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スポーツと食生活、砂糖

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2006年2月]

【対 談】

元卓球世界チャンピオン
新井 教子 氏
当機構理事長
山本 徹
あらい・のりこ
 世界から「日本に山中(旧姓)あり」とマークされた元卓球世界チャンピオン。1963年・1965年・1967年世界選手権日本代表。1963・1967年世界女子団体優勝。1967年混合ダブルス優勝。1964年・1966年全日本選手権シングルス優勝。現役引退後は、後進の育成や執筆活動など幅広く活躍。「アープ理論」(卓球の身体運動の理論で、Axis(軸)、Rhythm(リズム)、Posture(姿勢)の英語の頭文字をとったもの。この3つの基本要素を統合することで、無理なく、無駄なく上達するというもの)を考案提唱し、東京学芸大学、北海道教育大学で卓球の授業を受け持っている。また、同じ考えの中でラケット(テナリーラケット)も開発、グッドデザイン賞を受賞。現在はスポーツの新分野を考える「株式会社サウンド球貴(タカ)」を主宰のほか、西武コミュニティカレッジの講師を務め、さらにシュガーライフクラブ(料理研究家、菓子研究家、スポーツコーディネーターなど、砂糖業界だけにとどまらず幅広い分野の専門家をメンバーとし、砂糖の正しい情報や価値を広く伝えることを目的に結成)のリーダーとしても活躍中。



山 本 今日は、元世界卓球チャンピオンとしてその名を轟かされた、新井(旧姓山中)教子先生をお迎えしました。新井先生はシュガーライフクラブのリーダーとして、砂糖に関する正しい理解を深めるオピニオンリーダーとしてもご活躍されています。今日は特に、お砂糖とスポーツ、生活についてのお話を承りたいと思います。
 大変お忙しい中、お時間を割いていただきましてまことにありがとうございます。よろしくお願いいたします。


卓球選手時代の思い出

山 本 先生は卓球で世界チャンピオンに登りつめられるまでの生活で、砂糖とどうお付き合いをされたか、それから、いま後進の指導育成等にご活躍しておられますけれども、日常の生活でお砂糖とのかかわりについてお聞きしたいと思います。

新 井 中学高校時代の若いときは、自分の少ないお小遣いをはたいてでも、練習の後にクリームあんみつとか、夏はカキ氷を食べていましたね。それがとても楽しみでした。いまでも、ホッとしたときに、身体が思い出すのか、クリームあんみつとかフルーツパフェが食べたくなるんですよ。

山 本 世界チャンピオンになられるということは、これはとても素晴しいことで、普通の人は夢のまた夢であるわけですけれども、生活面とか、健康維持の面とか、あるいは卓球の試合に臨む心構えなどで、気をつけられたことはどんなことがありますか。

新 井 そうですね、私はごくごく普通の女の子というか、人間でしたから、特別なことはそれほどしていないのですが、ただ、日本代表になってからは全然違いました。精神的な面も、それから身体的な面も、毎日ベストで練習ができる状態へ持っていこうと、その点についてはとても意識していました。

山 本 食生活の面ではどういうことに注意されていましたか。

新 井 夏のあるとき、暑くて食べられなくて、冷麺とかソーメンとかそんなのばっかり食べていたら、運動選手に見る「たんぱく質不足による貧血症」というのになって倒れてしまったのです。お医者さんにチーズとか牛乳とか卵とか、たんぱく質のものをちゃんと摂りなさいということを言われまして、それからは、できるだけバランスよくそういうものをきちんと摂れるように、何とか工夫していました。
 たんぱく質も、お砂糖がないときちっと体に吸収されないということらしいですね。そんなことは全然知りませんでしたので、もっとお砂糖も摂っていたらよかったと思います。

