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ブラジルの砂糖産業について

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2000年1月]
 世界第1位の砂糖生産量を誇るブラジルは、輸出量においても他の国を圧倒し第1位となっている。そのため、ブラジルのアルコール及び砂糖政策いかんによって、世界の砂糖需給・相場は大きな影響を受けることから、その動向が注目される。こうした、ブラジルの砂糖産業について、英国の調査会社LMC International Ltd.からの報告をもとに企画情報部で取りまとめたので報告する。
 なお、この報告は1999年4月に報告されたものを使用しているため、巻末資料編に掲載されている最新データを参照されたい。

企画情報部


【砂糖産業に関する全般的な情報】
 ●国内需給バランス   ●在庫量の変化
 ●さとうきび生産に関する実績   ●生産量及び消費量
 ●異性化糖の位置付け
【砂糖制度の主要な特徴】
 ●生産規制   ●国内の価格支持   ●粗糖
 ●クリスタルシュガー   ●精製糖―非結晶糖とグラニュー糖
 ●販売方法   ●農家と圧搾業者の関係   ●砂糖政策の機関
【砂糖産業の現状】
 ●圧搾工場と精製産業の構造   ●砂糖の精製
 ●砂糖の流通   ●砂糖産業の現在の問題点


【砂糖産業に関する全般的な情報】

 ブラジルは、政府が国家アルコール計画(Proalcool Programme)を実施しているため、さとうきびを砂糖とアルコールに直接利用する世界で唯一の国となっている。糖みつからアルコールを生産している国は多いが、圧搾業者がさとうきびから直接アルコールを生産しているのはブラジルのみである。さとうきびの50〜60%は燃料用エタノールに、40〜50%が砂糖の生産に供されている。そのため、砂糖の生産量は、砂糖及びアルコール価格の影響を大きく受けることとなる。
 アルコール優遇政策は、1970年代半ばの石油危機以来、ガソリンの代用として(さとうきびから生産される)燃料アルコールの利用を促進するため、1975年に創設された。この政策は、さとうきび産業の規模、構造及びコストに大きな影響を与えた。ブラジルのさとうきび収穫量は、当時の約7,500万トンから現在の約3億トンまで増加し、そのほとんどは中・南部地域で起きている。この地域の97/98年度の生産量は約2億5千万トンである。

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国内需給バランス

 グラフ1は、過去35年間のブラジルの砂糖生産量、消費量及び輸出量の動向を示している。生産量は、1960年代から1970年代にかけて徐々に増加し、1980年代には安定し、98/99年度には約1,800万トンに増加した。輸出量は、おおむね生産量に比例して推移しており、1990年代に急増し、1980年代後半の約200万トンから98/99年度には約840万トンとなった。
 各年の砂糖生産量は、さとうきびの収穫量とアルコール生産に利用されるさとうきびの割合に左右される。97/98年度には、3億トンのさとうきび収穫量に対して1億3,200万トン(44%)が砂糖生産に、残りがアルコール生産に使用された。98/99年度においては、さとうきび収穫量は3億1,000万トンに達し、砂糖の割合は1970年代初頭以来初めて50%強に増加することが予測されている。
 表1は、94/95〜98/99年度のブラジルの砂糖生産量、消費量及び貿易量を示している。98/99年度は、前年度からのアルコール繰越在庫が増加したこと、アルコール価格が急激に値下がりしたことによって、砂糖生産量が急激に増加している。

グラフ1:ブラジルの砂糖生産量、消費量及び輸出量
砂糖の生産量と消費量
表1:砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算)
砂糖の需給バランス

