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メキシコの砂糖産業

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最終更新日:2010年3月6日

砂糖類ホームページ/海外情報


海外レポート
[2000年3月]
 メキシコの砂糖生産量は、1990年代に入り徐々に増加し、1997/98〜98/99年度には500万トンを超えている。これに伴い輸出量も増大し、EU同様輸出補助金を付けて輸出していることから、その砂糖制度については注目に値する。こうしたメキシコの砂糖産業及び制度について、英国の調査会社LMC International Ltd. からの報告をもとに企画情報部で取りまとめたので紹介する。
 なお、この報告は1999年10月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編を参照されたい。

企画情報部


【砂糖産業における総合的な情報】
 ●メキシコの砂糖需給バランス   ●産業構造的要因
 ●生産量及び消費量   ●異性化糖の位置付け
【砂糖制度の主要な特徴】
 ●生産規制   ●国内の価格支持   ●販売方法
 ●さとうきび生産者及び製糖業者   ●砂糖政策の機関
【砂糖産業の現状】
 ●製糖業について   ●砂糖の精製   ●砂糖の流通
 ●砂糖産業の現在の問題点

【砂糖産業における総合的な情報】


メキシコの砂糖需給バランス

 メキシコは93/94年には砂糖の純輸入国であったが、94/95年度から徐々に輸出量は増加し、97/98年度には100万トン(粗糖換算)を超えた。さとうきび生産の高い収益性とともに、良好な気象条件に助けられて、砂糖生産量は89/90年度から徐々に増加し、97/98年度には550万トン(粗糖換算)のピークに達している。消費が停滞しているため、輸出可能量の増加に伴い輸出量が増加している(グラフ1)。
 表1 は、94/95〜98/99年度のメキシコの砂糖生産量、消費量及び貿易量の詳細な内訳を示している。表に示されている通り、メキシコは94/95年度に純輸出国となり、輸出量は97/98年度には114万トン(粗糖換算)に達した。98/99年度の生産量の減少は、輸出量を約60万トン(粗糖換算)まで減少させた。
 1990年代初頭から砂糖市場には大きな成長がみられない。また、消費量が緩慢なのは、1990年代のマクロ経済学的問題及び食品加工業への異性化糖の進出を反映している。メキシコは、1990年代初頭以降、米国から異性化糖を輸入している。メキシコにおける異性化糖の生産は1996年1月に開始され、現在、30万トン弱(砂糖換算)を生産していると推定される。

グラフ1:メキシコの砂糖の生産量、消費量及び輸出量(粗糖換算)
砂糖の生産量、消費量及び輸出量
表1:砂糖の需給バランス
(単位:粗糖換算、1,000トン)
  94/95年度 95/96年度 96/97年度 97/98年度 98/99年度
生 産 量
消 費 量
輸 入 量  合計
       粗糖
       白糖
輸 出 量  合計
       粗糖
       白糖
在庫変化
4,519
4,410
70
20
50
221
46
175
△42
4,759
4,286
192
155
37
632
7
625
33
4,822
4,140
155
119
36
742

742
95
5,590
4,350
31
5
26
1,137
135
1,002
134
5,192
4,451
30
20
10
600
100
500
171

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産業構造的要因

 表2は、94/95〜97/98年度におけるメキシコの砂糖産業の主なデータを示している。メキシコ全体、特に最も重要なさとうきび栽培地域であるメキシコ湾地域(the Gulf region)において、93/94年度以降さとうきびの生産量が急速に増加している。この主な要因は、栽培面積の拡大、単収のわずかな向上及びさとうきび品質の大きな向上である。メキシコ湾地域は、現在、総さとうきび栽培面積の約45%を占めている。次に大きな地域は、太平洋地域(the Pacific region)と北東部地域(the Northeast region)である。この2つの地域は、それぞれ総さとうきび栽培面積の約19%を占めている。
 メキシコでは、個別農家がさとうきび栽培の責任を負っている。さとうきび農家は、2種類に分けられる。ejidatariosとpequenos proprietarios(小規模農家)である。ejidatariosは、メキシコ革命の後に大規模民間所有者の土地を農民に再分配する計画に従って創設された大規模共有農場であるejidos(共有地)でさとうきびを栽培している。小規模農家は、個人農民であるか、または民間の農民組合であることが多い。農場は個別農家で耕作されているか、組合に編成されているが、メキシコの平均的農民は、約4haの農地でさとうきびを栽培している。ejidatariosは、現在、さとうきび総生産量の61%を占めており、小規模農家が残りの39%を供給している。
 さとうきびの単収は世界標準より高く、平均77.4トン/haである。平均のTC/TS率も比較的高く8.7である。
 1990年代の生産性の向上は、単収の上昇よりはむしろさとうきびのショ糖含有率の上昇に起因している。メキシコの砂糖産業は、単収の向上よりはむしろさとうきびの平均ショ糖含有率の顕著な向上を達成している。この要因の1つは、1990年代にさとうきびのバーニングと工場搬入の間の時間を短縮することに焦点を当てたことである。この時間は、過去10年間でほぼ半分になっている。このことは、製糖工場に到着するさとうきびの品質に著しい影響を与えている。近年では、収穫以前及び収穫期間中の非常に良好な気象条件が、さとうきびのショ糖含有率向上を促進している。

