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お砂糖豆知識[2000年1月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2000年1月]
●てん菜のあれこれ
●砂糖のあれこれ
●お料理のレシピ



てん菜のあれこれ

ビート種子の話

(社)北海道てん菜協会 前専務理事 秦 光廣

2.品種の変遷
〔試験の歴史は浅いが畑作をリード〕

 1871(明治4)年に初めて試作されたビートは、1880(明治13)年には種子を輸入し製糖を開始するまでに栽培が広がりました。しかし、残念なことに稼働2工場ともわずか十数年で閉鎖され、以後23年間は栽培されていませんでしたが、この間の1904(明治37)年にビートの品種改良や栽培試験は始まっています。
 以来、100年にも満たない研究の歴史は、他の作物に比べ非常に浅いと言わざるを得ませんが、品種改良等による収量・糖分含有率の伸びは顕著なものがあり、また、進取に富んだ栽培技術は常に道内畑作をリードしてきました。
 ちなみに、単純比較は問題が多いものの、あえて新品種の作出数を比べると、1990(平成2)年以降10年間に道知事が認定した優良品種は、ビート18品種に対し、倍以上の作付面積をもつ水稲が9品種、豆は大豆、小豆、いんげんを合わせて13、じゃがいも10、麦類3と、ビートが他を大きく引き離している状況にあります。

〔育ててみたら家畜ビート〕
 栽培が再開されたのは1920(大正9)年でしたが、事件はその翌年におきました。播種したビートの生育が進むにつれ大きな根が地上にせりだし、初めてビートを見る農家は豊作に胸膨らませました。しかし、関係者が良く調べると、家畜飼料用のビートであることが分かり、大騒ぎになったのです。この種子は米国からの輸入品で、敗戦国ドイツから米国が賠償として取り立てたものでした。敗戦の悔しさから故意に家畜ビートを混入して賠償に充てたのでは、などの噂もあったようですが、真相は分かっていません。
 とばっちり被害による輸入依存見直しの追い風を受けたわが国は、1927(昭和2)年にドイツの品種から選抜育成した初の国産品種「本育48号」が誕生すると、船便延着の不安なども重なって、4年後の1931(昭和6)年には、全てが国産種子に置き換わりました。
 国産品種の全盛は1963(昭和38)年まで続き、この間の新品種の作出数は29品種に上って、中でもドイツの品種とフランスの品種の人工交配で生まれた「本育192号」(1935(昭和10)年)は、30年近くも栽培された優秀な品種でした。
 戦後は、米国をはじめドイツ、フランス、オランダ、スウェーデン、デンマーク、ポーランドなど、十数ヵ国から百数十種類の種子を導入し、品種特性などのテストをしましたが、その中から誕生したのが米国の品種を選抜育成した「導入2号」(1954(昭和29)年)で、耐病性を買われて栽培の大宗を占めるようになりました。

〔単胚一代雑種の輸入品種が席巻〕
 1960(昭和35)年代に入って外国品種が輸入されるとそのウェートは急速に増し、1966(昭和41)年には輸入品種が席巻するまでになりました。また、従来の非省力的な多胚品種に代わって初めて単胚一代雑種のオランダの「ソロラーベ」(1971(昭和46)年)が優良品種に認定されると、多胚品種は瞬く間に単胚に置き換わりました。
 単胚品種が認定されて10年を経た1981(昭和56)年の栽培品種は、スウェーデンの多収品種「モノヒル」が55%と過半を占め、「ハイラーベ」等オランダの品種が26%、ドイツの「カーベメガモノ」などを合わせ輸入品種が99%で、全てが単胚の収量型品種でした。この間、国産品種も「モノホープ」(1973(昭和48)年)がその名が示すように国産初の単胚品種として関係者の期待を集め誕生しましたが採種性に難点があり、また、製糖効率が優れていた「モノヒカリ」(1982(昭和57)年)も、国産品種の中では健闘したものの耐抽苔性(たいちゅうせいたい)が弱く(1年目にとう立ち)広く普及するまでには至りませんでした。

