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料理とお菓子、砂糖

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

今月の視点
[2006年3月]

【対 談】

当機構理事長
山本 徹
料理・菓子研究家
城川 朝 氏
しろかわ・あさ
  料理・菓子研究家。外資系航空会社でキャビンアテンダントとして勤務後、10年以上のアメリカでの生活を送る。ニューヨークのクッキングスクールで学び、その後は講師として教える側に。1980年から自宅を使って料理・菓子教室を主宰。テレビの料理番組出演や料理関係の著書で数々のレシピを紹介。ニューヨークスタイルを基本に、日本の生活に合った合理的でおしゃれな料理やお菓子を得意とする。さらに、シュガーライフクラブ(料理研究家、菓子研究家、スポーツコーディネーターなど、砂糖業界だけにとどまらず幅広い分野の専門家をメンバーとし、砂糖の正しい情報や価値を広く伝えることを目的に結成)のリーダーとしても活躍中。



山 本 今日は、お料理とお菓子の研究家として大変有名な城川先生をお迎えしました。城川先生はシュガーライフクラブのリーダーとしてもご活躍されており、砂糖に関する理解も深い方でいらっしゃいます。今日は特にお菓子を中心に、お料理も含めて幅広くお話を承りたいと思います。
 大変お忙しい中、お時間を割いていただきまして誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。


料理・菓子との出会い

山本 まず、先生がお料理やお菓子の研究家になろうと思われるきっかけというのはどういうことでございますか。

城川 私が、これを仕事としようと思ったきっかけは、20代の前半のときに、初めてヨーロッパに行ったときに見た洋菓子店のショーウィンドーにひかれまして、それがきっかけですね。当時、ヨーロッパにあるようなショーウィンドーを持っているお菓子屋さんは東京にはなくて、パリやベルギーの街であるとかの、洋菓子店の美しさに非常に心ひかれましたね。それで、こういったものを作ってみたいと思いました。それがきっかけです。

山本 そういうきれいなお店とお菓子にひかれたということですけれども、それでお菓子をお作りになって、もちろん、これは食べるわけですよね。食べられて、例えば日本の伝統的な和菓子とか、それから、その当時の洋菓子に比べてどういうことをお感じになられましたか。

城川 まだ日本に入ってきていないお菓子類だったので、その形や店の雰囲気が珍しくて、とにかく美しいと思ったのですね。それから、お菓子自体が醸しだす力みたいなものも非常に美しいなと。私が幼いころに、和菓子店の店頭に、鶴や亀の形をした美しい砂糖細工があったのをよく覚えているのですけれども、あれに似た美しさみたいなものをこの飴細工であるとかチョコレート菓子に感じたのですね。当時はチョコレートだけを製品として扱っているところはなく、カカオの香りや味が決定的に違いましたね。
それから、普通の街の方が毎日のようにそれを楽しむ姿。例えば当時の日本ですと、私自身、お菓子というのはギフトというイメージが強くて、恐らくどこの家庭もそうだったと思うのですよね。
 でも、ヨーロッパのお菓子屋さんに入ってくる人々が、普段着であることと、その人たちのお菓子の買い方が非常に生活に密着しているなという印象を受けたのですね。

山本 たぶん、日本はまだ、その当時、お菓子がそんなに日常生活に密着していなかった。お砂糖とかお菓子は値段が高かったこともあって、なかなか手に入りにくい。お菓子の他の原材料も手に入りにくいから、当然高くなって、なかなか一般の市民のものではなかったのかもしれませんね。

城川 そうですね。

山本 でもだんだん、お菓子の材料も、お砂糖をはじめ、手に入りやすくなって、今、お菓子も昔に比べたら随分豊富で、手に入りやすくなっていると思うのですけれども。
 ヨーロッパの人は、お菓子はどういうときに食べるのですか。例えば、日本人の伝統的な食べ方は、おっしゃるように、そんなに、日常的ではなくて、特別な、お客さんが来たとか、何かお祝い事があったときとか、それから、3時のおやつとか、夜食べるとかですけれども、ヨーロッパではもっと頻繁に食べるような気がしますよね。例えば、食事の後によくケーキを食べる、朝・昼も甘いものを食べる。日本人は今まであまりなかったですよね、甘いものを食べるのは。

城川 ええ。日本の場合はお菓子などの、甘いものというのが、女性だけのものみたいな感じで受け取られていると思うんですよね。
 欧米では、お菓子などの甘いものは、子供からお年寄りまで、男女を問わず受け入れられているというところがあるという気がしますね。

山本 確かに日本は、甘党・辛党というのがあって、でどちらかというと男性はお酒を好む辛党で、甘党ではないと。女性が甘党というのは、確かにそうですね。

城川 そうですね。甘党と言ってしまうと、男性として沽券にかかわるとそれを感じるんですけど。でも、時代は確実に変わっていて、娘の夫が、30代前半なのですが、お酒も大好きなのですけれども、甘いものも大好きで、「私は甘いもの大好きです」と言ってしまっている。あたりまえのようにそれを言える世代なのかなというように感じるんですけれどもね。。

