[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > お砂糖豆知識 > お砂糖豆知識[2007年10月]

お砂糖豆知識[2007年10月]

印刷ページ

最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識
[2007年10月]

「甘み・砂糖・さとうきび」(13

さとうきびの生産技術あれこれ 〜栽培用機械あれこれ〜

独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構
九州沖縄農業研究センター 研究管理監 杉本明

はじめに

 前号では株出し栽培の重要性、多収実現の障害と安定多収の重要事項について述べた。株出し多収の重要事項の第一は、収穫後の速やかな肥培管理、株揃え、根切り排土、施肥、除草剤散布の実施、すなわち、適期管理の実施である。適期管理は株出しだけではなく、新植も含め多収実現の重要事項であるが、言うは易し行うは難し、実行は容易ではない。現在の生産現地における少収は、適切な労働の投入が困難なこと、すなわち実際の農業経営の中での適期管理がいかに難しいかを示している。その克服には、作業分散が可能な管理体系、あるいは省作業的な技術を開発することが必要である。その一つに品種による対応、そして、栽培用機械の開発と利用がある。機械作業の効率化には広い面積の圃場が求められることが多いが、海に向かう狭い傾斜地での栽培が日本のさとうきび生産の特徴である。狭い傾斜地での大面積圃場栽培は海浜への土砂流出が危惧されるため、複雑な管理を日本特有の小型機械によって実施するという困難な挑戦がなされた。この号では、重要作業に対応する機械作業の概要と、進展の目覚ましい機械開発の概要を紹介する。

1.さとうきび栽培における重要作業と機械による実施
 さとうきび栽培は植え付け前の圃場準備から始まる。種苗が圃場に植え付けられ、芽が出て生長を始めると、生育の段階に応じた肥培管理をされて、収穫に至る。収穫後再生する株を世話をして一年後に収穫する。それを数年にわたり繰り返すのがさとうきび栽培の基本である。実際の作業は以下の通りである。

種苗の準備:良い苗を十分に用意し、目標の茎数に合わせて必要数を植える。普通は2節苗を植えるが、多節苗を用いる場合もある。病原菌や害虫がいないこと、硬化していないこと、要するに健全であることが肝要である。苗の栽培自体は製糖原料用さとうきびと同じであり特別な機械はない。苗の調整には、収穫機械である、「全茎刈り取り機」+「ドラム脱葉機」、あるいは「ハーベスタ」が利用できる。苗圃を設置して健全な苗を確保することにより特に全茎式プランタの活用意義が高まる。
圃場準備:さとうきびはほぼ一年間在圃し、茎の長さが2〜3メートルに至る長大作物である。生育量確保には十分な根圏土壌容量が必要であるため、栽培は生育を支える土壌作りから始められる。圃場には排水性と保水性の双方が重要である。そのためには十分な深耕と砕土、畦溝の容量確保が必要であるため、大馬力の大型トラクタが活躍する。深耕・天地返し用にはプラウ、砕土にはロータリを用いる。堆肥散布には堆肥散布機が対応する。植え付けを一貫作業機で行う場合は圃場準備はここまでである。そうでない場合には作畦にリッジャを使う。
植え付け:畦内に基肥、堆肥、農薬が散布されて土壌と攪拌され、畦底に苗が置かれる。湿害の出やすい圃場では畦の斜面途中に棚を作って、棚の上に苗を置く場合もある。苗を置いたら薄く覆土して軽く槇圧する。暑い夏は少し厚めに、春は薄い覆土がよい。そして、除草剤を散布する。普通はこれで植え付けが終わるが、種子島では保温のためにマルチをする。現在は畦立、植え付け、施肥、農薬散布を1工程で行うプランタが開発されている。
中耕・培土:植え付けてから1、2か月後、母茎の仮茎長が30cm程度になる頃、根帯からの発根を促すと共に、雑草を排除して初期生育を促進することを目的に第1回の培土、追肥を行う。畦の底であった株に土を寄せて平らにするため、平均培土と呼ばれる。平均培土から2か月ほど後、盛んな分げつが収まり母茎の仮茎長が50〜70cm程度に届くと、収穫までの長年月にわたる養分吸収に必要な根圏土壌容量の確保と、余剰の分げつを押さえて有効分げつを確保することを目的に、最後の培土を行う。株元に土を高く盛るので高培土と呼ばれる。平均培土、高培土には小型の耕耘機も活躍する。勿論、乗用の中型、大型トラクタに装着した中耕ロータリも用いられる。
収穫:高培土終了後は、必要に応じて害虫防除等の作業を行い、収穫に至る。地際で刈り取り、梢頭部を切除し、枯葉を取り払って綺麗になった茎を圃場の要所に山積する。最近は地際で刈り取ってそのまま搬出し、工場内外に設置された脱葉装置で原料茎と分離する方法もとられている。手刈り+小型脱葉機、全茎式収穫機+脱葉機、さい断式収穫機(ハーベスタ)等多様な機械が対応する。
株出し管理:さとうきびの経営は「株出し」から始まると言われる。その成功には収穫後、新植時と同様に、深土破砕・施肥・農薬散布・除草剤散布を行うほか、収穫した茎の枯葉除去、根切り・排土、株揃え等、株出し特有の作業が必要である。収穫と並行してこれらの管理作業を実施するのは実際には至難の業である。その解決を目指し、株揃え・肥料・農薬・除草剤施用等を1工程で実施できる機械が開発されている。深土破砕には、土中50cm程度に弾丸暗渠を形成するサブソイラと、土壌を反転しつつ土中50cm程度までの深土を破砕する排土型心土破砕機(プラソイラ、ソイルリフタ)が開発されている。