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在庫量の変化

 さとうきびは、北部のマラニャン州とセアラ州から南部のパラナ州まで、ブラジルの24州のうち20州で生産されており、大きく2つの地域(中・南部地域と北・北東部地域)に分けられる。
 中・南部地域最大のさとうきび生産州はサンパウロ州であり、97/98年度には1億8千万トン(この地域の総収穫量の約72.8%)のさとうきびを収穫した。
 北・北東部地域では、アラゴアス州とペルナンブコ州付近に集中しており、この地域の総さとうきび収穫量の約76.9%を占めている。ペルナンブコ州のさとうきび収穫量は、98/99年度には3分の1近く減少し、さとうきびの品質の低下もあったことから、州の砂糖生産量は前年度に比較し39%減少するものと予想される。
 これらの地域間格差は、単に地理的な要因からだけではない。さとうきび産業が最初に導入された北・北東部地域の栽培条件は、中・南部地域より悪いため単収が低くコストもかかる。さらに、北・北東部地域にはブラジルにおいて最も貧困な州が含まれていることに加え、アラゴアス州とペルナンブコ州という経済面でさとうきびが重要な役割を果たす州があるため、政府は従来この地域の高い生産コストを補償することを目的とした地域経済社会政策を実施してきた。にもかかわらず、この地域の生産者の多くは経営難に直面している。  砂糖の消費量は、近年年間平均3.6%ずつ増加しているが、砂糖の生産量はその約3倍の成長率で増加している。このことから、97/98年度の輸出量は700万トン(粗糖換算)まで増加し、98/99年度はさらに増加して840万トンに達するものと予測されている。輸出増は主に粗糖であり、94/95年度の100万トン強から98/99年度には500万トン強まで増加している。一方、白糖の輸出量は280万〜340万トンにとどまっている。輸出粗糖には、バルクで積み出されているクリスタルシュガー(cristal sugar、低品質の白糖)が含まれる。この砂糖は、輸入国において精製する必要があるため、粗糖として分類されている。
 アルコール需要は、過去10年間は115億〜135億リットルと非常に安定していたが、この間にアルコール市場には大きな構造変化があった。ブラジルは、2種類の燃料アルコールを生産している。(1)アルコール100%で動く自動車に使用される含水エタノール及び(2)24:76の比率でガソリンに混合される無水エタノールである。全てのガソリン車は、この混合燃料を使用しなければならない。1980年代は新車の圧倒的多数はアルコール車であった。しかし、1990年以降、消費者はガソリン車を歓迎していることから、含水エタノールの需要は低下している。燃料アルコールの需要を高めるために、政府は最近、2つの都市で試験的にディーゼル車への無水エタノールの混合(3%)を許可している。この試験が成功すれば、混合燃料は主な大都市に拡大されるものと思われる。

図1:ブラジルにおける主なさとうきび生産地域

主なさとうきび生産地域
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さとうきび生産に関する実績

 表2は、中・南部地域と北・北東部地域のさとうきび砂糖産業に関する農業データを示している。ブラジルの農業生産総額がかなり大きいため、さとうきび生産総額の占める割合は3〜4%にすぎない。
 中・南部地域においては、収穫面積、単収の増加とともに、さとうきび収穫量及び砂糖生産量も増加している。北・北東部地域においては、収穫面積と単収の成長はほとんどないと言ってよい。
 中・南部地域と北・北東部地域は、生産性において大きく異なっている。単収とショ糖含有率は、中・南部地域でははるかに高い数字になっているが、同地域においても単収には大きな格差があり、中・南部地域最大の砂糖生産州であるサンパウロ州の栽培条件は世界でも最も優れている。つまり、(灌漑の必要がなく)単収が高く、1当たり80トンに達している地方もある。北・北東部地域の単収は、中・南部地域の約60%である。さらに、中・南部地域は過去20年間で単収が向上しているが、北・北東部地域では1980年代後半から工場または農家経営の困難から下降傾向にある。
 両地域のショ糖含有率の格差は、単収の格差ほど大きくはない。中・南部地域の平均ショ糖含有率は、約14.5%と極めて高い。
 北・北東部地域の収穫作業が100%手刈り(100%バーントケーン)であるのに対して、中・南部地域では約60%を占めるにすぎない(その大半がバーントケーン)。気温が中・南部地域より高く、農地条件がはるかに悪い北・北東部地域では、収穫作業性ははるかに低い。
 中・南部地域におけるバーントケーンの収穫作業能率が1日当たり9〜10トンであるのに対して、グリーンケーンは平均3〜4トンである。このため、グリーンケーンは、一般に環境的な理由からバーントケーンが禁じられている地域(中・南部地域の都市部から1km以内の区域)に限られている。北・北東部地域では、100%バーントケーンであるが、収穫作業能率は、1日当たりわずかに4〜5トンである。
 中・南部地域は、2つの主な理由から北・北東部地域よりはるかに機械化が進んでいる。第1に、中・南部地域では労働コストが高いこと、第2に特にペルナンブコ州など北・北東部地域の農地は機械化するには丘陵が多すぎるためである。
(注)バーントケーンは、作業能率を向上させるため、さとうきびの葉を焼いたもので、グリーンケーンは葉のついたまま収穫されるさとうきびである。