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甘いものの効用とは

山本 専門家の研究によると、甘いものを食べると脳が活性化して、テストをするといい成績が取れる、肉体も活性化して、例えばスポーツの記録が、いい記録が出るとか、それから、脳・肉体の疲労回復にも役立つという結果が出ているのです。1日心身ともに元気で働くとか、疲れを取るのに甘いものはとてもいいとわかってきています。それから、お菓子を食べるということは幸せな気分になりますよね。男性もだんだんそういうことがわかってきて、甘いものに親しむようになってきています。

城川 それはぜひわかって欲しいなと思いますね。理事長さんのおっしゃることに同感です。

山本 確かに、男女共に、子どもは甘いものが好きですが、大人の男性がケーキなんか食べていると、少し前までは、何かちょっと、あんまりかっこよくないというような風潮がありましたけれども、だんだんそういうことは変わってきてますね。

城川 私も、お買い物で疲れたときに、例えばティールームでちょっとお茶をいただいてから帰るとか、友人と待ち合わせてということがあるのですけれども、男性の方はあまり見ないのですよね。あんみつとかお汁粉を食べさせるような甘味処ではなおさら見ないですね。喫茶店では、飲み物だけという男性の姿を見るのですけれども、甘味処になると、本当に女性ばかりで。理事長さんは、実際はお好きですか。

山本 ええ、好きは好き。

城川 嫌いという方に私はお目にかかったことがないですね。

山本 だから、一般に男性は辛党がかっこよくて、甘党は恥ずかしいと思うところがあって、甘いものはうちでとか、あまり人目のないところでこっそり食べる。そういうことはあるかもしれませんね。

城川 そうですね。男性の方も皆さんとっても好きなんですよね。

山本 それは、体が欲しているということだと思うのです、好きだということは。

城川 そうですね。私、テニスをするんですけれども、テニスクラブではとても汗をかくものですから、皆さんビールをたくさん飲むんです。でも、それと同じくらい皆さんは甘いものを召し上がりますよ。

山本 クラブで。テニスをした後ですね。

城川 はい、テニスをした後。ビールは本当にとてもよく売れるんですけれども、そこにアイスクリームのケースがあるのですね。そのアイスクリームもたくさん売れることと、クラブの中にお昼ごはんを作っているところがあるのですけれども、そこに必ずメニューとして、ランチの、お蕎麦とかおうどんとかのほかに、パンケーキとか、ヨーグルトにジャムをかけたものとか、その日によってシフォンケーキであったり、マフィンであったり、必ず甘いものが置かれているのです。それは、みんなが欲していて人気があるものだからメニューにいつも載っているのでしょうね。それから、我々は、チョコレートとか飴はテニスのときはバッグに必ず、ほとんどの人が入れています。男性は買うのが面倒くさいので持ってこないのですけれども、それは私たちが1ゲーム終わるごとに、皆さんに「どうぞ」と言うと、皆さん大歓迎で、よく召し上がりますね。

山本 確かに、非常におもしろいご指摘で、だからお砂糖とか甘いお菓子の消費拡大のためには、まず男性が食べましょうと。これがファッショナブルだとか、かっこいいとか、心身のためにいいですよということをもっと理解していただけるように、男性が堂々と食べられるようにするという環境づくりが大事ですね。

城川 そうですね、本当にそう思います。恐らく、体を動かしていると、自然に欲するのではないかなと思うのですけれどもね。いつもより数段おいしく食べられるので、それがいい印象としてどんどん重なってきますよね。

山本 そういえば、確かに、お砂糖の消費量というのは男性、女性を比べると、かなり男性のほうが少ないかもしれませんね。

城川 会社にいる時間が長いわけですから。女性はおうちにいる方もいらっしゃるので。




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ヨーロッパでのお菓子

山本 それから、ヨーロッパで、当時日本にないお菓子を発見されたというのは、例えばどういうお菓子ですか。生チョコレートとか。

城川 そうですね。いろんな種類があるチョコレートで1つずつケースに入っているのがありますよね。以前は、あれが日本にはなかったし、あってもおいしくなかったですね。香りもなかったし、口溶けもよくないし、味が格段に違うと思いましたね。

山本 ヨーロッパにいらっしゃる方は、チョコレートというのは、本当に小さいお店で作って、そこで売られる生チョコレートが、とてもおいしいと言っておられました。ヨーロッパでは小さいお菓子屋さんが多く、そこの手づくりのお菓子が多いようですね。日本もそれがわかって、しばらく前から、生チョコがだんだん売られるようになっていますね。

城川 とてもうれしいことですよね。それから、このごろ、私の住んでいる町もそうなんですけれども、お菓子屋さんが、デパートの地下に行かないと名店がないとかというのではなくて、この町の中に、こだわりを持った洋菓子屋さんとか和菓子屋さんが増えていますね。大量生産をせず、その日に作ったものをその日に売り切るみたいなお菓子屋さんが本当に増えて、それはとてもうれしいことですね。
 わざわざ遠くまで買いに行くことはないですし、皆さん、それをよくわかっていらっしゃいますよね。洋菓子でも和菓子でも、生活の中に自然に浸透してきているなということを感じますね。お菓子屋さんの存在がヨーロッパのようになってきたと思います。

