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お砂糖豆知識[2004年8月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識
[2004年8月]

異性化糖について (2)

日本スターチ・糖化工業会
〜 異性化糖の原料と製造工程 〜

異性化糖の原料
 技術の進歩により、異性化糖・ぶどう糖・水あめの原料はでん粉であれば何でもよく、昔からの国内産の甘藷でん粉や馬鈴薯でん粉も多く利用されていて、現在、それらの振興のために、当工業会が一定量の引き取り義務がある制度下にあります。
 具体的には、国内産でん粉を1トン購入することにより、12トンのコーンスターチを製造する原料とうもろこし18トンを関税無税で輸入できます。(原料とうもろこしの「でん粉歩留り」は一般的に66%ですので、12÷0.66=約18トン)
トウモロコシの構成など
 原料としては他にタイのタピオカでん粉等もありますが、コーンスターチは「価格が安い、年間を通じて入手できる、貯蔵安定性が高い、コーン油やコーングルテンミール等の副産物の用途がある」等の理由で現在、主流はコーンスターチとなっています。原料とうもろこしは主にアメリカや南アフリカ及び中国から輸入していますが、最近はブラジルやアルゼンチンからも輸入しています。
 とうもろこしは、日本では家畜の飼料用やコーンスターチ用等として、世界で最も生産量の多い種類のデント種(馬歯種)が年間一千六百万トン程度輸入されています。
 ただし、(馬歯種)と表記されるものの、正しくは「とうもろこしが乾燥すると軟質澱粉部と呼ばれる部分が収縮して陥没して、凹みDentを生じる」ためであって、「馬の歯(Dent)のようだから」というのは、単なる連想(または誤訳)からきているようです。よく、神社のお祭などで丸かじりしたり、缶詰に入っているのはスイートコーン種で、デント種に比べるとでん粉が少なく、糖分が多くなっています。とうもろこしの色は黄色だけと思われがちですが、白色種もあり、主に南アフリカで栽培され、一般的にでん粉価が黄色種より高いためコーンスターチにも使用しています。しかし、南アフリカでの生産量が気候条件により豊凶が激しくて、安定輸入が困難です。白色種でん粉の使用先は、コーンスターチ用の他にクリーニングで使用する糊、食品の取り粉、穀粉用、医薬向けが少量あります。
ホワイトコーン(左) イエローコーン(右)

異性化糖の工場と製造工程
とうもろこしの輸入風景
異性化糖の工場
 原料の大半が外国産とうもろこしですので、現在では輸入に便利なように多くの製造企業が臨海部、特に古くから甘藷でん粉の生産地でもあった東海地方に立地しています。
 ここで、コーンスターチと異性化糖の簡単な製造工程をご覧いただきますが、実際の作業はほとんど自動化されており、工場内は多くのタンクとその間をパイプが繋がっているだけのきわめて殺風景で、そのためか地元の小学生の社会見学ではあまり人気がありません。
コーンスターチ製造工程 糖化工程
 異性化糖やぶどう糖は砂糖と異なり歴史も浅く、また工場で生産されますから、砂糖のように沖縄の「さとうきび畑」の映像から原料に遡っての具体的なイメージもありません。ましてや、その原料がでん粉であるとはほとんど知られていなくて、さらに果糖となると、ぶどう糖を原料にしているということはもっと知られていません。何しろ「果糖」ですから、一目見ればその意味がすぐに分かり、その原料は当然何かの「果物だろう」と思われるのが普通です。
 果糖は天然にある糖の中では最も甘くて、条件の違いにより比較が非常に難しいのですが、甘味度はショ糖(砂糖)の1.2〜1.8倍(『でん粉科学の事典』朝倉書房 2003年)といわれ、果物や蜂蜜の中に多く存在して、別名フルーツシュガーと呼ばれています。
 そして、人の体内で吸収されエネルギーになる過程でインシュリンを必要としないために、糖尿病に対してリスクが少ないといわれています。
 また、果糖はぶどう糖よりも速くエネルギーとして利用されますから、脂肪として組織に貯蔵される機会が少なく、肥満に対してもリスクが少ないともいわれています。
 ただし、最近は各種甘味料の過剰摂取を心配する声もありますので、何事もほどほどが良いようです。