[2000年4月]
イタリアの砂糖生産量は、平均規模が小さいこと及びショ糖含有率が低いこと等から減少し続け、92/93年度以降ほぼ自給自足状態となっている。生産量の減少に伴い工場の合理化を急速に推し進めており、1970年代初頭の69工場から1999年には22工場となっている。しかしながら、現在でもフランス、ドイツに次いで第3位の工場数を有し、今後も合理化が進む可能性を有していることから注目に値する。こうした、イタリアの砂糖産業について、英国の調査会社LMC International Ltd.からの報告をもとに企画情報部で取りまとめたので紹介する。
なお、この報告は1999年10月現在のものであり、最新のデータについては巻末資料編を参照されたい。
砂糖産業についての全般的な情報
砂糖需給バランス
イタリアの砂糖生産量は、87/88年度以来、150万〜210万トン(粗糖換算)の間で推移している(図1)。一方、イタリアの砂糖消費量は、92/93年度から減少し、98/99年度には160万トンとなった。92/93年度以降、イタリアは砂糖の生産量と消費量がほぼ同じ水準となったため、輸出入量は減少し、ほぼ自給自足状態となっている。主な例外は92/93年度と98/99年度であるが、輸出可能な余剰量が生産されたためである。こうした実質的貿易動向の変化によって、EU委員会は98/99年度からイタリアの地域プレミアム価格を撤廃する決定を行った(イタリアは白糖介入価格に地域プレミアムがついていた。)。
図1 イタリアの砂糖生産量、消費量及び純輸入量の推移
95/96年度まで、イタリアは、フランスとドイツに次いで、EUにおける3番目の砂糖の生産大国である。イタリアのA割当とB割当の合計は、156万トン(白糖換算、粗糖換算では170万トン)であるが、しばしば生産割当量を下回る。過去12年間で、わずか4回しか生産割当を満たしていない。
表1は、95/96〜98/99年度のイタリアの砂糖生産量、消費量及び貿易量の内訳を示している。貿易量の大多数が白糖であり、輸入量のほとんどはもっぱら他のEU加盟国から輸入されているが、その輸出量の大多数はEU域外に輸出されている。イタリアは、ごくわずかしかC糖を生産していない。したがって、EU域外への輸出は割当内であり、輸出補助金を受けて輸出されている。
表1 砂糖の需給バランス
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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95/96年度 |
96/97年度 |
97/98年度 |
98/99年度 |
生産量
消費量
輸入量 合計
粗糖
白糖
輸入量 合計
粗糖
白糖
在庫変化
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1,621 1,593 362 21 342 153 0 153 237
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1,561 1,596 385 51 334 161 7 154 189
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1,891 1,598 370 48 322 340 5 335 323
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1,735 1,559 328 20 308 391 1 390 113
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出展:CEFS、F.O. Licht |
生産実績等
表2は、95/96〜98/99年度におけるイタリアの砂糖産業の主な農業データを示している。ビート栽培面積は過去4年にわたって下降傾向にあったが、単収が向上したため、生産量の減少幅は小さいものとなった。
表2 ビート生産量及び産糖量等の推移
イタリアの平均栽培規模は、EUの平均5.9haと比較して小さく、1998年には3.6haであった。EUにおいては、ギリシャに次いで小さい平均規模となっている。単収もEUの標準より際立って低く、98/99年度には1ha当たり49トンとEUの平均55トンをはるかに下回った。イタリアのビートの品質はEU域内ではギリシャに次いで悪く、98/99年度のショ糖含有率は15.2%であった(表5)。フランス、ドイツ及びイギリスは17%以上を達成している。
表5に示されるように、イタリアのビート産業は国の北部に集中している。ビートは、春に植えられ8月から収穫され、製糖期間は8月から11月までである。北部イタリアでは、10%未満しか潅漑されていない(しかし、この割合は増加している)。それに対して、気候が乾燥している南部のビート栽培地域では、ほとんどすべて潅漑されている。
国内の多くの地域(特に中央部地域と南部地域)におけるビート工場は、温暖な地中海性気候を原因とした原料の劣化及びショ糖含有率の低下をもたらすことを避けるため、工場に到着するビートを短期間で処理しなくてはならない。これが、ビート裁断期間を比較的短くしている理由である。貯蔵中及び輸送中のビートの劣化は糖みつにも影響を及ぼし、他のEU加盟国より品質を悪くしている。