山 本 運動選手にとって、たんぱく質は重要ですね。それから炭水化物、これはご飯とかパンとか、お砂糖もその仲間ですけれども、炭水化物はたくさん召し上がりますか。

新 井 私の場合は、試合前になるとほとんど食べられなくなるのです。ですから、バナナとか、軽いパンとかを食べていました。普段もご飯をいっぱい食べるほうではなくて、本当に普通の生活ですね。その中でベストを尽くしていたという感じです。

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砂糖に対する理解を深める

山 本 選手を引退されて、いまは後進の指導とか、いろいろな方面でご活躍ですけれども、甘いものとのお付き合いは。

新 井 以前と全く認識が変わってしまいました。シュガーライフクラブのオピニオンリーダーをやらせていただいた時に、お砂糖が体や脳にいいと聞きました。それからもう何年もたちますけれども、今は、講演の前とか、原稿書きとか、そういう時はたくさん摂っているんです。その結果、結論から言うと、なんか頭が良くなったような、集中力が長続きするようになったと実感しています。ですから、講演のときも文章を書くときも、後にではなくて、前に摂っています。考えたり緊張したりするときに自然に多く摂っている。いくら摂ってもおかしくならない。きっと脳が必要としているのですね。それで、脳のエネルギー源にはお砂糖が一番いいということが自信を持って話せるようになりました。



山 本 専門家の実験でも、甘いものを食べてテストに臨むと、成績が良くなったり、もう一つは、スポーツの面でも、甘いものを食べて臨むと記録がよくなるという結果もでてますので、まさに先生は、このことを体験されているということですね。

新 井 すごいものですね、お砂糖というのは。今の時代もそういったことを知らない人が圧倒的に多いみたいで、私が経験してきた道筋というのは、一般の人たちにもすごく当てはまっているのではないかなと思っています。男女を問わず、お砂糖というものに対して、あまり知識がないですよね。
 この間も、北海道の帯広へ行ったときに、ビート工場見学をしたんですね、その時、同行した女性が、「あれ、白いお砂糖って漂白しているんじゃないんですか」って聞かれるんですよ。それで、「違うんですよ。私も最初そう思っていましたが、お砂糖は本来透明で、光の反射で白く見えるのだそうです」と言ったら「初めて知りました」とおっしゃっていたんです。お砂糖に関して、今の日本人の認識というのは、かなり向上しているのでしょうか。

山 本 そうですね。例えばお砂糖は糖尿病の原因だという誤解が一部にありますが、正しくは、糖尿病の原因は、運動しないでカロリーをたくさん摂るということ、それから遺伝などもあります。ですから、食べすぎは悪いんですけれども、お砂糖が原因ではないということは、理解がだんだん行き届いてきていると思うのですが、まだ誤解が全くなくなっているとは言えません。
 一方で、生活習慣病、糖尿病とか高血圧とか、日本人の健康にとって心配な現象がいろいろ出てきているので、お医者さんが、健康を維持するために、カロリーをあまり摂りすぎてはいけない、脂肪の摂りすぎはいけない、高血圧を予防するために塩分の摂りすぎはよくない、と指導しています。他方で、過剰なダイエットも良くないですね。
 お砂糖は、食生活を楽しく、豊かにするし、心身の活性化のために大切な食品ですし、ごはんやパンと同じ炭水化物ですから、摂りすぎなければいいわけです。不足している食品もあるんですね。例えば、野菜は1日350g食べる必要があるのですが、いま280gぐらいしか摂ってなくて、まだ2割ぐらい余計に野菜を摂ったほうがいいんですが、だんだん食べなくなっているんですね。牛乳も、いい品質のカルシウムやたんぱく質が含まれており、日本人は平均0.6本ぐらいしか飲んでいませんが、少なくとも1本、牛乳やヨーグルトを飲むとか、さらに納豆とか豆腐とか大豆製品ももっと食べたらいいと言われていますね。
 いろいろなものをバランスよく摂るという、日本人のこれまでの食生活は正しいのですよね。最近は飽食の時代ですが、偏食をしたり、小中学生で2割くらいは夜更かしをしたりして、朝食を食べないのですね。
 だから、広島のある校長先生で、早寝・早起き・朝ごはんということを言っている方がいるそうです。正しい生活習慣として、朝ご飯をきちんと食べる、ご飯と野菜とお味噌汁とかお豆腐とか。それから夜更かししない、夜更かしすると朝起きられないですね。早寝・早起き・朝ご飯ということを子供に言って、予習・復習とか、課外活動も励行させて、子供たちの成績がよくなったという先生がいるんです。