表2:農業生産高等の推移
  94/95年度 95/96年度 96/97年度 97/98年度 平 均
収穫面積(1,000ha)
さとうきび生産量(1,000トン)
単収(トン/ha)
産糖量(1,000トン、粗糖換算)
きび生産量/産糖量(TC/TS)
さとうきび生産高 注 (1,000US$)
農業生産高(1,000US$)
農業生産高に占める
さとうきび生産高の割合(%)
514
40,124
81.9
4,515
8.9
857,601
17,389,222

4.9
577
40,185
73.8
4,781
8.4
944,373
12,900,601

7.3
583
42,171
76.0
4,822
8.7
1,158,140
15,834,748

7.3
633
47,353
78.1
5,492
8.6
1,222,584
16,411,021

7.4
577
42,458
77.4
4,902
8.7
1,045,674
15,633,898

6.8
(注)さとうきびの生産高は、それぞれの年のさとうきび生産高に農民が受け取っているさとうきび1トン当たりのさとうきび価格を乗じることによって算出されている。

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生産量及び消費量

 現在まで、国内あるいは国際的な品質基準に合致させた製糖工場はない。実際には、各製糖業者の団体が、主な顧客の要求に対して独自の品質基準を設定している。
 表3は、粗糖、estandar糖(工場から直接出荷される白糖)及び精製糖の生産量の内訳を示している。メキシコの生産量のほとんどは、180〜420ICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会による分析法)の色価を持つものとして定義されるestandar糖である。estandar糖は、97/98年度には、全体(粗糖換算)の66%を占めていた。残りは、30〜100 ICUMSAの精製糖である。メキシコでは、粗糖はほとんど生産されていない。実際には、メキシコで生産される砂糖の平均糖度は高い。糖度は、精製糖の99.9度に対して、estandar糖は平均約99.4度である。
 表4は、用途別砂糖消費量の内訳を示している。国内市場は、ほぼ家庭用と工業用に分類することができる。
 消費量のうち、比較的高い割合が家庭用であり、約50%を占めている。estandar糖は、家庭用市場の83%を占めている。2番目は飲料用であり、97/98年度には21%を占めていた。ソフトドリンクの1人当たり消費量は、米国に次いで第2位である。国内には約230のボトリング工場があり、コカコーラとペプシコーラの製品のボトラーが最も多い。ボトリング部門は、現在、全工業用の需要の40〜50%を占めている。ボトリング部門の需要のほぼ90%が、精製糖である。
 近年の主な成長部門は、家庭用の需要と焼き菓子の製造における利用である。焼き菓子部門は、ボトリング部門に次いで2番目に大きい。砂糖菓子部門、乳製品部門及び食品缶詰部門ではごくわずかの砂糖しか消費されておらず、合計でも全体の約10%を占めるにすぎない。

表3:砂糖生産量の推移
(単位:粗糖換算、1,000トン)
  94/95年度 95/96年度 96/97年度 97/98年度 平 均
生産量合計
―粗糖
―白糖(estandar糖)
―精製糖
4,519
127
2,457
1,934
4,759
58
2,679
2,023
4,822
53
2,910
1,859
5,590
62
3,696
1,833
4,922
75
2,935
1,912

表4:砂糖の用途別消費量の推移
(単位:粗糖換算、1,000トン、%)
  94/95年度 95/96年度 96/97年度 97/98年度
家庭用

工業用
 飲料用
 焼き菓子
 砂糖菓子
 乳製品
 フルーツ及び食品
 その他(含非食品)
小計

合計

1人当たりの消費量(kg/人)
2,094(47.5)


