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お砂糖豆知識[2001年12月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[2001年12月]
●てん菜のあれこれ


てん菜のあれこれ

てん菜の病害 5

(社)北海道てん菜協会

根腐病
 根腐病は1887年にドイツではじめて報告され、その後、アメリカを始め世界各国で発生している根部の代表的な病害である。日本においても、1917年に発生したことが初記載され、1920年代には十勝、札幌でかなりの発生が記録されているように、葉を犯す褐斑病とともに古くからよく知られたてん菜の代表的な病害である。
 アメリカでは1800年の終わりから1900年の初頭にネブラスカ州等で激発し、その後ほとんどのてん菜栽培地帯で発生が認められている主要な病害である。そのため、古くから研究されており、総称してリゾクトニア根腐病 (Rhizoctonia root rot) あるいは根腐病 (Common root rot) と呼ばれている。その他にも褐色腐敗病 (Brown rot)、冠腐病 (Crown rot)、乾腐病 (Dry rot canker) 等の名称が用いられている。
 この様な呼び名は本病の特徴を良く示している。病斑の色は、黒根病が黒色であるに対して褐色または黒褐色である。発病の部位が黒根病では根部の先端より生じることが多いのに対して冠部より根部に進行することが多い。病斑の状態が黒根病では軟腐と呼ばれる様に湿っているに対して、根腐病は乾いている。また、黒根病の発生は圃場の湿潤が要因となるのに対して根腐病は乾燥した状態でも発生するなど、多くの点において前号で紹介した黒根病とは対照的な根部の病害である。
 北海道においては6月中旬頃から発病し、9月中旬には終息する。欠株となったものは直接収量減となるが、感染した個体はその後も生育が遅延し、糖分の減少、非糖分の増加等の影響を受ける。根表面が3割程度被害を受けると製糖原料として適さなくなるので、本病が激発すると根重、根中糖分共多大の被害を受ける。
 病原菌は土壌中で植物の残渣などを利用しで棲息している土壌菌の一種であるリゾクトニア菌 (Rhizoctonia solani) であるが、この菌はいろいろな点で複雑な性質を現わすことが多いので簡潔に紹介することが難しい。
 菌類の分類は胞子がどの様にできるかを基本にしているが、リゾクトニア菌は通常の培養では胞子を形成しないので、分類の基準からはずれた 「不完全菌類」 と呼ばれるグループに属している。このグループの分類は菌糸の形状などの機械的な基準によって行われているので本質的に性質が異なる菌が同じ種として扱われる危険性がある。
 元々、馬鈴薯の根を腐らせると言った意味でリゾクトニア菌と命名された菌であるが、その後の研究により230種もの植物を犯すことが報告されている。北海道の主要な作物である稲、牧草、野菜、てん菜、豆類、馬鈴薯、小麦等にも感染し、いろいろなタイプの病気を起こしている。
 北海道の畑作においても、てん菜の苗立枯病、葉腐病、根腐病、馬鈴薯の黒あざ病、ダイズの立枯病、豆類、馬鈴薯の葉腐病、野菜の苗立枯病等の病原菌として知られている。この様に多くの作物を犯すことから多犯性菌と呼ばれてきたが、中にはその後の研究により分類学上異なる種になったものも含まれている。
 てん菜の病害に限っても分離されてくるリゾクトニア菌には培養タイプの異なるものが数種類含まれ、圃場の土壌よりはもっと多くの種類が分離されてくる。
 本菌に関して、培養型、病原性、生理的な特性の違い等による類別が1960年頃より種々の方法で行われる様になり、それぞれの作物を犯すリゾクトニア菌に違いがあることが分かってきた。
 その結果、馬鈴薯の黒あざ病の病原菌であるリゾクトニア菌とてん菜の根腐病を起こすものとは別の菌群に属し、馬鈴薯の菌はてん菜を犯すことが無く、てん菜の菌は馬鈴薯を犯さないことが明らかとなった。
