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沖縄県におけるさとうきび収穫機械化の課題と対策

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最終更新日:2010年3月6日

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今月の視点
[2005年8月]

【今月の視点〔生産/利用技術〕】
琉球大学農学部生物生産学科   教授 上野 正実

1 はじめに
2 機械化の必要性
3 機械化の現状と課題
4 収穫機械化の適正化技術
5 むすび

1 はじめに

 平成16/17年製糖期はまれに見る減産となり、後に残ったのは将来に対する不安とさとうきびの重要性に関する再認識である。台風と干ばつが減産の主要因とはいえ、 70万トン以下にまで減少した衝撃は大きい。また、製糖期における異常な長雨の影響で収穫作業に大きな影響が現れ、製糖期の延長だけでなく中途打ち切りまで招いた地域もでた。降雨の影響はとりわけハーベスタの稼動に顕著に現れた。噴出したさまざまな問題は、今後の安定生産に向け本格的なRe-Engineeringを迫っている。それには機械化を中心とする生産システムの確立が重要課題である。本論では、さとうきび収穫機械化の現状と課題を分析し、その適正化に関する提言を行う。
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2 機械化の必要性

 1.さとうきび農業の概況

(1) 生産の推移
 関係者の懸命の努力にもかかわらず長期的な減産傾向が続いている(図1)。これは平成期前後から急速に進行し、減少速度は鈍化したものの、その傾向は依然として続いている。さらに、16/17年期のように年度的なぶれが加わる場合もある。収穫面積と生産量の間には高い正の相関関係が見られる。これは単収がほぼ一定の値で推移していることと対応している。最近では収穫面積の減少は止まっているが、緩やかな減産傾向は続いている。作型別に単収の推移を見ると、いずれも大きな年次変動があるが、全体的にはほぼ一定の値で推移している。最近15年間を見ると各作型ともわずかながら減少傾向が現れている。

図1 サトウキビ生産の推移

(2) 経営規模の推移
 農家数は昭和50年以前の急激な減少期、平成期に至るまでの安定期、さらにはその後の減少期と推移している。この動きは収穫面積の推移とほぼ重なっている。一方、1戸当たりの収穫面積は継続的に増加し、規模拡大の傾向が見られ、最近ではその傾向が強くなっている。図2に経営規模別農家数の推移を昭和40年を基準として示す。150a以上の規模を除けば、いずれにおいても農家数は継続的に減少している。全体的に規模の大きい層の農家ほど減少幅は小さい。150a以上の層はほかに比べると増減が大きく、全体的には減少していない。

図2 経営規模別農家数の推移

2.さとうきび農業・糖業の課題
 さとうきびは原料作物であり工場を必要とするので細々とは続けられない。その生産量が工場の維持に必要な最小量を割り込む危険な状態にまで減少してきた。地域社会におけるさとうきびの重要性を再認識し、その再生に向けて有効な具対策を早急に講ずる必要がある。「そこにあるもの」から「育てるもの」に変えなければならない。

(1) さとうきびの特徴
 それには次に示すさとうきびの特徴を明確に認識する必要がある。
・原料作物であるので工場規模に合う量の確保が必要
・大型作物であるので大型機械・設備が必要
・バイオマス生産性が高い
・価格が低い反面、安定している
・バッファが大きく、気象災害などに強い
・地域経済はもとより生活、文化にも広く影響を及ぼす
・環境保全効果が大きい

(2) 新システム構築の必要性
 さらに次のような点に注目する必要がある。
・減産に伴い共倒れ的状況が現れる懸念がある
・個別農家の自己努力で対応できる範囲が狭い
   規模拡大  <=> 調整困難
   機械化   <=> 経済的困難
   作業受委託 <=> 時間管理困難

 さとうきびはこれらの特徴によって園芸農業などと異なり農家個別の努力では解決できない問題が多く、地域全体での取り組みが求められる。現状のまま推移すれば全体的に生産能力が低下し、ある時点で一挙に破局を迎えることになりかねない。伊江島の推移を見るとこれは決して単なる予想ではない。したがって、厳しい生産の現状と作物の特徴を踏まえた上で、時代や地域に応じた新しい生産システムを構築する必要がある。問題解決のための新しいシステムは、機械化技術と情報技術が融合したものである。機械化に関しては、20年間ほど精力的に推進された成果があがっているが、十分とはいえない。さらに、カマ・オノからハーベスタへの変化は大きく、これを使いこなすマネジメント能力が必要とされる。新旧システムには大きなギャップある。