表2:生産量等の実績
生産量等の実績

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生産量及び消費量

 ブラジル砂糖産業の特徴は、圧搾業者が生産する砂糖の種類が多様であることである。いわゆる粗糖としてのデメララシュガー、クリスタルシュガー(粗糖としてバルクで輸出されるものと、袋詰で白糖として販売されるものがある)及び2種類の精製糖(精製グラニュー糖と精製された非結晶糖)がある。
 94/95〜97/98年度における精製糖の生産量は平均約100万トン(粗糖換算)、粗糖の生産量は平均200万トン、クリスタルシュガー(粗糖としてカウントされる輸出用を含む)の生産量は1,003万トンから1,323万トンの範囲で大きく増加している。
 砂糖の圧倒的多数は、クリスタルシュガーとして生産されているが、これは最終的な砂糖の販売量のわずかに約75%を占めるにすぎない。残りのクリスタルシュガーは、搾汁設備を持たない精製糖工場で精製され精製糖となる。クリスタルシュガーは圧搾工場で直接生産されるもので、多くの品質のものがあるが、全ての等級のクリスタルシュガーは、精製糖より品質は劣っている。
 クリスタルシュガーは、ブラジルで最も広く消費されており、中・南部地域における輸出量のほとんどを占めている。しかし、圧搾業者は輸出用に低品質のクリスタルシュガーを生産することを選択しており、非常に糖度の高い(VHP)原料糖として輸出されている。一方、袋詰のクリスタルシュガーを白糖として輸出する場合には、バルクに比較しコストがかさむため、圧搾業者はクリスタルシュガーを原料糖としてバルクで輸出することを選択している。
 中・南部地域の約25%は精製糖という形で販売されているが、北・北東部地域では全てがクリスタルシュガーである。現在、中・南部地域に存在する付属の精製糖工場は10工場未満で搾汁設備を持たない精製糖工場も5工場しかない。これらの工場のうち1工場を除いた全ての工場は、精製された非結晶糖を生産しているが、大量の精製グラニュー糖を生産しているのはわずかに6工場である。北・北東部地域には、付属の精製糖工場は15工場あるが、その全てが輸出用の精製グラニュー糖を生産している。
 非結晶糖はブラジル特有の製品であり、ブラジル以外にはこの砂糖の市場は存在しない(注)。中・南部地域で生産されている非結晶糖の全ては、国内で消費されており輸出されていない。精製グラニュー糖は、世界の他の地域で精製糖と呼ばれているレベルのものである。ブラジルの消費者は非結晶糖を好むため、ブラジルには精製グラニュー糖の市場はほとんどない。
(注)非結晶糖は、急速に結晶化されることによって生産され、遠心分離を行わない粉末状の製品。

表3:砂糖の生産量の内訳
(1,000トン、粗糖換算)
  94/95年度 95/96年度 96/97年度 97/98年度  平 均 
砂糖生産量
 粗糖
 クリスタルシュガー
  (輸出用を含む)
 精製糖
12,478
1,149
10,295