新 井 そうですか。やっぱり、先にある程度摂っておくということですよね。

山 本 1日の活動を始めるのに必要なカロリーを朝食で摂ることですね。

新 井 成長期の子供は特に、寝たら空っぽになるから、朝摂っておいて、1日を過ごすということですね。

山 本 朝早く起きなければ。学校に遅刻しそうな時間ではなくて、早く起きて、ご飯を食べて。もちろんエネルギーのもとになる甘いものを食べるのもいいことですけれども、早起きをして朝食を食べて、夜も、夜更かしをしてテレビを見ていないで。

新 井 本当に大事なことですよね。

山 本 生活習慣が乱れてきているので、そういうのが心配ですね。ある意味では、昔の生活というのを思い出して。

新 井 そうですね、昔は貧しかったから、あんまりいろいろなものを食べられなかったですが。

山 本 今ではいろいろなものを食べられるようになったけれども。

新 井 食べられなかったけれども、いま取れる旬のものを食べていましたよね。

山 本 そうですね、旬の。

新 井 冷凍なんてなかったから、それはすごくよかったんじゃないかしら、四季に合わせて、いまは茄子とか、いまは白菜とか、そういう季節季節のエネルギーをもらっていた。お魚にしてもシーズンがありましたですね。ああいうのがもう少しきちんと、みんな認識が行き届いてくるといいのになと思います。
 あまり言ってはいけないかもしれませんけれども、食生活の乱れは、デパ地下と、コンビニだと言う人もいるんですよ。デパ地下ってわかりますか。私も知らなかったのですが、デパートの地下にお惣菜が売っていますでしょう。簡単に手に入るけど、失うものも多いと思います。でも、世の中がそういうふうに動いていますからあんまり言えませんけれども。

山 本 本当に、いま、時代は、外食、外で食べる、それからデパ地下でお惣菜を買って食べる、家庭でお料理しない、外食や調理食品、冷凍食品などで済ませる割合が3割くらいになっています。国民の三度の食事のうちで家庭でお料理をするのが3分の2ぐらいです。

新 井 そんなに外食などが多いですか。

山 本 ええ。スローフードというのは、旬の食材で、家庭で日本のその地域の伝統的なお料理を作って、家族みんなで食べようという、イタリアで起こった運動なんですけれども、そういう運動を日本でもしておられる人もいます。こういう家庭料理は、正しい食生活と子供の健全な育成のためにも必要だと言われています。


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料理と砂糖

山 本 先生は、お料理は自分でされることございますか。

新 井 まぁまぁやっています。基本的にはお料理は好きなんですが。

山 本 先生は、ご出身は関西でいらっしゃいますか。

新 井 京都なんです。

山 本 私も山口ですから西日本なんですけれども、東日本というのは比較的、お料理は塩分が濃いようですが、京都を中心に西日本は、結構お砂糖を使うと思いますね。
 今は、高血圧などを防止するために塩分を控えめにしたほうが良いと言われております。だから、お料理では塩分の濃いお料理よりは、京都の塩分控えめのお料理のほうが健康面では良いのだろうと思います。
 すき焼きとかお寿司でよく感じるのは、東京は塩分が強い、京都や西日本はお砂糖をたくさん入れていることですね。

新 井 多いですよ。例えばすき焼きなどに、お砂糖をたくさん使いますよね。よくぞこんなにというぐらいお砂糖を使います。そのほうがおいしいので、そういうふうにしてしまいます。

