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お砂糖豆知識[2006年6月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識
[2006年6月]

日本人と砂糖(2)

栄養学博士 落合 敏
〜日本の家庭における砂糖〜


 先日、和歌山県の串本から、みごとなきんかんがたくさん送られてきました。流水でサッと洗い、そのまま生でも食べましたが、まだたくさん残っていたので、わが家流“きんかんの砂糖煮”を作り、当分楽しむことにしました。
 流水で洗って、水切りしたきんかんを鍋に並べ、白ワインを振りかけ、砂糖を入れてひたひたの水を加え火にかけます。最初、強火で、一煮立ちした後、弱火にし、煮汁がアメ状になるまで煮込むと、きんかんは梅干のようになります。しかし、黄色の鮮やかな皮は色あせることなく、実にみごとに煮上がります。
 一粒口に入れると甘酸っぱい香りとさわやかな甘味が心の癒しになります。また、柔らかくなった皮の舌触り、のど越しが食欲をそそります。
 きんかんは砂糖煮にすることにより、抗酸化のビタミンA・Cを始め、皮に多く含まれている抗酸化成分クリプトキサンチンなどを、無駄なく、効果的に摂ることができます。
 きんかんの砂糖煮は、昔から民間療法で、風邪やせき止めなどに利用されてきた、理にかなった一品です。
 わが家では、このきんかんの砂糖煮を冷やし、煮汁を薄め、ワインや好みのアルコールなどをプラスし、きんかん1粒を加えたカクテルを、食前酒や湯上りなどに楽しみます。この自家製カクテルは一日の疲れを癒してくれます。
 砂糖煮に用いた砂糖は、純度が高く、癖の無いグラニュー糖を使いましたが、グラニュー糖よりも結晶の大きい白ざら糖を用いても結構です。
 さらに、砂糖の防腐性を利用して、果実や野菜などの長期貯蔵を目的とした“砂糖漬け”があります。
 砂糖漬けは、原料を適当に切り、軟らかく煮て、乾燥し、つぼに砂糖を振りかけながら並べいれ、軽く重しをして作ります。この場合に使用する砂糖はグラニュー糖より純度が高い白ざら糖が適しています。
 一方、梅酒のように、梅のエキスをじっくり抽出するには、ゆっくり溶ける氷砂糖を用いるとよいでしょう。
 調理における砂糖の濃度は、コーヒー、紅茶などの飲み物には8〜10%、汁粉や菓子類では20%、防腐効果は50%以上で期待できます。保存性を求めない普通の煮物では5%以下で十分です。ただし、煮豆や甘酢、甘味噌和えでは10%以上になります。この時は、少量の塩を入れると、対比効果により、甘味が強調されます。逆にカレーなどの料理に少量の砂糖を隠し味で加えると、他に味を引き立たせることもあります。
 また、50%以下の砂糖溶液では沸点は100度前後を保っていますが、それより濃度が高まると、急激に沸点が上がり、砂糖自体の濃度も上がり、溶液とはいえない粘度の高いもの(カラメル)になります。そしてこれを冷やすと、加熱していた時の温度と砂糖の濃度により、それぞれ性質の違った固い塊(アメ)になります。このように、砂糖は扱い方次第で奥深い味わい方ができるようになり、食生活に楽しみと潤いを与えてくれます。