2.作業に対応した機械の種類
 植え付け、中耕・培土、収穫、株出し管理の各工程に対応し、下記の機械が地域・農家の実状に応じて用いられる。
(1)圃場準備:
耕起;油圧式ショベル、プラウ、排土型心土破砕機(プラソイラ、ソイルリフタ)。
砕土;ロータリ。

(2)種苗準備:
採苗;全茎収穫機、さい断式収穫機(ハーベスタ)。
調苗;脱葉搬出機、さい断式収穫機(ハーベスタ)。

(3)植え付け:
畦立・基肥・植え付け・農薬散布;全茎式プランタ、ビレットプランタ、汎用管理機。
除草剤散布;ブームスプレヤ、動力噴霧機。

(4)培土(平均培土、高培土):
培土・施肥;中耕ロータリ、中型乗用トラクタ、ロータリ、クローラ耕耘機、汎用管理機。

(5)病害虫防除:ブームスプレヤ、動力噴霧機。

(6)一般管理:
灌水;バキュームカー、スプリンクラ等。

(7)収穫:全茎式刈倒歩行型収穫機(ドラム脱葉機、集中脱葉装置、搬出用トラクタ、収納袋)、全茎式刈倒乗用型収穫機(ドラム脱葉機、集中脱葉装置、搬出用トラクタ、収納袋)(集中脱葉装置)、全茎式刈り取り搬出型収穫機、ハーベスタ[さい断式小型粗選収穫機、さい断式小型収穫機、さい断式中型収穫機、さい断式大型収穫機(伴走車型)]。刈り倒し機も開発されている。人力刈り倒し+ベビー脱葉機による調製は種子島の人力収穫の主流の体型であり、きれいに調製された原料を出荷するにはきわめて便利である。

(8)株出し管理:
株揃え;株揃え機。
心土破砕;サブソイラ、プラソイラ、ソイルリフタ、汎用管理機。
根切り・中耕・培土;根切りプラウ、中耕ロータリ、汎用管理機、株揃え機。
株割り;センタースプリッタ。
基肥・農薬散布;根切りプラウ、中耕ロータリ、汎用管理機、株揃え機、センタースプリッタ。