山 本 そういう形で、私どもはお砂糖を摂っている、お付き合いがあるんですね。

人間にとって必要なもの

山 本 先生は、後進の若い人たちの指導もしておられますが、最近の若い人の教育のあり方についてどのようにお感じですか。

新 井 私はアープ理論という卓球の身体運動理論を発表したのですが、今、東京学芸大学と北海道教育大学でその理論を使って卓球の授業をしています。その時に接する学生さんたちが素晴しいのかもしれませんが、そんなに若い人に対して私は違和感がないのですよ。
 確かに片方ではいろいろな問題が起こっているけれども、ちゃんとした素直な心を持った素敵な若者も多いと思います。例えばお砂糖に関しても、正しい知識を教えてあげれば、若い人もお年寄りの人と同じように大切にすると思いますよ。

山 本 例えば卓球とか、自分で興味がある、あるいは得意な分野に一定の期間集中する。それは何でもいいと思うのです。水泳でもいいし、あるいは勉強に集中するのでもいいんですけれども、そういうことにある時期情熱を燃やすというのは人間の成長にとって、とてもいいことかもしれませんね。

新 井 はい。できたら、何か1つそういうものがあったら、きっと、長い人生の中でそれが大きな助けになっていくのだろうなという気はしますね。ですから、子どものときに、中学校ぐらいまでの間に、何かそういうものを見つけて欲しいなという気はします。それはスポーツでも、スポーツでなくても、何でもいいんですけれども。



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卓球との出会い

山 本 先生は人一倍の努力と才能、特に才能をお持ちで世界チャンピオンになられたのだと思うのですが、卓球の世界に入られる、それを続けられたきっかけは。

新 井 私の父が、警察に勤務していて、責任ある仕事をしていたのですが、私が小学生のとき、留置所に入っている人たちの慰問に行くように言われて、花束を持って行ったんです。そのとき、ある部屋に卓球台が置いてあったんです。それで、ポンポンと父がやったりして、ちょっと面白いなと思ったんです。そんなことがあったのですが、なんと私の小学校の校長先生が、ベテランの日本チャンピオンだったのです。それで、先生方がみんな卓球をやっていらして、それを講堂の窓の外ところから見ながら、いいなぁと思って、早くやりたいなと。
 5年生になったらできるようになりまして、クラス全員が卓球部みたいなものですけれども、「今日のお昼の30分は5年7組の時間だよ」と決まったら、普段はのろまな私が一番にパッと走っていって卓球をやっていたのです。ラリーの行き来と、軽やかに弾む音と、リズムと、全体の感じがすごく好きで。
 それで中学校で卓球部に入ったのですが、先生がものすごく卓球に一生懸命な方だったのです。それから、非常に厳しい練習が始まったのですが、そんなときに、京都アリーナというところで、何回も世界チャンピオンになっているルーマニアのロゼアヌさんという人のエキシビションマッチを見ることができて、それがすばらしく、気品があって、美しくて、すごく素敵だったんです。私はとても感動しまして、自分もああいうふうな卓球ができて、こんなふうに人々に感動を与えることができたらよいなと思いました。それがずっと卓球をやり続けるパワーになりました。
 チャンピオンになるというのはあくまで目標であって、ああいうきれいな、素晴しい卓球をやりたいという思いが、私を最後まで頑張らせる力になっていきました。

山 本 いいお話を承りました。でも、小学校5年生というのは、もう10歳ぐらいで、遅いほうでしょうか。

新 井 当時はそれで普通ですね。そのかわり、中学1年生から25歳まで、ほとんど365日練習がある。なくても自分でやったり、やらないと罪の意識を持ったり、そんな感じの生活を過ごしましたけれど、迷うんですね、しんどいのでやめようかなと思ったりして。でも、自分の心の奥に聞いてみると、やっぱり好きだから、もういいというところまではやれるんだったらやろうと。今のオリンピック選手の人たちもみんな言いますよね、好きだからやれるんだと。
 だから、よく、メダルを取るためにやるとか、チャンピオンになるためにやるというけれども、本当にそれだけかなと思うんですよ。それは1つの大切な目標としてあっても、目的ではないのではないかなと。もし目的がそこだったらオリンピックのゴールドメダリストの人たちも耐えられないんじゃないかなという気がしますね。やっぱり好きだから、好きなことを通して自分を表現する、自分の限界を出していく、それが基準となって、まだ頑張ってないぞと自分で気が付き、また頑張ろうと思うのではないかと。

