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EUにおける砂糖制度改革下の域内砂糖需給の変化と改革への対応について(1)

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/国内情報

機構から

[2008年3月]

調査情報部長 加藤 信夫
国際情報審査役補佐 平石 康久

1.砂糖制度改革の概要
2.目標とする適正な砂糖需給バランス
3.EU委員会による生産割当量の削減のための措置と進捗状況
4.生産割当量の削減が進まない原因
5 最近の削減状況



 世界の砂糖需給に大きな影響を与えたEUの砂糖制度改革が2006年7月から始まって、2年近くが経過した。改革直後にEUは砂糖の純輸入国となり輸出は大きく減少したが、一方で域内生産数量削減の遅れと過剰問題、ACP諸国とのEPA交渉の進展、バイオ燃料政策の進展などの様々な状況の変化が生じている。
このような中、EU委員会は改革を円滑に進行させるための追加政策(特に砂糖の国内生産量の削減)を打ち出し、他方、砂糖産業は、輸入糖の増加が見込まれる中、生産量の大幅な削減を迫られつつも、生き残りをかけて様々な対応を行ってきている。
本稿では、これらのEU砂糖事情について平成19年12月に現地調査を行ったので、その結果を報告する。

(注:この報告の中では特段、断らない限り、生産量などの数値はすべて白糖ベースである。)

1.砂糖制度改革の概要
 〜余剰砂糖輸出が困難となり、いかに砂糖生産を削減し需給調整を図るか〜

 EUの砂糖制度は、域内での砂糖価格の削減、予定されているEBAスキーム(注1)によるLDCやACP諸国(注2)からの砂糖輸入自由化、改革の進むEUの共通農業政策(CAP)との適合させる必要性に加え、補助を受けた砂糖輸出(C糖やACP諸国からの砂糖の再輸出)について、WTOパネルで違反判決を受けたことから、2006年7月〜2014年9月末までの期間内に制度改革を行い、域内の砂糖産業の再編を進めている。
 その主な改革の内容は次のとおりである。

(1) 介入価格制度の廃止
  改革前は、市場価格が介入価格を下回った際には各国の介入機関による買い上げが認められており、後に説明される生産割当数量などの供給量のコントロール(後述)と併せて、砂糖価格が介入価格を下回らないよう運用されていた。
 しかし砂糖改革により行政価格である「介入価格」は「参考価格」と性格を変え、介入措置が廃止されるとともに、参考価格が大幅に下げられることとなった。一方で介入措置に代わり、過剰時の市場隔離措置や民間在庫措置が導入された。市場隔離措置は供給量の過剰が見込まれる際、ビート収穫終了時に製糖工場の負担により、市場から一定期間砂糖を隔離するものである。さらに、それにもかかわらず市場価格が参考価格を割り込むような事態には、EU委員会の判断により、委員会が費用を負担する形で民間在庫措置が発動される。
 直接的な買い支えを行う介入措置がなくなったことにより、理論上、市場価格が参考価格を割り込む価格に市場価格が低落する可能性が出てきたことになる。特に輸入粗糖価格についても参考価格への移行に伴い、価格の下支えが2012年度までとされたことから、価格の動向が注目される。

図1 介入制度の変更について

(2) 生産割当制度の変更(C糖の廃止と割当数量の削減)
  改革前は、国内消費向けに仕向けられるA糖、輸出補助金を受けて世界市場に輸出されるB糖、生産割当の超過分で補助金の対象外であるが、域外に輸出されなければならないC糖と区分して管理していた。しかし、C糖輸出などがWTO協定違反の判決を受けたことから、C糖を廃止し、生産割当もA糖とB糖を統合して1本とした。
 EU委員会は、増加が見込まれる砂糖輸入による供給過剰を防ぎ、同じくWTO協定違反とされた再輸出を防ぐ必要に迫られたことから、域内のビート糖生産割当の削減を進めている。
 生産割当の削減は、てん菜(ビート)糖企業による自主的な割当の返還と、返還に対する補償(財源は生産割当を保持するてん菜糖企業からの賦課金)により行われているが、2009年度終了時に削減数量が不足している場合には、委員会による補償なしの強制的削減が行われることになる。このときの削減方式は一律削減(Liner cut)となっているが、強制削減が行われるまでの自発的な削減実績を考慮して行われるとされている。

図2 生産割当制度の変更について

(3) 砂糖貿易制度の変更 (輸出減と輸入増)
  従来、C糖は年間約200万トン、ACP諸国から輸入される粗糖の一部(上限約160万トン)についても、域内市場に回されず、補助金を受け世界市場に再輸出されていた。しかし、これらの輸出はWTO協定違反とされたため、2006年後半より廃止された(2006年5月22日より後の輸出ライセンス発行を停止)。
 なお、EUの砂糖制度改革の範疇ではないが、EBAによるLDC諸国からの砂糖輸入の完全自由化(2009年10月〜)、ACP諸国とのEPA(経済連携協定)の締結による砂糖輸入の完全自由化(2015年10月〜)が行われることとなった(詳細は後述)。この近い将来の砂糖輸入の拡大による過剰問題についても、対応する必要に迫られている。