味付けに見る食文化の違い

山本 お菓子から、お料理に話を進めますと、日本の食文化で、東日本と西日本が比較的はっきり違っている。東日本は比較的塩分を摂る文化ですね。それから、西日本は比較的薄味で、薄味というのは塩分が少なくてお砂糖とかだしを重視したお料理を作ると言われていて、例えば、私も山口で西日本なのですけれども、関東に来て、いまでもまだ関東の料理は塩辛いという感じがしますね。それで、お塩文化、お砂糖文化という違う文化があるのでしょうか。例えばお寿司が、関東は比較的お塩を入れたにぎり寿司ですね。関西はちらし寿司が中心で、あれはお砂糖を随分使って甘いんですよね。それから、例えばすき焼きは、関西はお砂糖をたくさん入れて、関東の人は甘いのが気持ちが悪いとおっしゃる方もいるようですが、これは食の文化だからそれぞれ地域性があって、独自の嗜好の問題かもしれませんけれども、私のように西日本の立場から言うと、いま生活習慣病を防止するためには塩分を相当減らすべきで、日本人は塩分を摂りすぎているといわれています。和食はいいけれども、ただ1つ塩分が多いと言われていましてね。そういう意味では、いま塩分の低い和食、塩分を控えめにした、お砂糖とかだしを使ったお料理のほうが健康にはいいのではないかと思っています。お砂糖は炭水化物ですから、これはお米やパンと同じ性格の食材ですからね。西洋料理の味付は何でしょうか。

城川 西洋では、家庭料理だけを単純に考えると、ベースは本当に塩とコショウのシンプルなものなんですよね。しょうゆとかみそなんてないものですから、塩を多く使うか塩を控えるかだけのことで、味は決まってしまうのですね。それに対して日本では、塩・コショウ炒めも好きだけど、甘辛煮や味噌煮も好きで、そうすると、しょうゆ、みそ、塩が基本調味料としてくるんですね。ですから、どうしても塩分が強くなる。
 アメリカの厚生省のようなところから「塩分を控えましょう」ということが毎年出されますけれども、やはり日本のほうが塩分は高いですよね。2003年の国民栄養調査結果では、11.2gから今度は男性10g、女性8gを目指そうと言っているのですが、アメリカはそれよりもっと低いですから。でも、塩・コショウ文化ですから下げやすいのですよね。日本はそこに醤油・味噌があり、さらに、漬物も入ってくるので下げにくいわけです。でも、減塩というのは本当に大事ですし、それから減油ですね。日本のお料理全体として、油・脂肪分を減らしていくということを、考えていかなければいけないと思いますね。

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お菓子の楽しみ方

山本 話はまたお菓子に帰りますけれども、和菓子、洋菓子とありますが、どういうときにどういうお菓子が合うというTPOのようなことをお考えですか。

城川 それは、私いつでも合うと思うのですね。日本は、お菓子は3時に食べなければいけないとか、昔から決められているようなのですけれども、欧米ではコーヒーブレイクという便利な言葉があって、ほとんどどこのオフィスでもコーヒーメーカーがあって、コーヒーメーカーの横には必ず甘いものが置かれているのです。コーヒーブレイクを取りたい人はそこに行って、クッキー1枚とコーヒーなど、自分の思うままにそれを楽しんでいるということがあります。私もそういう生活を少ししてきたので、甘いものをいつ食べなければいけないとか、いつがベストだと考えたことがないんですね。自分がちょっと体を使って汗をかいたり、あるいはお掃除が終わった後とか、そういうときに、食べたいなと思ったらそこでお茶を楽しむ。そうやって時間を決めずにいただくほうが楽しみにつながるのではないかと思うのですね。それとやはり、お菓子を買ってなくても、作るようになると楽しみがすごく広がると思うのです。いつも買ってきたものをいただくのではなくて、本当に10分でできるようなものってたくさんあるんですね。ですから、そういうものをこまめに作るようになると、甘いものに対する概念というのが変わってくるのではないかなと思うのですけれども。

山本 例えば10分でできる、家庭で比較的手軽にできるお菓子というのはどんなものがありますか。

城川 例えば、寒天を固めて、それに蜜をかけるとか。ものすごくシンプルですけれども、あっさりしていてのど越しがいいですし、白玉を丸めて茹でて、黒胡麻とお砂糖の混ざったものを上にかけるとか、本当に10分でできるものってたくさんあるのです。買ってきたお団子と違って、自分で作ったお団子はほんわか、温かいんですね。やっぱり、作りたてのおいしさということですよね。特別の材料でなく、どこの家庭にも常にあるようなもので、経済的にできますね。

山本 伝統的なお料理を家庭で作るスローフードという運動がイタリアで発生して、日本でもそういう運動が展開されていますけれども、お菓子もそうですね。お菓子もスローフードというか、手づくりというのはいいことですね。

城川 ええ。お饅頭を作るとなるとちょっとハードルが高いけれども、いま私が挙げた寒天とお団子のようなもの2つは、簡単な和菓子ですよね。和菓子は、家で作るものとしては入りやすいのではないかと思います。