山 本 おっしゃるとおりでしょうね。現役を引退されて、大学の先生をされたり、自分の会社を持たれたり。充実しておられますね、毎日が。

新 井 見た目はすごく何かやっているような感じですけれども、たいしたことはないです。選手時代の一番最後に故障したり、それからその後、卓球雑誌の編集の仕事がすごくハードだったために肝臓や胃が危なくなったりして、とてもしんどい時期があったのです。結局、人間って本当に健康が一番大事だということにはっきり気がついていくのですね。26年前に、西武百貨店にカルチャースクールみたいなのができて、コミュニティカレッジというのですけれども、卓球教室が入って講師としてやりだしたのですが、生徒さんに長く卓球をやってもらうためには、いつまでも健康でいてもらいたい。そのためには、卓球をやる前の心と体の健康が大事だと思ったのです。その思いが高じて健康提案の会社を作ったのです。21世紀の健康をコーディネートする株式会社サウンド球貴、そして健康ぎゃらりぃを持って、今に至っているのですけれども。
 ですから、卓球の教室も体の使い方とか、呼吸のやり方などを取り入れています。健康になっていく方向でなければ意味がないので。

山 本 とても大事なお話でしたね。だから、もちろん世界チャンピオンを目指す、あるいは日本一を目指すという、そういう目標を掲げて頑張る人も、これも尊いと思うのです。だけれども、今おっしゃったのは、一般の人はむしろ、まず健康で、その健康と楽しみのために例えば卓球に取り組んだらいいのではないかということですよね。

新 井 そうですね。そうでなければおかしいと思いますね。

山 本 スポーツというのは、リズミカルで楽しいですし、それから、卓球というのは結構ハードですよね。

新 井 ハードみたいですね。やられた方は皆さんそうおっしゃいますけれども。山本理事長は卓球はなさいますか。

山 本 若いころに卓球をしたことがあるのですが、短時間の間に、敏しょうに肉体を使って、運動量が多いですよね。

新 井 多いと思います。だからこそ、ちゃんとした姿勢で、ちゃんとしていないと壊しちゃうんです。卓球というと、腰を曲げて手だけを振り回す、そういうふうにイメージされてしまっていますでしょう。そう思っていらっしゃいませんか。(笑い)
 腰を曲げて打たないと入らないんじゃないですかと言う人が圧倒的に多いんですけれども、それでは体に負担がかかりますね。背骨を立てて姿勢をまっすぐにして、その姿勢を重力で下半身の力を抜いてストンと下に落としておいて、上へ跳ね上がってくるエネルギーを利用して打つという、それがアープ理論なんですけれども。

山 本 基本をしっかり習得して、体もしっかりしていないと、卓球も上達しないということですよね。

新 井 自然の理にかなった運動でないと本当のいい汗が出ない。健康志向でやれない。年を取れば取るほど障害が出てきまして、腰が曲がったり、まっすぐ立てなくなります。

山 本 先生は、新しい形の卓球のラケットを提案しておられます。今、そういう面でもいろいろ研究をしておられるわけですか。

新 井 結局、長年、スポーツとか健康に携わってきていますと、人間が、自然の状態で、無理なく効率よくできるのは何かというふうに考えだすものですね。アープ理論というのも、卓球の身体運動の理論であるのですが、一番自然な運動なのですね。ラケットも、グリップがまっすぐだとどこかちょっと筋肉に力が要るのですが、手なりに持てるようにグリップの部分は少しカーブを加えて工夫しています。この「手なり」をもじってテナリーラケットといいます。人間がリラックスしながら、力まないで、筋肉を無理に使わないで、どうやったら自然に人間の体が使えて、喜んで、元気になって、死ぬまで元気というようなことになるのかなということにとても関心があります。