表2は、ビート生産総額及び農業生産総額の関係を示している。農業生産総額におけるビートのシェアは平均2.0%である。
生産量及び消費量
イタリアは、ビート白糖(精製糖)のみを生産している。
表3は、イタリアの用途別砂糖消費量の内訳を示している。砂糖消費量の約40%が家庭用であり、飲料部門が全体の約20%を占めている。
この期間の砂糖の1人当たり消費量は、平均27.6kg(粗糖換算)であり、この水準で比較的安定している。これは、97/98年度の1人当たり35kgというEUの平均を大きく下回っている。
表3 砂糖の用途別消費量の推移
(単位:1,000トン、粗糖換算) |
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95/96年度 |
96/97年度 |
97/98年度 |
98/99年度 |
(千トン) |
(%) |
(千トン) |
(%) |
(千トン) |
(%) |
(千トン) |
(%) |
家庭用
工業用 飲料用
焼菓子
砂糖菓子
乳製品
フルーツ及び食品
その他(含む非食品)
小 計
合 計
1人当たり消費量(kg/人)
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634 303 289 177 103 85 1 959 1,593 27.8
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39.8 19.0 18.1 11.1 6.5 5.3 0.1 60.1
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640 305 290 179 102 79 1 956 1,596 27.8
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40.1 19.1 18.2 11.2 6.4 4.9 0.1 59.9
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637 311 291 178 102 76 2 961 1,598 27.8
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39.8 19.5 18.2 11.1 6.4 4.8 0.1 60.2
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614 312 285 173 100 74 2 945 1,559 27.1
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39.4 20.0 18.3 11.1 6.4 4.8 0.1 60.6
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出展:CEFS、LMC |
異性化糖の位置付け
イタリアの異性化糖の生産量は全体のおよそ2%を占めており、異性化糖の消費量のおよそ35%は砂糖菓子製品である。その他の主要な末端ユーザーは、飲料、缶詰食品及び保存食品である。
イタリアには、2カ所の異性化糖工場がある。Cerestar Italia Srlは、北西部地域に工場を持っており、98/99年度には、合計13,227トン(固形換算)のA、B割当の枠を持っている。Roquette Italia SpAは、南部地域に工場を持っており、98/99年度には、合計7,244トン(固形換算)の合計割当を持っている。
表4 異性化糖及び砂糖の生産量と消費量
(単位:1,000トン、固形換算) |
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95/96年度 |
96/97年度 |
97/98年度 |
98/99年度 |
生産量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合(%)
消費量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合(%)
輸入量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合(%)
輸出量 砂糖
異性化糖
異性化糖の割合(%)
在庫変化
|
1,621 34 2.1 1,593 34 2.1 362 ― 0 153 ― 0 237
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1,561 36 2.2 1,596 36 2.2 385 ― 0 162 ― 0 189
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1,891 38 1.9 1,598 38 2.3 371 ― 0 340 ― 0 324
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1,735 38 2.2 1,559 38 2.4 329 ― 0 391 ― 0 114
