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お砂糖豆知識[2001年5月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2001年5月]
●てん菜のあれこれ   ●砂糖のあれこれ


てん菜のあれこれ

てん菜の特徴

(社)北海道てん菜協会

てん菜の誕生
 てん菜から砂糖が生産されるようになったのは、ドイツの化学者 Achard (図1) によるてん菜の栽培法と製糖法に関する研究の成果である。Achard はてん菜糖工場を設立し、1802年に世界最初のてん菜糖の生産を実用化した。この工場はその後焼失したが、彼がこの時原料として用いた飼料用ビートが、その後改良され砂糖用ビート、すなわちてん菜となり、今日に至っている。
 当時、ヨーロッパで広く栽培されていた飼料用ビートの中に砂糖が存在することを最初に科学的な手法で示唆したのはフランスの農学者 Serres であり、それを結晶として取り出し、サトウキビから生産される砂糖と全く同じであることを証明したのはドイツの化学者 Marggraf である。Achard は彼の弟子であり、師の研究を引き継ぎ、Marggraf の発見より約50年後にてん菜糖を作出した。
 Achard は、1799年にてん菜に関する長年の研究成果を1冊の本にまとめて公表した。この書物はてん菜に関する最初の技術書で、題名は「製糖を目的とした飼料用ビートの栽培法とその有利な製糖法の手引き」(図2) である。
図1 Franz Carl Achard
(1753-1821)
図2 Achardによる世界最初の
てん菜の技術書
Franz Carl Achard
(原図:フランスてん菜協会資料)
世界最初のてん菜の技術書
(資料:元東ドイツてん菜研究所の復刻版より)
 当時、家畜の飼料として栽培されていたビートは、葉を利用するもの、根を利用するものなどがあったが、Achard が注目したのは根を利用する「Runkelrube (大きな根)」と呼ばれていた飼料用ビートである。これはドイツで古くから栽培されていた野菜タイプではなく、オランダから渡ってきた根部が大きくなる種類で、外皮は赤色、あるいは白色、内部は白色、黄色、あるいは赤い筋があるなどきわめて多様な形質をしていた。
 Achard がこの書物の中で強調していることは、当時栽培されていた飼料用ビートが、すべて砂糖原料として使用できるのではなく、砂糖含量の多い、粘質物質等の不純物が少なく、ビート臭がしない抽出液が得られるように、いかに種子を選び、栽培法を工夫するかである。
 彼が理想とした砂糖原料としての根の形は、飼料用ビートの特徴である頸長の円筒形ではなく、頸部が少なく根部が大きく発達した、また根 (分岐根) のない逆円錐形である。個体の大きさも中庸で、揃っていることが理想であった。
 根が分岐するのは、フダンソウ属 (英:Beet 属) 植物の野生種に共通して見られる特徴で、てん菜の根が分岐しないのは品種改良の結果である。
 食用ビートは主として胚軸より発達した頸部が地上部で太るので、根部が分岐しても利用には支障がなく、苗を育て移植するのが一般的な方法であった。当時の飼料用ビートもこの性質が残っており、頸部が大きくなるのが一般的で、根部は多少分岐しても、また、根の大きさが不揃いであっても単収が多ければ問題はなかった。しかし、分岐の多いもの、頸部が発達した大きな個体は糖分含量が低く、不純物が多いので、砂糖原料としてはマイナスの要因であり、なるだけ発現しないように種子を選び、栽培法で工夫する必要があった。
 Achard は栽培上の注意点として、次の5点を強調している。
(1) 土壌の栄養分は控えめの方が糖分が富む。
(2) 播種した種子が真っすぐ育つように砕土、整地を良くする。
(3) 播種間隔を正確に保ち、欠株が生じないようにする。栄養の乏しいほ場では、播種間隔を狭め株立本数を増やす。
(4) 除草、中耕時に根の周りの土を移動させ、根部が露出することが無いように注意する。
(5) 生育期に葉を摘み取ったり、傷つけないようにする。
 これらは、今でもてん菜栽培の原則として広く普及している事柄である。
 種子 (品種) に関しては、Achard は飼料用ビートが変異に富んでいることを知り、砂糖原料として優れたものを選抜することの重要性を痛感し、15年間にわたり比較試験を行っている。その結果、次のような形質をしたものが最適と記載している。
(1) 根の形は逆円錐形
(2) 分岐が少ない
(3) 根の色は外皮が赤く、内部が白色
 根の色に関しては、この書物から10年後に出版された “ヨーロッパにおける飼料用ビートからの砂糖製造” の中でその後の選抜試験の結果を踏まえ、外皮も内部も白色のものが最適と記載されており、今日あるてん菜の原型が示されている。
 てん菜は Achard の長年にわたる品種選抜の努力によって、飼料用ビートから誕生したと言える。
 これらは “白いシレジャ種 (White Silesia)” と呼ばれ、すべてのてん菜品種の基本種となっている。