1,035
13,318
2,641
10,032

646
15,572
2,657
11,661

1,253
15,975
1,650
13,233

1,092
15,038
2,024
11,305

1,006

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 表4は、94/95〜97/98年度のブラジルにおける砂糖消費量の内訳を示している。約60%を占める家庭消費は、この期間年間2.5〜3.2%の増加率で増加し、1人当たり消費量は2.3〜2.7%の増加率で増加している。工業用では、飲料部門は最大のユーザーであり、約19%を占めている。全ての部門の消費量は、徐々に増加している。

表4:砂糖の消費量の内訳
(1,000トン、粗糖換算)
  1995年 1996年 1997年 1998年
 (%) (%) (%) (%)
家庭消費量 4,482 59.2 4,624 59.2 4,847 59.2 4,972 59.6
工業用
 飲 料
 製パン
 製 菓
 乳製品
 果物及び食品
 その他の利用
 (食品以外の利用も含む)
3,089
1,431
394
515
159
333
257
40.8
18.9
5.2
6.8
2.1
4.4
3.4
3,187
1,476
406
531
164
344
266
40.8
18.9
5.2
6.8
2.1
4.4
3.4
3,341
1,548
426
557
172
360
278
40.8
18.9
5.2
6.8
2.1
4.4
3.4
3,369
1,555
429
559
172
365
289
40.4
18.6
5.1
6.7
2.1
4.4
3.5
合計 7,572 100.0 7,811 100.0 8,188 100.0 8,341 100.0
1人当たりの消費量(kg/人) 51.3  52.7  53.9  55.3 


異性化糖の位置

 ブラジルでは、砂糖が非常に安価であるため、異性化糖は生産も消費もされていない。

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【砂糖制度の主要な特徴】

 1990年代、砂糖及びエタノール部門へのブラジル政府の政策は根本的に変化した。1989年以前、さとうきび、砂糖及びエタノールの価格設定と販売は、IAA(砂糖アルコール協会)という政府機関によって厳しく規制されていた。1990年にIAAは廃止され、国内砂糖市場への政府介入は大きく緩和され、砂糖政策に大きな変化をもたらした。
 政府は、IAAの後身であるSRD(地域開発事務局)を通じて統制力を維持していたが、1997年5月1日には無水エタノール価格が自由化され、1999年2月1日には含水エタノール価格とさとうきび価格が自由化されている。
 含水エタノール価格は、1998年5月1日に自由化される予定であったが、砂糖及びアルコール生産者の財政的問題のために延期され、公定価格を0.41レアル/リットルに設定した。しかし、政府による延期の発表が遅れたために、圧搾工場の多くはこの水準より低い価格で販売する契約をすでに締結していたため、政府は価格設定政策を執行することができなかった。その結果、アルコール市場は、1998年半ば以降、実際には市場条件によって決定され、時には公定価格よりはるかに低い0.20レアル/リットル未満で取引された。したがって、含水エタノール価格の自由化は、単に既存の状況を公認したものであった。

生産規制

 アルコール優遇政策は、アルコール:ガソリンの混合比率を設定することによって、実際に国民が自動車にアルコールを使用することを強制している。したがって、価格の支持がなくとも、政府は需要側の介入措置を通して、アルコールの生産に影響を与え、さらにはさとうきびと砂糖の生産に影響を与えることとなっている。
 最近までは、砂糖とエタノールの需要予測に基づいて、SRDは砂糖とアルコールの生産量について、圧搾工場別の割当を決定する年間生産計画を発表していた。収穫計画は、圧搾工場が国内の需要を満たす十分な砂糖とアルコールを生産することができるようにすることを目的としていた。1990年のIAAの廃止までは、圧搾工場が砂糖とアルコールから同じ収益を得ることができるように価格が設定されていたため、割当に従って生産していた。現在では、砂糖の販売が自由化されたため、圧搾工場が生産割当に厳密に従わないといったことがしばしば生じている。現在の制度によれば、圧搾業者がアルコールから砂糖の生産に大きくシフトすることを防ぐことができる唯一の政府手段は、輸出ライセンスを付与し、設定された割当を超える輸出に課税することである。

