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お砂糖豆知識[2000年8月]

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最終更新日:2010年3月6日

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お砂糖豆知識

[2000年8月]
●てん菜のあれこれ
●砂糖のあれこれ


てん菜のあれこれ

てん菜の取引制度

(社)北海道てん菜協会 元専務理事 秦 光廣

糖分取引制度の検討経過(1)
〔てん菜は砂糖を生産する作物〕
 てん菜の原料取引は、北海道に初めててん菜が導入され、明治13(1880)年に官営紋鼈製糖工場が操業を開始してから、明治29(1896)年に工場が閉鎖されるまでの僅かの期間は品質を加味した取引が行われていた。
 しかし、道内の製糖が帯広で再開された大正9(1920)年以降、ずっと重量のみによる取引が行われていたことから、農家の意識や栽培技術指導等も収量の向上に重点が置かれてきた。
 昭和40(1965)年代に入り、てん菜の作付面積は5万haを超え、ha当たり収量も年々向上したことから原料てん菜の生産量が飛躍的に増大する一方、砂糖の自由化が行われている中で国内の砂糖価格は低迷し、製糖各社は不況に陥っていた。このような状況から、関係者の間でてん菜産業の将来的な発展のためには、原料てん菜の効率的生産と安定的供給体制の確立により、てん菜糖のコスト低減を図ることが重要であるとの認識から、てん菜栽培農家と糖業者が相互協調のうえに立って「てん菜は農産加工作物で、根を生産することが目的ではなく、砂糖を生産するものである。」との共通認識を持ち、品質を加味した合理的な取引制度を確立することが重要であるとの論議がなされた。

〔糖分取引に向けて調査研究のスタート〕
 このような観点から、取引制度の改善合理化の方向を調査研究することを目的に、昭和44(1969)年、生産者団体、糖業者、北海道のほか、学識経験者を加えて「てん菜取引制度調査会」が発足した。調査会は、「てん菜の生産及び糖業の消長と取引制度の推移」「てん菜の品質或いは栽培技術と糖分に関する試験研究」「海外てん菜取引制度実態調査」などのほか、「原料甘しゃ・原料馬鈴しょ・生乳などの取引制度」についても調査し、最終的な考え方として、昭和48(1973)年2月に「てん菜取引の改善合理化に関する考え方」を取りまとめ報告している。
 この最終報告では、「てん菜の現状と課題」「てん菜糖業の現状と課題」「てん菜産業発展の政策面からの課題」について記述し、さらに、「特に、てん菜産業を発展させるためには、てん菜糖のコストダウンを図る必要があり、商品の流通は時代の変遷や近代化の対応の中で、当然、量より質に向っており、てん菜も諸外国はその大半が糖分を加味した取引となっていることから、わが国においても、生産拡大第一主義で品質を度外視してきた重量取引を改め、糖分制に移行する段階に立ち至ったことを痛感する。」と続けている。そのうえで、「てん菜産業がおかれている現状からみて、糖分取引制度の確立は正に喫緊の事項であり、関係機関は協調して調整機関の設置や推進方策を進めるべきである。また、国及び道は、糖分取引実施を中心として、てん菜産業の健全な発展のために必要とする施策を積極的に講ずるべきである。」と、糖分取引の確立は、喫緊の事項であるが、解決すべき問題も多いので早急に適切な対応をすべきとの結論をまとめている。
 このように、調査会は意欲的な調査報告を行っているが、糖分取引の実現までには、調査のスタートから17年もの期間を要している。
 しかし、昭和44年に1カ月半の行程で海外調査を実施したメンバーが、糖分取引の実現時に、道、生産者団体、糖業者のそれぞれ責任のある立場にあり、その推進に大きな役割を果たしたことからみても、調査会は、制度改革に向けて着実に種子を播いたといえる。

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砂糖のあれこれ

砂糖と健康に関する科学的検証(2)

精糖工業会

 前回は、FDA(米国食品・医薬品局)が1986年に発表した「砂糖類の健康面における評価」の概略についてご紹介しました。今回は、この報告の中の主な疾病についての検証についてみていきましょう。