山本 確かに、いまおっしゃったように、10分でできるお菓子もあるし、それから、ときには1週間か1ヵ月に1回手づくりのお菓子、あんこをつくって、お饅頭とかおはぎとかを楽しむのもいいですね。例えば、おはぎというのはお菓子なんですかね。

城川 お菓子だと思いますね。

山本 もう家庭では作らなくなりましたものね、あまり。

城川 そうですね。親の世代ですと、おはぎを作った日はそれが食事代わりだったということをよく言いますね。

山本 手づくりのお菓子というのを、もう1回見直したらいいですね。

城川 そうですね。みんなが完成されたものを作ろうと思うからいやになってしまうのであって、そうではないものはたくさんあるんですよね。ですから、そういったもので楽しめるようになるといいなと思うんですけれどもね。

山本 さっき、とてもおいしいお茶をいただきましたけれども、安倍川の上流で、お茶の一番の原生種を作っておられるところから求められて、それも、実際にその茶畑を、山を登って見てきたとおっしゃいました。お菓子もそうですが、おいしいものを手に入れようとすると、やっぱり材料を手に入れるのにいろいろな工夫が必要だと思うのですね、作り方とか、生産地とか。

城川 やっぱりその安全性を見たくて現地に足を運ぶというところはありますね。

山本 お茶のほかに、いい食材を求めて、いろいろなところへいらっしゃるのですか。

城川 はい、行きます。うちの主人が金沢で育ったのですけれども、金沢は非常に野菜のおいしいところで、そうすると、野菜を作っている畑を見に行きます。それから、カキとかお魚で、それがとてもおいしいときには、取り寄せた後に、そこを見に行き、生産者の人と話をすることはとても楽しいことですね。


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砂糖に対する理解を深める
山本 お砂糖というのは、てん菜とさとうきびが原料で、それを精製して作るわけですけれども、例えばお野菜とかお魚と違って、加工の段階が1つ入りますよね、さとうきびをそのまま食べるわけではないので。だから、原料農作物が比較的見えにくいのですけれども、もっと関心を持ってもらうといいですね。さとうきびの生産は沖縄と奄美大島などの鹿児島の島々だけですし、てん菜は北海道だけです。そういうところでお砂糖の原料の農作物が作られていまして、砂糖の自給率が4割、あとの6割は輸入されているのですけれども、さとうきびとかてん菜を見ると関心が強まるでしょうか。

城川 とても強まります。私は、沖縄に初めて行ったのは比較的遅くて、3年前なのです。なので、さとうきびというのを3年前まで見たことがなかったんですね。
 例えばお魚は同じ形態で食卓に出ますよね。でも、さとうきびを見たときに「これがお砂糖になるのか」と思い、こんなに形態が違うのかなと思いました。

山本 沖縄や、奄美郡島などの西の島々の農地の半分以上はさとうきびです。ああいうところは、50メートル級の台風が年に四、五回来るのですね。内地ではとても体験しないようなすごい台風で、そしてあまり大きな山がない島ですから吹きさらしですよね。それから、台風はよく来るのですけれども、基本的には水不足になりがちです。島ですから、雨をうんとためるためにダムをたくさんつくればいいので、いまダムを作りつつあるものの、いまだ多くの地域で水が不足しています。飲み水が不足することもあります。水不足だということは、人間も大変ですけれども、農作物の生育にとっても好ましくありません。強い台風が吹くと、多くの農作物は飛ばされてしまいますが、さとうきびは根がしっかりしていて、台風に強いのです。また、干ばつにも強い作物です。だから、台風とか干ばつの被害にあいやすい沖縄などの島ではさとうきびが非常に適している。そういう災害に強い作物なのですね。これらの島では、野菜とか花も作っていますけれども、なかなか、農地すべてにわたって野菜、花だけを作るわけにはいかない、災害にあいやすいものですから。だから、半分以上はさとうきびを作っている。さとうきび畑というのをごらんになったと思いますけれども、ああいう島にはとても適している作物なのですね。
 そういう島の生産者のことを思うと、また少し砂糖もより身近になるかもしれませんね。

城川 そうですね。でも、私の身の回りでも、さとうきびを見たことがない人は多いですね。

山本 そうでしょうね。

城川 ですから、お砂糖がさとうきびから、あのようにして作られるというのを理解できない人はとても多いのではないかと思いますね。さとうきびはあの色ですけれど、お砂糖は白いでしょう。それから、さとうきびを搾った液を煮詰めているところなども見たのです。

山本 じゃ、黒砂糖を作っていたわけですね。

城川 はい。意外と、ああいうものの実体を知っている人は少ないのではないかと思うのです。

山本 北海道では、ビートあるいはてん菜、さとう大根という、寒いところでとれる、大根ではなくほうれんそうの一種なんですけれども、そのビートの根っこの大根のようなところを千切りにして、糖分を抽出して砂糖を作るのです。
 ビートは寒冷地に適した作物で、日本でも北海道の十勝などの代表的な畑作地帯においてなくてはならない農作物です。
 一方、畑作物は連作障害と言いまして、同じ作物を連年栽培しますと、病気の発生などいろいろな障害が起きてきます。これを防ぐため、畑作ではビート、豆、いも、麦など3〜4種類の作物を順繰りに作付ける輪作を行っています。輪作では、ビート、いものように地下に育つ作物と、豆、麦のように地上に育つ作物を交互に植付けることも、農地の状態を良好に保ち、地力を維持する上で大切です。この輪作を行う上で、ビートは大変重要な作物なのです。