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国内の価格支持

 国内の砂糖価格について有効な規制は行われていない。1990年のIAAの廃止に引き続き、砂糖価格・販売が自由化されたことによって、砂糖とアルコールの価格は市場条件に左右され、圧搾工場は製品の割合に無関心ではいられなくなった。表5は、95/96〜97/98年度のさとうきび平均価格と砂糖価格を示している。
 砂糖価格は、市場条件によって決定されている。圧搾シーズンのピーク期間(6月〜10月)は、現金の不足しがちな圧搾工場がこの期間に積極的に砂糖を一斉に販売することから、国内市場価格は世界市場価格の水準まで下がり、砂糖の工場出荷価格は輸出平価を厳密に反映することとなる。圧搾シーズンが終わりに近づく(11月〜12月)と、既に余剰砂糖が輸出されているため、国内の供給量が減少し価格は値上がりし始め、次の圧搾シーズンが開始される前の数カ月間(1月〜3月)にピークに達する。
 1991〜1998年に、ブラジル政府は、北・北東部地域のアルコール生産を奨励することを目的とした価格政策を実施した。アルコール価格にプレミアムが支払われ、価格を約25%上昇させた。加えて、北・北東部地域のアルコール販売には、工業生産税が免除された。しかし、1998年の末に向けて、税金とプレミアムは廃止されたが、代わりにこの地域のさとうきび農家へは約5レアル/トンが直接支払われることとなった。なぜなら、この制度が北・北東部地域においてアルコールをより高い価格で販売しようとした中・南部地域の生産者によって利用されてきたためである。
 一般的に、この期間の砂糖の工場出荷価格は、世界の砂糖価格−輸出費用(圧搾工場から港までの輸送費用+港湾費用)を反映している。この価格は、粗糖についてはニューヨークNO.11+砂糖の糖度に対するプレミアム−輸出費用(30〜35USドル/トン)から算出される。クリスタルシュガーについては、ロンドンNO.5−品質割引(砂糖の品質に従って通常10〜30USドル/トン)−輸出費用(40〜45USドル/トン)から算出される。

表5:さとうきび及び砂糖価格(95/96〜97/98年度平均)
(単位:USドル/トン)
  さとうきび クリスタル 精製糖  粗 糖 
 非結晶糖  グラニュー糖
さとうきび価格
卸売価格
―国内自由市場価格
―特恵輸出
―自由市場輸出
小売価格
―国内自由市場価格(税別)
14.6







300

256

442


390



532




264




448
217

注)米国に対するブラジルの関税割当(TRQ)には、0.625セント/ポンドの税金が課されている。

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粗糖

 粗糖は、主に北・北東部地域で生産されており、全て輸出向けである。ほとんどが自由市場に販売されているが、一部は特恵輸出されている。自由市場の粗糖は、粗糖の世界価格(ニューヨークNO.11−輸送費用)によって取引されており、さらに、クリスタルシュガーの大部分は、VHP粗糖としてバルクで輸出されており、輸入国において精製される。これについては、下に述べる。
 米国割当協定に従った特恵輸出は、全て北・北東部地域の粗糖である。表5の数字は、米国に対するTRQの販売について受け取られた価格を示している。これは、(ニューヨークNO.14の粗糖先物価格に等しい)22セント/ポンド−0.625セント/ポンド(米国に対するブラジルのTRQに課される税金)−FOB費用として計算されている。また、割当に従ってブラジルからフィンランドへ少量の粗糖(22,000トン)が輸出されている。

クリスタルシュガー

 クリスタルシュガーの大部分は、表8に示されている通り中・南部地域で生産されている。クリスタルシュガーは、ブラジル国内では白糖として袋詰で販売されており、海外へはVHP粗糖としてバルクで大量に輸出されている。ブラジルのクリスタルシュガーは、世界の主要な白糖輸入市場において、品質が悪いことと不利な輸送料金のために、ロンドンNO.5においては割引価格で取引されている。クリスタルシュガーは、ブラジル国内の搾汁設備を持たない精製糖工場に販売されるか、輸出されている。大多数が圧搾シーズンに輸出されており、工場出荷価格はニューヨークN0.11及びバルク砂糖の輸出費用によって決定されている。クリスタルシュガーは、他国の粗糖より糖度が高いためニューヨークNO.11においてわずかなプレミアムが付けられている。このプレミアムは、国際糖度プレミアム基準(the international pol premium scale)によって決定されている。