 また、同じてん菜においても苗立枯病には4つ以上のリゾクトニア菌の種類 (菌群) が関与しているが、根腐病はその内の1つの菌群によって生じ、他のものは関与していないこと、葉腐病は主として根腐病と同じ菌群により発生していることが明らかとなった。
 専門的になるが、今日一般的に普及している類別は 「菌糸融合による類別」 と呼ばれ、第1群から第6群に大別されている。てん菜については苗立枯病に関与するリゾクトニア菌は第1群、第2群2型、第4群、第5群等であり、根腐病、葉腐病は第2群2型である。馬鈴薯の黒あざ病は第3群、野菜の苗立枯病は主として第4群によって生じている。
 土壌中には多様な菌群のリゾクトニア菌が棲息しているが、てん菜が作付けされると根腐病を起こす菌群 (第2群2型) が増加し、他の菌群が減少する。つまりリゾクトニア菌の単純化がおき、てん菜の根腐病が発病しやすい環境となる。
 多くの作物を輪作することは、土壌中に多様なリゾクトニア菌の菌群をバランスよく存在させることであり、これにより特定の菌群が異常に増加し、病気を起こすことを抑制している。馬鈴薯にはリゾクトニア菌によって生じる黒あざ病があるが、上記した様に第3群に属し、てん菜には病原性が無い。実際の圃場でてん菜と馬鈴薯の交互作付けを長期間行い、土壌中の菌の種類や量、根腐病の発生を調査したところ、てん菜の連作を行った圃場からは第2群2型のみが分離される様になったのに対して、交互作の圃場で第3群を含め多様な菌群が分離され、第2群2型の分離数は少なかった。根腐病の発生割合も少なくなり、連作との差は大きかった。第2群2型はてん菜以外の作物の病害にはほとんど関与していないので、他の作物を作付けした場合にも同じ様な現象が起きているものと思われる。これまで北海道では麦類はリゾクトニア菌による病害が発生していないので、非宿主作物として根腐病を抑制するために作付けが奨励されてきたが、麦類に限らずてん菜以外の作物を多く作付けすることで発生を抑えることができる。  本菌は寄主が無くとも土壌中の植物残渣などを分解して棲息しており、寄主となる植物が植えられるとこれに感染して腐らせる。本菌は黒根病菌、そう根病の媒介菌が耐久性のある休眠胞子で存在しているのとは異なり、土壌中では通常菌糸の状態で存在している。この菌糸が根部、冠部、葉柄基部に達し直接表皮より侵入する。侵入の際に毒素を出し、組織を腐敗させ栄養を吸収しながら進行する。腐敗した部位には他の腐敗菌も増殖してくるので、その後はこれらが一体となって腐敗を拡大させる。
 感染はいずれの時期でも生じるが、苗立枯病が発生する幼苗期を除くと、根部の肥大率が最大となる6月から7月が最も罹りやすい時期である。8月下旬以降は気象的な要因もあるがてん菜の耐性も増し、ほとんど感染すること無く、感染しても小さな斑点にとどまっている。
 本菌は地表面のごく浅いところにいることが多く、また、冠部、葉柄基部は根部に比べ菌の侵入を受けやすいので、冠部に土が被さっている様な状況下では容易に発病する。
 本菌は比較的高い温度を好むので、初発はその年の地温の上昇程度によって左右されるが、6月中下旬〜7月中旬が多く、初発時期が早いほどその後の被害が大きくなる。
 最初は侵入したところにごく小さな黒褐色の斑点ができるが、その後急速に拡大する。斑点の拡大に伴い内部にも腐敗が進行するが、葉柄基部、冠部に比べると根部の場合は表面にとどまることが多い。また、地際部で根部に感染したときには病斑は縦よりも横に拡がり、その後の根部肥大に伴い、病斑が横に切った様に裂けることが多い。病斑が下部に進行するのに従い、縦方向にも割れ目が生じる。ひどい場合には根部全体が黒褐色となり多くの割れ目が生じている。多くの病斑では腐敗は浅く内部は健全であり、乾いている (写真3)。アメリカではこの様なタイプを乾腐病と呼んでいる。
 また冠腐病とも呼ばれている様に、実際に目立つ発病は葉柄基部、冠部から生じることが多く (写真2)、発病程度に応じて葉が外側より枯れ、ひどい場合にはすべての葉が無くなり、欠株となる。発病は畦の方向に沿って集団となって生じるので、圃場のあちこちに十数本から数十本のまとまった欠株部分がスポット状に発生する (写真1)。
写真1
写真1 圃場におけるスポット発生
写真2
写真2 葉柄基部、冠部の症状
写真3
写真3 根部の症状

