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お砂糖豆知識[1999年7月]

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最終更新日:2010年3月6日

ALIC砂糖類情報
お砂糖豆知識

[1999年7月]
●てん菜のあれこれ
●砂糖のあれこれ



てん菜のあれこれ

北海道拓殖計画とビート(3)

(社)北海道てん菜協会 前専務理事 秦 光廣

[寒地安定作物の真価を発揮]
 昭和2年(1927年)に、20ヵ年にわたる第二期拓殖計画がスタートしました。農業は、土地改良、有畜奨励、糖業奨励が3本の柱で、土地改良によるビート作付け可能地の拡大、ビートトップとビートパルプ利用による有畜農業の推進、製糖副産物のライムケーキと家畜糞尿の土壌還元による栽培改善、これらが有機的に関連して発展する農業を期待していました。
 この時の糖業奨励計画によると、面積は35,500町歩(約35,300ha)、反収5千斤(10a約3トン)。産糖量は2億3千100万斤(約138,600トン)を目標としています。また、拓殖計画の予算総額10億円のうち、産業費が1割弱でしたが、糖業奨励費は約2千万円で産業費の4分の1を占めていました。第一期計画で糖業奨励費に包括されていた農機具や家畜の導入費はそれぞれ農事奨励費、畜産奨励費に組み替えられましたので、ビートに限られた肥料、収穫運搬、種子などの助成予算がいかに大きかったか想像に難くありません。
 道庁は、糖業奨励計画に沿った各種助成策や品種改良を精力的に進め、また、製糖両社も十勝地方を超えて、北海道製糖(株)(以下「北糖」)は北見に、明治製糖(株)(以下「明糖)」は道央部に、それぞれ普及のエリアを広げて、強力な原料確保対策を展開していました。こうした努力が実を結ぶ一方、他にも栽培拡大の追い風となったことがありました。
 1つは、昭和4年(1929年)10月ウォール街の株価大暴落で始まった世界大恐慌の嵐が、わが国農業にも吹き荒れたことです。翌5年(1930年)の農作物価格は軒並み5年前の半額以下(米49%、大豆45%、澱粉42%)に暴落しましたが、ビートだけは5年前の86%を維持し、低落率が少なかったことです。
 2つ目は、昭和6年(1931年)から10年(1935年)にかけて連続した冷災害に見舞われたことです。他の作物が3分作、5分作といった目に余る惨状の中で、ビートは被害が軽微なうえ、9年(1934年)などは逆に過去に例を見ない24.2トン/haという高収量を記録し、寒地畑作の安定作物としての真価を遺憾無く発揮したことです。

[工場の新設と戦争による停滞]
 面積増を背景に、道庁は開拓の後発地域に酪農と結び付いた寒地畑作を確立するという理念を掲げ、根釧(こんせん)と天北(てんぼく)の両原野に新工場を建設する方針を打ち出しました。一方、会社としては、北糖が網走管内の野付牛(のっきゅうし)周辺(現北見市)、明糖が空知管内の由仁・栗山方面に進出したいという考えがありましたが、結局、道の慫慂(しょうよう)に従って北糖は根釧原野の釧路国標茶村(しべちゃむら)(現標茶町磯分内(いそぶんない))に、 明糖は天北原野の天塩国(てしおのくに)士別町(現士別市)に、それぞれ新工場を建設し、11年(1936年)から操業に入りました。  *(注) 慫慂:そばから誘いかけ勧めること。
 当時、根室支庁在勤の大塩農林技師(後の道庁部長)の回顧録に拠りますと、「昭和10年の或日、突然本庁に呼び出され『明年から磯分内でビート工場が操業に入る。根室が有力な原料区域なので、1,600町の作付を奨励せよ』といわれた。根室は火山灰の痩地で開拓年次も浅い。160町の間違いでは』と聞き直し上司に一喝をくらった。やむなく博覧会で使った模型のビートを借りて帰ったが、支庁職員や町村農会の担当者に『なぜそんなものを引受けてきた』となじられ閉口した。農民を集めて説明会を開いた小学校では説明中に床を踏鳴して話を妨害する者もおり、脅したりすかしたりでなんとか作付して貰うことになったが、農家が見たこともない高級作物が新墾地に笹と一緒に生えるなど、初年目は握飯大のビートばかりだった。」とあり、苦労の様子がうかがえます。
 新たな開発の拠点としての期待を込めて数十台の農業用トラクターを導入し、ビート畑を無料で深耕する制度に加え、農家も耕土改良や輪作の必要性、施肥、防除等の耕種技術をビート栽培を通じて会得するなど、これでビート産業も一応定着の道を歩み始めたかに見えました。
 しかし、12年(1937年)の日華事変、16年(1941年)の太平洋戦争勃発により、農村労働力が微用され、肥料などの資材も窮迫すると、多労多肥作物のビートはその影響をもろに受け、面積、単収、産糖歩留りとも著しく低落しました。また、戦争の激化につれ、亜麻など軍需作物の作付け強要があったり、明糖清水工場に航空燃料ブタノール製造施設への転換命令が出されるなど、軍事優先の体制がビートの後退に拍車をかけ、北方農業確立の歩みは停滞を余儀なくされました。
 昭和19年(1944年)、道庁は、北糖と明糖に改組合理化による新機構設立方針を示し、両社は合併して「北海道興農工業株式会社」と名称を改めました。しかし、清水工場のブタノール転換も完成しない段階で敗戦を迎えてしまい、ビート産業は再び新たな転機を迎えることになりました。