〔多収から高糖へ、そして中間タイプへ〕
 1986(昭和61)年に取引方法が重量のみから糖分を加味した評価に移行すると品種は大きく変わり、高糖分品種が主流となりました。
 1989(平成元)年には国産品種として「モノホマレ」が登場し、国産のウェートが増しましたが、この品種は花粉親が日本、種子親がオランダの交雑品種で、残念なことに種子増殖の都度の種子親の輸入が必要でした。この年の栽培品種は、国産品種が「モノホマレ」など29%、輸入品種は高糖分の「モノエース・S」等ドイツから42%、スウェーデンからは「スターヒル」など26%、オランダから3%などで、全体の71%が糖分型品種、25%が中間タイプとなっています。
 昨年(1999(平成11)年)は、スウェーデンの「ユーデン」等が48%、オランダの「ハミング」等が30%、ドイツの「ストーク」等が21%で、国産品種はわずか0.2%と形ばかりになっています。また、一時期90%台まで伸びていた糖分型品種は57%と後退してきています。
 品種の変遷はそのサイクルが短くなり、糖分型から多収・高糖双方の中間タイプを指向しているのが最近の傾向といえましょう。

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砂糖のあれこれ

お砂糖の使い分けについて

精糖工業会

 前回掲載した「砂糖の摂取量」と並んで多い質問が「砂糖にはたくさんの種類がありますが、どのように使い分けたら良いのですか?」というものです。今回はこのことについて触れてみましょう。

(1)「純度」と「甘さ」
 下に示した砂糖の成分表をご覧下さい。
 一番左に書かれている「ショ糖」が砂糖の甘味成分に当たるものです。次にある「転化糖」とは、ショ糖の分解(加水分解)によってできたブドウ糖と果糖のことで、「灰分」はいわゆるミネラル分です。
 黒砂糖を除けば、どの砂糖もショ糖分は95%を超えていますが、中でも、白ざら糖とグラニュー糖のショ糖分がほぼ100%に近いことが分かります。つまり、白ざら糖やグラニュー糖は「純度が高い」、「高純度である」ということになるわけです。逆に、上白糖や三温糖はショ糖分がやや低いことが分かります。

砂糖の成分%(平均)
   ショ糖   転化糖   灰 分   水 分    色  
白ざら糖 99.950.010.010.01白 色
中ざら糖 99.700.050.030.03黄褐色
グラニュー糖 99.950.010.010.02白 色
上 白 糖 97.801.300.020.80白 色
三 温 糖 95.402.100.221.20黄褐色
角 砂 糖 99.800.010.010.15白 色
氷 砂 糖 99.800.060.010.06白 色
粉 砂 糖 99.800.020.010.02白 色
顆粒状糖 99.800.010.020.02白 色
原 料 糖 97.700.700.450.50黄褐色
黒 砂 糖 75〜862.0〜7.01.3〜1.65.0〜8.0黒褐色
(本成分表は、平均的な値で、製品によって多少の菜があります。)

 ところで、「砂糖の種類によって甘さが違うのはなぜか?」という質問をいただくことがあります。先 ほどご説明したように、砂糖の甘味成分はショ糖ですが、このショ糖は数ある甘味料の中でも最も「好ましい甘味」を有していると言われています。しかしながら、甘味の「強さ」を語るときには、その甘味の「質」も大いにかかわってきます。
 砂糖においても、グラニュー糖や白ざら糖のように純度の高いものはショ糖そのものの甘味ですが、先 ほど述べた転化糖(ショ糖の加水分解によって生じるブドウ糖と果糖の混合物)は、ショ糖より少し甘味 が強いと言われていますし、ショ糖が熱分解することにより生じる着色物質(いわゆるカラメル)は、それそのものが甘い風味を呈します。また、少量の無機質分が含まれている場合、それが刺激となって甘さ が強まります。
 家庭で最もポピュラーな上白糖は、独特のしっとりした感じを持たせるために、ショ糖の結晶に濃厚な 転化糖液(ビスコという)を少量ふりかけてあります。また、三温糖は上白糖同様に転化糖液をふりかけてある上に、着色物質(カラメル)による甘い風味も有しています。ですから、グラニュー糖より、感じる甘さとしては強く感じられるのです。
 黒砂糖は純度が低く、ショ糖分は他の砂糖に比べて少ないですが、転化糖や無機質等の非糖分が多いため、コクのある強い甘味を有しているのです。