1,109(25.2)
690(15.6)
151(3.4)
21(0.5)
57(1.3)
288(6.5)
2,316(52.5)

4,410  

46.7  
2,130(49.7)


985(23.0)
750(17.5)
94(2.2)
17(0.4)
52(1.2)
25(6.0)
2,156(50.3)

4,286  

44.5  
2,058(49.7)


952(23.0)
725(17.5)
91(2.2)
17(0.4)
50(1.2)
247(6.0)
2,082(50.3)

4,140  

43.9  
2,214(50.9)


900(20.7)
792(18.2)
100(2.3)
17(0.4)
52(1.2)
275(6.3)
2,136(49.1)

4,350  

42.3  

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異性化糖の位置付け

 すべての砂糖と関連する運営は、現在、ロサレス陸軍大将によって率いられている砂糖産業省(MINAZ)の管理下にある。
 異性化糖 の生産は1996年に始まり、現在2つの企業が異性化糖を生産している。Almidones Mexicanos(ALMEX)及びArancia-CPCである。
 ALMEXは、A. E. Staley(Tate&Lyleの子会社)とArcher Daniels Midlandのそれぞれ50%出資のジョイントベンチャー企業である。ALMEXの異性化糖工場は、グアダラハラ(ハリースコ州)に基礎を置いている。現在の生産能力は、年間110万トンと推定されている。
 Corn Products International(CPC)は、1998年12月にArancia-CPCの49%株式を取得し、工場はメキシコシティー北方のサンジュアンデリオ(ケレータロ州)に所在している。現在の生産能力は、年間20万トンと推定されている。
 異性化糖の生産に加えて、ALMEXとAranciaは、Cargillとともに米国の異性化糖の主な輸入・販売業者である。
 メキシコにおける異性化糖の需要は、ボトリング部門が先頭に立っている。現在、ボトリング部門は、約50万トン(砂糖換算)の異性化糖を利用していると推定され、砂糖が残りの部分を占めている(100万トンの白糖−ほとんどは精製糖である)。短期的には、ボトリング部門による異性化糖の消費量は、メキシコ政府が米国からの異性化糖の輸入に課している相殺関税のため減少している。

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【砂糖制度の主要な特徴】

 メキシコ政府は、1990年代に砂糖産業の所有権を放棄し、砂糖価格を自由化したが、砂糖産業に介入し続けている。主な介入は、砂糖と異性化糖に対する関税の決定及び余剰砂糖を処分するための製糖業者団体の輸出義務の決定である。さとうきびの原料支払制度は、法律化されている。政府はまた、砂糖産業の最大の債権者であり、砂糖産業のための政府銀行FINASAは、製糖工場から政府への債務の支払いをスケジュール化する責任を有する。これらの債務は、1990年代初頭の製糖工場の民営化から生じている。

生産規制

 メキシコでは、さとうきびまたは砂糖の生産に対する規制はない。

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国内の価格支持

 94/95〜97/98年度のさとうきびと白糖の平均価格が、表5に示されている。これは、価格が世界市場水準より高くなるように支持されていることを示している。これは、2つの手段によって達成されている。第1に、輸入に対する非常に高い関税の賦課である(現在の関税及び 2004/05年度までのWTO貿易義務が表6に示されている)。第2に、政府は、余剰砂糖を国内市場から排除し、価格を下げないように、全ての製糖工場に輸出割当をしている(販売方法を参照)。
 高い関税水準によって、国内生産者は、理論的には輸入砂糖との競争に直面する前に、輸入砂糖の関税込み価格(輸入平価)まで価格を押し上げることができる。実際には、国内砂糖価格は、この上限を下回っている。政府は、国内砂糖価格を監視しており、必要に応じて価格水準を規制するために関税を引き下げることができる。
 輸入関税は、1995年12月から粗糖と精製糖について396USドル/トンの現行水準に固定されている。メキシコは、履行期限(メキシコについては2004/05年度)までに、粗糖と白糖に対して156%の最終関税率を公約している。政府はまた、2004/05年度までに、(割引関税での)18万4,000トンの砂糖輸入について関税割当を公約している。
 輸出が補助金を受けたのは1997年10月が最後であり、96/97年度に生産され1997年1月〜9月の期間に輸出された砂糖輸出に対して政府が・遡及的補助金を与えたものである。この補助金は、24万4,000トンの砂糖に適用され、1トン当たりの補助金の最高水準は、1,341ペソ(169USドル/トン)に設定された。
 WTOに提出された義務に従って、メキシコは補助金を与える輸出数量を2004/05年度までに27万トン削減することに同意した。この数字は1990〜1991年の期間に実際に補助金を与えられた輸出数量に基づいたものである。メキシコはまた、2004年までに輸出補助金の金額を26%削減することを公約した。これらの義務は、実質的には、金額の義務に違反しなければ、メキシコが2004/05年度まで年間27万トンまでの輸出に補助金を与える権利を持つことを意味する。