虫 歯(Dental Caries)
 虫歯と糖類の関係は数10年前から認められているとした上で、その発生のメカニズムについての新しい知見がみられること、及び予防法が劇的に成功した、としています。文献の検討から明らかになったこととして
  • 虫歯の病因は口腔バクテリア、宿主要因(抵抗性、歯の表面の固さ)、食物要因(発酵性、炭水化物の滞留時間や歯垢酸度への影響)が、その3大要因である。
  • 多くの食品が虫歯発生の可能性に影響し、食品の糖類含有量と虫歯発生の可能性には単純な関係はないようである。
  • 米国の虫歯発生率は減少しており、これには予防法の発達が貢献している。
  • 糖類の消費と虫歯発生率の間には、定量的関係があると証明することはできない。
  • しかし、種々の集団についての半定量的研究は、現在の米国の糖類消費水準が、虫歯にかなり関与するという結論を支持していると挙げています。
(結 論)
*虫歯の要因は多因性で、口内細菌、宿主要因、食物要因がその3大要因である。
*虫歯発生率に対する糖類の影響は、定量化はできないものの、現在の平均的消費水準は、虫歯の発生に関与するという主張は支持できる。

糖尿病(Diabetes Mellitus)
 前回ご紹介したGRAS物質(一般的に安全と認められる物質)の検証に関連して、1976年にGRAS物質に関する特別委員会(SCOGS)は、「単純糖類(ショ糖、コーンシュガー、コーンシロップ及び転化糖)の消費が、通常のカロリー源となることの他に、糖尿病と関係があるという妥当な証拠はない」と結論しています。
 これを受け、FDAでは科学文献の検討により、主に以下のことを挙げています。
  • ある動物による研究では、高濃度の果糖やショ糖(重量ベースで54〜72%)は、肝臓のインシュリン代謝を阻害し、インシュリン抵抗性や高脂血症に寄与する等の悪影響があるという主張を支持している。
  • しかし、極めて高水準の糖類(重量ベースで54〜72%)と半精製食により、糖耐性が変わり、インシュリン感度が変わったという研究は、現在管理されている人間の糖尿病については当てはまらない。また、動物についての研究では投与量との関係は明らかにされておらず、慢性的な代謝の変化は測定されないことが多い。さらに、炭水化物以外の食事要因は管理されていない。
  • 人間に関する研究では、糖類の消費と糖尿病発病との因果関係を示す証拠はない。糖尿病患者に対する食事の血糖への影響は、糖尿病でない者のそれと一致する。
  • 糖尿病患者の食事において、果糖を増やすことの欠点や利点については、文献からでは査定できない。また、そのような消費パターンが悪影響を及ぼすという証拠はない。同時に特に良いという資料もない。
(結 論)
*糖類の消費は、通常のカロリー源ではあるが、糖尿病とは関係がないという1976年のGRAS物質に関する特別委員会(SCOGS)の結論を変更すべき証拠はない。
*血糖の調節は、糖尿病の合併症の発病に関係することから関心が高まっているが、食事の血糖特性は、食品の種類や調理加工法、食事パターン、他の食品成分の存在の有無、運動などにより変動する。
*現在の科学的証拠は、糖類消費パターンにおける現在の水準が、糖尿病の管理において相対的に有意な要因でないことを、大勢として支持している。

肥 満
 肥満については、一般的にはエネルギー収支の均衡不調により起こる過剰体脂肪の蓄積により生じるものであるとした上で、その要因は多因性であり、遺伝、神経体液、ホルモン、代謝及びライフスタイルなどがあるとしています。
 文献についての主な検証は以下の通りです。
  • 動物による研究では、飲料水のショ糖の含有が肥満に関係することが示されているが、これらの研究では総カロリー摂取量の調節はなされていない。
(結 論)
*入手できるデータによれば、糖類が肥満の原因として特別な役割を持たないという結論は支持できる。

異常行動(Hyperactibity)
 1976年の検討以降、いくつかの会議において行動に対する食品の影響が検討されているとした上で、一般の科学的関心の1つとして、「人間の行動に対する糖類の影響(特に子供の注意集中欠如症候群)」を挙げています。

(結 論
*現在、相対的に稀な低血糖症を例外として、糖類の消費が子供や成人の行動変化に影響を与えると言う証拠は実質的にはない。
*反応性低血糖症が大部分の人の行動や気分の変化の原因になるという意見は、実験的な証拠で支持されていない。

 その他、冠動脈病、高血圧、心臓病等と糖類消費の関係についても検証されていますが、これらについても糖類消費と結びつく証拠はない、と結論づけています。
 FDAでは、その後も定期的にレビューを行っていますが、これまで述べてきた結論は現在まで変わっていません。この検証は、客観的立場による科学的研究として、現在でも大きな意味を持っています。
 次回は、1997年のFAO/WHOによる検証についてご紹介します。

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