3.主要機械の機種様々
 労力不足への対応、高収益化のための省力化から、植え付け機、収穫機を中心に機械開発が急速に進んだ。その結果、投下労働時間は大幅に削減された。収穫機(ハーベスタ)の開発は特に多様である。作業工程に沿って以下の機種が整備されている。

(1)植え付け機:

全茎式植付機SKPR902;機械重量555kg、畦幅調整120〜140cm、適応トラクタ45馬力以上、植え付け・施肥・農薬散布を1工程で実施する。
ビレットプランタGM110―100;適応トラクタ75馬力以上、苗搭載量750kg。植え付け・施肥・農薬散布を1工程で実施する。

(2)中耕・培土:当初は耕耘機による牽引が中心であったが、現在は乗用トラクタも多い。
中耕ロータリKMー202K、UR45等は45〜65馬力のトラクタに対応する。
小型トラクタMTZ200、Ke―18OMV、TM―170、GB―175等は17〜20馬力で中耕・培土・株出し管理に対応できる。

(3)収穫機
小型収穫機HC―30(文明農機);全重3,800kg、適正畦幅;110cm、新調価格(袋税込、2006年12月時点の沖縄本島での価格、以下同じ);11,077,500円、
小型収穫機MCH―15WE(松本機工);全重4050kg、適正畦幅;110cm、新調価格(袋税込);17,430,000円。
小型収穫機UT―70K(魚谷鉄工);全重4,500kg、適正畦幅;110cm、新調価格(袋税込);18,973,500円、
小型収穫機HC―50NC(文明農機);全重5,900kg、適正畦幅;110cm、新調価格(袋税込);20,002,500円、
小型収穫機UT―100K(魚谷鉄工);全重5,250kg、適正畦幅;120cm、新調価格(袋税込);22,869,000円、
小型収穫機MCH―30WE(松本機工);全重5,560kg、適正畦幅;120cm、新調価格(袋税込);23,677,500円、
小型収穫機TS―2001(Case IH Austoft);全重7,100kg、適正畦幅;120cm、新調価格(袋税込);28,560,000円、
小型収穫機UT―120KW(魚谷鉄工);全重7,650kg、適正畦幅;120cm、新調価格(袋税込);26,722,500円、
小・中型収穫機HC―130NC(文明農機);全重7,000kg、適正畦幅;140cm、新調価格(袋税込);28,560,000円、
中型収穫機UT―170A(魚谷鉄工);全重8,900kg、適正畦幅;140cm、新調価格(袋税込);37,747,500円、
中型収穫機UT―200K(魚谷鉄工);全重12,500kg、適正畦幅;140cm、新調価格(袋税込);41,055,000円、
中型収穫機TS―3500(Case IH Austoft);全重9,340kg、適正畦幅;140cm、新調価格(袋税込);35,017,500円、
大型収穫機TOFT―7000(Case IH Austoft);全重9,600kg、適正畦幅;150cm、新調価格(袋税込);45,360,000円、
大型収穫機CHW―2500(JohnDeere Thibodaux,Inc);全重11,340kg、適正畦幅;150cm、新調価格(袋税込);45,360,000円。

(4)株出し処理:株出し管理機MSP―1、YS35―1―K、LC―OAP等は15〜40馬力のトラクタと対応し、株揃え、施肥農薬散布等を1工程で処理しうる機械である。株出し時の心土破砕作業には3PY3K等のプラソイラ、SMP3等のソイルリフタ等がある。