  注:図3のACP諸国等にはACP諸国の他、バルカン諸国やMFN対象国を含む。これらの輸入量については数字を予測することは難しく、推定に基づいた暫定的な数字であることに注意願いたい。

図3 砂糖貿易制度の変更
資料:各種資料から機構作成

表1 EU委員会が目指す改革後の砂糖需給  (EU25カ国ベース)
単位:100万トン(白糖ベース)
資料:EU委員会資料より作成

2.目標とする適正な砂糖需給バランス〜生産割当の削減がカギ〜

 下表は改革前と後の砂糖の需給バランスの表である。すなわち、改革前の砂糖生産量は約1900〜2000万トン、輸入は200万トン、輸出は500〜600万トン、消費量は1600万程度である。
  改革前の輸入量の内訳はコトヌ条約に基づく特恵的なACP諸国からの輸入が130万トン、LDC諸国からの輸入が10万トン程度、バルカン諸国からの輸入が38万トン、MFN糖(あるいはCXL糖)とよばれる砂糖について、キューバ、ブラジル、豪州などから11万トン、SPS糖とよばれるACP諸国からの補足的な砂糖の輸入量が10〜20万トンあった。
 一方で輸出量はC糖輸出が200〜250万トン、B糖及びACP諸国などから砂糖の再輸出量があわせて260万トン程度あったと見られる。
 この需給バランスを改革を通じて、輸出は改革後に100万トン未満に減少させ、最終的には0に近づけるとともに、域内生産については改革後にC糖を含め、約700万トン(生産割当数量は600万トン)削減することを目指している。

3.EU委員会による生産割当量の削減のための措置と進捗状況〜思うように進まない生産割当の削減〜

(1) 再構築スキーム
  EU委員会は、生産割当量を削減するため、生産割当を所有するてん菜糖企業から賦課金を徴収し、それを財源として、生産割当を放棄することを希望する企業に対して補償を行うことによって生産割当数量の削減を進めている。これは再構築スキームとよばれており、製糖活動からの撤退に利用される。
 更に、生産割当が大幅に削減される地域には援助が上乗せされることになっている。この上乗せ部分は、多様化援助(regional diversification)と呼ばれ、製糖活動に依存していた地域の経済活動を他の活動に転換するために広く使われる。この財源についてはEU委員会の予算から支出されている。

(2) 進まない生産割当削減
  EU委員会は改革により、再構築スキームが終了する2009年度末の生産割当数量を600万トン削減することを目標にしている。
 当初EU委員会は、砂糖の生産効率が低い国(スペイン、イタリア、フィンランド、ポーランド、スロバキアなど)での生産放棄を促し、生産効率の高い国(イギリス、フランス、ドイツなど)に生産を集中させる考えであった。ところが削減は予定通りに進まず、改革が始まって2007年度末までの2年間で削減された生産割当数量は220万トン足らずに過ぎず、残り380万トンが再構築スキームの実施期間終了時までに削減できなければ、競争力の程度に関わらず削減が強制的に課せられる恐れがでてきた。
 このような事態となれば、国際競争力のある砂糖産業を残すという委員会の意図と外れた結果となりかねず、また、てん菜糖企業にとっても補償なしの強制的な削減は極めて厳しいものとなる。

4.生産割当量の削減が進まない原因

 削減が進まない理由として、関係者からの聞き取りによると下記のような要因が挙げられた。
 
(1) 再構築資金の工場と生産者の取り分が不明瞭であったこと
  再構築資金のビート生産者の取り分を「最低1割とする」と曖昧に定め、製糖工場とビート生産者の間で再構築資金の取り分に交渉の余地を残したことから、配分でもめることになった。例えば製糖工場を閉鎖したアイルランドではビート生産者の交渉力が勝り、33%の取り分を確保したとされる。
  このため、工場経営者は配分額が減少する懸念が増幅し、割当量の削減に慎重になった。

(2) 新規加盟国による抵抗
  2005年に新規にEUに加盟した国(ハンガリー、ポーランドなど)は、砂糖産業を壊滅させるためにEU加盟したのではないと主張し、自国の砂糖業界に安易に割当を放棄させないようにしている。

(3) C糖生産国に対する生産枠の買い増し承認
  C糖を生産していた加盟国に対して、域内全体で110万トンまでの生産割当の買い増しを認めたため、一部の効率的な加盟国内の企業が生産割当を買い増し、削減分が帳消しになった。

(4) 製糖・精製糖企業間の市場シェア争い
  他企業が生産割当の削減を行ってくれれば、生産割当を温存した企業が砂糖市場のシェアを増加させることになるため、削減を渋っている。

(5) ビートパルプの高騰
  これは直接の原因として挙げられなかったが、製糖企業への聞き取りによれば、飼料価格の高騰による、ビートパルプの収益が製糖企業全体の収益のかなりの割合を占めるようになっている。これにより砂糖価格の低迷をカバーすることが可能となり、砂糖生産の継続につながっている可能性がある。