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3 機械化の現状と課題

1.機械化体系
 機械化体系は着目点に応じて、さまざまな形態に分類できる。大きく、ハ−ベスタ(完全機械化)体系、部分機械化体系(刈取機、脱葉機、搬出機)、集中脱葉方式(刈取り−簡易(無)調整−大束結束−搬出+集中脱葉機)に分類すると分かりやすい。

表1 市町村別ハーベスタの保有台数(平成15/16年期)
 

2.収穫機械の稼動状況


(1) ハーベスタの導入状況
(1)市町村別保有

状況
 表1に市町村別のハーベスタの保有台数を示す。県全体では185台のハーベスタが保有され、ほぼ全数が稼動している。大型ハーベスタは特定地域に偏っているが、中型は全県的に使用されている。小型は主として沖縄本島および本島周辺離島で普及している。

(2)累積導入台数


 ハーベスタは高価な機械であるので主に補助事業で導入されてきた。本土復帰頃から導入が進められ現在に至っている。平成15年度時点における累積導入台数は265台に達し、平成16年度導入の12台を加えると277台となる。稼働台数は185台であるので、すでに80台が廃棄されていることになる。内訳は、大型72台(内36台稼動)、中型127台(内83台稼動)、小型66台(内66台稼動)となっている。

(3)導入の推移
 図3に年度別累積台数の推移を示す。また、サイズ別の導入状況および累積導入台数を図4に示す。これらの図を見ると、本土復帰以降、ハーベスタ導入の大きな流れが4回あり、ハーベスタ導入の動きは収穫機械化の歴史を物語っている。

(ア)第1期:昭和47年度〜53年度
 外国人収穫労務者の導入ができなくなったことを契機に南北大東島を中心に外国製大型ハーベスタの導入が始まった。導入されたハーベスタは収穫前に立毛状態の枯葉を圃場で焼却するバーンタイプであった。同時にこれらのハーベスタを参考に開発された国産ハーベスタが石垣島を中心に導入された。

(イ)第2期:昭和57年度〜60年度
 これらのハーベスタは大型の上に枯葉焼却を必要とするのでほかの地域には適用できない状況であった。このため、国と県は枯葉焼却を必要としないグリーンタイプの中型ハーベスタを開発した。これは、歩行型刈取機から乗用型刈取機の開発に引き続いて行われたもので、問題の多い全茎式を断念して細断式へと移行した。伊江島、本島、宮古島などに導入され、グリーン収穫普及の基礎となった。

(ウ)第3期:平成元年度〜9年度
 バーン収穫地域においてグリーン化が進められ、大型グリーンハーベスタが普及した。一方、県内全域において収穫機械化が緊急の課題となり、中型ハーベスタの導入が進められた。外国メーカも中型機の生産に踏み切ったことを受けて、国産中型機の改良も急ピッチで進められ、実用に耐えうるものになってきた。

(エ)第4期:平成11年度〜現在まで
 第3期はグリーン化と中型化の時代であるが、この頃からさらにサイズの小さい小型ハーベスタの開発が進められた。第3期の後半より、クレーン搬出と集中脱葉を組み合わせたシステム(伊是名方式)がハーベスタ体系に替わる方法として模索され、ハーベスタの導入は一時減速した。一方、小型ハーベスタの性能が大幅に向上したことと、伊是名方式の普及が一段落したこともあって、小型ハーベスタの導入が進められている。

図3 ハーベスタの累積導入台数の推移


図4 サイズ別ハーベスタ導入の推移

(2) 機械収穫率の推移
 図5に機械収穫率の推移を地域別に示す。いずれの地域においても機械収穫率はほぼ直線的に増加している。南北大東島を含む南部地域が機械収穫率は最も高く、八重山地域がそれに続いている。北部地域は最近著しく増加している。離島を除く主要地域においては石垣島の機械収穫率が最も高い。平成10年度付近では60%に迫るところまで上昇したが、集中脱葉施設の稼動が本格化したこともあって50%程度で推移している。次に高いのは本島北部で最近の伸びが大きい。そのほかの地域はいずれも似たような傾向であるが、本島南部は伸びが止まっている。離島地域では機械収穫率の推移はやや異なっている。最も高い南部離島では、南北大東島の機械収穫率がほぼ100%となった後は久米島の動向がその特徴を決めている。北部離島は平成6年度付近で50%に迫るところまで増加したが、伊是名島に集中脱葉施設が設置された後は減少に転じている。宮古離島はロジスティック曲線状の推移を示し、一段落した状態である。八重山離島は含蜜糖地域であるために機械化の出だしは遅れたが、最近では直線的に増加している。機械収穫率は直線的に増加しているが、これは収穫面積あるいは生産量の減少にも影響を受けていることに留意する必要がある(図6)。