表5:さとうきびと砂糖の価格
(USドル/トン)
  さとうきび 白 糖 粗 糖
さとうきび価格

卸売価格
―国内自由市場価格
―特恵市場輸出価格
―自由市場輸出価格

小売価格
―国内自由市場価格
30










284
433
284


413





242



表6:メキシコにおける完全等の貿易政策
  粗 糖 白 糖
現行関税率 396 USドル/トン 396 USドル/トン
GATT約束  
 関税
  基本税率
  最終税率

173%
40%

156%
40%
 ミニマムアクセス(トン、粗糖換算) 110,000→183,800
 輸出補助金の削減
  数量(1,000トン)
  率(%)

270
26%
 履行期限 2004/05
注:輸入に対する非関税障壁はない。国内で砂糖が不足した場合に、国の臨時輸出/再輸入計画(the country's Temporary Export/Re-import Programme)に従って交付される割当証明書の保持者に対しては、輸入関税は放棄される。
出典:LMC、WTO

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販売方法

 製糖業者は、国内市場に砂糖を自由に販売することができる。しかし、各年度の開始に先立って、政府の産業商業省は、様々な砂糖産業の代表者と協議して、国内の砂糖の需給予測を決定する。これらの予測に基づいて、国内の供給量が国内の需要と等しくなるようにするため、輸出されなければならない砂糖の数量が決定される。輸出されることが要求される総数量は、比例案分して製糖業者団体の間で分配される。製糖業者が輸出されるべき過剰砂糖の割当ての一部または全てを国内市場に販売することを防止するために罰則制度が導入されている。罰則には、そのような砂糖を生産するために用いられたさとうきびに対する割増価格の支払いが含まれている。

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さとうきび生産者及び製糖業者

 1990年代初頭の製糖工場の民営化に伴って、さとうきび支払制度に対する変化が生じた。さとうきびの品質とは無関係な従来のさとうきび価格制度は、品質基準の収益分配制度に置き換えられた。新しい制度の下では、平均的な品質のさとうきびが製糖工場に納入されるものと仮定すると、さとうきび生産者はさとうきびから回収されるestandar糖の推定数量の価額の54%を受け取ることになる。1990年代半ばから、政府は徐々に砂糖の収益に対するさとうきび生産者のシェアを、93/94年度当初の54%から96/97年度の57%まで年間1%ずつ増加させた。この数字は、その後は変化していない(実際には、砂糖の収益に対するさとうきび生産者の実際のシェアは、93/94年度以降57%を超えている)。
 原料代の支払いを規制する法律の最近の改正は、1998年3月に実施された。現在の制度によれば、さとうきびから抽出される砂糖は、商業産業開発省(SECOFI)によってその年度初頭に発表されるestandar糖についての基準価格で評価される。基準価格は、来るべきシーズンにおける国内市場での販売、特恵輸出市場への販売及び世界市場への販売から製糖工場によって受け取られる平均価格の予測を表すものである。
 さとうきびから回収される砂糖の数量を算定する現在のシステムは、KARBE(Kilogramos de Azucar Recuperable Baso Estandar:estandar糖基準回収砂糖キログラム数)制度として知られている。この制度は、製糖業者とさとうきび生産者の間の交渉の結果ではなく、法律化されたものである。KARBE制度によれば、さとうきびから抽出することができる理論的砂糖の数量は、それぞれの製糖工場に納入されるさとうきびの平均品質を反映するさとうきびの品質特性(ショ糖含有率、繊維質含有率及び搾汁液の純度)及び想定される82.37%の工場効率の水準(製糖工場で回収されるさとうきびに含まれる総ショ糖数量のパーセント)に基づいて導かれる。
 個別の製糖工場のKARBEを導くに当たって想定される工場効率の水準は、その製糖工場で達成されている実際の工場効率の水準と一致するものではない。製糖工場は、各さとうきびから導き出された理論的産糖量より少ない砂糖を生産する可能性がある。製糖工場は、さとうきびから抽出することが想定される砂糖の価額の57%をさとうきび生産者に支払わなければならない。しかし、実際にはより少ない砂糖を抽出した場合には、さとうきび生産者に支払われる収益の実質的なシェアは57%より大きくなる。