(2)どう使い分けたら良いのか?
 では、このような特徴を日常の料理やお菓子作りにどう生かしたら良いのか、ということですが、先ほ ど触れたように、純度の高いグラニュー糖や白ざら糖は、砂糖そのものに風味があるわけではありませんので、甘さとしては非常に淡白です。このことを料理に当てはめれば、「純粋に甘味だけをつける」ということになります。つまり、素材の香りや色、風味を生かしたい時に向くわけです。この一番の典型がコーヒー・紅茶に使うスティックシュガーのグラニュー糖です。また、フルーツを使ったケーキなども、色の問題に加えて、フルーツの風味を損ねないためにもグラニュー糖が向くというわけです。
 一方、三温糖や黒砂糖は、砂糖そのものに風味とコクがありますので、これを生かせる料理、具体的に は佃煮等の甘辛く煮る煮物などへの使用に向いているといえます。また、黒砂糖は、そのままお茶受けとして食べても、香ばしくておいしくいただけます。

(3)上白糖って?
 さて、ここまでご説明してきて、一般に最もポピュラーな白砂糖である「上白糖」はどうなのか?と疑 問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。ここで、もう一度先ほどの成分表をみてください。
 上白糖の平均的な成分は、ショ糖分97.80%、転化糖1.30%と、三温糖とともに転化糖の割合が他の砂糖 より多くなっています。これは、先ほど少し触れましたが、転化糖の濃厚液(ビスコ)によるものです。上白糖もグラニュー糖も白砂糖という点では同じですが、ビスコが添加されたことで成分表上は転化糖の 割合が多くなるわけです(三温糖についても全く同じことです)。
 甘さの点で言えば、転化糖を加えたことで、舌に感じる甘さは、グラニュー糖より上白糖の方が若干強 く感じますが、かといって三温糖のような風味があるわけでもありません。つまり、両者の中間に位置付 けられるといってよいでしょう。つまり、どのような用途でもOKの「万能型」として、一般家庭用に最も 適しているのです。

(4)顆粒状糖を使うときは…
 粉砂糖、角砂糖、顆粒状糖は、もとはグラニュー糖ですから、余ったものをとっておいて、通常のお砂 糖のように使ってもちろんOKです。しかし、ここで注意してほしいのが、ヨーグルトのパッケージを買うとついてくる顆粒状糖。これはグラニュー糖を原料にして、水に溶けやすいように多孔質に成形したものですから、同じ「大さじ1杯」でも重量は軽くなります。通常の上白糖やグラニュー糖で「大さじ杯」とレシピに書かれている場合は同じ重量になるように調整する必要があります。
 また、氷砂糖も純度の高いお砂糖です。果実酒作りに向くのは、結晶が大きいので徐々に溶け出すことで果実のエキスも徐々に引き出されること、また純度の高さゆえに、果物の風味を損ねないという効用も あります。

(5)まとめ
 色々とご紹介してきましたが、どれであっても砂糖には違いありませんので、「にはこの砂糖でなけれ ばいけない」とか「この砂糖はダメ」ということはありません。しかし、日本は、世界でも料理の中に上手に砂糖を取り入れている国であることは間違いありませんし、それゆえ、これだけ多くの種類が生まれたのだと思います。皆さんも、それぞれの砂糖の特徴を知って、賢く使い分けていただければと思います。

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