城川 てん菜というのは見たことがないのですが、白い大根のようなものですよね。それを、生でかじって、どういう味がするのかもわからないので。

山本 甘いですけれどね。

城川 沖縄へ行ったときに、さとうきびをポキンと折って、ちょっとかじってみたんですよ。そのとき、「あ、これがお砂糖になるんだ」と実感したんですよね。
 でも、てん菜は野菜ですよね。ですからその野菜が甘いというのは、見たことのない私にとっては、結びつかないのです。

山本 そうですか。

城川 たぶん、ほとんどの方が、てん菜からサラサラのお砂糖が生まれるというのは恐らく結びつかないのではないかと思います。

山本 北海道だと、十勝なんかでは、見渡す限りてん菜畑が壮観です。ほうれんそうの一種です。ほうれんそうも甘いですよね。

城川 ええ、茎の部分が。あの甘さに似ているんですか。

山本 まさに似てるじゃないですかね。ボルシチに入れたりするビートをご存じだと思いますけれども、それとルーツは同じです。

城川 結びつかないですね、あれがサラサラのお砂糖になるというのが。

山本 よく誤解されるのは、漂白しているのではないかということで。そういうことではなくて、さとうきびもてん菜も、甘味成分だけを結晶化して、ああいうまっ白いものになるんですけれどね。

城川 すごいですね。

山本 だから、そこは普通の野菜とかお魚とは違った加工工程が入るのですよね。

城川 そうですね。

山本 身近になるためには、そういうところももっとPRが必要かもしれませんね。

城川 そうですね。
 あと、私が思うのは、アメリカで生活していたときに、お砂糖はほとんどグラニュー糖だけなんですよ。ですから、お料理にも全部グラニュー糖なんですね。あと飲み物にちょっと入れるときもグラニュー糖を使っていたのですが、ザラザラしているので溶けにくいんです。だから私は日本に帰ってきたとき、上白糖の溶けやすくて、湿度のある感じが、とても貴重に思えたんですね。

山本 いまおっしゃった、お砂糖も上白糖、グラニュー糖、氷砂糖、三温糖とか、原料は同じなのですけれども、製造工程が違っていて、いろいろな種類のお砂糖がありますね。

城川 もう少し使い分けができればいいなと思うのですけれども、結局、買っても使わないという声を実際に聞きますよね。
 でも、お菓子の好きな方は、黒砂糖も使うし、ザラメ糖も使うし、その使い分けが上手ですね。上白糖だけで焼いたお菓子、グラニュー糖のお菓子、それから、ブラウンシュガーや黒砂糖を合わせたお菓子と、焼いているときの香りが違うので、その香りもご馳走でしょう。だから、その違いがしっかりとわかってしまうので、何かで代用するということはだんだんなくなってくるんですよね。

山本 ヨーロッパはもっとお砂糖の種類がたくさんあるのでしょうね。

城川 ヨーロッパもやはりグラニュー糖が主体ですけれども、ブラウンシュガーもあります。ブラウンシュガーはダークとライトの2種類で、これは欧米ではよく使います。でも日本でブラウンシュガーというのは売っている店が少ない。私はバランスのいい味だと思うのですけれどもね。

山本 アメリカはグラニュー糖だけだと、お菓子もグラニュー糖でみんな作るのですかね。

城川 グラニュー糖とブラウンシュガーです。

山本 日本人は繊細な味覚があるから、いろいろな種類を使い分けるということなんでしょうね。

城川 そうですね。私たち日本人は本当に繊細ですね。

山本 四国で作っている和三盆というのも、外国人は珍しいといって、和三盆を求めたり、見に行く人もいるみたいですけれども、あの和三盆というのもまた非常に特殊なお砂糖で、さとうきびがもっとひょろひょろと長いですね。

城川 和三盆用のさとうきびですか。

山本 そうです。さとうきびというのは、いまは、収量が上がるのは暖かいところのほうがいいものですから、沖縄とか奄美なのですけれども、もともとさとうきびというのはイネ科の作物で、さとうきびの原生種は茨城、栃木あたりまでに自生しているのだそうです。原生種は生命力が強いので、そういうものを採ってきて、試験場で交配して品種改良をしていますけれども。

城川 和三盆は、さとうきびの品種の違いで工程の差じゃないんですね。

山本 品種は違います。また、圧搾、清浄、分みつという工程そのものは一緒で、この工程をすべて手作業でやっています。ですからさとうきびの持つ独特の風味がほどよく残っています。

