、本別町、足寄町、陸別町、浦幌町、池田町、豊頃町、大樹町、広尾町
合 計 8,639   4 (4) 7 (8)  
合 計   31,580   29 (33) 20 (26)  
注:( )は平成12年度時点の数である。


7.輸送受入・原料買入・貯蔵(農務業務)

1) 輸送受入
 原料てん菜の積込トラックは工場で手配し、出荷計画に基づき、大型ダンプトラックが庭先原料の積込みに向かう。積み込まれた原料は工場構内、又は最寄の中間受入場に計量後、搬入される。工場構内に直送された原料は即日工場で処理するビートビン向けと大部分の構内貯蔵用に振り分けられる。
 搬入原料は全て荷おろし時に除土機にかけられ、土などの夾雑物が除去される。
 輸送受入は10月中旬〜12月中・下旬までの約2ヶ月間、休むことなく続けられる。

2) 原料買入
 原料てん菜の取引は生産者団体と合意した基準に基づき、北海道てん菜協会から委嘱された生産者側の立会人と糖業の査定員とが1台毎に決定する。
 また、買入糖分は約20トンに1点の割合で、20kg程度のサンプルを採取し、糖分測定センターで測定された数値で決定される。
 原料代は取引重量に糖分を加味して国が定めた価格体系により生産者に精算する。
原料てん菜輸送
原料てん菜輸送
工場受入
工場受入
3) 貯蔵
 北海道においては、前述の通り、気温が急激に下がり、雪に覆われる前の11月上旬までには収穫を終えなければならない。収穫された原料を工場で全量処理するには翌年の3月頃までかかることから、多くの原料は貯蔵しなければならない。
 12月に処理する原料は、生産者に手当を払って庭先にて農家貯蔵としてお願いするが、それ以降は会社が既に11月中旬までに受入した堆積原料を貯蔵管理する。
 貯蔵原料はビートパイラーという機械を使って除土しながら堆積するが、長期に及ぶ対象原料は幅30m程度、高さ4.5m、長さ100m以上の規模で、台形状に堆積される。積上げられた堆積物をパイルと呼ぶが、その周囲には鉄枠を組んで、空間を設け、更にその上から多重のシートで被覆をする。
 このように冬の厳しい気象条件下で3月頃までの長期に亘り、貯蔵原料の凍結防止、品質保持を行うためには大掛かりな設備が必要であり、貯蔵を要しない欧米と比べて、コストの増加要因となっている。
 農務担当者は、貯蔵原料の温度管理、水分管理及び除雪をこまめに行いながら、良質原料を確保し、工場に供給する。
貯蔵原料の堆積
貯蔵原料の堆積
貯蔵原料の搬出
貯蔵原料の搬出

(ビート糖の生産状況、ビート糖の現状と課題については次号に掲載予定)

糖分測定の手順とシステム
糖分測定の手順とシステム
糖分測定の手順とシステム
糖分測定の手順とシステム


「今月の視点」 
2002年11月 
サトウキビ新時代 ―奄美大島南部のきび産業再生の可能性―
 拓殖大学国際開発学部 教授 叶 芳和

ビート糖業を巡る事情 (1)
 日本ビート糖業協会 常務理事 森川 洋典


BACK ISSUES