図5 地域別機械収穫率の推移


図6 機械収穫率および生産の推移

(3) 市町村別機械収穫状況
 機械収穫率が最も高い市町村は、伊平屋村、北大東村、南大東村、粟国村、東村、宜野座村で、70%以上の値を示し大半は100%に近い値を達成している(平成15/16年期)。機械収穫率が50%以上の市町村は11市町村で本島北部の市町村が健闘している。図7、8に市町村別の機械収穫率と単収の関係をプロットした。機械収穫率の高い地域は単収が低く、機械収穫率が低い地域は単収が高い傾向が見られる。単収を横軸に、機械収穫率を縦軸にとると、全体的に単調な減少傾向もしくは二次関数的な変化が見られる。これは夏植を中心とする多良間村や下地町の単収が高いために現れたものである。これを除くと指数関数的な減少傾向となるが、機械収穫と単収の間に負の相関があるとすれば、その理由を明確にする必要がある。

図7 市町村別単収と機械収穫率の関係(平成12/13年期)  
(5000トン以上の市町村に限定)


図8 市町村別単収と機械収穫率の関係(平成15/16年期)
(5000トン以上の市町村に限定)

3.収穫機械化の課題
(1) トラッシュ対策
 機械収穫原料は大量のトラッシュを含み、さらに原料損失が発生するので歩留は著しく低下する。これを最小限に抑制するために、ハーベスタの作動状態とトラッシュとの関係および原料損失の発生原因を明らかにする必要がある。また、量だけでなくトラッシュの構成内容によっても歩留への影響が異なる。トラッシュの問題は南北大東島や石垣島だけの問題であったが、機械収穫率が上がるに伴って全県的な問題となりつつある。混入トラッシュは製糖工程などに次のような問題をもたらす。
・シュレッダや圧搾機への過大な負荷による所要動力増加
・これらの機械設備の損耗や損壊
・バガス量増加と砂糖分の持ち逃げによるロス
・原料糖の品質低下
・原料糖の結晶化阻害によるロスの発生
・圃場から工場までの運搬ロスの原因
・トラッシュ査定における多労と農家とのトラブル
 問題の解決法としては、
・集中脱葉施設などで除去する
・ハーベスタの選別能力を高める
・ハーベスタの稼動を適正化する
・適正な栽培を行う

(2) 機械収穫原料の品質保持技術
 機械収穫原料は、刈刃などによる損傷を受けヤード堆積中に呼吸作用によって高温、高湿度の状態となり原料の品質劣化が急速に進む。工場までの搬入時間の短縮、ヤードでの堆積状態の改善、堆積条件の改善などの対策が考えられる。

(3) ハーベスタの走行と土壌の硬化
 機械作業の問題点のひとつとしてハーベスタの踏圧による土壌の硬化があげられる。これは生育を阻害し、結果として減産を誘発する要因となる。株間では踏圧の影響は小さいが、中間と畦間において変化が著しい。中間と畦間ではハ−ベスタと伴走車が同一地点を数回走行するために硬化が大きくなる。地表面より40cm以上の深さではプラウやサブソイラが作用しにくく、耕盤が形成されている。土壌硬度が生育に及ぼす影響として、耕盤が深くなると単位収量は直線的に増加する。従って機械収穫を行った圃場では深耕や心土破砕が必要である。

(4) 降雨対策
 降雨は機械作業の大敵である。収穫期には量的には多くないが降雨回数が多く、機械収穫において大きな支障となっている。この地域特有の重粘土壌は高水分下では柔軟化して機体の過度な沈下の原因となり、また、土壌付着が発生する。このため、走行抵抗の増加や走行不能となる場合も少なくない。平成16/17年期は特に降雨が多かったために機械作業が難航した。降雨は走行性の低下だけでなく、トラッシュ混入の増加や品質劣化などによるロスの増加の要因となる。降雨対策には決定打はないが次のような対策が考えられる。
・ハーベスタの走行性を向上させる
・土層改良によって排水性を高める
・天気予報によって収穫量を調整し、刈置きを行う

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4 収穫機械化の適正化技術
1.ハーベスタ利用の最小条件
 ハーベスタは高価な機械で個人利用はまず不可能である。また、小型ハーベスタでもほかの機械に比べると、サイズが大きく複雑な機構を持ち、手軽に操作できるものではない。効率的な利用にはそれなりの条件整備が必要がある。ここでは機械化における問題点を整理して整備すべき最小の条件を具体的に述べる。