城川 とてもおいしいですよね。

山本 あの繊細な甘さ。

城川 でも、お値段が高いですよね。

山本 高いですね。手作りですから。

城川 普通のお店には売ってないですね。

山本 売ってないですね、量が非常に限られているから。

城川 普通のお店では売ってないですし、高いので買いにくいかもしれませんね。

山本 そうですね。お菓子の研究家の方はとても和三盆を珍重されますね。

城川 皆さんが和三盆のおいしさを知っているのは、落雁だと思うのです。私は落雁が大好きなんですが、主人の出身地である金沢はお茶文化が広まったところで、茶人がとても多くて、和菓子屋さんが非常に多いんですよね。落雁をいただくと、あの和三盆の味のよさというのが本当に伝わりますよね。あの繊細なおいしさというのは、日本独特のものですよね。あれを食べると、あの味が本当にしみ入るようで、私は、日本人はとても幸せだと思うのです。

山本 先生は、シュガーライフクラブのリーダーでいらっしゃいますが、これは何をやっておられるのですか。城川 これは、私が洋菓子などを教えているものですから、お砂糖の普及と正しい知識を伝えるための活動ということで、消費者と一番近いところにいる私のような人間がお役に立てるのではないかと思ったのです。それでシュガーライフクラブのリーダーをさせていただいているのです。



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料理の研究家として

山本 先生はお菓子の研究家でいらっしゃいますが、活動の内容は具体的に何ですか。

城川 一番多いのは、まずレシピをつくって、それを皆さんにお教えしたり、実際に作って、皆さんと一緒にそれを伝えて、そしてそのレシピをもとにしたものを、皆さんがおうちに帰ってつくるという活動ですね。あと、それを、求められれば雑誌に出したり、それからテレビの料理番組に出たり、おかずの本を出したり、そういう発信をするということですね。

山本 ここは教室になっているのですか。

城川 はい。

山本 どういう方がいらっしゃるのですか。

城川 生徒さんの幅はとても広くて、10代から60代ぐらいまでですね。でも年齢的に一番多いのは20代、30代です。

山本 お菓子の教室とお料理の教室と両方やっておられるのですか。

城川 はい、しています。

山本 生徒さんは同じですか。

城川 同じ方もいますし、別の方もいます。

山本 お料理のほうは、和洋中。

城川 はい、和洋中のお料理を作ります。でも、一応コースで立てているので、最後には必ずデザートがつきます。和食のときは和のデザートですし、洋も中華も最後はデザートで締め括るということで、やはり皆さん一番最後に何が出るかをとても楽しみにしていらっしゃいますね。やはりデザートというのは欠かせないもので、食事の全体のバランスに必要だと思うのです。メインディッシュだけがおいしいというのではなくて、最後にちょっと果物を使った甘いゼリーであるとか、そういう最後の口直し的な存在があってはじめて、料理の全体の構成が成り立つと思いますね。
 皆さんの意見で一番多いのは、子供のお誕生日にケーキを作るとか、親の金婚式のお祝いであるとか、祖父母の方の古希や米寿のお祝いであるとか、そういうお祝い事のときに作るお菓子やお料理、あるいはデザートを教えてほしいという声ですね。
 それから主婦の人が、どんなに簡単なものでも、お菓子を作ろうということは意外とエネルギーが要るのですね。お料理というのは食べなければならないわけで、どんなに熱っぽくても、お母さんというのは子供が帰ってくるときに、よっぽどひどくない限り我慢してご飯を作るんですね。お菓子というのはそれプラスのものなので、「きょう、お菓子を焼こうかな」という気分になれるということはとても幸せなことなんですね。例えば自分の体調がいいというときであるし、それから、家族のみんなが平和で、そうでないとお菓子を作ろうという気持ちに心が動かないのですよね。だから、お菓子を焼けたという日はすごくいい日なのです。そのことを私は生徒さんに言っていますし、本にもそれを書いています。それは紛れもなく、本当に心にも体にも余裕がないと、きょうはデザートに何を用意してあげようかという思いに至らないことが多いんですね。

山本 お料理、お菓子も、家庭の大きな絆になりますよね。

城川 そうですね。時々お菓子の甘いにおいが漂ってくる、という家であってほしいなと、本当にそう思います。

山本 そういう家庭は、本当に幸せでしょうね。

城川 そうですね。誰かが家の戸を開けたときに、「あ、きょう何を作ったの?」というのは、残り香なんですよね。お菓子のにおいは非常にあたたかいですね。例えば紅茶にお砂糖を入れてミルクを入れて温めますよね。それだけでいいにおいで、心地よいですよね。ですから、お砂糖の役割というのは、“ほのぼの”ですよね。

山本 終戦直後までお砂糖というのはとても貴重な、お薬のような取扱いでしたが、いまは自由に買えるし、値段もお安くなっていますし、おいしいお菓子やお料理を作るにはいい時代になりましたね。

城川 そうですね。でも、一時、甘くないのがおいしいとか甘さがほんのりでおいしいとかというのはちょっと褒め言葉になった時期があったのですが、このごろは全くそういう声は聞こえないですね。焼き菓子などのレシピでお砂糖を控えてしまったことは、失敗につながるのですね。保水性や保存性とか、そういうことを考えたときに、日持もしませんし、しっとり感もちょっと損なわれるというところがあって。しっかりした甘みをおいしいと皆さんが感じているというのは、私はすごくいいことだと実感しますね。