山 本 健康で長生きをするということは、人間の1つの大きな目標でもありますしね。

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食生活と砂糖

山 本 また食生活とかお砂糖に戻りますけれども、京都でお育ちになって、京都のお料理というのはお砂糖を使うし、さっきお菓子のお話も聞きましたけれども、お好きなものは何ですか。

新 井 そうですね。やっぱり、一番好きなのは新鮮なものかな。

山 本 旬のものを、そのままで食べるというのは健康に一番いいはずですけれどもね。

新 井 そうですね。今の時期に取れるもので、やっぱり心がこもっているような作り方がしてあって、そういう旬のものであれば、野菜であろうが何であろうが、全部おいしい。

山 本 それは一番の日本人の健康のもとですね。素材を大事にして、旬のものを食べる。味も一番ありますでしょうしね。
 世界を随分あちこち回られたと思うのですけれども、お料理とか、お菓子とか、フルーツとか、あるいはその生活とか、あるいは卓球とかについて、お気づきになる点はありますか。

新 井 若いときは、どうしてどの国も、食事の終わりはデザートがあるのだろうと不思議でしたね。どこへ行っても、その国なりの甘いものが出てくるんですね。
 外国へ行ってある町に行きますよね。市長さんのところへ行って、必ずお茶とお菓子が用意されているんですね。お食事のときはどの国でも最後に甘いデザートがついているというのは、そういうことがごくあたりまえのことなんですね、昔も今も。

山 本 京都にお生まれ、お育ちですと、京都というのは世界遺産の神社仏閣もすばらしいし、外国人も日本に来ると必ず京都ですからね。お料理もやっぱり京都のお料理は一番おいしいのではないかと思うのですけれども。

新 井 京料理が、食道楽の人はおいしいと言われますけれども、やっぱり、こだわり方が違うんじゃないかと思います。

山 本 違いますね。素材を生かして。

新 井 素材ですね、やっぱり。

山 本 例えば、甘いもの、お菓子で言うと、洋菓子があったり、和菓子もいろいろありますね。お好きなものというと、先ほど、お若いころのお話が出ましたけれども、外国に行かれた時はどうされていましたか。

新 井 いま和菓子が食べたいというときもあるし、ケーキが食べたいというときもあるし、アイスクリームが食べたいというときもあるし、お砂糖だけ、黒砂糖だけなめたいというときもあるし、そのときによって。だから一概にこれが好き、これが嫌いというのではなくて、体がいま欲しいものがおいしいと思うし、役に立つのかな。おかげさまで、私の場合は、そういった部分が選手生活をしていて育ったような気がしますね。

山 本 いま、これだけ豊かになっているから、いろいろなおいしいものを食べたいと思うと、手に入りやすいですものね。

新 井 もう1つ思うのは、外国では男の人も、もっと堂々と、甘いものを食べたい人は食べていらっしゃるけれども、日本人も、そういう物を食べられるような時代になってほしいなと思います。いかがですか、甘味店とか、普通にお店に入って、召し上がりますか。

山 本 何となく、男性がぜんざいやあんみつ、ケーキを食べるのかという感じで、甘いものを食べにお店に入るのは恥ずかしいと思う男性が多いでしょうね。男性はお酒が好きな辛党が一般的で、甘党は少ないかもしれませんね。

新 井 ちょっとクリームあんみつなんて。

山 本 そういうのも珍しいと思いますし。今は、スポーツの前に甘いものを食べるのはいいとされていますが、さっき、隠れて食べていたと。スポーツ競技では昔は、甘いものは勧められていないんですかね。あまりたくさん食べ過ぎるのはよくないと思うのですけれども、甘いものを控えるようにということは言われていたのでしょうか。