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精製糖──非結晶糖とグラニュー糖

 非結晶糖は、国内市場向けにのみ生産されており、クリスタルシュガーに対して約90USドル/トンのプレミアムが付けられている。非結晶糖は国際的には取引されておらず、その価格はクリスタルシュガーまたはグラニュー糖ほど白糖の国際価格に影響はされない。非結晶糖の価格は、白糖の価格に準じているが、市場の条件に従って大きく変わる。
 ブラジルで生産されているグラニュー糖は全て輸出されているため、その価格は世界の白糖価格を反映したものとなる。ブラジルのグラニュー糖は、ロンドンNO.5に準じて取引され、その割引は比較的小さく安定している。

販売方法

 現在、国内市場または輸出市場への砂糖とアルコールの販売は自由化されている。近年、政府にはその権限があるにもかかわらず、砂糖の輸出に税金は課されていない。  WTOのガイドラインによれば、ブラジルは2004/05年度までに関税を35%まで削減しなければならない。表6に示されている通り、粗糖と白糖に課されている現在の関税は16%であり、すでに最終関税義務をはるかに下回っている。

表6:現在のブラジルの貿易政策に関する情報
  粗 糖 白 糖
現行関税率 16% 16%
GATT約束  
 関税
  基本税率
  最終税率

55%
35%

85%
35%
 ミニマムアクセス(トン、粗糖ベース) 適用されず
 輸出補助金の削減
  数量(1,000トン)
  金額(%)

240
14
 最終期限税 2004/05年

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農家と圧搾業者の関係

 ブラジルの圧搾工場は、自己所有農地または賃借農地において、さとうきびの大部分を栽培している。原料さとうきびを確保するために、この傾向はさらに増大している。中・南部地域の圧搾工場は、自己所有地等で原料の75%近くを栽培している。サンパウロ州では約70%、その他の州では85%に近くなっている。北・北東部地域でもこの傾向を増大させており、現在は原料の80%近くを栽培している。
 砂糖の生産に対する政府の規制はなく、生産に関する地域割当も存在しない。したがって、農家は、自由に圧搾工場にさとうきびを供給することができる。原料需要のバランスをとるために、圧搾工場は、現在、収益分配契約に基づき農家からさとうきびを購入している。しかし、さとうきび栽培地の大多数は、圧搾工場の自社農地か賃借農地になっている。
 99/2000年度までは、ブラジルには農家と圧搾業者の間に収益分配制度はなかった。圧搾工場は農家から購入したさとうきびに対し、政府の発表するさとうきび価格に基づき原料代を支払っていた。基準さとうきび価格に加えて、圧搾業者は公式プレミアム基準に従って、ショ糖含有率が12.256%を超過するものに対して、プレミアムを支払っていた。特に、サンパウロ州などの原料確保の競争が激しい地域では、規制を加えることは難しく、圧搾工場は原料を確保するため、農家に追加料金を支払わざるを得なかったのである。こうした状況から、さとうきび価格はしばしば公定価格を超過した水準までせり上げられた。
 サンパウロ州のさとうきび産業代表機関UNICAは、最近、農家のさとうきび価格が砂糖とエタノールの販売収益の加重平均に基づく任意のさとうきび支払制度を立案した。この制度は現在導入されており、98/99年度の平均価格は、14.50レアル/トンになると予測されている。中・南部地域の他の州は、99/2000年度にこの支払制度を採用する予定であり、北・北東部地域においても最終的に採用されるものと思われる。
 なお、北・北東部地域のさとうきび農家は、連邦政府から生産したさとうきびに対して、直接補助金(5レアル/トン)を受け取っている。