(6) 砂糖の生産性の向上
  砂糖生産の生産性について、傾向としては年に2〜2.5%程度の上昇(内訳:農家段階で1.5%、工場段階で0.5〜1.0%の上昇)があるといわれる。このため、価格削減の影響が薄まってしまった。

5 最近の削減状況 〜関係者による懸命の取組み〜

(1) EU委員会による追加的な措置
  このため、削減が進まない現状に対してEU委員会は、一時的な生産割当の削減措置により対応した。すなわち、生産割当量の一定の割合を1年間に限り生産を停止する措置である。
 過剰在庫水準を考慮して、2006年度に250万トン、2007年度には200万トンの生産割当の一時削減が行われている。企業にとっては生産割当を保持していても、生産が行えない上、課徴金を徴収されることから、生産割当の削減に対する強い働きかけとなる。2008年度の生産割当数量の一時削減についても、情勢によって行われる可能性がある。
 さらに、2007年9月26日付IP/07/1401で発表されたとおり、EU委員会は砂糖制度改革の補足的な改定を行った。この結果、ビート生産者の再構築資金の配分の割合10%に固定する一方、ビート生産者などの取り分として、新たに追加的な補償(237.5ユーロ/トン)がEU財政より支出されることとなった。また、一定割合(工場が所有している生産割当数量の10%)を限度として、ビート生産者が工場を通さず、直接生産割当数量の削減を申請できることを認めた。
 
(2) 砂糖業界による取組み
 生産効率が高い国にとっては、ライバル他社が生産をあきらめてくれれば、市場シェア獲得につながり、自分たちの商売上望ましい一方、産業全体で生産割当数量の削減が進まなければ、補償なしで強制的に生産割当が削減されてしまうジレンマをかかえている。
 一方、削減が行われると想定されていた非効率的な国にとっても、地域社会上重要な産業を失いたくない思いが強く、新規加盟国の中にもEUに加盟した途端に砂糖産業を壊滅させられてはたまらないと考える国もあり、削減に対して消極的な加盟国も存在している。
 しかしながら、このままでは「共倒れ」となるため、EUの削減目標の達成のための業界としての話し合いなどの努力は行われており、その結果として2008年1月の大幅な生産割当数量の削減の申請につながったと見られる。
 ただし、非効率的と見なされる製糖企業に一方的に削減を迫ることは政治的にも難しく、今後もそういった企業はある程度は存続するものと見られており、EU委員会が当初想定していた効率的な企業によって域内砂糖生産が担われるといった改革後の理想型は実現される見込みは薄い。
 
 これらの追加措置や業界関係者の取組みもあり、2008年度の生産割当数量の削減(2008年1月末申込期限)は、200万トンを超える数量となった(表2)。EU委員会は、3月末に締め切られる最終期日までに更なる自主的な生産割当数量の大規模な削減が進むことを期待している。

(3) 今後の需給バランスについて(統計)
  なお、経年的な需給バランスについて、見通しを示した統計表を2007年7月にEU委員会が発表している。これによるとバイオ燃料用てん菜の生産を含む域内生産量(EU27カ国ベース)は2005年度の2000万トンから1500万トンに(うち砂糖生産は2000万トンから1300万トン台に)減少する一方、バイオ燃料用の需要を含む消費量が1700万トンから2000万トン以上(うち砂糖生産は1700万トンから1800万トン)へ増加すると予測されている。
 ただしこの統計表を詳しく見ると、バイオ燃料需要や新規加盟国の消費量の伸びを強めに見た数字である一方、改革期間中の砂糖在庫量が高い水準で推移している。このことから、高い在庫水準が持続しつつ、輸入量や消費量が多めに推移すると見積もった数字であると見ることができる。逆に言えば、輸入量などがこの水準で推移する一方、消費量の伸びが予想より少ない場合、引き続き過剰問題に苦しめられる可能性を示唆する数字であるとも言える。

表2 生産割当数量の削減状況(2008年1月末現在)
資料 :NAPIER BROWN “Sugar Bulletin” February 2007, USDA GAINレポート “EU-25 Sugar Semi-Annual 2006”, Agra Europe2008年2月1日号記事他より機構作成
:フランスやポルトガルには海外県や島嶼部の生産割当数量を含む
:2006年度生産割当数量には追加購入に増加した部分が反映されているが、一部フランス、ギリシャの異性化糖で不明な数量があるため、数字に齟齬が生じている。
:2008年度削減数量は、2008年1月締め切り分まで。3月末申し込み分が追加される見込み。
:2008年度のオランダの削減数量は見込み数量

表3 EU委員会による砂糖の需給予測
単位:百万トン
資料 EU委員会“Prospects for Agricultural Markets and Income in the European Union, 2007 - 2014”2007年7月
:2006年は通常の12 ヶ月ベースの数値。実際は2006砂糖年度は15 ヶ月になったことから公式の数字と違う数字となっている。
:EU10は2004年1月に加盟した10カ国、EU2はブルガリアとルーマニア

(注1)49カ国の後発開発途上国(LDC)で生産される武器以外の全産品(Everything but Arms)に無関税、割当制限なしで市場参入を認める新しい措置。
(注2)EUの旧植民地であるアフリカ・カリブ・太平洋諸国

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