新 井 そういうこともあったと思います。今はどうでしょうか。スポーツドリンクなどにも糖分が入っていますし。それから、後から摂るという考え方から、先に摂ったほうが良いというように変わってきていますね。

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シュガーライフクラブリーダーとして

山 本 それから、先生は、お砂糖の絵画、作文のコンクールの審査員をしておられますけれども、これらの絵画、作文をごらんになって、お砂糖、甘いものに対して、どういうお感じをお持ちですか。

新 井 国内外から8000人以上の応募があって、これだけ多くの人々がお砂糖に対して関心を持ちだして、それはすばらしいことだと思いますね。
 作文や絵を通して、お砂糖ってやっぱり人間の体にとっての宝物ではないかと思えるようになりました。私にとっても勉強になりますし、活動として、とても良いものと思っています。

山 本 それから、シュガーライフクラブリーダーとして、お砂糖、甘いものに対する正しい理解を深めるオピニオンリーダーもしておられますけれども、このリーダーをされてどうですか。

新 井 私自身、勉強させていただいています。知らないことが世の中にはたくさんあって、知らないのに知っているつもりになっていたり、勝手に決めたりしている世界があるのだということが分かりました。特にお砂糖というのは、通常使うものなので、なおさらそう感じました。ですから、私にとっては、今日もこうやって山本理事長とお話をさせていただいて、とても勉強になり感謝しております。

山 本 こういうことに取り組むのは、お砂糖の役割が正しく理解されていない面があるからで、例えば、心とか体を活性化させるという面がもっと理解されたらいいと思います。逆に、糖尿病とか太りすぎの原因になるというのは広くある誤解で、お砂糖は炭水化物ですから、お米・パンなどと重量当りカロリーも1グラム4キロカロリーと同じなので、これを分かってもらえば安心されるのですが。現実には、いまだ砂糖が炭水化物ということが分かっておられる方は少ないと思います。先ほどの、お砂糖を漂白しているのではないかとか、そういう誤解も解いていったほうがいいですしね。農産物を精製して白くなったのです。
 北海道、それから沖縄、鹿児島では砂糖の生産に取り組んでおられる多くの方々がいらっしゃいますよね。お砂糖は、北海道で生産されたビートまたはてん菜という大きなかぶのような農作物と、沖縄、鹿児島の島々で生産されるさとうきび、このビートやさとうきびを煮詰めて結晶にした農産物であるということを知って欲しいですね。ところで、先生は沖縄にはいらしたことがありますか。

新 井 沖縄のさとうきび畑には、残念ながら行けなかったのですが、十勝のビート畑に行って、本当にすごい、こんなところが日本にあるのかというぐらい広々と、ずっと続いていて、そこにちょうど青々としたビートの、ほうれんそうのような葉っぱが出ていて、ビートを抜かせてもらったり、かじったりしました。あれが白いお砂糖に変わっていくというのは絵や写真では見ていても、信じられなかったですね。ビート工場で白いお砂糖になるというのを実際に見ることができたわけですから、とても楽しかったです。

山 本 さとうきびというのもまた機会がありましたらぜひごらんになっていただきたいと思います。
 さとうきびは、昔は西日本でも作っていたことがあります。田んぼの畦にさとうきびをつくっていましたね。終戦直後は、少なくとも私の住んでいた山口県では作っていますから。

新 井 それは砂糖をつくるためにですか。

山 本 そうですね、お砂糖を取るために。いまよりずっと貴重だったんですね、お砂糖は。値段が高くてなかなかなかったから。いまは、とても安くなり、十分手に入るようになりました。そうすると、粗末にするということはありますよね、今の時代、食料が豊かになると、食生活もかえって乱れてきたという。

新 井 そうですね。

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食育の必要性

山 本 今、食生活の乱れが心配で、バランスの取れた健康にいい食生活をするための食育をすすめることになりました。飽食で何でも手に入るし、コンビニに行けば24時間欲しいものが買えるということになると、食事を粗末にするということがかえって心配で、食生活が偏る、乱れることが問題です。だけれども、食生活は健康で長生きするための一番の基本ですからね。
 健康作りということにとても関心をお持ちになって、それがライフワークということで、今のお仕事の一つの中心になっているわけですね。