(1)畦幅
 ハーベスタがスムーズに作業できる畦幅を設けることが肝要である。おおよその目安は次の通りである。
大型ハーベスタ:140cm以上
中型ハーベスタ:130cm程度
小型ハーベスタ:120cm
 適正畦幅の設定は思うように進まずこれまで稼働率が上がらなかった大きな原因の一つである。拡幅で懸念される減産は一畦当たりの株密度の増加によって回避できる。

(2)圃場区画
 次に、圃場区画の問題がある。圃場の作業能率は大きく異なる。効率よく稼働させるには一筆の面積が十分に広いか、少なくとも畦の長さを十分にとる必要がある。

2.安定した機械化のための条件整備
 機械の効率的な利用に必要な上記以外の点を整理する。

(1)正確な植付けと管理、すなわち畦をまっすぐにして培土の凹凸をなくす。
(2)このためプランタ(植付機)を使用する。ハーベスタとプランタはセットである。
(3)管理を高精度化して単収を上げる。低単収圃場では機械の利用効率が低下する。このような畑だけを機械収穫させる風潮が効率を低下させている。
(4)狭い圃場が多いところは団地化を図る。
(5)ハーベスタの旋回、回行は農道を利用できるように畦方向などを調整する。隣の圃場と畦方向をそろえた方がよい。
(6)圃場と農道の間に段差をなくし、側溝を旋回や進入の妨げにならない構造とする。
(7)圃場の水はけを良くし走行性を向上させる。圃場内の窪地を埋め、側溝の清掃をまめに行って水溜りを作らない。安全性確保のためにも段差、傾斜、くぼみをなくす。
(8)電柱類はできるだけ高くし、またその配置も工夫する。
(9)石レキの除去に努める。また、針金、パイプ類、空かんなどを圃場から除く。
(10)圃場内で機械走行の障害になるものはできるだけ除く。
(11)培土高さは平均培土に近い状態が望ましい。ただし、従来より深植えにする。
(12)ハーベスタは大量の枯葉を排出するので隣に軟弱野菜や花があると収穫作業が難航する。また施設にはさまれた圃場は作業しにくいので団地化を図る。
(13)ハーベスタの圃場間移動をできるだけ少なくする。圃場が広範囲に散在すると移動に多大の時間を浪費し、機械の稼働効率を引き下げるので作業圃場をブロック化する。
(14)ハーベスタの点検・整備、調整はまめに行い、トラブルを避ける。故障に迅速な対応ができるように消耗部品の予備のストックや応急整備車を準備する。
(15)オペレータは高度な技能と経営感覚を持った専門技術者である。その養成と確保は非常に重要であるので農業機械士などの資格を取得させる。
(16)事故防止には細心の注意を払い安全作業を優先させる。
(17)ハーベスタには必ず消火器を備える。

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5 むすび
 機械化の現状を踏まえ、対策の要点を述べたが、これはさとうきびだけでなく園芸、畜産にも密接に関連する問題である。農業の生産構造およびその環境を大幅に変えなければ、土地利用型農業は衰退の一途をたどる。これを誰がどのように行うかが問題である。地域の農家、生産団体、行政、製糖工場などの主体的な取り組みが問われている。
 本調査に当たって、沖縄県農林水産部糖業農産課を始め、関連機関・団体より貴重な資料の提供をいただいた。NPO法人亜熱帯バイオマス利用研究センター・田崎厚也氏および琉球大学大学院農学研究科大学院生・松川亮太君にはデータ整理でお世話になった。記して感謝申し上げる。

参考資料
1)沖縄県農林水産部(1974〜2003):糖業年報
2)沖縄県農林水産部糖業農産課(2004):沖縄県の農業機械
3)沖縄県農林水産部(1990〜2004):さとうきび及び甘しゃ糖生産実績
4)沖縄開発庁総合事務局農林水産部(1984〜2002):沖縄農林水産統計
5)沖縄県さとうきび生産法人連絡協議会(2004):平成16年度通常総会資料
6)上野正実・泉裕巳(1992):機械化による新たな生産システムの構築とその課題、沖縄甘蔗糖年報、第27号、P.7−62
7)上野正実(1996):さとうきび収穫機械化に関する報告書 南大東村における生産システムの変更に関する調査研究、南大東村・琉球大学農学部農業機械学研究室
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