山本 甘さ控えめというのは、お砂糖や甘いものが糖尿病とか太りすぎの原因だという誤解があった時期かもしれませんね。

城川 ダイエットブームで、太るからというので。

山本 お砂糖自体はお米とかパンと同じ1グラム当たり4キロカロリーの食品で、同じ炭水化物なんですよね。

城川 私も、いろいろなところで教えていただいて、いつも機会があるごとにそういうことを言うと、「エーッ」という声が聞かれますね。

山本 多いですよね。とても太るとか、ダイエットに悪いという認識がありましたね。もちろん食べすぎれば悪いのですけれども、何だって食べすぎればよくないので。

城川 20代、30代はイタリアンが好きですから、パスタをたくさん食べて、パンにオリーブオイルを浸して食べて、そして、太るからデザートは食べないわ、みたいな時代があったのです。でも、決してそうではなくなったことはうれしいことですよね。

山本 油は、1グラム当たりのカロリーの発生量は9キロカロリーですけれども、炭水化物だと、お砂糖もそうですが、米、麦と同じ4キロカロリーですから。これはほとんど知られていないことですね。

城川 本当ですね。でも、皆さん驚かれますよね。炭水化物というのは、お米と一緒というのが一番わかりやすいかもしれません。
 薄い甘さというのは、たくさん食べないと満足感がないのです。でも、きちっとした適正な甘さというのは、少しだけでもしっかりと印象に残るし、満足感があるということですよね。

山本 甘さというのも、数字では計りにくいですけれども、どれぐらいというのはお菓子を作るときのポイントでしょうね。

城川 それは同じ条件下で10g単位にして繰り返して、テストをやります。

山本 欧米のほうがお菓子はかなり甘いですよね。

城川 かなり甘いですね。旅行で行くと、アメリカのお菓子は甘くて食べられなかったと言って帰ってくる方が多いですね。でも、不思議なもので、風土と食べ物ってすごく結びついていて、例えばフランスでもどこでも、いったん住んでしまうと、その風土での甘さを人間の体が欲するんですね。そうすると日本人であっても、フランスに住んでいたらその甘さが適正な甘さと感じますし、私もアメリカに住んでいるときに、初めはとても甘いと感じたのですけれども、そのうちに、乾燥度だとか、季節の変わり目だとか、そういうことによって慣れてきて、そのアメリカのお菓子が甘すぎないと感じました。これは非常に不思議なことだと思いました。
 でも、日本に帰ってくると、また引き戻されるのですね。湿度の多い日本では、日本の甘さがちょうどいいんです。本当にうまくできているのだなと思います。ですから、先ほどおっしゃった、西日本と東日本も、きっと、その風土の違いだと思います。

山本 風土と甘さやお料理の味付には関係あるのですね。西洋料理でお砂糖はどういう風に使うのですか。

城川 西洋料理でお砂糖を使うことはありますけれども、微量です。煮込みには使いますが、煮込み以外はお砂糖は使わないですね。欧米の普通の家庭の食事というのは1皿に大体、肉があって、温野菜があって、パンがある。これを温め直して翌日はサイドディッシュが違う程度なんですよね。前の日がおイモだと、次の日はニンジンで、次の日はインゲンぐらいで、ころあいに煮た、大きな肉の塊を切り分けて、簡単なインスタントのグレービーソースで食べているのが実情ですから、そこに甘みはないですよね。だからお菓子がすごく甘くなっていて、洋食を食べたあとの甘いデザートがとてもおいしいのです。ですから、欧米ではどこのオフィスにもコーヒーメーカーの脇にクッキーとかチョコレートとかマフィンとかが置いてあります。みんな、そこで必ずお菓子をつまんで、たぶん、それで仕事の質が上がるのではないかと思うのです。

山本 上がると思いますね、確かに。肉体と精神の疲れを癒して、リフレッシュした気分になって、また仕事をやろうという気が沸いてくるのですね。

城川 日本だと、朝ご飯のときにも、昨日の残りの煮物とか、酢の物にもお砂糖がたっぷり入るでしょう。欧米ではそうではないわけですから、10時ごろに、自然に甘いものが欲しいと思うわけですよ。
 私も、うちで洋風のものを作ったときは、最後に、すごく甘いものを食べたくなりますね。でも和食を食べたときは、私は、ことさらお饅頭とかを食べたいとは思わないですね。なぜなら、日本の料理にはお砂糖がたっぷり入っているからなんですよね。そのように考えると、欧米人が毎日甘いものを食べる理由は、ごく自然ですよね。

山本 それは貴重なお話ですね。生徒さんのお話をお伺いしましたが、昔とちょっと変わったということですが、砂糖に対して意識が変わられたということですか。あまり砂糖を気にするような生徒さんたちは最近はおられないですか。

城川 私が感じるピークは10〜12年ぐらい前からでしたね。そのくらいのときに、甘くないデザートを教えてほしいと、皆さんおっしゃったのです。
 結局それは、お饅頭屋さんなどが甘くない大福と言って売り出して、そういうのが売れた時期なんですね。ほかにも、お店がうちのケーキは甘さ控えめなどの宣伝文句を発信したりすると、その情報をキャッチして、女性向けの雑誌やテレビなどが取材するのです。そうするとみんなすりこまれてしまうから、「あそこのケーキは何とか屋よりも甘くなくておいしい」とか、一気にそういうのがはやったのです。そうすると、自分で作るお菓子も、甘すぎるのではないかしらと思うようになるので、甘くないのを教えてくださいということですよね。