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砂糖政策の機関

 ブラジルのさとうきび、砂糖及びアルコールに対する政府関与は、1990年代に大きく減少したとはいえ、政府の政策はなお大きな役割を果たしている。特に、政府は76:24の割合でガソリンに無水エタノールを混合しなければならないとする法律を制定し、エタノール需要に大きな影響力を行使している。
 産業界に全体的な責任を有する省は、商業産業省である。しかし、価格統制と生産割当の廃止以来、この部門への商業産業省の関与は、現在、過去に比較しはるかに小さくなっている。財務省も輸出税への規制を通して、この部門に大きな影響力を行使することが可能である。しかし、輸出税は数年来0%に抑えられているため、財務省も現時点ではほとんど影響を与えていない。
 産業界自体は、州単位の団体を通して政府に影響を与えている。それらの団体の中で最も重要なものは、ブラジルの生産量の大半を占めているサンパウロ州、ペルナンブコ州及びアラゴアス州の団体である。最大の団体はUNICAであり、サンパウロ州のさとうきび圧搾業者を代表している。

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【砂糖産業の現状】

圧搾工場と精製産業の構造

 表7は、97/98年度のブラジルにおける砂糖とアルコールの生産量を、北・北東部地域と中・南部地域に分けて、州別に示している。中・南部地域は、97/98年度には国内の砂糖の76%とアルコールの86%を生産した。この地域の中でも、さとうきびの収穫量はサンパウロ州が圧倒的に多く、現在、中・南部地域の総さとうきび収穫量の72.8%(ブラジルの総さとうきび収穫量の約60%)を生産している。
 表7は、サンパウロ州が97/98年度に中・南部地域の砂糖の76.4%、アルコールの72.1%を生産し、国内砂糖生産量の58.2%と総アルコール生産量の61.9%を占めていることを示している。
 北・北東部地域では、生産量はアラゴアス州とペルナンブコ州が圧倒的である。97/98年には、アラゴアス州はこの地域の砂糖の51.8%とアルコールの38.5%を生産したが、ペルナンブコ州はそれぞれ35.6%と26.0%を生産した。
 表7に示されている通り、97/98年度には333工場が操業し、そのうち約3分の1がアルコールのみを生産する蒸留工場であり、砂糖とアルコールの双方を生産することができるよう砂糖部門を追加しているため、砂糖とアルコールを生産できる工場の数は、近年急速に増加している。
 さとうきび圧搾工場はすべて民間であり、少数が農民の協同組合として組織されている。しかし、多くの圧搾工場は、協同組合または民間の販売会社を通して生産物を販売している。
 ブラジルには、世界でも有数の圧搾工場が存在する。サンパウロ州に所在するSao Martinho工場とDa Barra工場は、それぞれ1日当たり36,000トンと38,000トンの原料処理能力を持っている。したがって、サンパウロ州が大多数を占める中・南部地域の平均生産指数は、北・北東部地域をはるかに上回っている。特に、さとうきびのTC:TS比率は、北・北東部地域の9.3と比較し、中・南部地域では8.8となっており、平均ショ糖含有率も北・北東部地域の12.6%と比較し、14.5%と高くなっている。また、圧搾工場は、表7に示されている通り、一般に中・南部地域が大規模である。

表7:地域別及び州別砂糖製糖工場の生産量
表7:地域別及び州別砂糖製糖工場の生産量

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砂糖の精製

 表8は、ブラジルの各州のさとうきび圧搾工場の粗糖、クリスタルシュガー及び精製糖並びに含水アルコール及び無水アルコールの生産量の内訳を示している。これには、圧搾する設備を持たない精製糖工場の生産量が除外されている。さとうきび圧搾工場で生産されている砂糖の大多数は、粗糖または低品質のクリスタルシュガーである。粗糖は輸出されており、クリスタルシュガーの輸出もバルクで積み出される場合には消費される前に精製されるため、粗糖として分類されている。
 表8に示されている通り、97/98年度には、100万トン強の精製糖が圧搾工場付属の精製糖工場で生産された。しかし、中・南部地域に所在する搾汁設備を持たない精製糖工場(5工場)で大量のクリスタルシュガーの精製が実施されている。北・北東部地域には、同精製糖工場はない。