砂糖のあれこれ

最近の新しい甘味料について

精糖工業会

 「シュガーレス」や「無糖」といった製品が多く発表されて以来、いくつかの新しい甘味料が認可され、色々な食品に使用されています。そこで、今回はこれらの甘味料について整理してみましょう。

○キシリトール
 「虫歯の発生を抑える」として、話題になった甘味料です。世界的には米国・EU 諸国などで以前から認可され、FAO (国連食糧農業機関)/WHO (世界保健機関) でも、安全性の高いカテゴリーとして評価されていました。日本では、医薬品・化粧品への使用は早くから認められていましたが、平成9年4月17日に国内で厚生省 (当時) により、正式に食品添加物として認可されました。
 キシリトールは糖アルコールの一種で、プラムやイチゴ、カリフラワー等、植物界に広く分布しています。ただし、その量はごく微量で、通常商品として流通しているものは同じく白樺やトウモロコシの芯など、植物の中に含まれる多糖類であるキシラン・ヘミセルロースを酸で加水分解して得られるキシロースを水素添加して工業的に生産されているものです。出始めの頃、よく「白樺から抽出した甘味料」などという表現がされたことがありましたが、厳密にいえば「白樺から抽出した原料 (キシラン) からつくられた甘味料」ということになります。甘味度は砂糖の60%〜75%で、口中で清涼感があるのが特徴です。
 そして、最も大きな「売り」となっているのが、最初にも述べた虫歯になりにくい「非う蝕性」を持つということです。用途をみても、ガムでの利用が圧倒的に多く (食品利用の約8割)、その他でも練り歯磨きなどのデンタルケア商品での利用が目立ちます。
 しかし、キシリトールが「虫歯を防ぐ」という言い方はやや乱暴と思われます。非う蝕性とは、虫歯の原因となる細菌「ミュータンス菌」の活動を抑えるということであり、虫歯そのものを治療する薬ではありません。現在も虫歯との関係で様々な研究はなされているものの、歯磨きの励行など、日々の口腔衛生に心掛ける姿勢は今まで通り不可欠であることは言うまでもありません。また、カロリーは、3kcal/gで、砂糖 (4kcal/g) よりは若干低いものの、糖アルコールの中では比較的高くなっています。

○スクラロース
 スクラロースは砂糖 (ショ糖) を原料とした高甘味度甘味料で、平成11年7月30日に食品添加物として認可されました。砂糖の約600倍の甘味度を有しており、甘さの質も砂糖に極めて近く、嫌な後味も残らないと言われています。20年程前に英国の Tate&Lyle 社で開発されて以来、海外では既に31ヵ国で認可されており、FAO/WHOでも安全性が検証され、規格も設定されています。また、加熱によっても甘味の安定性が比較的高いことから、ノンカロリーの甘味料として、清涼飲料、キャンディやガムを中心にした菓子類、氷菓、ヨーグルト、水産練り製品や漬物など、用途を問わず幅広く使用されています。

○アセスルファムK
 アセスルファムK (アセスルファムカリウム) は、35年近く前にドイツのヘキスト社で開発されたノンカロリーの甘味料です。甘味度は砂糖の約200倍で、甘さの質も砂糖に近く、加工食品に使用した際の安定性も高いと言われています。海外では、既に100ヵ国以上 (EU、米国、カナダなど) で認可・使用されていましたが、日本では昨年 (平成12年) 4月25日に食品添加物として認可されました。
 アセスルファムKは単品で使用するより、他の甘味料と併用して使用することが多く、国内の使用例でも、アスパルテームやスクラロース等の高甘味度甘味料や、キシリトール、マルチトールなどの糖アルコールとの併用が多く見られます。用途としては、飲料を中心にガム、飴類、ジャム、佃煮、麺つゆなどに使用されています。
 昭和44年に人工甘味料のチクロ・ズルチンが使用禁止になって以降、甘味料といえば蜂蜜などごく一部を除けば砂糖がほぼ100%近くを占めていました。その後、異性化糖が出現し、現在では上述した以外でも、いわゆるオリゴ糖類や各種の糖アルコール類、アスパルテームなどの高甘味度甘味料、並びにステビア甘味料などの天然甘味料など、様々な甘味料が様々な特徴をもって市場に流通しています。使用する食品の特性や用途に応じた使い分けが可能になり、選択の幅が広がったことは間違いありません。ただ、これらの甘味料が目指す甘さの基本が「砂糖」であることは変わりありませんし、エネルギー源たる糖質としての砂糖の役割はこれまで述べてきたとおり大きいものがあります。特に家庭使用の場合は、厳密なカロリー制限等、何らかの保健効果を求めることがない場合は、経済性や調理の際の使いやすさ、おいしさ、満足感などを考えれば、まずは砂糖の使用を基本に考えるべきでしょう。



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