 これらの発病場所には多数の菌核が生じる。菌核とは菌糸が絡みあって堅くなった、濃褐色をした不定形の0.5〜1.0mm程度の塊で、本菌はこれにより越冬する。
 根腐病の発病は土壌中の菌核数と関係しており、菌核が無い部分では発病せず、多いところでは発病率が高くなる。それも個体のごく近くにあることが必要で、菌核より伸びた菌糸が表皮に達して感染する。土壌中の菌核は黒根病菌の休眠胞子と比較すると耐久性はなく、他のカビや昆虫等の攻撃を受け死滅することがある。菌相が豊かな熟畑などでは根腐病の激発した跡地に連作すると発病が抑止されることがあり、拮抗菌の増加によると考えられている。  防除の基本は土壌中の菌核を増やさないことと、この菌核をなるだけてん菜個体の弱い部分に近づけないことである。
 菌核数を増加させないことは第2群2型を増加させずに他群を増やすことであり、これには適正な輪作を行い、病原菌群 (第2群2型) の単純化を防ぎ、リゾクトニア菌の多様化を図ることである。また、堆肥などを施し、土壌の微生物相を豊かにすることも大切である。
 昭和50年頃までは、てん菜でも除草を目的に中耕の際に株元に土を寄せることが行われていた。この方法は感染しやすい冠部や葉柄基部に病原菌を近づけることとなり、発病を助長する。逆に冠部や根部と接している土壌を発病直前に取ると発生が抑制されるので、葉柄基部、あるいは冠部に土が被さらない様に管理することが大切である。また、土壌中での菌糸の移動は少なく、畦に沿って発病が拡がるのは農作業等による土の移動に伴い病原菌が動くことが原因であり、発生の拡大を防ぐためにも発病畑では中耕等の農作業は慎重に行う必要がある。  土壌病害の薬剤防除は苗床、あるいは温室等の限られた場所では実用的な方法であるが、一般圃場ではコスト、処理方法、効果の点で難しい。しかし、本病害に関しては、初発部位が地際部であり、冠部あるいは葉柄基部から感染することが多いので、この部分に予防的に薬剤を散布することにより発病を阻止できることが分かり、通常の薬剤散布とは異なるが発病直前の株元散布が昭和50年に指導参考となった。その後この方法で効果の高い薬剤がいくつか登録され、使用されている。
 北海道において、根腐病の防除方法が本格的に研究されたのはてん菜短期輪作協議会の発足 (昭和45年) からである。昭和46年にはてん菜技術推進協会土壌病害専門部会となったが、根腐病やそう根病等の土壌病害に関する防除法の確立を課題に官学民が共同して調査、研究に当たってきた。
 昭和47年から5年間全道各地で約2,500筆の百万近くの個体を対象に発生実態調査を行い、発生状況の把握と耕種的な要因との関係等を明らかにした。この調査と平行して被害実態の解明、連輪作と発病との関係、抵抗性品種の検定、薬剤防除等の試験をおこなった。これらの調査、研究結果に基づき、総合的な防除体系を確立することができた。これらの成果は昭和52年度に指導参考となった。その後において、本病の発生がてん菜の作況に多大な悪影響を与えることは無くなり、てん菜の安定生産に役立っている。

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