表8:地域別及び州別砂糖製糖工場の生産量
表8:地域別及び州別砂糖製糖工場の生産量

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砂糖の流通

 ブラジル国内では、砂糖は袋詰で販売されているが、輸出は袋詰若しくはバルクで販売されている。国内市場で販売される砂糖は、ほとんどすべて単層のポリプロピレンの袋で販売されているが、少数の圧搾工場は1トンバッグでユーザーに供給している。液糖を供給することができる会社は、中・南部地域の1社のみである。
 ほとんどの圧搾工場は、販売費用を削減するために、グループ販売会社を通して砂糖を販売している。国内市場の砂糖は、直接的にあるいは国内の仲介業者を通して、ユーザーやスーパーマーケットに販売されている。ブランド製品を販売している圧搾工場はごくわずかである。最も良く知られているブランド製品「Uniao」は、サンパウロ州最大の協同組合販売組織Copersucarによって販売されている。ブランド製品を販売している工場は、ごくわずかである。

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砂糖産業の現在の問題点

 ブラジルのさとうきび産業は、現在、多くの重大問題に直面している。国内エタノール価格の下落を招いた1998年のエタノール販売の実質的自由化によって、世界砂糖価格の低迷もあいまって、さとうきび産業界は深刻な財務危機に陥っている。
 アルコール部門において産業界が直面している問題は、97/98年度のアルコールの過剰生産に起因しており、国内エタノール価格に極めて深刻な影響を及ぼしている。こうした過剰在庫のエタノール価格への圧力を軽減するために、中・南部地域の産業界は、1999年初頭にブラジル・アルコール株式会社(Brasil Alcool S.A.)を設立した。この会社は、国内市場から13億リットルのアルコールを回収し、それらの在庫の大部分を輸出する責務を負っている。しかし、世界市場が比較的小規模であるため、会社は20万〜40万リットルしか輸出できないであろうと予測されている。残りは、国内に在庫されることになろう。
 含水エタノールの価格は、市場自由化以前の0.41レアル/リットルの公定価格に対して、0.20レアル/リットル未満で販売されている。国内さとうきび収穫量の約50%が砂糖ではなくエタノール生産用に使用されているため、ブラジル・アルコール株式会社は、将来の産業界の命運を大きく左右することになろう。
 中・南部地域の産業界は、国内エタノール市場により大きな影響を与えるために、中央のエタノール販売機関を設立する可能性を検討している。
 他方で、産業界は、エタノールの需要を高める措置を実施するよう政府に圧力をかけており、産業界は現在3:97の比率でディーゼルに無水エタノールを混合する実験を実施しており、実験が成功すれば、この政策は、全ての大都市で採用される可能性がある。
 現在の世界砂糖相場の低迷は、近年のブラジルの砂糖生産量と輸出量の急増によるものが大きい。国内砂糖への価格規制または保護がないため、国際砂糖相場の低迷が産業界に及ぼす影響は大きい。しかし、近い将来、価格保護が実施される見通しはないことから、さとうきびの生産量は2000/01年度から減少し始めるものと思われ、それが国際砂糖相場と国内砂糖価格の回復をもたらすのに役立つものと予測されている。
 圧搾部門の莫大な債務に象徴される産業界の現在の財務的問題は、中・南部地域においても、北・北東部地域においても、今後数年間は原料処理能力の合理化を招くものと思われ、圧搾工場数は減少することになろう。エタノールのみを製造する工場は、事業の断念あるいはエタノールと砂糖の双方を生産するための設備を追加することになるため、単独稼動のエタノール工場も急激に減少するものと思われる。このことによって、圧搾工場が財務的問題を解決することができれば、特に中・南部地域の産業界は、国際的コスト競争力をさらに強めることを意味する。

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