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砂糖政策の機関

 砂糖部門の民営化をもたらしているより自由化された経済を創設するという公約にもかかわらず、メキシコ政府は砂糖部門において重要な影の役割を保持している。SECOFIが年間のさとうきび価格の基準を決定している。また、国内価格は名目的には自由化されているが、政府は輸入関税の決定と砂糖価格の監視を通して、価格に影響を与えている。

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【砂糖制度の主要な特徴】

製糖業について

 97/98年度においては、合計60カ所の製糖工場が稼働した。政府機関であるFideliqの管理下にある1製糖工場を除いて民営化されている。ごく最近まで、さとうきび栽培地を所有または賃貸している製糖工場はなかった。したがって、メキシコの砂糖産業の農地部門と工場部門は、所有権に関しては全く分離されてきたし、現在も分離されている。工場部門の所有権は、常に比較的少数の所有者に集中してきた。
 表7は、97/98年度にさとうきびを圧搾した企業と製糖工場をリストアップしている。7つの独立系製糖工場と政府機関Fideliqが経営するSanta Rosalia製糖工場を除いて、60工場は民間グループによって所有されている。生産量と製糖工場の数に関して最大のグループは、the Consorcio Azucarero Escorpionであり、9つの製糖工場を所有し、97/98年度にはさとうきび総数量4,730万トンのうち23%(1,070万トン)を処理している。

表7 メキシコの砂糖企業の概要(97/98年度) →別表

 製糖工場の効率性は、全体的に世界水準より高く、国内のTC/TS率は9.32であり、効率性を表わす指数(産糖量/圧搾能力)は16.4であった。97/98年度の最高実績は、2製糖工場を所有し、8.3の平均TC/TS率を持ち、上記指数は19.7であったPromotora Industrial Azucareraによるものであった。最低実績は、同指数10.5のSanta Rosalia製糖工場によるものであった。これは、おおむね、国内平均185日に対して、120日しか操業しなかったという事実によって説明することができる。
 現在までの砂糖産業への唯一の外国資本は、Grupo SaenzにおけるTate&Lyleの49%の株式所有である。Grupo Saenzは、表7に示されているように、16,500トンの合計圧搾能力を有する3製糖工場を経営している。これらの製糖工場は、Aaron Saenz GarzaとEl Mante(タマウリパス州)及びTamazula(ハリスコ州)である。国内の標準と比較すると、これらの製糖工場は比較的効率的である。Grupo Saenzは、原料処理量に関しては国内で7番目に大きなグループであり、97/98年度には、国内の総数量の6.5%(310万トン)を圧搾した。

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砂糖の精製

 表8は、97/98年度に各製糖工場によって生産された砂糖の種類別の内訳を示している。実際には、メキシコで生産されるほとんどの砂糖は白糖である。そのうち国内産糖の66.3%はestandar糖であり、32.5%は精製糖である。粗糖は、総生産量のごくわずかな部分を占めるにすぎない。実際、98/99年度には、粗糖を製造することを計画した製糖工場はなかった。しかし、estandar糖については、高糖度粗糖としてバルクで輸出することができる。

表8 砂糖の種類別、製糖工場及び企業別砂糖生産量の内訳(97/98年度) →別表

 精製糖は、現在、総砂糖生産の約37%を占めている。精製は、製糖工場に付属した合計18の精製糖工場で実施されている。メキシコには、圧搾工程を持たない精製糖工場は存在しない。精製糖の生産は、Consorcio Azucarero Escorpion が抜きん出ており、97/98年度にはその6工場によって国内の総精製糖生産量の52%を占めた。