4.特筆される機械開発
 日本型機械という面では小型ハーベスタ開発が良く知られる。台風等で激しく倒伏した茎を対象に、狭い圃場、冬季の、降雨日の多い劣悪な土壌条件下でも効率的に稼働し、かつ未利用部分の付着が少ない(世界的に見て最上級の)清浄茎への調製を目指し、さらに、土壌固化回避に必要な土壌踏圧軽減に向けて、多くの工夫が施され、高機能なハーベスタが開発されている。日本型機械開発のもう一つの好事例が株出し管理機である。南西諸島のさとうきび栽培は、夏季の台風・干ばつ、収穫機の低温等、気象条件が厳しいことから、世界の主要産地と比べて作業の種類が多いのが特徴である。さとうきびの生長適温に比べて収穫期の温度が低すぎるため、収穫後そのまま放置したのでは株が再生し難く株出し多収は望めない。そこで、株を覆った枯れ葉を除去し、土を株際まで排除(排土)して光を当てる。施肥、農薬散布も必要である。再生株を良い条件で管理し、大きく育てるためには圃場条件の維持が必要なため、畦間を深耕して圃場の透水性を高める。複数回の株出し継続に必要な萌芽茎の根圏土壌容量確保には茎の発生位置を深く保つことが必要であり、そのために、地際で刈られた株をもう一度地中数cmで切り戻す。種子島ではマルチ処理も必要である。これを適期に、すなわち、収穫作業と併行して行うことが求められる。その実行は実際には容易なことではない。労働事情の改善に向け、複数の作業を1工程で行う作業機が開発されたのが一連の株出し管理機である。

5.今後期待される機械の開発
 さとうきびと園芸作物、畜産との連携の実現は南西諸島における持続的農業成立の鍵である。さとうきびと畜産の連携は梢頭部の飼料化、バガスの敷き料としての利用、そして畜産系有機物の圃場還元によって強化される。かつては人力により実現されていたが、今は種子島を除いてはごく限られた地域で実施されているだけである。梢頭部はサイレージ調製によって嗜好性の高い飼料となることが明らかにされている。成分特性の概要も明らかにされ、乳牛用であるが給与マニュアルも作られている。未利用部分を畜産資源として回収し、ラップサイレージにまで仕上げる機械は有効である。集中脱葉装置等で分離された梢頭部を回収してサイレージ調製する体系と、ハーベスタ収穫の前に梢頭部を回収して細断・サイレージ調製と進む体系が考えられる。梢頭部回収機の開発は南大東島で実践されている。ハーベスタによる原料茎収穫の前処理工程として梢頭部切除・回収を行うとも言いうるが、基本的には未開発である。機械の性能だけの問題ではない。夏植えさとうきびのような長い茎が乱倒伏した圃場では、機械の性能が良くても梢頭部の分離・回収は困難であろう。もっと短く、梢頭部の位置が揃う必要がある。また、飼料としての位置づけを確保するためには安定供給、供給期間の長期化も必要であろう。

  さらに、島嶼部における農業の実践には、漁業を始め、島の全体的活動との調和、積極的な連携が必要である。その基礎は生態的な多様性の維持であり、小区画圃場におけるさとうきびを中心とする多様な作物栽培、そして圃場の内外における循環型農業の実践であろう。その意味から、機械には一層の小型化・軽量化と汎用性向上が求められよう。

おわりに

 さとうきびは熱帯作物、工芸作物、長大作物である。その栽培を、亜熱帯北部・温帯の海に向かう狭い傾斜地、高齢化の進んだ地域社会で行うわけであるが、その中で、環境保全的であること、省力的・安定的で高収益であること、軽労的であることを前提に持続的生産のための技術開発が行われてきた。狭い圃場で多種の作業を限られた期間内に実施するのが日本のさとうきび栽培の特徴である。そうした状況下、単位収量向上には苦戦をしているが、労働時間短縮には大きな進歩が見られる。そこには機械開発の貢献が大きい。南・北大東島の大型ハーベスタ導入に始まり、その後、種子島の小区画圃場に適応性の高い小型ハーベスタの開発と改良に繋がって、それが今、南西諸島全体に拡がろうとしている。今回はその一つとして、小型で、複数作業の一工程実施を特徴とする、日本型技術として世界に誇れる機械開発の概要を沖縄県農業研究センター赤地氏の情報に基づいて紹介した。次号では、持続的なさとうきび生産、南西諸島農業の持続的発展に向けた新しい技術について、その概要を紹介する。





このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.