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注:消費量には割当外で補助金を受けずに輸出される異性化糖が含まれる。
出典:CEFS、LMC |
産業構造的要因
イタリアのビート糖産業は、急速に合理化されており、ビート工場を所有している会社の数は、1970年代初頭の23社から、1999年にはわずか6社に減少している。工場の数もまた、過去30年間で急速に減少しており、70/71年度の69カ所から98/99年度にはわずか22カ所になっている。にもかかわらず、イタリアはフランスとドイツに次いで、EU加盟国中第3位の工場数を持っている。
図2 工場規模に対する工場の数
ビート工場の内訳は表5のとおりであり、それぞれの所有者と原料処理能力が示されている。6社の砂糖会社の中で最も大きいのは、98/99年度に73,000トンの原料処理能力を持ち、北部イタリアに7工場を持つEridania Beghin-Sayである。Eridania Beghin-Sayは、イタリアのグループMontedison SpAによって管理されており、フランスにも10カ所のビート工場を所有している。Montedisonはまた、Industria Saccarifera Italiana Agroindustriale SpA(ISI)の29%の株式を保有している。EridaniaとISIは、98/99年度には、合計108,500トンの原料処理能力を持っていた。イタリアの2番目の製糖業者は、98/99年度に44,500トンの原料処理能力を持ち、イタリアの中央部及び南部地域に5工場を持つSadamである。Societa Fondiaria Industriale Romagnola SpAは4工場を持っており、ISIは4工場を所有している。
表5 会社別、工場別生産実績(98/99年度)
1998年には、EridaniaとSadamの間で協定が締結され、SadamはISIの株式をEridaniaに売却し、ISIによって管理されていたぺサロに所在する7,500トンの原料処理能力を持つFano工場がSadamに譲渡された。このFano工場は、98/99年度に閉鎖された。
イタリアにおける98/99年度のビート工場の原料処理能力は、平均10,350トン/日であった。工場部門の合理化により、イタリアのビート工場の平均規模はかなり大きくなった。工場規模は、EUの標準(97/98年度のEU平均工場規模7,800トン/日)より高いが、製糖期間が短いことから稼働率は比較的低い(98/99年度には、EU全体の平均87日と比較して、70日であった)。
砂糖の流通
イタリアの砂糖生産は、Eridania Beghin-Say及びISIが優位を占めている(国内の砂糖生産のおよそ50%を占めている)。
イタリアの砂糖産業は、小売用及び工業用の氷砂糖、液糖及び様々な種類の砂糖など、広範囲な砂糖を生産している。
工業需要に適切に対処するために、98/99年度に、Eridania Beghin-Say及びISIは、ロンバルディア、ベネツィア及びピエモンテで、Zefiro(すぐに溶ける高品質の超微粒子砂糖)を発売した。
砂糖産業の現在の問題
EUの砂糖生産国が直面している主な課題は、間近に迫った砂糖制度の改革である。
2000年7月に始まる2000/01年度から、EU委員会は、WTO義務に従うために、砂糖制度の改革を実行しなければならなくなるであろう。当初は、国内の生産割当の削減をもたらすことが予測される。また、輸出補助金も削減されなければならなくなるであろう。
EUの中で最もコストがかかる中、砂糖生産国の1つとして生き残るために、イタリアの砂糖産業は、劇的にその農地と工場における生産コストを改善しなければならない。イタリアの砂糖産業は、すでにその地域プレミアムを失っているが、より厳しい課題が将来に横たわっている。
砂糖産業の農地部門に関しては、イタリアは、単収、ショ糖含有率及び農場規模に関して、他のEUの砂糖産業に遅れている。しかし、これらすべては、構造的な問題(最初の2つは、主にビートの栽培に理想的でない気候によって影響を与えられている)であり、砂糖産業がこれらの問題に打ち勝つことが可能かどうかは疑わしい。その結果、若干のビート栽培面積が、特定の地域において収益があがる小麦やトウモロコシのような農作物に転作される可能性もある。こうしたことが、イタリアの砂糖生産量の減少をもたらす可能性が高い。
工場部門に関しては、砂糖産業は大規模な工場を経営しているが(したがって、そのために規模の経済を利用することが可能である)、製糖期間が短いため、稼働率は低い。したがって、製糖期間を長くするために、工場の整理・合理化が推進されるものと思われる。
Eridaniaは、様々な国に拠点を置いており、フランスにおいては砂糖生産量のおよそ3分の1を生産し、ハンガリーにも投資している。さらに、EUと米国の異性化糖産業においても、主な役割を果たしている。しかし、他のイタリアの製糖業者は、さらなる合理化を迫られている。
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