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砂糖の流通

 砂糖は、道路と鉄道で流通されている。鉄道の方がコストがかからないが、信頼性が高いという理由から、道路輸送が多く利用されている。砂糖は、一般に50kgの単層のポリエチレン袋で輸送されている。1トンの袋で納入を受けるユーザーも若干存在する。
 メキシコの砂糖グループとユーザー(特に飲料部門)の間にはかなりの企業系列が存在する。ユーザーとの企業系列を持つ製糖工場とグループについては、系列化されたユーザーへの砂糖の直接販売は、仲介者を通さずに実施されている。そのような取引には割引が行われると伝えられているが、別個の法主体として双方の企業を経営する必要性があることから大きな割引は行われていない。国内の情報筋は、系列化された製糖工場とユーザーの間の取引にみられる市場価格の最大割引は約15%であると推定している。
国際的な貿易企業ED&F Manは、製糖工場とユーザー間の仲介者となっており、製糖工場から直接購入し、ユーザーに販売している。ユーザーは一般に砂糖の購入に対して30日のクレジットを要求しており、それが製糖工場に資金繰りの問題を引き起こす。ED&F Manは、メキシコで事業を行っている多国籍企業のユーザーへの砂糖販売のほぼ80%に関与していると主張している。
 家庭用の市場については、2つの主な販売制度が存在する。最も普及した制度は、本船積込渡し(F.O.B.)、若しくは全ての主要な町や都市に存在する中央卸売市場を通して、製糖工場が国内の卸売業者に販売する制度である。もう1つの方法として、現在は工業用販売のわずかに2%を占めるにすぎないが、製糖工場は小売パックを直接スーパーマーケットに販売することができる。この種の取引のほとんどは、現金決済である。

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砂糖産業の現在の問題点

 NAFTA(北米自由貿易協定)に従ったメキシコと米国の間の砂糖貿易の将来は、メキシコの砂糖産業の見通しにとって極めて重大である。2000年からの米国市場への非関税アクセスの増加は、メキシコの砂糖産業によって、輸出可能な余剰砂糖のほとんどに価格の高い米国市場への保証されたアクセスを提供する救済への鍵とみなされている。2000年までは、メキシコに対する非関税割当は、25,000トンである。両国政府は、2000年からのメキシコの非関税アクセスについて異なった解釈をしている。1つの問題は、砂糖の「サイド・レター」の条件または砂糖に関する当初のNAFTA合意の条件が、2000年10月からのメキシコの米国市場への非関税アクセスに適用されるかどうかである。NAFTA はメキシコの砂糖産業に利益市場へのアクセス増加の約束を与えているが、しかし、米国の砂糖産業がメキシコの砂糖が国境を越えて流入するのを制限する法的措置をとる可能性があるという脅威が常に存在する。
 長期的には、経済学的にはメキシコの飲料産業が砂糖よりもむしろ異性化糖を使用することを支持している。しかし、短期的には飲料部門による異性化糖の使用を制限することを余儀なくさせるいくつかの要因が存在する。第1に、米国からの異性化糖の輸入に相殺関税が課されており、メキシコの飲料製造業者の異性化糖の費用を引き上げていることである。それらの関税が無期限で維持されるのか、若しくはある時点で停止されるのかは不明である。第2に、国内の異性化糖生産者に対して、非関税の米国産トウモロコシへのアクセスが制限されていることである(メキシコの異性化糖生産者は、国内産トウモロコシの品種より米国の品種を好んで使用している)。米国産トウモロコシの国内非関税輸入割当は、様々なユーザー(異性化糖産業のみである)の間に政府によって割り当てられている。第3に、1997年9月に、ボトラーと砂糖生産者が、砂糖価格の割引と引換えにボトリング部門によって使用される輸入異性化糖の数量を制限する「紳士協定」に達したことである。しかし、この協定の有効性を示す確実な証拠はほとんど存在しない。
 何人かの主な砂糖産業の当事者は、政府に対して、主に1980年代後半と1990年代初頭の民間部門による政府からの製糖工場の購入から生じている大きな負債を抱えている。財務問題は、小規模な経営、人員過剰及び時代遅れの圧搾設備の使用に起因する生産費用の増大によって悪化している。さらに、最近では、産糖量の記録的な水準が、製糖工場に大量の余剰砂糖をもたらしている。これらの砂糖は、在庫されるかまたは97/98〜98/99年度において低値を続けている世界価格で輸出されなければならない。
 砂糖産業は、メキシコにおいては、常に極めて大きな政治的重要性を持っている。砂糖産業は、農村地域の多数の世帯の所得に大きく貢献している。製糖部門が政府に対して大きな負債を抱えており、98/99年度の市場の状況が特に厳しいものであるにもかかわらず、その社会的及び政治的影響のために、政府が主な砂糖グループを破産させるとは思われない。政府のさらなる短期的な懸念は、2000年に差し迫った選挙である。したがって、政府は、砂糖産業の支持者であるとみられることを特に希望することになろう。

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