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砂糖のあれこれ

新しい甘味料と砂糖(2)

精糖工業会

 「シュガーレス」、「ノンシュガー」、「シュガーフリー」、「無糖」、「低糖」、「微糖」…最近のお菓子や飲料はこのような表示が目立ちます。また、中にはズバリ「砂糖不使用」と表示しているものもあります。今回は、これらの表示がどのような基準に基づいてなされているのか、また注意すべき点はどこなのか、お話したいと思います。
○ 食品の栄養表示基準制度の概要
 「シュガーレス」等の表示については、栄養改善法上の「栄養表示基準制度」に規定されています。これは、販売する食品に栄養成分や熱量(カロリー)を表示する場合(カルシウム100mg、ビタミンCレモン100個分、減塩など)に適用されるものですが、特に、その表示内容が“高”、“低”などの「強調表示」を行うものである場合は、その基準値が定められています。
 この強調表示には、「欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えている栄養成分」を補給できる旨の表示と、「過剰摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えている栄養成分」を適切に摂取できる旨の表示の2つの方向性があり、前者の例としては「高カルシウム、ビタミンA含有」など、後者の例として「低脂肪」、そして「無糖」などがあるのです(現在の日本の砂糖摂取量が「過剰」である、とされているのは納得できませんが)。
 「適切に摂取できる旨の表示について遵守すべき基準値」の中のいわゆる「無糖」、「ノンシュガー」等の表示については、この中の「糖類」の含有量がかかわってきます。「無」、「ノン」、「ゼロ」等の表示をする場合は、糖類の含有量が100g(飲料の場合は100mg)当たり0.5g未満、「低」、「軽」、「ひかえめ」等の表示をする場合は、100g当たり5g以下(飲料の場合は100mg当たり2.5g以下)でなければなりません。
○ 「糖類」 の定義とその注意点
 ここで言う「糖類」の定義ですが、栄養表示基準制度上、糖類は単糖類と二糖類のことを指します。単糖類にはブドウ糖、果糖など、二糖類には砂糖(ショ糖)、麦芽糖、乳糖などがあります。つまり、砂糖の含有量が基準値をクリアしていたとしても、ブドウ糖や果糖の含有量が基準値を超えていれば、「シュガーレス」や「低糖」といった表示は使うことができないのです。
 これらの表示に一定の基準が設けられたことについては、混乱を避けるという点では良いことと言えるでしょう。しかし、ここで注意すべき点は、単糖類、二糖類であっても、いわゆる「糖アルコール」は適用除外となっている点です。単糖及び二糖の糖アルコールにはエリスリトール、ソルビトール、ラクチトールなどがありますが、これらは糖類の規定量を超えて使用しても「ノンシュガー」等の強調表示は可能です。
○ 「砂糖不使用」 の本当の意味
 「無糖」、「ノンシュガー」等と紛らわしい表示で「砂糖不使用」という表示があります。しかし、この言い方は、強調表示で対象となる単糖類、二糖類のうち、ただ砂糖のみを“不使用”ということを表現しているにすぎません。つまり、「砂糖不使用」とは、文字通り「砂糖を使っていない」というだけの意味ですから、ブドウ糖や果糖や、異性化糖など他の糖を使用していても問題にならないということになります。ですから、「シュガーレス」、「ノンシュガー」等の強調表示がなく、「砂糖不使用」という表示のみの製品を見つけたら、他の糖を使用している可能性がありますので、表示を確かめてみてください。
 しかし、実際に商品を買われる一般消費者のうち、この違いを認識している人がどの位いるでしょうか。その意味では「砂糖不使用」の表示は栄養表示基準制度上違法ではありませんが、消費者に誤解を与える不適切な表示といえます。また、同じように、「甘さ控えめ」という表示も、「味覚」を問題にしていることから、栄養表示基準制度の対象外となりますので注意が必要です。
○ まとめ
 食品が多様化し、我々消費者にとって選択の幅が広がったことは良いことですが、誤った選択をしないためにも正しい情報の提供と認識は不可欠ですし、健康にとって何よりも大切なのは「バランスの良い食生活」です。どんな食品でも、過剰に摂取すればカロリーオーバーになりますから、「○○を食べたら太る、太らない」という考え方は短絡的過ぎます。
 また、一方で、人間が生きるため、つまり活動するためにはエネルギー(カロリー)は絶対に必要なものですから、「低カロリー=ヘルシー」という考え方も偏ったもののように思われます。カロリーの収支バランスを考えて、「食べ過ぎたら運動する」、「規則正しく、偏食せずに食べる」といった、基本姿勢ができているかを今一度振り返ってみることが必要でしょう。

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