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手作りの大切さ

城川 でも、いまは全然違いますよ。4〜5年前から確実に変わってきたと思います。そうなると、お料理のほうも変わってきたのかなと思いますね。普通のきちっとした甘みを抵抗なくみんなが受け入れて、それをおいしいと心から感じる。ご飯のつくり手である女性はみんな敏感なんですよね。
 でも残念なのは、このごろ、デパートや駅ビルの中で市販されるお料理が多くなっていて、作るより安いのです。確かにお1人だと煮物を作るわけにはいかないのですが、それが私としては本当に残念だなと思います。買ったほうが楽なので、一人暮らしをしている20代、30代の女性は、もう作りたくない、仕事で疲れた日は駅で買っていって、食べて、あとは、入れ物をポイと捨てるだけ。そうなってくると、お菓子も作らなくなると思うのですね。ご飯は買ってきてしまうんですから、お菓子なんてなおさら作らないわけでしょう。その傾向というのはとても残念ですね。あと、サラダなどは輸入の野菜を使って作られるので、安全性を確認しないとわからない。いずれにしても、ご飯を買う文化に流れていくのは残念なことです。

山本 やっぱり手づくりのお料理やお菓子をつくるということは大切ですよね。

城川 私がいつも生徒さんたちに言っていることですが、決定的な違いは温度なんですよね。先ほど簡単なお菓子と言いましたけれども、温かいか冷たいかなのです。買ってきたお惣菜は全部冷たいのですよね。電子レンジで温めても、熱すぎるようになりますから、温かいという温度がないのです。でも、家で作ったお菓子や家で作ったお料理というのは、「熱い」ではなくて「温かい」んです。それが心にしみる。だから、お砂糖を紅茶に入れるというのも、熱々ではなくて、温かいのです。外の店で飲んだら、熱々は出てくるのですけれども、温かさはないでしょう。だから、家庭のお菓子もお料理も、温かいというところが買ったものにはない部分で、それは絶対お金では買えない。それを若いお嬢さんたちには強く言います。

山本 そうでしょうね。それは温度も温かいし、それから気持ちがこもっていますものね。だから、青少年の非行問題がありますけれども、やっぱり子供たちが健全に育つのも、そういう家庭の温かみに触れて育っていくことが大事ですよね。家族団らんで、一緒にお料理を食べるということは、そこに会話もあるし、家族のぬくもりも感じるし。

城川 おなかが空いて帰ってきて、何かができているというのはすごくうれしいですよね。買ってきたコロッケが冷たいまま置かれているより、家で作った、甘みがたっぷり入った筑前煮が出ていたほうがうれしいですよね。
 大きい洋菓子屋さんで、大きなシュークリームが100円で買えるのですが、いくら大量生産にしても、私なんか、一体どうやって作っているのだろうと思いますね。どんな卵を使って、どんな油脂を使ったらこんなのが100円でできるのだろうかと。私は自ら作っているからわかるのですが、卵が1個いくらで、粉がいくらで、バターはいくらでと考えると、あと人件費を入れて、100円というのはすごく不思議で仕方がないのです。そう思っていたら、これはここ数年の傾向なのですが、若い子たちが、和のよさに気づきはじめているみたいなのです。私はこれはいことだなと思っているのですね。

山本 和のお菓子は、例えば、具体的に品目で言うとどういうものですか。

城川 きな粉をまぶしたお団子であるとか、それから黒糖をたっぷり使ったケーキですね。あと、パンの上に白い渦巻状になったアイシングというのがありますよね、パリンと割れるとこぼれるような。あれを黒糖で作るんです。黒砂糖だけでは固まらないのですが、そこへ粉砂糖を入れて混ぜると固まるのです。黒砂糖と、粉糖と、水を入れて混ぜるだけなので簡単なことなのです。それを焼いたケーキの上にアイシングとしてかけますと、とてもおいしいと若い方がそうおっしゃるんです。だから、実はいま、和のものを本にしようと思って、ある出版社と話を進めているところなのです。
ちょこっと和風のデザートを作ろうと思うと、電子レンジで簡単にもち米を炊いて、小さく丸めたものに黒胡麻と砂糖をかけただけでおやつになるのです。電子レンジで本当にあったかくて、おいしそうでしょう。そういうものを皆さんすごく喜ぶので、うれしいですね。

山本 胡麻というのは体にもいいといいますしね。

城川 そうなんですね、この素材は本当にすばらしいですよね。フランス人のパティシエたちが、胡麻やきな粉をどんどん自分たちで認めて、日本の素材が面白いということでどんどん来日して、みんなそれを自分たちの新しい洗練されたフランス菓子にしていくのだと思います。既にそれをしている方がたくさんいらっしゃるのですよね。

山本 もっとお話をお聞きしたいのですが、時間になってしまいました。今日は料理やお菓子に関する大変興味深いお話や、日本と欧米での食習慣の違い、また、砂糖が我々の食生活で果たす重要な役割などをお聞きすることができました。どうもありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
 
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