新 井 そうですね、一つは卓球を通してやっていますので、健康って何なんだろうなと。そして皆さんが健康であって欲しいと。その辺が私のライフワークかなと思っていますけれども。そこにお砂糖はしっかり入ってきます。

山 本 これからもますますそういう面でのご活躍をご期待申し上げております。

山 本 食育を進めるために、食育基本法という法律が、平成17年の夏に成立しました。食育基本法は、バランスの取れた健康にいい食生活を国民が実践しようという運動を全国で広めようということなんですね。食育担当大臣もいらっしゃいます。
 明治時代に、知育・徳育・体育・食育があったそうで、もう一つ、才育というのがあったそうです。明治時代に学校で教えていた才育というのは技術・才能です。知育・徳育・体育というのはよく言われるけれども、これに加えて食育ですね、食育というのはあまり言われていなかった。飽食の時代にバランスの取れた食生活をもう一度取り戻そうということです。小泉総理は、3年前国会で食育を進めようという提案をされて、咋年、食育基本法が成立しました。
 才育というのは例えば自分は非常にある分野の技術がいい、その才能があれば、それを生かして頑張りなさいという、才育ということも言われておるのですね、明治時代に。

新 井 食育がわざわざ言われるような時代になったから、何か不思議だなと思うのですけれども、やはりそういうのがないと、お砂糖は体に良くないよと、どこからかすり込まれて、いつの間にか、何も知らなかった人間が「お砂糖は良くないんだ」などということを思ってしまうのでしょうか。
 私の母が甘いものが大好きで、よく食べるのですね。食べた後、「あぁ、頭がスーッとした」と言うと、「そういうことはあり得ない、お母さん甘いものを食べたら駄目よ、体に良くないから」と私が一生懸命言っていたんですけれども、お砂糖に関係させてもらってからは、とてもわかるような気がします。脳がスーッとするんですね。ああいうのも食育の一つで、大事なことですね。私も勉強させてもらい、伝えていきたいと思います。

山 本 ぜひよろしくお願いします。そういう食育のためのお砂糖のテキストもいろいろなものが出版されていたりして、お砂糖の誤解を解いたり、お砂糖の役割を説いたりしています。
 お砂糖で、頭がスーッとするのは体験的にあるので、甘いものを食べて、とてもおいしかったと幸せになるというのも、これも大事なことですね。



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体にとって大切な運動

山 本 先生は、試合のときなどに体調を整えるために、呼吸法などに気をつけておられると聞きましたが。

新 井 はい。選手のときは毎日座禅をしていたんですよ、心を落ちつけるために。静かな呼吸も大事なんですね。それから、毎日走っていました。

山 本 どのくらい走られるんですか。

新 井 当時は少なくて1日4キロで、多いときは、合宿なんかですと二十何キロ走ったりというときもありましたし。走るのが嫌いではなかったんです。走っているうちに心肺機能も高められますし、また体も元気になってくるし、走ったという充実感もあるし。
 走っていますと、体に自信がついてくるんです。別に走らなくてもいい、歩いても、何でもいいんですね、少し運動をする。リズム、筋肉と心肺機能とかの関連の中で内臓もきっちり動くんだと思うのですけれども。だから、元気になって、自信がつくのだと思うのです。運動って別にスポーツでなくてもいいんですが、何か適度の、体を使う運動をすることが、生きている自信になるのではないかと私は思っています。理事長さんもぜひ卓球をやってみてください。そのときにはちゃんとお相手いたしますので。

山 本 こちらこそ、よろしくお願いします。
もっとお話をお聞きしたいのですが、時間になってしまいました。今日は、スポーツや食生活、砂糖に関連した幅広いお話を楽しくお聞きすることができました。どうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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